Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

私がいないと駄目な最愛のライバル

2010/04/29 23:20:28
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 ストーカー被害にあっていると自覚してから早十日目。

 私こと幻想郷最速にして新聞記者である烏天狗、射命丸文は身震いすらしてどん引いていた。
 何故って?
 そりゃあ、そのストーカーが何食わぬ顔して私の目の前で茶を飲んでいるからですよ。姿勢正しく。
 私の家で。

「…………をい。こらちょっと? そこのストーカー、貴方は何をして」
「あ、おかえり文」
「え? あ、はい。ただいま帰りました」
「っていうか、あんたねぇ洗濯物出しっぱなしだったわよ? しょうがないから入れて畳んで直しといたから感謝しなさい」
「ありゃ? それはすいません、ありがとうございます」
「ん、……まあそこまで気にしなくてもいいわ」

 ついぺこりと頭を下げて感謝を示すと、彼女はツインテールの髪を揺らし、頬を僅かに染めて誤魔化す様にお茶を飲む。
 ずずっ。
 啜る音が微かに響き、なんとなく和む。
 ぽけっと最初の勢いも忘れながら見下ろして、頬を掻く。
 ……そういえば、今日は纏めて洗濯をしてそのままだったと、取材に夢中になりすぎて、気づけばもう夕日も沈みかけの時刻。
 せっかくの晴天の下、ふかふかの洗濯物が冷え切るところだったと、ことさら反省し、彼女の隣に腰を下ろす。

「ん」

 すっと。
 それを待っていたかの様に、ちゃぶ台の上を、入れたてのお茶で波打つ湯飲みが、私の前まで滑ってきた。

「……どうも」
「ん」

 受け取り、さっそく口をつける。
 ずずっ。
 ふぅ、……うん、おいしい。

「これは、なかなか」
「でしょう? ったく、こんな良いお茶っ葉をしまいっ放しなんて、勿体無いわよ」

 得意げな彼女に、そうですねぇと頷き、そういえば、人里での取材の際に相手の口を軽くするつもりで高い茶葉を買って、そのままだった事を思い出す。
 このお茶はそれかぁ、と納得し、こんなに美味いのなら、もっと早くあければ良かっ―――

「って、貴方は何してんですかッ?!」

 流された!
 ここまでスムーズに流されてしまった私は私のノリの良さが憎い!
 ちゃぶ台を叩いて立ち上がると、びっくりとした目とかち合った。

「ちょっ、と、何よ! いきなり怒鳴らないでよ!」
「やかましいです! うっかり流されましたけど、貴方は何をしているのよ、はたて!」
「…む?」

 ぴくり、
 と眉を寄せ、立ち上がりえらい剣幕で指差す私を、即座に不機嫌そうに見上げ、だんっ! と湯のみを乱暴に置く。
 記者モードと天狗モードが混ざりまくり、混乱している私を見下すように、はたては膝をたて、私を馬鹿にする様に顎をあげて、はっ、と嘲笑う。

「分かんないの?」
「ええい憎らしい! 踏ん反り返るな人の家で! っていうか、何を勝って知ったる人の家みたいに堂々と居座っているのよ!? あんた、私とほとんど付き合いないでしょうが!」
「……ったく、説明してあげるからよーく聞きなさいよ!」

 はたては憎らしくも、私を馬鹿にする視線を緩めぬままに、私が飲み干して空になった湯飲みにお茶を注ぐ。
 こぽこぽと良い香りがした。

「いい!」
「よしこい!」

「私はねぇ、今日、たまたま偶然あんたの家を念写したら、あんたが戸締りもせず洗濯物も出しっぱなしで洗い物もそのままに飛び出して行った劇的瞬間を撮ってしまい、あんまり無用心で内心蔑みながらもしょうがないから心配で留守番してやっていたのよ! 掃除もしてやったわ!」
「――――な、何を余計な事をしどうもありがとうございましたあっ!」

 即座に頭を下げましたよ!
 …………どうもご迷惑おかけしましたよ!
 なにこの悔しさ! 発散できないぞ?!

「……ぐぐぎ」
「ったく、反省しなさい」

 はっ、と鼻で軽快に笑われた。
 ええ、反論できませんねぇ、ぐぎぎ……!

 はたては、烏天狗の中には人の家に押し入ってネタを取る輩もいるのに無用心だと私を責め、勿論私はあんたのネタなんて興味もないわ! と、胸を張ってご飯の用意を始めるから大人しく座っていろと、エプロンをつけ始めた。

 ん。
 んん?

 ……はて。

 突っ込むべきか、無視するべきか。

 私はちゃぶ台の前に正座し、首を真横に傾けながら「んー?」とお行儀よく正座する。
 いや。何でそこで夕飯の準備?

 おかしくない?
 おかしいだろう?

「あの、はた――」
「ちゃぶ台拭いといて」
「あ、はい」

 ぽいっと投げられた台拭きを受け取り、きゅきゅっと表面を磨く。

 そして、目の前にほかほかとおいしそうな手料理が並んでいく内に、些細な疑問がどうでも良くなり、また流され、結果彼女に風呂に入れと怒られ、上がってほかほかしながらネタを整理しようとして、あんた昨日もろくに寝てないでしょうが! と怒られ布団に押し込まれ、そしてなぜか彼女がパジャマ姿で隣にいて、泊まっていく事が家主に断りもなく決まっていて、えーと。
 布団が一組しかなくて、しょうがなく一緒に寝て、朝起きたら「寝坊よもう!」と怒られ。

 朝御飯は当番制って、私が作らされた。

 結果。
 気づいたらストーカーが、週に四回の割合で泊まりに来て、半同棲状態になってた。

 ……うん。

 どうしてこうなったのでしょう?












 ◆ ◆ ◆










 はて?

 最初は、藁にもすがるぐらい追い込まれた心境から生まれた、ただの悪あがきのつもりだった。
 だった、のだけど。
 首を傾げてしまう。

 あの日、文を正式なライバルとして向かい合い、その調子に乗った鼻を叩き折るつもりで文と勝負をしたというのに、奴は始終口元に笑みを浮かべ、損なわなかった。
 手加減を、されていたのだと、今になって思う。

 あいつは、ずっと楽しそうだった。
 今にも呼吸が聞こえそうな程に、生きた風を操り、舞い、空を駆ける。
 憎らしいぐらい、良い顔だった。
 真剣勝負の最中に、その顔に見惚れてしまうぐらい、キラキラしてた。
 ……もうめちゃくちゃ長生きしてる癖に、反則だろうって思って、でもまた見惚れて。
 生まれながらに、風に愛された天狗。そして、かろうじて引き分け、なんて。

 そんな訳がなかった。

 私は文に、負けていた。
 撮られたーってじだんだ踏んで悔しがる文に、ふざけんなって、怒鳴りたくなるぐらい完敗だったんだ。


「……はぁ」


 文の上着を畳みながら、だというのに、私は何をしてんだろう、とふかふかのそれを丁寧に折り曲げる。
 お日様の匂い。
 文はこの季節、どちらかというと若葉の香りを帯びた風の香りをしている。
 日々様々に、季節によって纏う香りの性質すら変えてしまう文は、昨日はうっすら花の香りを帯びていた。
 本人は無意識なんだろうけど、そういう香りを嗅ぐと、四季の流れを明確に感じてしまい、他の天狗たちのちょっとした名物になっていた。
 もう春なんだなぁ、なんて感じに。

「…………はぁ」

 また溜息。
 文に負けっぱなしで悔しくて、家でもむしゃくしゃして、何の為に文の後を追いかけたのかと、自分を叱咤して、でも悔しくて、紙に走らせていく文字が歪んでしまう。
 だから、文のライバルとして負けたくなくて、気分転換のつもりで、文の家をネタと脅しと遊びで使えないかと念写した。

 ……そしたらあの馬鹿、すごく適当な生活してた。

 ご飯とか普通に抜くし、夜遅くまで机に向かっていて寝ないし、なのに朝は早く朝食抜いて元気に飛び立つし、洗濯物はそのままだし、たまに料理してると思ったら栄養偏ってるし。

 私、こんなずぼらに負けたの?

 って、ふつふつと怒りがこみ上げ、ふざけんな負けてないわよ! とパワーを貰えた。
 何か間違えているけれど、気力がこれでもかと沸いてきたので問題はなかった。

 そして、あの日もまた私は彼女の家を念写していた。
 そこには、久しぶりに朝早くに洗濯をして、そのまま放置して出かけて。もう夕暮れ時なのに帰ってこない部屋が写っていた。

 ぷっちん。
 と、笑顔でそれを見たまま切れた。
 気づいたら。押しかけて洗濯物を取り込み、その後もごちゃごちゃした部屋を掃除をしたりと働いてしまった。

「……いやほんと、なんで、私は文の家政婦みたいな事をしてるんだろう?」

 冷静になると、どうにも据わりが悪すぎた。
 おかしい、よねぇ。
 おかしいわよ。

 でも、おかしいからって放っておくと、文は適当すぎるからまたご飯を抜いちゃうだろうし、文の実生活をしった今は、それを見るたびにイライラするのは目に見えている。
 だってあいつ、掃除はとりあえず物を集めた後に風を操って埃を外に吹き飛ばすとか、そういうのよ? それで満足して終わりだし、お布団もあんまり干さないし。たまに畳の上でそのまま力尽きて寝るし。好きな事をして毎日が楽しいのはよっく分かるけれど、もうちょっとちゃんとしろと言いたくなる。

「自分で言うのもなんだけど、引きこもってると新聞作る以外は暇だから、細かい所まで掃除しちゃうし、料理もこっちゃうんだよねぇ」

 独り言だってついつい零れる。
 でも、最近は文の家にいる事が多くて、こういうのは久しぶりだった。
 あいつが適当すぎて怒鳴ってばっかだったし、それで最初の頃は喉がひりひりした。

「…………」

 文の方が、少し、ほんの少し背が高いから、威圧されない様にって胸を張るから、最近は腰がちょっと痛い。
 料理は一人分を作るより、二人分の方が楽なんだなって知って、文はもぐもぐと好き嫌いせずに何でも残さず食べるから、好みが謎で、いまいち達成感はないけれど、まあやりがいはある。
 文の服、ほつれてそのまま放置されているのがいくつもあった。
 しょうがないから直してあげて、くまさんのアップリケでもつけて嫌がらせするのも楽しいかもしれない。なんて考える。
 あと、文は寝言をよく呟いて、夜中に起こされる。少し迷惑だ。
 知らない名前や知っている名前が飛び出て、夢の中でも楽しそうで、布団から追い出してやろうとか思うけれど、最近は私の名前を呼ぶ頻度が増えたので、逆に招いて肩まで布団をかぶせてあげる。私って優しいじゃん。
 なんて思う。

「…………」

 文の服を、皺なく畳み終えると、そのままごろりと寝転ぶ。
 今日は布団も干したから、ふかふかと寝心地も良いだろう。きっと文は私に感謝するだろう。
 いい加減に出て行け! とか言うくせに、世話をすると口をへの字に曲げつつも、ちゃんと感謝を示し、最近はお土産を買って帰る事が多くなった。

 …………。

「なんだろ」

 文。
 射命丸、文。
 私のライバルで、気に食わなくて、記者モードと天狗モードを使いこなして、捻くれていて、強引な取材で疎ましがられている癖に、どうにも憎めなくてひょうきんで、自分勝手で、天狗の中でほぼ唯一、人間と関わりが深く、仲が良くて、博麗の巫女と異変解決もしたことがある。
 変わり者。

「……わかんない」

 きらきらしている。
 真夏の滝が弾く水みたいに、日の下で輝きを増して、目を焼くぐらいに強烈な。

 ただ最初は、彼女の新聞に惹かれた。
 そして、その新聞を生み出した彼女に惹かれ。
 現在は、自分から世話を焼いて、あいつの生活をかき乱している。

「……」

 もしかしたら、迷惑なのかもしれない。
 私だったら嫌気がさして、暗殺してもおかしくないぐらいの狼藉だけど、文はどうなんだろう? 嫌かな? 今日にも、出て行けとか言うかな?

「……ふー」

 お腹の上に手を置いて、目を閉じる。
 念写をしようと、思い立った。
 携帯を開き、集中する。
 パッと光る画面がぼわっと淡く光り、ほどなくしてパシャリ、と文のそれより軽い音。


「――――――――」


 画面の中。

 文は笑っていた。
 いつも通りに。夕日の下、ファインダーを覗いて、歯を見せて満面に。
 きらきらしていた。
 窓から零れる夕日より眩しくて、ぐにゅうってした。

 ……何よ、ぐにゅうって。……と自分でも思うけれど、でも、この感じはそんな風に、顔も身体も、こう、ぐにゅうってして、それは今も続いていた。
 ぐにゅうってして、もににもににときて、ぐあーん。って。

「――――っ!」

 文の服に顔を押し付けて、足をじばたばとして、そうやって息も絶えて、ぜえぜえとようやく我を思い出す。

 そういうものだった。
 ぐにゅうは恐るべきものだった。










「ただいまー」

 ぎくり、とした。
 謎のぐにゅうに襲われた私は、実はまだ万全を期していなかった。
 あれから、随分時間は経ったけれど、私はまだ文の服を枕にした状態で、実は、どうしてか収まらないぐにゅうの尾に引きずられたまま、この状態でぼんやりとしていた。
 文の服から文の匂いとお日様の香りが漂い、それにうつらうつらとしたのも問題だった。
 さあ、っと青く、うつ伏せになったままこれはまずい! と身を硬くした瞬間。

 パシャリ。

 フラッシュが焚かれた。
 って、あー!? やっぱ撮った!? 私が警戒した途端にすばやく撮りやがったっ!
 何て油断できない女なのよ文めっ!
 
「……ふむ、お休みですか」

 うがー! 声をかける前に撮るなぼけー!
 心の中で盛大にののしりつつ、しかし身体はまるで熟睡でもしているみたいに動かない。否、動けない。
 だって、ここで寝た振りですー、なんて口が裂けても絶対にばらせない。
 姫海棠はたて、今までにないぐらいのピンチ!
 ここでばれたら、文に末代まで笑われた挙句に、ネタにされてしまう……っ!
 文の服をくんくん嗅いでたのも、ばれたら引かれてしまう! ……最近、ようやくストーカーって言われなくなったのに、今度はフェチとか呼ばれたら、軽く数百年は引き篭もる自信があるわ!


「あ、洗濯物」


 って早速目ざとく見つけたー!?
 ぐっ、さすがは私のライバル。目の付け所は悪くないわよ!

「…………ふーん」

 …っ、え?
 なっ何よ、その、含みのある『ふーん』は?
 まさか、ばれ―――

 ぽんっ、ぽんっ。

 ――――。

 あ、え?


「家事のやりすぎですか。……別に、こっちが頼んだ訳じゃないけれど、……ふんっ、まあいいわ」

 肩に、置かれてるのは、文の手?
 それが、髪に触れて、ふわりと撫でられる。

 ―――ぅ――わ。
 きゅう、と体の中で音が鳴る。


「……ったく、私はお腹がすいているんだから、早く目を覚ましなさいよ? ……にしても、綺麗になったものね、我が家も。……けっこう広かったのね」

 前髪をいじられている。
 私の後ろ髪に、文の服が少しこすれている。
 近い位置に、文は座って、私の髪で遊んでいる。
 台詞が、むかつく事を言っているのに、声が、変に優しい感じがして、頬に当たる服の匂いが、くらくらと鼻腔から全身に、文を取り込んで、カッと全身が熱くなる。


「ふむ、寝ている内に、恨み言でも呟きますかねぇ……聞かれても困りませんし」


 文の手は細くて、綺麗。ちらりと開けた瞳に写る指が、前髪をくるくると巻いて、流す。


「……まったく、貴方のせいで、私は今日、椛に馬鹿と三十六回も、十分の立ち話で言われましたよ。ふざけんな哨戒天狗って叫ぼうと思ったけれど、大人気ないんで止めましたよ。……椛に聞いたら、なんか、私が貴方を無理やりにかどわかして、奴隷みたいに扱き使っているとか噂されてるって。自首すれば? とか言われましたよ。……とんだ誤解だっていうか、迷惑しているのは私だって言うのに、あの犬め」


 口調が、くるくると不安定。
 よく分からないけれど、彼女は私の前だと、口調が安定しない傾向にあるみたいだと、私は気づいていた。

「……ま、でも」

 くしゃりと、前髪をやわく掴まれて、するりと指先から抜ける。


「貴方が来てから、ちょっと楽しいのは事実です」


 ――――ぁ。


「ご苦労様、はたて」



 ぐにゅうっ、て。
 笑みを含んだ、柔らかい声が、私を包んだ瞬間。体の中で何かが溢れて、それは何かをパリンと壊して更に膨らんで、つん、と鼻の奥が痛くなった
 ……ぎゅっ、と奥歯を噛む。
 口の中で舌が震えて、嗚咽みたいな、変な声がでちゃいそうなのを、必死で止めた。

 文は、私の頭を撫で続ける。
 
 気づいたら、日は沈みきって、お腹もすいているだろうに、それでも、さらさらと飽きずに撫で続けて。




 不意に、手の力が弱まり、少しずつ動かなくなると、私は目を開ける。
 外で梟が静かに鳴いている。
 文は座ったまま、こくりこくりと、私の頭に手を置いたまま、眠りの世界へと旅立とうとしていた。


 …………。


 手を伸ばして、その顔に指を走らせる。
 唇に人差し指。
 柔らかい肉の弾力と、熱を持った呼吸が触れる。

 むにむにと唇が動く、でも、それを塞ぐみたいに、口の中に指を入れた。
 とろみを帯びた液体と、硬い歯と、歯茎の、爪をたてたら傷つきそうなやわさ。

「ばか」

 ちゅう、と指先に吸い付く姿に笑って、今日はそれでいいと思った。
 
 今日は、寝言はなんだか、言ってほしくなかった。
 文が、ふらりとこちらに倒れてくる。
 それを抱きとめて、口の中に指を入れたまま、私も目を閉じる。

 今は、不思議なぐらい落ち着いているのに、どこかで変に高ぶっている、静かな興奮状態。
 こんなの。

 こんな、不可思議な感情ばかりを、私に湧き上がらせるこいつが、憎たらしいなぁって、深く息を吸う。

 風の匂い。
 
 自然、顔がだらしなく、緩んで、笑って。

 今なら、私も文みたいに、笑えているかもしれないと思った。
 
 パシャリと、軽い音。




















「ちょっと文、お弁当忘れてるわよ!」
「あややややや?」
「ほら、ハンカチも! って、ちょっと、ボタン掛け間違えているじゃないのよだらしない!」
「……むっ?」
「ったく、これだから見た目に気を使わない奴は!」
「……むむっ」
「それと、今日は人里で大根と豆腐をちゃんと買ってきてよ!」
「わ、分かってますよ! 忘れませんってば……今日は!」
「ん、なら良し!……あと、文、分かっているでしょうけれど」
「ええ、勿論です」


 すたすたと、そのまま背中を合わせて、互いに不適に笑いあう。
 朝が来て、私たちはいつも通りに、夜の名残を纏う空気の中で、互いを送り出す。


「次の新聞大会は、私が勝つわ!」
「はっ、だから、貴方は甘いというんですよ!」
「……あんたには負けない」
「それは、此方の台詞です」


 パンッ! と、

 手と手が、強く合わさって、気持ちの良い音を立てる。

 負けない。
 負けて溜まるか!

 他の誰に負けても、あんたにだけは負けたくない。


 そうして、私たちは幻想郷の空を、スクープもとめて駆けていく。
 背中を押す、文の力強い風に押されて、胸の奥から湧き上がるやる気にうっしと拳を握る。


 私たちは、ライバル同士。
 いつか、私があんたを越えるその日まで、私はあいつの背中を睨んで、飛んでいく。




「だから、絶対に私以外に負けるんじゃないわよ!」



 奇妙に始まった同棲生活。
 いまだ謎のぐにゅうは私を襲うけれど、今はそんなのどうでもいい。


 とにかく、文には負けないって、そう決めた!

 画面に保存した、文が私の指を咥えた寝顔を、へらりとにやけながら見つめて、私は空を舞う。
 
 
 
 あいつを胸に刻んで、私はそっと、絆創膏の張られた指を、抱きしめる。
 私の両目に写る世界は、いつもよりずっと、きらきらしていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 友情以上恋人未満なライバル関係、みたいな感じを目指して分からなくなりました。

 文はた、も少ない気がする現状。
 
 自給自足はとても得意です。
 
 
夏星
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
ぐにゅう
2.名前が無い程度の能力削除
あやはたぐにゅう
3.名前が無い程度の能力削除
これはいいぐにゅう。
絆創膏……噛まれたのか?
4.名前が無い程度の能力削除
これは甘い!
はいた。
5.名前が無い程度の能力削除
いいですね!
男らしい少女の友情といった所でしょうか(ぉ
6.名前が無い程度の能力削除
恋人以上夫婦未満な二人はいいですね。
7.名前が無い程度の能力削除
ぐにゅう……これは流行る(*´ω`*)
8.名前が無い程度の能力削除
↑の顔文字は流行らないがぐにゅうは流行る
9.名前が無い程度の能力削除
>自給自足はとても得意です
そんな氏が大好きですw
10.名前が無い程度の能力削除
ぐにゅう……そういうのもあるのか
11.名前が無い程度の能力削除
ぐにゅう・・・
甘くて最高だww
12.奇声を発する程度の能力削除
ぐにゅう…良い!
13.名前が無い程度の能力削除
あやはたいいよねあやはた
14.名前が無い程度の能力削除
ぐにゅう、ぐにゅう。
15.MR削除
ぐにゅう、ぐにゅう、ぐにゅう。
16.名前が無い程度の能力削除
ぐにゅうぐにゅうぐにゅうぐにゅう!!
ぱりん
ぐにゅう
17.名前が無い程度の能力削除
あやはた流行れ!
18.名前が無い程度の能力削除
ぐにゅう
19.名前が無い程度の能力削除
ああもうぐにゅうってする。
20.名前が無い程度の能力削除
友情より夫婦な感じがするww
21.名前が無い程度の能力削除
ぐにゅうぅぅーーー!!
22.名前が無い程度の能力削除
文はた、いいですね。
ぐにゅう
23.紳士的ロリコン削除
はたてちゃんSS増えろ
24.名前が無い程度の能力削除
半端じゃないぐにゅう。やめて!想像してた通りのリアル描写やめて!
25.名前が無い程度の能力削除
ぐにゅう
26.名前が無い程度の能力削除
なんという夫婦。ぐにゅう
27.名前が無い程度の能力削除
うにゅー!
28.卯月由羽削除
何この夫婦可愛い
ぐにゅう、などの擬音的な表現も素敵でした。
29.愚迂多良童子削除
こんなはたてを嫁にほしい。ガチで。
30.名前が無い程度の能力削除
なんだか夫婦みたいだ。いいですね
31.うnうn はたn削除
iine