私の親友、紹介します。パチュリー・ノーレッジっていう七個の属性を操る魔法使いです。
紅魔館の図書館に住み着いていて滅多にそこから出ない本の虫。
本人曰く「百年ぐらい興味が本に集中しているだけで、他のことだってやっている」だそう。
ちなみに彼女は今年で大体百歳。
おい、引きこもり、外に出ろ。
「うるさいわねレふぃ……。レミィ」
「噛んだろ」
「噛んでないわよ?」
「噛んだ。絶対噛んだ」
「歯を立てたら殺すわよ」
「ちげーよそっちじゃねーよ! 何さりげなくアク禁レベルの発言してんだよ!」
「……」
「なんで服着込むの?! 抗議のつもりなの?! ねぇ!」
「平和的解決よね」
こいつと親友やっている理由が公式設定以上のところで見出せないから困る。
怒ると着込むし、親友の名前を毎回噛むし、風呂嫌い。
帽子を取るとシャンプーハットしてる。ほら。
「むきゅんっ」
無表情で本をめくりながらだから何も可愛くない。全然可愛くない。
こっち見てどや顔してるけど腹立つだけだし。
あ、立った。何するんだろ。
「レヴィ」
「レミィよ」
「貴方に隠してたことがあるの。実は私カツラなのよ」
「マジで!?」
こくりと頷いたパチェは、メロンパンを外してふかふかの髪の毛も、外した。
え、ショートヘアなんだ。しかも髪の毛青いし。
百年近く付き合って初めて知った。
「で、なんでカツラなの?」
「正装の一種よ」
「そ、そうなんだ……?」
「音楽室の教室で昇天ペガサスMIX盛りな音楽家が多いのは、宮廷に出入りしていたからなのよ。勉強になったわね」
「そ、そうなんだ……でもカツラ被る必要ないわよね? まったくないわよね? というか何の脈絡もなくカミングアウトされても困るわよ。何か深い意図でも?」
「ないわね」
「被らなくていいじゃん!」
「パチュリーさま。紅茶です」
「カツラにはね、小麦粉かけるのよ」
「砂糖入れときますね」
「白い髪の理由はそれなのよ」
「失礼しました」
「反応してあげなよ小悪魔可哀想だよ!?」
「小さくて目に入らないのよ」
「存在感が!?」
「設定が」
「存在しないし!」
やたらメタネタが好きなのは本を読むからだとか。ちなみに彼女はシモ・ヘイヘが大好きで、本を読んでいないときはサブマシンガンとライフルの手入れを欠かさない。それらを触媒にして地底に殴りこんだときは各方面から苦情がきた。最終的に謝るのは私なのだから勘弁してもらいたい。
「だからって着込むなよ!」
「抗議よ」
「私が機嫌悪いからか!? そうなのか!?」
「ここは図書館よ、静かにしてもらいたいものだけど」
「ああもうこいつめんどくさいなぁ!? 図書館も紅魔館の一部だよ!? 追い出すよ!?」
「貴族の館には図書館の一つもないと示しがつかないからって私を招き入れたのはどこの誰だったかしら。家庭教師役が欲しいんですっけ? うん? うん? どうしたの? 涙が出そうになってるわよ? 泣くぞ泣くぞほーら泣くぞすぐ泣くぞ絶対泣くぞ」
「な、泣かないもんっ! パチェの意地悪! しゅくやぁー! ぱちぇがぁ!」
あいつはさいあくのやつだ。
「ヘイ美鈴! 頭から飲むビールは美味いかい!」
紅美鈴です。紅魔館で門番をやっています。
そして私に良い笑顔でビールをかけてらっしゃるのが、ご主人様であるレミリアお嬢様の大親友らしい、パチュリー様です。うちの館でビールを飲むのは私とパチュリー様なんですが、こう、飲むよりも朝のビールかけで消費されるほうが多いです。
「ねぇパチュリーさま」
「何かしら?」
小麦色の噴水が朝の紅魔館の門前を濡らします。この光景を豆腐屋さんに見られたら嫌ですが、今日まで見られたことはないんです。良かった。
紅魔館の品性が疑われてしまう。
「優勝だー!」
「何がですか」
紅魔館変人コンテストとか開いたら間違いなくパチュリー様が優勝します。
なんせガールズトークをしているときに将来の夢に話が及ぶと、咲夜さんはお嫁さんなんていう可愛らしい夢を語っているのにパチュリー様は掃除機に吸われることです。何が嬉しくてそんな夢を抱かなくてはいけないのかと、歩んできた人生が酷かったのかと心配になりました。ちなみに私の夢はこのままみんなでおばあちゃんになることです。
「乾杯しよう! 乾杯!」
「私仕事中っていうか今日仕事始まったばっかりなんですけど。なんでいきなり飲まないといけないんですか」
「堅苦しいことはいいじゃないの」
「服着込まないでください」
「脱がしていいのよ……」
「ああこの人、超がつくぐらいめんどくさいんだけど」
そんなパチュリー様ですが、生まれたときから喘息だったわけじゃなくて、その昔はトライアスロンの選手だったとか。マラソンして自転車漕いで水泳するあれですね。走ってるフリして浮遊して、自転車漕いでるフリして精霊に回させて、泳ぐフリして自分の回りに空気の層を作ってって全然やってねぇ!
「そういえば美鈴」
「はい」
「私拳法使えるのよ。狼牙風風拳」
「何ですかその、足元がお留守な拳法は」
「ちょっと組み手してみない?」
「喘息大丈夫なんですか? 私はいいですけどね」
「いくわよ」
ちょ、ま、はやっ。
パチュリー様には困ったものです。炊き込みご飯を作っていたら具に混ざっていました。
何しているのですかと聞くと、道を間違えたそうなんですが、何を間違えたら釜に入ってしまうのかわからないです。咲夜は悲しいです。
「しかし大きい釜よね」
「育ち盛りがたくさんいますから」
「育ち盛り? 胸が?」
「そっちは残念ながら……」
「私はお腹のお肉が成長してるわよ。ハッハッハ」
何ここ、笑うところなのかがわからない。
「まぁ私は図書館に帰るから、ちゃんとしておくのよ」
そう言ってパチュリー様がガスタービン音を立てながら帰っていった。
……メカ?
考えていても仕方ないだろうし、調理に戻らないといけない。紅魔館の人々は主を除いてなら良く食べる人たちばかりだから。
パチュリー様は運動もしていないし食も細そうに見えるけれども、なんと紅魔館では一番食べる。なんでも、精霊に精力を分け与えて使役するからその分カロリーを補給しないと体が持たないんだとかなんとか。妖精メイドたちもご飯を目当てに紅魔館で働いているようなものだから、手抜きするわけにはいかなくて。
妖精たちは食べなくても平気なんだけど、味覚はあるから総じてグルメだったりする。 彼女らに料理を作らせてもいいけれど、お嬢様方に出す食事を手抜きするわけにはいかない。
「ねぇ咲夜」
「あら、パチュリー様。どうかなさいました?」
「私見なかった?」
「どういうことですか?」
「メカパチュリーを実験していたのだけど、見つからなくて。炊き込みご飯に混ざるように指示を与えていたから厨房に居ると思ったのだけど」
「……えーと、さっき見かけたかもしれません。あとどうして炊き込みご飯に混ざるように指示したんですか」
「熱で壊れて止まるかなって思って」
「ロクな実験じゃないじゃないですか。変なことばっかりして……」
「まぁまぁ咲夜。一見無駄に見えることでもそこから意外な何かが生まれることだってあるのよ。そこを否定してしまったら何も生まれないわ。だからこのコロッケは貰っていくわね」
「あっ! つまみ食いはやめてください!」
こういうときの逃げ足は異常に早かったりと、パチュリー様は謎の人物です。
何を考えているんでしょうか。賢者の考えは凡人には及びのつかないものなのでしょうか。
地下室は退屈じゃない? って良く言われる。けど外に出たいという欲求はほとんどないし、だったら地下室に居ることに忌避なんて湧かない。当然でしょう? 抑圧はあくまで、自分の思い通りにいかない不満だから。私は地下室の一室に居るのが好きなの。外に出たいんでしょう? 可哀想だなんていうのは勝手な妄想よ。私が出たいって言ったのならここが嫌だってことも認めるけれど、私がいつ、それを言ったの? ねぇ、ねぇ?
「今日は天体観測よ」
五月蝿いのがまた来た。お姉さまも咲夜も寄り付かない部屋に。もちろん私も積極的に会いたいなんて思ってないからいいんだけどね。そういう場所に、この魔法使いは勝手に乗り込んでくる。そして私の手を引く。
「いいかしら。知識というのはあなたの生活に潤いを与えるものなのよ。ええあなたは確かに地下室が気に入ってるのかもしれない。外に無理に出なくても良いと考えているのかもしれない。けれどもそれは思い込みも甚だしい。この495年間ほど生きてきて、じゃあ貴方はこの世界の事象全てをその目で見たかしら? 聞いたかしら? 知っているのかしら? その上で地下室で一人引きこもっているのなら私は何も言わない。しかし私は一人で天体観測に行って、あれあいつ友達いないの? って噂されるのが嫌な壊れやすいハートの乙女だから妹様の手を引っ張っていくのはもう確定したことなのOKハイわかりましたー。行きましょう」
魔法使いは早口で小声だから何を言ってるかを全部聞き取るのは困難。私の手を引っ張ってお姉さまの静止も振り切って窓を蹴破って。
「ごらんなさい! この空を見ればいかにいままでの自分が頭でっかちで腐っていて影の当たらないモヤシのような発想をしていたかがわかるはず。それがわからないほどに頭が悪いのならばそれは救いようが無いけれど! しかしそれでもこの星の光に月の明かりは全ての闇の眷属に平等。太陽の光が人の子に恵みを与えているように、我々魔法使いに吸血鬼は夜闇を我が物顔で闊歩していなければならない。そして我々は等しく学ばなければならないのです。それはまだ読んだことのない本の一ページで、行ったことのない場所であり、話したことのない相手であり、その全てを知るまで世の中に退屈など存在しないのですよ。さあそれがわかったらむくれてないで口に棒キャンディでも突っ込んで友達の一人でも作ってきたらどうですかどっせーい!」
急に空中でぶん投げられて、そのまま慣性に任せて空を眺めていた。灰色の天井ではなくて、色鮮やかなそれらが私を見ていた。きらきら。
「いいですか! あなたはまだこの空を表現する言葉をキラキラ、程度しか知らないんです! ええこの星空は十人いたらそれぞれ別の表現をするために頭を使うんでしょう! こんぺいとうが降り注いでいるだとか、全能神が涙を零したとかサソリの心臓が燃えさかるだとか。そういうことが全部わかってから退屈がったらどうですかごふぁぁ」
パチュリーが血を吐いた。落下していった。
ああ、でもその通りかもしれない。
でももう少しばかり、地下室で考える時間が欲しい。
そう、考える時間がもう少しばかり、必要なのだ。
例えば、誰を師にすればいいだとか、そういうことを。
咲夜さん可愛いのう
設定考えた人達凄すぎるwwwww
なんだこれ、なんだこれw
いいw
パパパパパーン
☆))Д´) >>電気羊氏
_, ,_ ∩☆))Д´) >>USSKP氏
( ‘д‘)彡☆))Д´) >>八重結界氏
⊂彡☆))Д´) >>ねじ巻き式ウーパールーパー氏
☆))Д´) >>etc
他のもカオスすぎるwww
だがメンバー見て仕方ないと思ったw
有り難う御座います。
ところどころにイイハナシがあるから困る
このパチェさんはカッコいい、ズルい