「くぅ~。早苗のバカバカバカ! こんどこそ絶対ギャフンと言わせるんだから~」
今日も小傘は失敗ばかり。
いつものように早苗を驚かせようとして、いつものように返り討ちにあったのでした。
「う~。いつもと同じように驚かせててもダメなのかも」
鈍い小傘も、ようやく気づいたようです。
考えます。考えます。考えます……。
「……くー。すぴー……」
あっさりと陥落しました。
「はっ!寝てる場合じゃない!」
頭を使うのが苦手な小傘なのでした。
「そういえば、ナズーリンがこないだ言ってたなぁ」
”情報を制する者が、戦争を制するんだよ”
「よし、今度は早苗の情報を仕入れてから驚かせよう! 守矢神社で張り込みだー!」
思い立ったが吉日、早速小傘は守矢神社へ向かうのでした。
「朝から掃除して、お勤めして……」
守矢神社の裏手にある林に隠れて、小傘は一心不乱に早苗の行動をチェックするのでした。
「う~ん。別に張り込んでても早苗の弱点なんて見つからない気がしてきたよ。」
これといった情報は掴めず、早くも挫折気味のようです。
「例えば、蛙や蛇みたいなのに弱い!とか、弱点でも分かれば最高だったのに」
「「ほう、蛙と蛇がどうしたって?」」
「ひゅいっ!?」
恐る恐る振り返ると、そこには守矢神社の二柱がそびえ立っていたのでした。
「一日中こそこそされちゃ、目障りなんだがねぇ?」
神奈子が凄みます。ガチで恐怖の一瞬です。
「早苗のことを調べてどうしようってつもりなんだい? 答えようによっては……」
ポキポキと指を鳴らしながら、小傘に近づきます。
神である神奈子の迫力に、一介のからかさお化けでしかない小傘はすっかり怯えてしまいました。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 何もするつもりはないんです! 命だけはお助けを~~!」
額を地面にこすりつけんばかりの勢いで、小傘は土下座するのでした。
「神奈子! あんまりいじめちゃ可哀想じゃない。それくらいでやめてあげなよ」
「はっはっは。まぁこれくらいならいいじゃないか」
今まで般若の形相で問い詰めていた神奈子が急に朗らかに笑い出したので、小傘はびっくりしてしまいました。
「あの~……」
「分かってるって。あんた、早苗の友達のからかさお化けだろ?
からかいがいがありそうだったから、ついついいじめてしまったよ。許してくれ」
どうやら、神奈子と諏訪子の間では「小傘は早苗の友達」ということになっているようです。
「そうだ! 神奈子が変なことやりだしたお詫びっていうのもなんだけど、ごはんくらい食べていきなよー」
どうやら親切心で諏訪子は言ってくれたようでしたが、小傘にとっては大ピンチでした。
なんといっても、実は早苗は小傘の宿敵なのです!
本当のことがバレたら、神社から追い出されるくらいで済むとはとても思えません。
「あの、お気持ちだけでじゅうぶ……」
「そりゃいい! せっかくだ、私の手料理でも振る舞ってあげるとしよう」
神奈子もノリノリのようです。とても逃げ出せるような状態ではなくなってしまいました。
「あら、小傘さん。いらっしゃい。せっかくですからゆっくりしていって下さい」
にっこりと微笑んで、早苗は言いました。
小傘にはさでずむな笑顔にしか見えません。本来の意味で。
「立ち話もなんですから、まずは私の部屋にでもどうぞ」
家の奥の方へ案内されて、逃げるに逃げられなくなる小傘です。
「あのー、あまりお邪魔するのも悪いのでもう帰ろうかと……」
「せっかくの神奈子様のもてなしを断ると!?」
真面目な顔で問い直されて、どんどん追い詰められていく小傘です。
「あー……、そのぉ……」
「来ていただければ、私をストーキングしてたのは、特別に許してさしあげますよ」
「気づかれてた~!??」
「あれだけバレバレな張り込み、気づかない方がおかしいです」
がーん、とショックを受ける小傘でした。
「隠れることには自信があったのに……」
「もう人を驚かせるの、廃業した方がいいんじゃない? 向いてないよ」
きっぱりと断言されて、床に埋まりかねない勢いで凹む小傘でした。
「それに心配しなくても、神奈子様と諏訪子様はあなたを歓迎してくれますよ。さ、落ち込んでないで行くよー」
そしてそのままズルズルと早苗の部屋まで引きずられていくのでした。
「おおー。きれいな部屋!」
「ちゃんと欠かさずにお掃除してますから」
借りてきた傘のように大人しく正座して、小傘は部屋を眺めます。
「でもあんまり色気の無い部屋だよね」
「……何か言いましたか?」
相変わらず失言の多い小傘なのでした。
「お、ここにいたのか。仲良くやっているようで結構結構」
「神奈子の料理ができたよ~♪」
しばらくして。
諏訪子と神奈子が、早苗の部屋まで2人を迎えにきました。
「ありがとうございます。それでは、居間に行きましょうか」
「うう……緊張するけど、ご飯は楽しみ……」
複雑な心境の小傘なのでした。
「わ、美味しそう! すごい~」
そこに並んでいるのは、小傘の想像以上に豪勢な料理でした。
更に、諏訪子が台所と往復する度に皿が増え。
何皿も何皿もテーブルに乗っていきます。
「久しぶりに腕を振るったからね。ついつい作り過ぎてしまったよ」
「私がいっぱい食べるから大丈夫~♪」
「……諏訪子様は落ち着いて食べてくださいね」
どの料理もホカホカに湯気が上がっていて、本当に美味しそうです。
「そ、それじゃあ、いただきま~す」
「「「いただきます!」」」
パクッと一口、食べてみました。
「……おいしい~!? 神様すごい! おいしい~!」
想像以上の美味さに驚きの小傘でした。
「おお、なかなかの食べっぷりじゃないか」
普段はロクな食事もしていない小傘です。
パクパクと旺盛な食欲を見せ、食べまくります。
「だって美味しいんだもん~。幸せ~♪」
「そうかそうか、それじゃどんどん持ってくるかな。あれとこれも追加しようかね」
神奈子様は上機嫌で、更に次の料理を作りに向かいました。しかし……。
「……か、辛い~。後から来るね。これ……」
少し経つと、美味しいだけではなくなってきたようです。
「今あなたが食べている料理は、神奈子様が作る中では甘口の方ですよ」
「わっ、どんどん辛くなってきた! 口の中が痛いよ~」
泣き声の小傘です。おいしいけど辛いのです。痛いのです。
早苗はボソッと言いました。
「まさか神奈子様の料理を残すなんて、言いませんよね?」
早苗からさでずむの雰囲気をビンビンに感じる小傘です。
でも、ここは小傘にとって敵地のど真ん中。逆らう事などできません。
「い、いやー。まさか……。それに痛いけど美味しいし……」
「そうですよね。私も大好きなんですー、神奈子様の手料理!」
「う~。でも痛い~。水、水をちょうだ……」
「はい、小傘ちゃん! 次持ってきたよ!
気分が乗ってきたから、今度のは辛さも増量でいってみたからね!」
ひぃ~!!!
神奈子が持ってきたトドメの料理に、小傘は声にならない悲鳴を上げるのでした。
「神奈子様も諏訪子様も、最近は辛いのが大好きでね」
早苗が遠い目をして言いました。
「美味しいのは間違いないから、そのうち慣れるよ。今日のは上級者向けだったけど」
「しくしく~。口の中が痛いのです」
よく見ると唇も腫れてしまっています。
「懲りずにまた来てくださいな。ちゃんと遊びに来れば歓迎してあげますから」
「本当は驚かせに来たはずなのになぁ」
「百年早いですね」
「きっぱり言われた!?」
「妖怪にとって百年なんてあっという間じゃないですか」
「むむ、それはそうだけどさ」
「あなたが遊びに来てくれるのは、私にとっても楽しいのですから。
百年欠かさず挑戦してくださいな」
「く~~!! バカにするな~! 百年と言わず、明日には驚かせてやるんだから!」
しおれていた小傘も、怒りのパワーで元気百倍です。
「覚えてろー! 絶対だからね、明日には驚かせてやるんだからね!」
「お待ちしてますよー」
いつものように捨て台詞を残して、小傘は去っていくのでした。
「あれ、あの子もう帰っちゃったんだ? ゆっくりしていけばよかったのにー」
ひょっこりと諏訪子が現れます。
「ええ、なんとかして私を驚かせたいみたいですよ」
「ふふっ、早苗もいい友達ができたみたいで良かったね」
「友達……、そうですね。さっきの告白は流されてしまいましたから」
「ふえ? 何の話?」
「いえ、なんでもありませんよ。洗い物、お手伝いします。台所に行きましょうか」
「らじゃー!」
走って家に戻る諏訪子の後ろを追いかけながら、早苗は振り向きました。
「……百年、よろしくお願いしますね!」
よし、そんな小傘ちゃんに早苗さんの弱点をこっそり教えてあげよう。
早苗さんの目の前でぱんつはかないでスカートを捲くると物凄く驚くんだよ!
ところで全然関係ないけど貴方の名前がだんだんナズーリンに読めてきた。
ナズー燐も楽しみにしてます!
突然抱きついてキスをしても驚くと思いますよ!
もっと広がれこがさなの輪!
そしてえっちなのはいけないと思いますw
名前はナズーリンからもじってますよー。なんとなく気に入ってますw
>奇声を発する程度の能力 さん
世界はさでずむとほのぼので出来てるんですw
ナズー燐もプロットはできてるので、早めに作れるように頑張ります~。