……目が覚めると、そこには得たいの知れないものがあった。
眠気の残る眼を擦りながら、それを拾ってみた。
「……なんだろう、これ」
白くて薄っぺらい。
掴んでみるとクシャっという音を立てた。
「ん~?」
とりあえず、手のひらでどんどん潰していく。
カサカサと耳障りな音を立てながら、白い物体は小さくまとまっていく。
「えいっ!」
丸めて、投げる。
しかし、白いものは空中でふわっと膨らんでしまい、空気の抵抗を受けて地面に落下した。
よくよく見ると、膨らむだけではなく、もとの形に戻ろうとしている。
「これは… 袋かしら?」
カサカサクシャクシャと音が鳴る、薄っぺらい袋。
しかし、こんなに薄いとすぐに破れてしまいそうなものだが。
そう思い、試しに色々と袋に詰め込んでみた。
着替えの巫女服、予備のお札、リンゴ、みかん。
「へぇ、結構丈夫に出来てるのねぇ」
白い袋(仮)は予想に反して破れることは無かった。
流石に針で刺しでもすれば穴は空くだろうけど、そこまで実験する必要もないだろう。
と、私が白い袋(仮)を片手にゴロゴロしていると、目の前の空間がパックリと裂けた。
「はぁい。霊夢、お元気?」
紫だった。
いや、紫以外にはそこらへんの空間を裂いて神社にやってくるやつはいないんだけど。
「はぁい。紫。これ、なんなのかわかる?」
白い袋(仮)を紫に見せながら問いかける。
たぶん紫なら知っているだろう、と思って。
「あら、今日はこの挨拶に合わせてくれるのねぇ」
クスクス、と紫が笑う。
確かに普段は合わせないけど、そんなにおかしいのだろうか。
「まぁ、質問するのなら、相手に合わせてあげなきゃダメでしょ? で、これが何かわかる?」
私はちょっと顔を赤くしながら、もう一度白い袋(仮)を突き出した。
「ん~、これ? ビニール袋ね。 外の世界での使い捨ての袋よ」
「へぇ、使い捨てなのね。これ」
一回きりで使い捨てるのは惜しいような気もするんだけど。
「まぁ、最近は外の世界の資源不足とかなにやらあって、使い捨ては控えるようになってるけどねぇ。それに、耐久性に乏しいから、長く使うには向かないし。すぐにこっちの世界にやってくるかもしれないわね」
「ふぅん」
色々と詰め込んでいたものを取り出して、またクシャクシャとビニール袋を丸めてみた。
これ、何かに使えないだろうか。
「お姉さ~ん!遊びにきたよー!」
私がこのビニール袋なるものに思索をめぐらせていると、玄関先からお燐の声が聞こえてきた。
「あら、あの火焔猫の娘が遊びにきたみたいねぇ。それじゃあ私はそろそろお暇するわね」
「ん? 帰るの?」
「たぶん、これからは私がいない方が楽しめるだろうと思って…ね」
ふふふ、と意味深な笑みを零す紫。
イマイチ意図するところが掴めず、私は首をかしげた。
「ん? 何が言いたいのよ?」
「いえ、別に? あ、そうそう。ビニール袋にはこんな使い方があってね…」
・・・・・
・・・
・
・・・
・・・・・
(これは…これは可愛いかもしれない…!)
たじたじたじ…
たじたじ…
たじたじたじたじ…っ
(いや、ダメよ。お燐は嫌がってるじゃない…!)
たじたじたじたじ…っ!
たじたじ…
(でもこれは可愛いし…)
たじたじ!
「ぷはっ!」
「あ、取れた」
必死のお燐のあとずさりで、頭に被せていたビニール袋が取れてしまった。
すかさずもう一度被せる。
「…!? …っ! …っ!」
たじたじたじたじ…!
「ぷはっ! 何するのさお姉さんっ! あんなものを被せて!」
お燐が尻尾を逆立てながら私に詰め寄ってくる。
私も流石に悪かったかなぁ、と思い素直に頭を下げた。
「ん、ごめんごめん。猫にビニール袋を被せると面白いって聞いたから…その…つい、ね」
「つい、じゃないよ!もう!」
プイっと、そっぽを向くお燐。
尻尾がパタパタと地面に叩きつけられている。
あれは、許さないよ!のポーズだ。
「だから、ごめんってば。今日のおゆはんはお魚にするから。ね?」
ピクっと反応する。
尻尾のゆれがちょっとだけ落ち着いてきた。
「そ、そんなのじゃ騙されないからね!」
猫としてのお燐は魚で懐柔されていても、人型としてのお燐はまだ許したくはないようだ。
しかし、尻尾の様子を察するに、あと一押しと見た。
「じゃあ、あんたのご飯には鰹節もつけるからさ~。ねぇ、許して?」
ピクピクっ!
よしっ!食いついた!
「ま、まぁ、お姉さんも悪気は無かったみたいだし、今回だけは許してあげるけどさ! べ、別に食べ物に釣られたわけじゃないんだからねっ」
そうは言ってもお燐。
尻尾を巻きつけてくる辺り、完全に釣られていると思うわよ?
それにしても。
「あーぁ、お燐がそこまで怒るってことは、もうビニール袋を被せられないわねぇ。可愛かったのに」
ん?尻尾の巻きつきが強くなった?
お燐の顔に、ちょっと赤みが掛かったような気がした。
「べ、別に…たまになら…」
消え入りそうな声で、お燐が何かを呟いた。
「ん?何?」
「な、なんでもないよ! それよりもご飯! ご飯の準備しようか! 約束どおり、お魚と鰹節を用意してもらわなくっちゃ!」
そんなことを言いながら、逃げるように台所へと駆けて行くお燐。
手に残ったのはビニール袋。
「まぁ、たまには、良いかしらね」
そんなことを呟いて、丁寧に畳む。
四角くなったビニール袋を置いて、私も台所へと向かうのだった。
眠気の残る眼を擦りながら、それを拾ってみた。
「……なんだろう、これ」
白くて薄っぺらい。
掴んでみるとクシャっという音を立てた。
「ん~?」
とりあえず、手のひらでどんどん潰していく。
カサカサと耳障りな音を立てながら、白い物体は小さくまとまっていく。
「えいっ!」
丸めて、投げる。
しかし、白いものは空中でふわっと膨らんでしまい、空気の抵抗を受けて地面に落下した。
よくよく見ると、膨らむだけではなく、もとの形に戻ろうとしている。
「これは… 袋かしら?」
カサカサクシャクシャと音が鳴る、薄っぺらい袋。
しかし、こんなに薄いとすぐに破れてしまいそうなものだが。
そう思い、試しに色々と袋に詰め込んでみた。
着替えの巫女服、予備のお札、リンゴ、みかん。
「へぇ、結構丈夫に出来てるのねぇ」
白い袋(仮)は予想に反して破れることは無かった。
流石に針で刺しでもすれば穴は空くだろうけど、そこまで実験する必要もないだろう。
と、私が白い袋(仮)を片手にゴロゴロしていると、目の前の空間がパックリと裂けた。
「はぁい。霊夢、お元気?」
紫だった。
いや、紫以外にはそこらへんの空間を裂いて神社にやってくるやつはいないんだけど。
「はぁい。紫。これ、なんなのかわかる?」
白い袋(仮)を紫に見せながら問いかける。
たぶん紫なら知っているだろう、と思って。
「あら、今日はこの挨拶に合わせてくれるのねぇ」
クスクス、と紫が笑う。
確かに普段は合わせないけど、そんなにおかしいのだろうか。
「まぁ、質問するのなら、相手に合わせてあげなきゃダメでしょ? で、これが何かわかる?」
私はちょっと顔を赤くしながら、もう一度白い袋(仮)を突き出した。
「ん~、これ? ビニール袋ね。 外の世界での使い捨ての袋よ」
「へぇ、使い捨てなのね。これ」
一回きりで使い捨てるのは惜しいような気もするんだけど。
「まぁ、最近は外の世界の資源不足とかなにやらあって、使い捨ては控えるようになってるけどねぇ。それに、耐久性に乏しいから、長く使うには向かないし。すぐにこっちの世界にやってくるかもしれないわね」
「ふぅん」
色々と詰め込んでいたものを取り出して、またクシャクシャとビニール袋を丸めてみた。
これ、何かに使えないだろうか。
「お姉さ~ん!遊びにきたよー!」
私がこのビニール袋なるものに思索をめぐらせていると、玄関先からお燐の声が聞こえてきた。
「あら、あの火焔猫の娘が遊びにきたみたいねぇ。それじゃあ私はそろそろお暇するわね」
「ん? 帰るの?」
「たぶん、これからは私がいない方が楽しめるだろうと思って…ね」
ふふふ、と意味深な笑みを零す紫。
イマイチ意図するところが掴めず、私は首をかしげた。
「ん? 何が言いたいのよ?」
「いえ、別に? あ、そうそう。ビニール袋にはこんな使い方があってね…」
・・・・・
・・・
・
・・・
・・・・・
(これは…これは可愛いかもしれない…!)
たじたじたじ…
たじたじ…
たじたじたじたじ…っ
(いや、ダメよ。お燐は嫌がってるじゃない…!)
たじたじたじたじ…っ!
たじたじ…
(でもこれは可愛いし…)
たじたじ!
「ぷはっ!」
「あ、取れた」
必死のお燐のあとずさりで、頭に被せていたビニール袋が取れてしまった。
すかさずもう一度被せる。
「…!? …っ! …っ!」
たじたじたじたじ…!
「ぷはっ! 何するのさお姉さんっ! あんなものを被せて!」
お燐が尻尾を逆立てながら私に詰め寄ってくる。
私も流石に悪かったかなぁ、と思い素直に頭を下げた。
「ん、ごめんごめん。猫にビニール袋を被せると面白いって聞いたから…その…つい、ね」
「つい、じゃないよ!もう!」
プイっと、そっぽを向くお燐。
尻尾がパタパタと地面に叩きつけられている。
あれは、許さないよ!のポーズだ。
「だから、ごめんってば。今日のおゆはんはお魚にするから。ね?」
ピクっと反応する。
尻尾のゆれがちょっとだけ落ち着いてきた。
「そ、そんなのじゃ騙されないからね!」
猫としてのお燐は魚で懐柔されていても、人型としてのお燐はまだ許したくはないようだ。
しかし、尻尾の様子を察するに、あと一押しと見た。
「じゃあ、あんたのご飯には鰹節もつけるからさ~。ねぇ、許して?」
ピクピクっ!
よしっ!食いついた!
「ま、まぁ、お姉さんも悪気は無かったみたいだし、今回だけは許してあげるけどさ! べ、別に食べ物に釣られたわけじゃないんだからねっ」
そうは言ってもお燐。
尻尾を巻きつけてくる辺り、完全に釣られていると思うわよ?
それにしても。
「あーぁ、お燐がそこまで怒るってことは、もうビニール袋を被せられないわねぇ。可愛かったのに」
ん?尻尾の巻きつきが強くなった?
お燐の顔に、ちょっと赤みが掛かったような気がした。
「べ、別に…たまになら…」
消え入りそうな声で、お燐が何かを呟いた。
「ん?何?」
「な、なんでもないよ! それよりもご飯! ご飯の準備しようか! 約束どおり、お魚と鰹節を用意してもらわなくっちゃ!」
そんなことを言いながら、逃げるように台所へと駆けて行くお燐。
手に残ったのはビニール袋。
「まぁ、たまには、良いかしらね」
そんなことを呟いて、丁寧に畳む。
四角くなったビニール袋を置いて、私も台所へと向かうのだった。
あと、ビニール袋が幻想入りされたらちょっと困るかも。
ぬこ勢が可愛すぎる件
段ボール箱に入りたがるお燐や橙は可愛いはず。
もっと増えてほしいです