Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

人形蓬莱の幸福

2010/04/28 00:11:03
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みなさんこんにちわ。蓬莱です。
なぜか上海のほうが人気高くて日の目を見ない蓬莱です。
そうオルレアンに愚痴ったらなぜか泣かれました、蓬莱です。




今ご主人は外出中です。上海もアリスに付いていきました。
何のことはありません、私は留守番です。欝だ吊ろう。

冗談もほどほどにいたしまして、私は留守番の真っ最中です。
今日の留守番係は私と、倫敦と、大江戸が当番です。当番制のはずなのに、不思議と私は毎回起動されている気がします。はっきりと覚えてはいないのですが。
この「よく覚えていない」現象は蓬莱七不思議のひとつです。なお、残りの七不思議の一つは毎回留守番で起動されること、一つは首吊り用の紐の出所。あとの4つは募集中ですので皆さんのお便りをお待ちしております。
話を戻します。
留守番というものは指定された地点、つまりこの家に近づく不審物及び不審者の侵入を許さず一撃を加え滅殺する防衛任務であります。つい先ほどもマスターのご友人たるハクレイレイムとキリサメマリサが、ランチバスケット片手に不用意に接近してきたので先手を打って撃退した次第。ご主人、私はやりましたよ。
しかしこの度の戦で大江戸という尊い犠牲を払ってしまいました。彼女は現在大破炎上し再起不能、留守番とは過酷な任務なのです。
さて今日の留守番。担当は私と、先に話した2名ですが他のみんなは眠ってます。
なぜかと申しますとご主人様は一度にたくさんの私達を操りますが、動かすにも魔力というものが必要なのであります。マスターから遠く離れて動くときは特に一杯必要です。つまり魔力が足りていません。へなちょこ。


さてこのように過酷な留守番ですが、同時に暇でもあります。
なぜかと申しますと、敵がやってこない限り仕事がないというのが留守番なのです。他にいくつか仕事を言いつけられますが、それも終えてしまうと暇です。
話相手もいません。隣にいる倫敦も、ご主人の作った人形の中でも屈指の優秀さですが言葉巧みとは言いがたいですし、大江戸やゴリアテといった作られてまだ若い人形はなおさらです。私の次くらいに話せる上海はいつもご主人のお供で行ってしまうので。
暇なので首を吊って遊んでいます。楽しいよとみんなに薦めるのですが、賛同してくれると思いきや「バカジャネーノ」と口を揃えてくるのです。みんな、人生の1割は損してます。
なお蓬莱ライフの8割はアリスことご主人、後の1割はそのほか大勢の皆さんの提供でお送りしております。誤差の範囲です。ご主人がいてくれるならば十分であります。
でも今はご主人がいません。


留守番は楽しいです。寂しいです。
楽しい?寂しい?‥・・・・どちらなのでしょう、難しいことは私にはわかりません。
とにもかくにも「自由時間」が増えることは確定事項であり、主より仰せつかった仕事を終わらせるとみんな暇を持て余し、遊び始めます。
と、言いましたがそうなったのはここ最近だと思います。以前はこんなことはなかったような。おぼろげな記録しか残っていないので断言はできませんが、それは言葉を話せる仲間ほど活発です。
遊びについてこれといった派閥はできていませんが、やはり相性というものがあるのか京と大江戸、それに文楽はよく一緒にいます。西蔵と上海も割と仲が良いです。ゴリアテやレミングスたちはおっとりしていて、やはり仲良しです。
仏蘭西とオルレアンも仲がよいのですが、どっこい和蘭、露西亜、倫敦あたりが絡んでくるとごくたまに喧嘩しています。
数ある理由のうち最多のものは「誰がご主人のお部屋の掃除をするか」。欧州情勢はまこと複雑怪奇です。みんなでやればいいのに、独り占めしたいのでしょう。
喧嘩するほど仲が良いと、アリスと行ったぱちゅりぃ・のぉれっじのお宅にある本に書いてありました。詳しい意味はわかりませんが落胆することではないのでしょうね。


それにしても、ご主人は帰ってきません。大江戸も早く修理していただかないといけないのですが。
予定していた時間を過ぎているので倫敦が困惑していますが、そこは私がなだめます。私たちがすることは、主が帰ってくるまで立派に留守番を遂行することです。
もう一度主からの指令を確認します。他にやることがないくらい暇なのです。といいますか、首吊りもボディを痛めるのでほどほどにしておかないといけません。留守番に支障が出てしまいますから。

留守番‥‥‥実行中。
洗濯‥‥‥終了。
台所片付け‥‥‥終了。
部屋掃除‥‥‥未確認。

おや、何か残っています。私が担当した場所は終わらせたはずなのですが。
そうでした、掃除の途中で敵の襲撃を受けたのでした。大江戸に確認してみたところ、やはり彼女が担当していた部屋の掃除が終わっていないとのこと。爆砕してしまったので掃除ができなかったのですね。倫敦が申し出てきたので掃除は彼女に任せることにします。
名前を呼ぶときいつも不便です。
大体の人形が国名や地名です。仏蘭西も、仏蘭西人形をモチーフにしたから仏蘭西であるというだけです。名前ではありません。
こと私に至っては永遠亭の蓬莱人さんやスペルカードの蓬莱人形など、かぶってしまうこともしばしばなので紛らわしいことこの上ないです。
紛らわしいのですが、主は私達に固有の名前を与えません。
主曰く「それが一線だから」らしいです。よくわかりませんがネーミングセンスに自信がないのでしょうか?不夜城レッドとかライスシャワーとかでなければ何でも構わないのですが。
そういうわけで私は蓬莱ですが、蓬莱ではありません。でも蓬莱です。言葉の意味などわかりませんが、私はこの響きが好きです。いつか名前を頂ける日が来た時も「蓬莱」にしてもらおうと思っています。


倫敦が掃除から戻ってきました。が、どうにも動きがぎこちないです。そろそろ限界が近いようです。
限界とは電池の残量のことです。朝早く出立されたご主人は昼には帰ってくる予定でしたが、現在時刻は15時を過ぎています。元々半日分の駆動量しか供給されなかったところさらに戦闘で消費したので、おおよそ30分と持たずに魔力が尽きるでしょう。
私が倒れても第二第三の西蔵と仏蘭西が、という展開はないので、留守番役ガいなくなってしまいます。任務遂行でキマせん、困りまシた。
さきほどから言葉も途切れはじ、めていますがお構いなく。余分に消費しないよう搭載された省エネもぉどです。搭載されていない倫敦を見たら、魔力を使いきって早々と、ログアウトしていました。私を置いて寝ヤがってます。
一人になりました。欝ダ吊ロウ。

――動作制限。指令の遂行を優先。

省エネもぉどの欠点です。以前雨の日に窓際で吊りをやったら、てるてる坊主状態で電池の切れた、私を見て、ご主人が大変驚かれたそうで。以来実装されたこれが、私の思考に直接割り込んで、きます。前みたいにギリギリのスリルを味ワエマセン。断固取リ外シヲ要求する所存です。
思考そのものも、スムーズにいかなくなって参りました。ううむ。
そんなことより留守番です。遊ぶ余剰エネルギーなんてありません。また首吊りしたい欲が湧きますがぐっとがまんします。
ご主人アリスがかえってくるまで、この家を護ります。何人もちかづけない。

探査開始。
不審物体なし。
居てもらっては困ります。残量はレーザー1発分程度で――

エネルギー残量低下、思考制限。

指令を優先。
探査開始。
不審物体なし。指示変更なし、任務継続。
探査開始。
不審物体なし。指示変更なし、任務継続。
探査開始。
接近中の物体を捕捉、マーキング。測距、ターゲット照合開始‥‥‥
エネルギー残量、規定値以下。
優先指令が変更されました。
休止モード作動、緊急停止。
これまでの全記録を保存――














――供給が開始されました。
優先指令が変更されました。休止モード解除。
起動信号を受信。
実行中の指令あり。確認。
記録開始。



「人形くらいちゃんとしつけておきなさい」

「ちゃんとしてるわ。大方あなた達が不審な行動でもしてたんじゃないの?」

「正面玄関からランチバスケット引っさげてきた姿が泥棒か空き巣に見えたんなら、今度から人形にメガネ着用を推奨するぜ」

「まったく。呼びに行ったのにとんだ回り道ね」

「いいんじゃない?おかげで茶菓子も調達できたわけだし」

声が聞こえます。
目を開けて容姿と音声から照合‥‥‥ご主人とレイムと、マリサですね。あれ、ご主人?
いつの間に帰宅されたのでしょうか、記録を漁りましたが途中から電池が切れていたようで判然としません。
わからなかったので起きて隣にいる倫敦に尋ねます、が、記憶保存がされていないようで彼女は留守番中の出来事を覚えていませんでした。というより、私より早く寝た彼女が知るはずもないですね。
いいえ、理由など要りません。ご主人がいらっしゃるのならなんら問題はありません。
さて、そうなると継続中の仕事に留守番任務がありますがご主人は帰宅されています、終了の指示がまだなのですがどうしたらいいのでしょう。
困っていると、私の様子にご主人が気づいてくれました。

「お仕事は終わりよ蓬莱。留守番お疲れ様、がんばったわね」

労われました。誉められるとうれしいです。本日のお仕事は解除されましたが、次の留守番の時も是非私を使ってほしいです。もちろん、ご主人のお供ができればそちらがよいです。
続けてご主人は言います。

「ごめんなさい、いろいろあって遅くなったわ」

私の頭を撫でながら謝ります。
ご主人はいつも謝ります。何ででしょう、ご主人は何も悪いことをしていませんのに。シモベに許しを請うというのは変なことです。
しかしながら謝られているので頷きを返しておきます。こうするとご主人は笑顔になってくれます。今日も笑ってくれました。
ご主人の手元を見れば大江戸の修復に手をつけるところのようです。大江戸はうれしそうです、よかったよかった。

「『留守番を解除』とか『ゴミ捨て開始』とか、少し前まで指示も堅苦しかったのにな。立派になったもんだ」

「まったく。決めたらどうなのよ?」

「何の話よ」

「まだ言うか」

「‥‥‥もう少し考えるわ」

呟いたご主人は俯いてテーブルを見つめます。いかなレイムとマリサでも、私達のご主人を泣かせたら許す気はありません。指示があったらいつでも撃てるように用意しておきましょう。今魔力の供給はばっちりですのでレーザー出力3割増しで。

「いい加減耳たこなんだけど、そのセリフ」

「何で悩んでるのかわからないくせに。私の問題よこれは」

「わからないな。悩む段階はとっくに終わってるだろ」

そうご主人と話していたマリサがこちらを見ると、「ティーセット、場所はわかるよな?」と聞いてきました。もちろんこの蓬莱、それくらいはわかります。
そうでした。何をボーッとしていたのでしょう、来客にお茶をお出ししなくては。

「上海、蓬莱。紅茶を人数分お願いね」

ご主人から指示を頂きました。人数分。つまりえっと、3つですね。お任せください。
私と上海がキッチンへ向かった後も、ご主人はレイムたちと何やら話しています。音声を拾うことはできなかったので何の話かはわかりませんでしたが、私達に関係のある話でしたらご主人が後で教えてくれるでしょう。
それよりも、私達には仕事があるのです。がんばりますよ。
紅茶を入れましょう。お湯を沸かして、いつもの紅茶葉はこちらにおいてあります。次にすることは‥‥‥‥‥




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こんにちは、私は蓬莱です。
昨日、ご主人から名前を頂きました。蓬莱といいます。
私以外のみんなももらいました。倫敦は倫敦で、オルレアンはオルレアンです。


昨日のことを、一月前のことを、最近は半年前のことまで覚えていられるようになりました。とても楽しいです。
名前を頂いた時のあの不思議な感覚はいつまでも忘れません。
ご主人は以前に増して笑顔が増えました。きっと良いことがあったのでしょう。アリスが幸せだと私達も幸せです。


今日は留守番を任されました。
ご主人と私達の家を、しっかり護りたいと思います。




 
ホラーイ


いつの間にかプチからジェネリックに変わってて驚きました、水崎でした。
水崎
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
ホラーイ可愛いよ!
2.名前が無い程度の能力削除
やばい萌える
3.名前が無い程度の能力削除
一瞬、バイド化したのかと
しかし、萌えゆる
4.rapisu削除
これはなかなか微笑ましい蓬莱w
5.名前が無い程度の能力削除
蓬莱いいなぁ。実に楽しそうです。