あるところで、上海さんと和蘭さんが楽しそうにおしゃべりをしていました。
ねぇ上海さん
昨日のおまじない
うまくいった？
えぇ和蘭さん
おかげでお庭のハーブが元気になったの！
まぁすごい！
今日は何のおまじないをしようかしら？
二人はおまじないに夢中でした。
と、そこへストローさんがやってきました。
ヨォ嬢チャン方 元気カネ？
クククク
まぁストローさん
今日もパリパリですね
まぁストローさん
今日もカサカサですね
呪イヲカケタキャ私ニ頼ミナヨ…効果ハ抜群ダゼ？
二人はストローさんが苦手でした。
藁を編んだだけの体はパリパリで、しかも陰気だったからです。
上海さんは言いました。
私達は誰かに呪いをかけたい訳じゃないわ
和蘭さんも言いました。
そうよ
私達はおまじないを楽しんでるの
呪いはお呼びじゃないわ
二人に言われて、ストローさんはやれやれと立ち去ります。
ソウカイ…ジャ 呼バレタトキニマタ来ルゼ
クカカカカ
…前もそう言ってたわ
…その前もそう言ってたわ
二人もその場を去りました。
二人と話した後、ストローさんは一人で考え事をしていました。
マジナイッテナンダ…呪イトドウ違ウ？ ドッチモ「呪イ」ジャネーカ…
そこへ蓬莱さんがやってきました。
あらストローさん
こんなところでどうしたの？
ヨォ蓬莱、今日モ首ノ紐ガ似合ッテルゼ
クカカカカ！
ま
ストローさんたらお上手ね
ストローさんは考え事を蓬莱さんに打ち明けました。
そして話が終わると、蓬莱さんはすぐにこう答えました。
ストローさん
それはね
すごく単純な事なのよ
マジカ！
ソレデ
ドウ違ウッテンダ！？
蓬莱さんは少し考えた後、こう言うのです。
直ぐに答えるのは勿体無いわ…
明日までの宿題ね
チッ
モッタイブリヤガッテ！
ソノ首サッサトモゲチマエ！！
ストローさんは悪態をつきながら去っていきました。
蓬莱さんはそれを見て、クスクス笑うのでした。
そのときは
あなたがこの紐を締めてね
ストローさんが腹を立てて歩いていると、
前から大江戸さんと京（みやこ）さんが歩いてきました。
やぁストローさんよぉ
しけた面してんじゃねーか？ ん？
何かあったのかい？！
良ければ相談に乗るよ
ストローさんは事の顛末を話しました。
ワカンネーンダヨ
何ガドウ違ウッテンダ？
大江戸さんと京さんはう～んと唸ってこう答えました。
わからねぇがよ
なんとなく効きそうなのがまじないなんじゃねぇかい？
で、その逆が呪いってことになるんじゃないのかねぇ
ハッ！
確カニ俺ノ伝エル呪イは良クきクゼ！
ストローさんは機嫌良くその場を去りました。
少し歩くと、また上海さんと和蘭さんがいました。
ストローさんは身を隠し、二人の話を盗み聞きします。
一度やってみたいわ
でも
空をずっと見上げていないと無理よ
だから効き目があるんじゃないかしら
何の話だろう？
ストローさんは気になって、また二人に話しかけます。
ヨォオ二人サン
マタ会ッタナ
クククク
まぁ
また会いましたね
まぁ
またあなたなの？
空ニ何ガアルッテカ？
流れ星よ
願いを三回唱えるの
二人の次のおまじないは、流れ星に願いを叶えて貰うことでした。
ストローさんは思わず笑ってしまいます。
流レ星ダッテ！！？
アンナモノ
タダノ隕石！
燃エ尽キル寸前ノ！
願イナンテ叶ワネーヨ！！
和蘭さんはそれを聞いて泣いてしまいました。
ひどいわ！
どうしてそんなこと言うの！？
上海さんも怒ります。
そうよ
ひどいわ！
和蘭さんを泣かせて！
謝りなさい！
二人に責められ、そしてつい、
ストローさんはこんなことを言ってしまうのです。
ウッセー！！
ソンナニ流レ星ガ見タイッテンナラ見セテヤル！
ソンデ思イ知レ！
願イナンテ叶ワネーッテヨ！！
ストローさんは逃げるようにその場から去りました。
困った、ああ困った。
ストローさんがぶつぶつつぶやきながら歩いていると、
また蓬莱さんに会いました。
あらあなた
同じところをぐるぐる歩いて楽しい？
ウッセーヨ
ストローさんは蓬莱さんに相談しました。
どうすれば星を降らせることが出来るんでしょう？
難しそうなこの質問も、すぐに答えが返ってきました。
そんなの簡単よ
方法さえわかれば
マジカ！
デモマタ教エナイトデモ言ウンダロ？
大丈夫
今度はちゃんと教えるわ
でも私の頼みを聞いてね？
ストローさんはうんうん頷き、蓬莱さんの話を聞くのでした。
ストローさんは大江戸さんのところに向かいました。
邪魔スルゼィ
おうどうした
おめーさんが改まって来るたぁ珍しいじゃねぇか
ええ？
頼ミ事ダヨ
てめーニシカ出来ネー事ダトヨ
何だいどーしたってんだい
おめーさん少し変じゃねーのか？ ん？
ストローさんは今までのことを話しました。
そりゃあおめー
そんなことせんでもちゃんと詫びを入れた方が良いだろーがよ
ココデ引イタラ俺ガ間違ッテイタト認メルコトニナル！
マジナイナンザ認メン！！
何ムキになってんだよ ったく
ま
どうしてもってんなら頼まれてやるけどな
ドウシテモダ！
頼ンダゾ！！
大江戸さんはやれやれといった調子で準備に取り掛かるのでした。
夜になりました。
空はたくさんの星と三日月で輝いています。
大江戸さんはお昼に準備した大砲を外に出し、
そこへ長い長～い紐を持ったストローさんが入り込みました。
蓬莱さんも様子を見守ります。
いいかストロー
どうなっても知らねぇからな
テメーコソ
シクジルンジャネーゼ
大江戸さんは大砲を月に向け、火をつけました。
５
４
３
２
１
０！
どーーーーーーーーーん！！！！
角度良し！
威力良し！
あとはあいつ次第ってこった！
うまくいくといいわね
でないと
私も残念
二人はずっと、空を行くストローさんを見守っているのでした。
ヒ ヒヒ
随分ト高ェジャネーカ…
ストローさんは足を震わせながらも、
降り立った三日月に紐を結びつけ地上へ垂らしました。
コレデ良イ…
蓬莱メ
何ヲ考エテコンナコトヲサセヤガル…
マ
コレガナイト地上へ帰レナクナルガナ
アトハ小石ヲ投ゲテ流レ星ニシテヤルダケヨ
しかしストローさんは肝心な事を、
小石を持って来るということをすっかり忘れてしまっていたのです。
じーざす！！
あほカ！！
俺ハ何ノタメニココヘ来タ！？
途方にくれたストローさんはしばらくぼうっと地上を眺めていました。
アソコガ上海ンチ
アレガガ和蘭ノ
今頃アイツラハ空ヲ眺メテンノカ
ソレトモ
俺ノ言ウコトナンザ真ニ受ケチャイネーカ
…ジャア小石ナンテアッテモナクテモカ変ワンネーナ！
クカカカカカ！！
ストローさんは急に寂しくなりました。
どうせ見てくれないのなら、居るも居ないも一緒。
だったら嫌われ者にだってなろうと思っていたのに。
蓬莱ハ紐デ何ヲヤッテンダロウカ
蓬莱ハトモカク
大江戸ニャめーわくカケチマッタナ…
ストローさんは何か恩返しがしたいと思いました。
でももう、地上に帰ろうという気にもなれませんでした。
そこでストローさんは妙案を思いつきました。
自分が流れ星になろうと決心したのです。
精々イイ夢見ロヨ！
俺ノ呪イハまじデ効クンダ！
一世一代カミカゼ流星
トクト見ヤガレ！！
クカカカカカカ！！！！
地上では大江戸さんと京さんが星空を見上げてました。
あ
あんた ほら
流れ星！
おお
あいつやったか！
さ あんた！
早く願い事しなきゃ！
え？
いやーだってあれは…
いいから早くするんだよ！
もったいないだろ！
あいた！
蹴るこたないだろうよ…
ずっと一緒に居られますように…
あ？
なんだって？
いいから早く！！
蹴るなってば！！
蓬莱さんは月から垂れ下がった紐を確認していました。
感謝するよ
満天の星空に流れ星
月に括られた紐で
私はこうやって首を括るのを
ずっと夢見てたんだ
叶えてくれてありがとう
願わくば
次は
…
あ！
本当に流れた…
嘘じゃなかったんだ！
ね
和蘭さん！
うん！
みんながみんな
笑って暮らせますように
毎日楽しく過ごせますように
…
…
３回なんて無理～！
でも！でも！
うん！
きっと叶うよね！
それから
まぁ仏蘭西さん
今日も素敵ですね
まぁ露西亜さん
今日もかっこいいわ
そう大げさに褒めるな
痒いだろ
まんざらでもなさそうだけど
うっせーよ
それからほどなく、
上海さんと和蘭さんに友達が出来ました。
早く行こう！
今日はハーブを使ったおまじないをするの！
ハーブティも作るの！
流れ星の晩に居なくなった人は、
１週間経っても見つけることが出来ませんでした。
上海さんも和蘭さんも悲しみましたが、
その悲しみはこの二人が埋めてくれるに違いありません。
なぁ露西亜
これは一体誰が願ったんだ？
さぁね
でもそんなことは些細な事だよ
仏蘭西
なぜなら、
二人ともー！
早くー！
さ！
仏蘭西！
はっ
皆揃ってせっかち過ぎんぞ！
クカカカカカ！！！
なぜなら、願いは叶えられているからです。
おしまい
「どう？」
「４点」
「えー」
「立ち見をするには長すぎるぜ。」
面白かったです。
パリパリなのに…