Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

森近客人帳st2

2010/04/20 23:46:02
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この物語はミニ作品集61にある森近客人帳の続編にあたります。
読まなくても大筋は理解できると思いますが読んでくれると
補足知識になるだけでなく作者が非常に喜びます。

以下本編。

stは時に物語(story)と呼ばれ時に過程(stage)とも呼ばれる
ただそれらは決して一直線(straight)ではない・・・

と、意味深なことを言いたかっただけの
一言で言うなら暇人
二言で言うなら香霖堂 店主 
三言で言うなら奇人、変人、凡人の森近です。

この前は珍しく客が来たので少しうれしい気分
もっとも採算的に言うと大赤字もいいところなのが悲しい
そんなこともつかの間で、いつも通り客の来る気配もない日常
今日も森のキノコを食す退屈な一日になりそうだったが・・・

「ん? これは・・・」

今日の朝、森の中で液体窒素というものが入った壺らしきものを
見つけたので早速色々といじってみたのだが、
これがなかなか面白く栓を開けて中の液体を
手頃な物にあてるとあっという間に凍らせるのだ。
大根でくぎは打てるし、バラはバラバラに粉砕できるし(シャレではない)
料理に使えば冷凍保存だってできる!
というわけで非売品も検討しながら手頃な実験台を探していた。

「次は何を凍らせようかな・・・!?」

そう思っていた中、店内が急激に寒くなっていくのを感じた
・・・寒い、確かにこの液体窒素は相当な冷気を放つものではあるし
ついこの前までは春なのに悪天候が続いて寒かったが
それを差し引いても寒い、寒すぎる。

「雪でも降っているのかな?」
そう思って僕はドアに手をかけ開けようとしたが
ガチャ、ガチャ、ガチャ・・・開かない!
「しょうがない、突き破ろう」
僕は渾身の力(凡人並)を込めて扉にタックルした・・が

ガスッ!!

鈍い音をたてて肩に重い衝撃が走る
「うっ、肩が折れそうだ・・・」
一向に扉が開く気配はない、むしろ僕が先に死にそうだ。
その間にも店内の冷気はどんどん激しさを増していく・・

「誰なんだ、店を氷河期に戻そうとするやつは・・」
そうして開かないドアの前で屈服した僕に外から
イタズラ小僧のごとく高笑いが響いてきた。

「やっぱり、あたいってサイキョーね!!」
「駄目だよチルノちゃん、他人の居場所を凍らせちゃ」

「なるほど、凍らせられていたのか」
そうとわかったら話は早い、融かせばいいのだ。
(いや、僕はてっきり結界でも張られたのかと思ったから気づかなかったんだ)
「たしか、アレなら・・」
僕は店の奥へとあるものを取りに行った。

「あった、これだ」
物置の中からミニ八卦炉を取り出した。

一応補足しておくがこれは魔理沙の物ではない
店に残しておいたスペアの方である。
僕が作った特製マジックアイテムで
調理から火山作成までなんでもお手の物の万能炉。
(はたして、魔理沙は少しは感謝しているのであろうか・・)
あ、ちなみに僕はマスタースパークは使えないのであしからず

早速扉の前に戻ってきた僕は八卦炉を前に向けて心の中で
 僕のこの手が真っ赤に燃える、客を増やせと轟き叫ぶぅ!!
「ばぁぁくねつ、森近、フィンガァァァァァ!!」
思わずセリフを言ってしまった・・外に聞かれただろうか。
その瞬間炉の中心から激しい炎が飛び出て
扉を瞬時に解凍しそのまま昇天させた(まさにヒートエンド)

「だれだ?店にこんなことをしたのは」
そう言いつつ店の外に出たらそこには

「出たな、怪獣!」
青い服に氷の羽を付けた妖精と、
「迷惑掛けてすみません」
緑服の背の高い妖精がいた。

「まったく、君たちは何の用だい? 後僕は怪獣じゃない」
呆れつつも僕はそう言った。
「ここにはすごいやつがいるって聞いたから倒しに来た!」
チルノ・・と言っていた妖精はそう答えた。
僕は生身で巨大ロボットを倒すようなすごい人ではないんだが・・
「駄目だよチルノちゃん!」
そう言って緑服の妖精は必死に止めているもののまったく聞いてなさそうだ

・・・これは少し痛い目を見せた方がいいだろう
そう思った僕は
「わかったわかった、まずはこっちにおいで」
そう言いつつ左足でさりげなく、手頃なデッキブラシを引き寄せた
「いい度胸ね!」
そう言って勇み足で店内に入ろうとしたが・・

ガンッ!!

僕が即興で仕掛けたデッキブラシの根元を踏んで
起き上った柄が思いっきりチルノの顔に直撃した
(名付けて、踏むとガンッ!!トラップ)

「な、最強のあたいがこんなところで・・」

バタッ!!

チルノは真後ろに倒れてそのまま気絶した。

「チルノちゃん!! 大丈夫?」
緑の妖精はあわててチルノのもとに駆け寄る。

少しやりすぎたか・・しようがない
「店に絆創膏があるから手当てするよ。」
「お願いします、友達なんです!」
半分泣きながら緑の妖精はそう言った。

なんだか非常に良心が痛む・・・やりすぎたな
そう思いつつ僕は2人の妖精を店へと招いた。




「せ、せっかく村まで歩いて行って仕入れた巨大絆創膏が・・」
今回のタンコブもルーミアの時と負けず劣らず大きかったので
巨大絆創膏をまたもや使うはめになってしまった。
物は使ってこそのもの、と言い聞かせたいが今回は自業自得なので
後悔の念が重くのしかかる、というより寒気がする。

「大丈夫でしょうか・・」
緑服の妖精は心配そうにそう聞いてきた。
「大丈夫だよ、今は気絶しているだけだから」

と、いうよりもタンコブはともかく気絶は想定範囲外だ
普通これをくらっても気絶はしない
よほど勇み足で歩いたのだろう

「ところで、君の名前は? 僕は森近、森近霖之助」
前回の教訓を得てしっかりと自分から名乗るようにした。
「えっと・・名前はないんですけれどもみんなからは大ちゃんと呼ばれています」
あ、今回は名無しだったか・・
「あーこの店のことは一体誰から聞いたんだい?」
だいたい見当はついてはいるが一応聞いてみた。
「知り合いのルーミアちゃんからここにはいろいろなものがあるよって聞きました」

やっぱりか、ただ、まさかあの子が新しい客を引き寄せてくれるとは
全然思ってもいなかった、しかも”まともな客”をだ。
(もっとも、もう一人の方は客としては期待しない方がよさそうだが)

「ところであれは何ですか?」
そう言って彼女は棚の上のボトルを指差した。
「ああ、それは化粧水、結構いいものだよ」
「?」
「それの中の液体を肌に薄く塗るだけで肌がきれいになるというものさ」
もっとも、僕には一生縁のない代物だ、売るにしたって
霊夢は買えない、魔理沙じゃ似合わない、昨日の子だって
使うにはまだ早すぎるだろう。
(紫あたりが欲しがりそうな一品だが彼女には絶対に売りたくない)

「そうなんですか・・」
彼女はそれをすごい興味深く観察している
「それが買いたいのかい?」
僕はそう聞いてみた、売るにはいいチャンスかもしれない
「え・・と、500円で足りますか?」
彼女は少し恥ずかしそうにしつつも財布の口に手をかけている、
女の子として興味がわいているのは無理もないか。
「いいよ、袋に入れるから少し待っててくれ」


僕は日ごろの良い?行いが実を結んだのだと喜びつつ
引き出しから紙袋を取り出そうとしたら
「ところでチルノちゃんはまだ気絶しているのですか?」
心配そうに尋ねてきたので僕は
「もう起きてもおかしくないはずなんだが・・」

そう思ってチルノの方を見たら
「う・・うーん」
少しうなだれつつも意識が戻ってきたようだ
「もう平気なの?」
「大丈夫かい?」
一応心配の意味を込めてそう言った
「あたいは最強のはずだったのに・・えぐっ」
よほど悔しかったのかチルノは泣きだした。
「いくら強くたって自滅しているようじゃまだまだだよ」
「ううっ・・」
正確には自滅ではないのだが黙っておこう、
あの時もし実際にスペルカード戦になっていたら
負けるのは目に見えている
あくまで自己防衛のためだと自分に言い聞かせた


しばらくして涙を拭き終えたチルノは
「ところであれは何?」
そう言って壺のようなものを指差した

「ん、あれは液体窒素というものだよ」
「それってお菓子が入ってるの?」
「少なくても食べ物じゃないよ
 あれは、中に色々な物を凍らせるものがあるんだ
 たとえば・・・」
そう言いながら僕は店に飾ってある花に
液体窒素を流し込んだ、すると
あっという間にその花が氷漬けに変化した。
「どうだい?」

「す、すごい・・」
「花が一瞬で凍った・・」
2人ともとても興味深々に見ていたが
「あたいあれが欲しい・・・」
チルノが目を輝かせながらそう言った

「600円でどうだい?」
我ながら破格の安さだと思う価格で提示したが・・
「うっ・・100円しかない。」
そう言ってチルノは顔を濁らせた
僕は 代金をためてからまたおいで、と言おうとしたその時
「私が500円出します」
そう緑服の妖精は言ったので僕はつい
「でもそれは君が使うための・・・・」
と、言おうとしたが彼女は迷いもなく
「いいんです」
そう言い放った。

「それじゃ、毎度あり」
「わーい、これが手に入った暁には
 博麗の巫女なんてあっというまに叩いてみせるわ!」
チルノがそう言っている中、僕は緑服の妖精に
「ちょっと先に店の外に行ってくれるかい?」
そう言っていったん緑服の妖精を外へと出した後、僕は
「ええっとチルノだっけ?」
「何?」
「あの子がこれを忘れて行ったんだけど
 後で渡しておいてくれるかい?」
そう言って彼女にそっと化粧水を入れた袋を手渡した。
「いいよ、今日はありがとね!!」
チルノはうれしそうに袋と液体窒素の入ったものを担いだ

いい友達を持って幸せだな、君は・・
僕は心の中でそうつぶやいた

「何か言った?」
「いや、なんでもないよ、またおいで」
「そうだ、これあげるよ」
そう言って彼女は氷のつぶてをいくつか店の上へと投げつけた後


ドスン!!

この店保険に入ってないけど大丈夫であろうか・・
そう思いつつも僕は2人を見送った。



夜・・
今日はこの前の2倍もお客さんがやってきた(2人だけど)
思い返すと短い時間だったんだなとつくづく思う。

「そういえば、あの子は何を残して行ったんだろうか・・」
そう思って僕は店の外へと出たら屋根の上に
3つの雪だるまがそこにあった
「僕もあの子たちの友達に加わったのかな・・」


4月20日  曇り時々雪

客     緑服の妖精、チルノ

売り上げ品 化粧水、液体窒素入りの壺?、特大絆創膏

利益    600円、雪だるま3個
その後のスペルカード戦にて・・

「今日こそは決着を付けてやる!!」
チルノは意気揚々にそう言った。
「のぞむところだわ!」
霊夢も強気でそう言い返す
「ふふふ・・・今日のあたいは一味違うのだよ!」
「何!?」
「なぜなら・・って、あれ?」
どうやらすっかり持っていくのを忘れていたようだ。
「よくも脅かしたわね、封魔針!!」
「うわぁ~~あの壺を大ちゃんのもとに、あ、あれはいいものだ~~」
ピチューーン!

結局今回もチルノは霊夢には勝てなかった。

作品中に出てきた踏むとガンッ!トラップてすが
実際にやるときには友情のひび割れに気を付けて
ほどほどにしておきましょう。
rapisu
[email protected]
コメント



1.K-999削除
大ちゃん可愛いっすね。コレに尽きる。
ところで幻想郷の通貨は一体どうなってるんでしょうか。
ちょっと違和感アリですね。
2.奇声を発する程度の能力削除
相変わらずとっても良かったです!

踏むとガンッ!トラップ……いや、別にやろうとか思ってイマセンヨ?
3.rapisu削除
K-999さん 奇声を発する程度の能力さん
コメントありがとうございます。

通貨ですか・・一応神社に賽銭箱があるからという安直な理由で
日本円にしていますが、実際どんな通貨が使われているのか。
もしや1幻?なんだか偽物みたいな感じがしてきますね(汗