「やっほ~。来たよ~」
「おお、お燐ちゃん。いらっしゃい~」
ここは地底の街。
中心部に程近い絶好のロケーションにある喫茶店。
お燐は地底の街に興味があったナズーリンをひとしきり連れ回した後、この店にやってきたのでした。
「地底も昔とは変わったね。こんな綺麗な店なんてひとつもなかったんだが」
「地上との交流が増えてだいぶ良くなったんだ。
地底の妖怪も、ある程度落ち着いたヤツが増えたしね」
「ここまで来た甲斐があったというものだよ。興味深い体験だった」
アイスコーヒーをすするナズーリンも満足そうな表情です。
「しかし動き回るのもいいけど、喫茶店でぐてーっとするのも捨てがたいにゃ~」
テーブルに突っ伏してだらけたお燐。
顔だけ上げてしゃべります。
「君はもうちょっとしっかりとできないのかい? うちのご主人じゃないんだから……」
「猫なんだから動き回った後は寝そべるのが仕事さ~。
ナズーのご主人も虎だから、きっと一緒なんだよ」
「全く……」
いつものように諦め顔のナズーリンなのでした。
「しかし少し小腹も空いたね。何か食べるものもないかな……?」
「おっ!」
そのナズーリンの一言を聞いたお燐、急に起き上がりました。
「それならオススメのメニューがあるんだよ。ちょっと待ってて!」
そのまま立ち上がると、いそいそと店の奥へ行ってしまうのでした。
「……なんなんだ? 注文ならここで呼べばいいのに」
一人残されたナズーリンは、手持ち無沙汰で残ったアイスコーヒーをすするのでした。
そしてしばらく。
暇を持て余してテーブルに突っ伏したナズーリンのもとに、ようやくお燐が戻ってきたのでした。
「……おそい~」
「ごめんごめん。準備が大変だったんだよ」
お燐が戻ってきてもへばったままのナズーリンに、ペコペコと謝るのでした。
「でもいいのが作れたよ!」
「作れた?」
「じゃじゃ~ん! これを作ってて遅くなったのでした!」
ナズーリンの前に出てきたのは、蓋がついた小さめのどんぶりが2つ。
その蓋をお燐があけました。
「……これは?」
「お燐特製、猫まんまセット~!」
「……君は私を馬鹿にしているのかい?」
予想外のメニューに怒り気味のナズーリンです。
「ふっふっふ。ナズーはそういうと思ったよ。先ずは食べてみて。絶対後悔させないからさ!」
「ふぅん。そうまで言うなら……」
自信満々のお燐に押されて、ナズーリンは鰹節がまぶされただけのご飯を食べてみるのでした。
「……!!」
ナズーリンのしっぽが、ぴくっと動いたのをお燐は見逃しませんでした。
「どうよ! 美味しいでしょ!?」
「……本当に美味しいんだな、これは」
思わずため息をついて、ナズーリンは言いました。
「でしょー。素材に拘ってるからね!」
お燐曰く、米・かつお節・水・醤油・出汁など全てに拘った、本格派のメニューだとか。
もう一杯のどんぶりに入っていた味噌汁をぶっかけたご飯も当然のように美味しく。
ナズーリンもお燐も、その二杯をあっという間に食べきってしまったのでした。
「ご馳走様。本当に美味しかったよ、びっくりした」
「でしょでしょ~♪」
「しかしなんで注文するだけじゃなくて、君が裏に回ってたんだい?」
「実はここ、あたいがたまにウエイトレスのバイトしている店なんだ」
「へぇ」
「でさ、ちょっと前にマスターが新メニューを作りたいっていってたから、あたいがアイデア出して猫まんまをね」
「意外なメニューだったよ」
「普段はマスターが作ってるんだけど、このメニューだけはあたいの方が完璧に作れるんだ!」
胸を張ってお燐は言いました。
「せっかくナズーには地底にまで来てもらったんだから、最高のものを食べて貰いたかったんだー」
「ありがとう。本当に素晴らしかったよ」
「あたいとしても、そう言って貰えると嬉しいね♪」
「正直なところ、私も鼠だから猫の食べる物には苦手意識があったんだ」
なんとなくだけどね、とナズーリンは微笑みました。
「しかしそういう食わず嫌いは良くないと判ったよ。なんでも挑戦してみるものだ」
満足そうなナズーリンの姿に、お燐も嬉しくなるのでした。
「材料は今日マスターに分けて貰ったから、今度はナズーの家でも作ってあげるよ~」
「それは楽しみだ! 是非頼むよ!」
「……ナズーの家に入り浸る、いい口実ができたかな」
「ん? 何か言ったかい?」
「な、なんでもないよ~」
ボソッと呟いたお燐の言葉も聞こえないくらい、上機嫌のナズーリンなのでした。
私もかつぶしご飯の方が好きかな。
天敵同士の素敵ないちゃいちゃ。和みますねーー。
お燐が喫茶店でバイトか……マスターは鬼みたいなデカくて無口な人?
貴方をナズー燐作家として認定します!!
みそしるご飯はすぐふやけて汁気が無くなっちゃうから普通にご飯食いながら味噌汁啜るほうが好きですね。
二人のラブラブ恋人編とラブラブ新婚編はまだですか?
もっと広がれナズー燐の輪!
かつぶしご飯とか塩ふったご飯とか、シンプルでも美味しいですよねー。
>ぺ・四潤 さん
もっと天敵な感じのSSも書いてみたいですねー。
意外と心が読める人がマスターやってるってのも面白そうかもw
ナズー燐作家と名乗れるようにもっと書いてきますー。
>3 さん
わーい。コメありがとうございます!
多分うちの二人はいつもこんな感じで進んでいくと思いますw
新婚編はちょっと面白そう……