「また貴方ですか!?万年駄目記者!」
「上司に向かってその口の利き方は無いでしょう!?駄目犬!」
「上司と言われたいのなら!きちんとした立ち振る舞いを……」
妖怪の山の上空を愚痴りながら飛ぶ二人の姿を見て
他の天狗達が『またか』とため息をつきながら
何時もの事だと諦めて二人の周りから遠ざかる
『射命丸文と犬走椛は仲が悪い』
出会えばお互いに挑発するのは当然
時と場合によっては、周囲に有る程度の被害が出る事もある
無論、それだけならば大天狗が怒りに来るのだが
文は妖怪の山の外とのコミュニケーションを取る時に
そして、椛は妖怪の山の守備を任せる事に
二人とも優秀な天狗であるから性質が悪い
その為に大天狗が怒るに怒れず出た言葉がこうであった
『……二人が居る時には傍によるな』
他の天狗達だけでなく、大天狗達からも諦められた二人の仲では有るが
「お~い天魔~?酒はまだ~」
「……と言う訳でお主等二人は、萃香殿の接待係りして貰うから宜しく」
『はっ!?』
天狗の頭領である天魔だけはそんな事一切気にしてなかった
にやにやしながら二人に仕事を命ずる度胸は
流石に組織の頭を張る者としての貫禄は十分であった
(これで良かったのですかの?萃香殿)
(上等上等♪恩に着るよ天魔)
それが、取引無しでなら尚の事であったが……
・・・
「わう……」
椛が目を覚ますと、コメカミに嫌な痛みが入る
そして、それと同時に昨日の夜の事が頭に思い浮かんできた
(萃香様の接待でしたっけ)
天魔様の命令で椛と文の二人が萃香の接待係
用は『鬼の酒の相手』と言う名の生贄に捧げられた訳である
だから昨日の夜は散々飲まされた
(もっとも、私は早々に潰されたんですけど……)
普通の人から見れば椛もそこそこのウワバミのはずだが
天狗の中からすればとんでもない下戸である
そして、鬼相手に酒の相手をするなんて無謀が通じるはずがない
頑張って飲んでいたのだが、酒樽一つ開ける前に意識が無くなった
「……って、萃香様と文様は!?」
思い出して声をだした瞬間に二日酔い独特の痛みが頭に響く
コメカミの痛さにはっきりとした意識で辺りを見渡すと
あたり一面にひっくり返った酒樽と酒瓶
部屋全体からくるお酒臭さ、そしてテーブルの上に置かれた手紙と
「……カァ」
(わう?鴉)
そして、なんだか苦しそうに倒れこんでいる鴉の姿があった
ただ鴉が居ただけなら椛もそこまで不思議に思わなかっただろうが
此処は妖怪の山の中でもかなりの高い場所に位置する所である
(普通の鴉がこんな場所にまで飛んでくるはずが無いんですけど?)
ぼやける頭で椛がその鴉を外に出そうと両手で抱えた時であった
(うぅ~……気持ち悪い~)
「わう!?」
「クワァ!?」
頭の中に聞き覚えのある声が響いて来た
そして、思わず手にしていた鴉を足元に落としてしまった為に
鴉が床に頭から落っこちた
そんな鴉の事を無視して、部屋の中を見渡す椛
「あ、文さm……こほん……何処に居られますか?射命丸様」
思わず、二人っきりの時の声が出そうになりそうだったが
それを押しとどめて、普段周りに誰かが居るような時の対応に変わる
「隠れて攻撃してこようとなさっているんですか?」
無論、射命丸文はそんな事をして来るような者では無いし
むしろ真正面から飛び込んでくる事の方が多いのだ
(い、今は一応……二人っきりですし)
椛がそう思いながら辺りを見渡すが誰も居ない
「……むっ?」
返事が来ない事に困る椛
「クアァ!」
その足を怒った表情で鴉が突付く
「射命丸様」
「カァ!」
(ツン)
「何処に居るんですか?」
「クァア!」
(ツンツン)
「千里眼使いますよ!?」
「クワァア!」
(ツンツンツン!)
どれだけ声をかけようとも、先ほどの声が返ってくる事はない
(空耳でしたか?……)
椛がそう思い、先ほどから足を突付いてくる鴉を
外に放り投げようと思って掴んだ時
(椛の馬鹿!聞こえないんですか!?)
「わう?」
再び椛の頭の中に文の声が聞こえてきた
今度は鴉を手にしたまま辺りを見渡す椛
辺りに自分の大切な人の姿は見えない
(あっ?聞こえたみたいですね椛!)
だが、確実に文の声は聞こえてくる
「……」
椛が無言で手にしていた鴉を地面に下ろした
「カァー」
ただの鴉の鳴き声が聞こえる
「……(さっ)」
そして、今度は鴉を持ち上げる
(なにやってるんですか?椛)
すると、文の声が再び頭に響いてきた
これらの情報を統合して椛が出した結論は
「……あ、文様が鴉?」
(えっ?)
どうやら、目の前で持ち上げている鴉が自分の大切な人のようであった
・・・
(どうしましょうか?)
「なんでそんな姿に?」
とりあえず、部屋を片付けた椛とその椛肩の上に座る文鴉
「何か覚えてないんですか?」
(いや、萃香さんとタイマンで飲んでいた事は覚えてるんですけど、後は曖昧で)
そうそうに椛が潰れたせいで、文は萃香と一対一で飲まざる終えなかったのだ
「わう……スイマセン」
(椛は悪くありませんよ)
その事を椛が謝ると文鴉が軽く鳴くと椛の額を軽く突付く
その行動を受けて椛は少しだけ微笑む
『この人はやっぱり文様なんだな』と確信できたから
(ところで、萃香さんは何処に行ったんですか?)
「わう?そう言えばテーブルに手紙が……」
文鴉の言葉に椛がテーブルの上に置いてあった手紙の事を思い出して
それを持ってきた
「そう言えば、まだ中身読んで無かったですね」
(とりあえず読んで見ましょうか?)
文鴉の言葉に椛が頷くと手紙を開けた
『満足したから帰るね、お土産代わりに永遠亭で貰ってきた
新作の酔い止め薬置いておくから飲んでおくと良いよ?
追伸、効果は一晩って言ってたけど気にしないでね』
「……文様」
(な、なんですか?椛)
「……飲みましたね?」
(……カ、カァー)
「泣き真似しても駄目です!……これが原因ですね」
手紙の言葉にそっぽを向いた文鴉を見て椛がため息をついた
(ま、まあ……一晩でなんとかなるようですから……椛!あとお願いします)
「わう?それはいったいどう言う意味で……」
文鴉がそう言うと、羽を広げ
「カァー!(この姿でこそ見つけることが出来る特ダネが有るはずです!)」
そう叫んでから、開いている窓から外に向かって飛んで行く
「わう!?ま、待ってください文様!?」
その姿を見た椛も少し遅れてから慌ててその後ろに続いた
飛び出したのは文鴉を止めようとした訳ではない
それでもなお、椛が飛び出したのには理由があった
・・・
(さあ、まずは博麗神社でしょうか?それとも守矢神社にしましょうか)
鴉になった文が空に飛び出す
そして、飛び出して気が付いた
妖怪の山は天狗が住む故にかなり高い山である
だからこそとんでもなく風が強いのだ
無論、天狗達や妖怪にとってはたいした事はない
ただ問題は……
『轟』
そこに何故普通の鳥が居ないか?と言う事である
外に飛び出した文鴉の体に凄まじい風が襲い掛かる
(えっ?
突風に晒されて文鴉が慌ててその場で羽を羽ばたかせて
体勢を整えようとするが普通の鴉の姿になっているこの体では
風の中で急には体勢を整えれない
(お、落ちる!)
風に飛ばされて平衡感覚が取れないまま
文鴉が地上に向かって落ちて行く
この姿で地面に叩きつけられたら無事では済まないであろう
(ひっ!?)
文鴉が地面に叩きつけられるのを目を閉じて身構える
『ガシッ!』
(えっ?)
そんな文鴉を誰かが空中でキャッチする
捕らえられた事に気が付いた文がそっと目を開く
「どうやら間に合いましたね?」
(も、椛!?)
文鴉を掴んだ椛が片手で額を拭うと
ホッとした表情でそう呟いた
(うわぁぁん)
椛に掴まれた文鴉がそう言って泣く(鳴く)と
「わう、少し辛抱してくださいね?」
椛が文鴉を自分の懐に入れる
(も、椛?)
「今、風が安全な所に向かいますから」
・・・
「此処まで来たらもう大丈夫ですね」
(……そ、そうですね)
「わう?どうしましたか文様」
妖怪の山の中程まで降りた所に来ると
椛が懐に入れている文鴉にそう告げると
文鴉が小さな声でそう告げてきたので椛が心配そうに聞く
(……ありがとう、椛)
「気にしないでください……」
文鴉が恥ずかしそうにそれだけ伝えると
椛もそれ以上何も言わずに懐の中に居る文鴉の頭を撫でる
(うぃ……これ結構気持ちいいですね)
「そうなんですか?」
(あ~……顎の下と羽の付け根辺りお願いします)
「はいはい」
言われた通り、椛がリクエストされた場所を撫でながら
文鴉に声をかけた
「それで?」
(ん~?)
「何処に行こうとしていたんですか?」
(あ~それはですね~)
木の上に座った椛に撫でられて気持ち良さそうにする文鴉が
暫く考えて答えを出した
(博麗神社に向かおうと思っていたんですけど)
「連れて行きましょうか?」
(今の私が幻想郷の組織に向かったら生きて帰れそうにありません)
「でしたら……私がご一緒して」
椛の申し出に文鴉が首を横に振って告げた
(ですから、今日は一日椛に守って貰う事にします)
「では、今日は仕事場で一緒に見張りの仕事ですけど良いですか?」
(出来るだけ暖かい所でお願いしますね)
「わう、了解しました!」
椛がその言葉に少しだけうれしそうに微笑むと
文鴉を懐に入れたまま、ゆっくりと空を飛んだ
今日は珍しく、天狗の山の中で文と椛の二人が喧嘩をする事は無かった
もっとも、天狗の皆は鬼の酒の相手をさせられた事を知って居るので
二人ともダウンしていると思っていた
故に、それを指示した天魔の事を
皆が恐ろしがった事は言うまでもあるまい
「だそうな……良かったね~♪天魔」
「わ、ワシそんな事になるなんて思ってなかったぞ!?」
その噂を聞いてにやにやした萃香
それに対して天魔が顔を青くして答えた
「まあまあ、そんな事よりも何かおつまみ無いの?天魔」
「……ワシとしてはもっと、アットホームの方が良いのに」
本気で困っている天魔を無視して
萃香が何か酒のつまみが無いか問いかける
「あっ、何かおいしそうな物発見」
「あっ!?そ、それはワシ秘蔵の!」
「いただきまーす♪……!?」
そして、天魔部屋の箪笥の棚を勝手に調べると
中に隠してあった食べ物を取り出して口に運び
「……里の人気メニュー練乳蜂蜜入りワッフルが……」
そのまま萃香は気絶する事になった
「それではそろそろ帰りましょうか?文様」
「カァー♪」
「えっ?今日は一緒に寝るですか?」
「クワァー」
「……わかりました、その代わり御風呂覚悟しておいてくださいね?」
「カァッ!?カアー!カアー!」
「はいはい、懐に入っていてくださいね♪」
当の本人達はそんな事などそっちのけであったが
終わり
「上司に向かってその口の利き方は無いでしょう!?駄目犬!」
「上司と言われたいのなら!きちんとした立ち振る舞いを……」
妖怪の山の上空を愚痴りながら飛ぶ二人の姿を見て
他の天狗達が『またか』とため息をつきながら
何時もの事だと諦めて二人の周りから遠ざかる
『射命丸文と犬走椛は仲が悪い』
出会えばお互いに挑発するのは当然
時と場合によっては、周囲に有る程度の被害が出る事もある
無論、それだけならば大天狗が怒りに来るのだが
文は妖怪の山の外とのコミュニケーションを取る時に
そして、椛は妖怪の山の守備を任せる事に
二人とも優秀な天狗であるから性質が悪い
その為に大天狗が怒るに怒れず出た言葉がこうであった
『……二人が居る時には傍によるな』
他の天狗達だけでなく、大天狗達からも諦められた二人の仲では有るが
「お~い天魔~?酒はまだ~」
「……と言う訳でお主等二人は、萃香殿の接待係りして貰うから宜しく」
『はっ!?』
天狗の頭領である天魔だけはそんな事一切気にしてなかった
にやにやしながら二人に仕事を命ずる度胸は
流石に組織の頭を張る者としての貫禄は十分であった
(これで良かったのですかの?萃香殿)
(上等上等♪恩に着るよ天魔)
それが、取引無しでなら尚の事であったが……
・・・
「わう……」
椛が目を覚ますと、コメカミに嫌な痛みが入る
そして、それと同時に昨日の夜の事が頭に思い浮かんできた
(萃香様の接待でしたっけ)
天魔様の命令で椛と文の二人が萃香の接待係
用は『鬼の酒の相手』と言う名の生贄に捧げられた訳である
だから昨日の夜は散々飲まされた
(もっとも、私は早々に潰されたんですけど……)
普通の人から見れば椛もそこそこのウワバミのはずだが
天狗の中からすればとんでもない下戸である
そして、鬼相手に酒の相手をするなんて無謀が通じるはずがない
頑張って飲んでいたのだが、酒樽一つ開ける前に意識が無くなった
「……って、萃香様と文様は!?」
思い出して声をだした瞬間に二日酔い独特の痛みが頭に響く
コメカミの痛さにはっきりとした意識で辺りを見渡すと
あたり一面にひっくり返った酒樽と酒瓶
部屋全体からくるお酒臭さ、そしてテーブルの上に置かれた手紙と
「……カァ」
(わう?鴉)
そして、なんだか苦しそうに倒れこんでいる鴉の姿があった
ただ鴉が居ただけなら椛もそこまで不思議に思わなかっただろうが
此処は妖怪の山の中でもかなりの高い場所に位置する所である
(普通の鴉がこんな場所にまで飛んでくるはずが無いんですけど?)
ぼやける頭で椛がその鴉を外に出そうと両手で抱えた時であった
(うぅ~……気持ち悪い~)
「わう!?」
「クワァ!?」
頭の中に聞き覚えのある声が響いて来た
そして、思わず手にしていた鴉を足元に落としてしまった為に
鴉が床に頭から落っこちた
そんな鴉の事を無視して、部屋の中を見渡す椛
「あ、文さm……こほん……何処に居られますか?射命丸様」
思わず、二人っきりの時の声が出そうになりそうだったが
それを押しとどめて、普段周りに誰かが居るような時の対応に変わる
「隠れて攻撃してこようとなさっているんですか?」
無論、射命丸文はそんな事をして来るような者では無いし
むしろ真正面から飛び込んでくる事の方が多いのだ
(い、今は一応……二人っきりですし)
椛がそう思いながら辺りを見渡すが誰も居ない
「……むっ?」
返事が来ない事に困る椛
「クアァ!」
その足を怒った表情で鴉が突付く
「射命丸様」
「カァ!」
(ツン)
「何処に居るんですか?」
「クァア!」
(ツンツン)
「千里眼使いますよ!?」
「クワァア!」
(ツンツンツン!)
どれだけ声をかけようとも、先ほどの声が返ってくる事はない
(空耳でしたか?……)
椛がそう思い、先ほどから足を突付いてくる鴉を
外に放り投げようと思って掴んだ時
(椛の馬鹿!聞こえないんですか!?)
「わう?」
再び椛の頭の中に文の声が聞こえてきた
今度は鴉を手にしたまま辺りを見渡す椛
辺りに自分の大切な人の姿は見えない
(あっ?聞こえたみたいですね椛!)
だが、確実に文の声は聞こえてくる
「……」
椛が無言で手にしていた鴉を地面に下ろした
「カァー」
ただの鴉の鳴き声が聞こえる
「……(さっ)」
そして、今度は鴉を持ち上げる
(なにやってるんですか?椛)
すると、文の声が再び頭に響いてきた
これらの情報を統合して椛が出した結論は
「……あ、文様が鴉?」
(えっ?)
どうやら、目の前で持ち上げている鴉が自分の大切な人のようであった
・・・
(どうしましょうか?)
「なんでそんな姿に?」
とりあえず、部屋を片付けた椛とその椛肩の上に座る文鴉
「何か覚えてないんですか?」
(いや、萃香さんとタイマンで飲んでいた事は覚えてるんですけど、後は曖昧で)
そうそうに椛が潰れたせいで、文は萃香と一対一で飲まざる終えなかったのだ
「わう……スイマセン」
(椛は悪くありませんよ)
その事を椛が謝ると文鴉が軽く鳴くと椛の額を軽く突付く
その行動を受けて椛は少しだけ微笑む
『この人はやっぱり文様なんだな』と確信できたから
(ところで、萃香さんは何処に行ったんですか?)
「わう?そう言えばテーブルに手紙が……」
文鴉の言葉に椛がテーブルの上に置いてあった手紙の事を思い出して
それを持ってきた
「そう言えば、まだ中身読んで無かったですね」
(とりあえず読んで見ましょうか?)
文鴉の言葉に椛が頷くと手紙を開けた
『満足したから帰るね、お土産代わりに永遠亭で貰ってきた
新作の酔い止め薬置いておくから飲んでおくと良いよ?
追伸、効果は一晩って言ってたけど気にしないでね』
「……文様」
(な、なんですか?椛)
「……飲みましたね?」
(……カ、カァー)
「泣き真似しても駄目です!……これが原因ですね」
手紙の言葉にそっぽを向いた文鴉を見て椛がため息をついた
(ま、まあ……一晩でなんとかなるようですから……椛!あとお願いします)
「わう?それはいったいどう言う意味で……」
文鴉がそう言うと、羽を広げ
「カァー!(この姿でこそ見つけることが出来る特ダネが有るはずです!)」
そう叫んでから、開いている窓から外に向かって飛んで行く
「わう!?ま、待ってください文様!?」
その姿を見た椛も少し遅れてから慌ててその後ろに続いた
飛び出したのは文鴉を止めようとした訳ではない
それでもなお、椛が飛び出したのには理由があった
・・・
(さあ、まずは博麗神社でしょうか?それとも守矢神社にしましょうか)
鴉になった文が空に飛び出す
そして、飛び出して気が付いた
妖怪の山は天狗が住む故にかなり高い山である
だからこそとんでもなく風が強いのだ
無論、天狗達や妖怪にとってはたいした事はない
ただ問題は……
『轟』
そこに何故普通の鳥が居ないか?と言う事である
外に飛び出した文鴉の体に凄まじい風が襲い掛かる
(えっ?
突風に晒されて文鴉が慌ててその場で羽を羽ばたかせて
体勢を整えようとするが普通の鴉の姿になっているこの体では
風の中で急には体勢を整えれない
(お、落ちる!)
風に飛ばされて平衡感覚が取れないまま
文鴉が地上に向かって落ちて行く
この姿で地面に叩きつけられたら無事では済まないであろう
(ひっ!?)
文鴉が地面に叩きつけられるのを目を閉じて身構える
『ガシッ!』
(えっ?)
そんな文鴉を誰かが空中でキャッチする
捕らえられた事に気が付いた文がそっと目を開く
「どうやら間に合いましたね?」
(も、椛!?)
文鴉を掴んだ椛が片手で額を拭うと
ホッとした表情でそう呟いた
(うわぁぁん)
椛に掴まれた文鴉がそう言って泣く(鳴く)と
「わう、少し辛抱してくださいね?」
椛が文鴉を自分の懐に入れる
(も、椛?)
「今、風が安全な所に向かいますから」
・・・
「此処まで来たらもう大丈夫ですね」
(……そ、そうですね)
「わう?どうしましたか文様」
妖怪の山の中程まで降りた所に来ると
椛が懐に入れている文鴉にそう告げると
文鴉が小さな声でそう告げてきたので椛が心配そうに聞く
(……ありがとう、椛)
「気にしないでください……」
文鴉が恥ずかしそうにそれだけ伝えると
椛もそれ以上何も言わずに懐の中に居る文鴉の頭を撫でる
(うぃ……これ結構気持ちいいですね)
「そうなんですか?」
(あ~……顎の下と羽の付け根辺りお願いします)
「はいはい」
言われた通り、椛がリクエストされた場所を撫でながら
文鴉に声をかけた
「それで?」
(ん~?)
「何処に行こうとしていたんですか?」
(あ~それはですね~)
木の上に座った椛に撫でられて気持ち良さそうにする文鴉が
暫く考えて答えを出した
(博麗神社に向かおうと思っていたんですけど)
「連れて行きましょうか?」
(今の私が幻想郷の組織に向かったら生きて帰れそうにありません)
「でしたら……私がご一緒して」
椛の申し出に文鴉が首を横に振って告げた
(ですから、今日は一日椛に守って貰う事にします)
「では、今日は仕事場で一緒に見張りの仕事ですけど良いですか?」
(出来るだけ暖かい所でお願いしますね)
「わう、了解しました!」
椛がその言葉に少しだけうれしそうに微笑むと
文鴉を懐に入れたまま、ゆっくりと空を飛んだ
今日は珍しく、天狗の山の中で文と椛の二人が喧嘩をする事は無かった
もっとも、天狗の皆は鬼の酒の相手をさせられた事を知って居るので
二人ともダウンしていると思っていた
故に、それを指示した天魔の事を
皆が恐ろしがった事は言うまでもあるまい
「だそうな……良かったね~♪天魔」
「わ、ワシそんな事になるなんて思ってなかったぞ!?」
その噂を聞いてにやにやした萃香
それに対して天魔が顔を青くして答えた
「まあまあ、そんな事よりも何かおつまみ無いの?天魔」
「……ワシとしてはもっと、アットホームの方が良いのに」
本気で困っている天魔を無視して
萃香が何か酒のつまみが無いか問いかける
「あっ、何かおいしそうな物発見」
「あっ!?そ、それはワシ秘蔵の!」
「いただきまーす♪……!?」
そして、天魔部屋の箪笥の棚を勝手に調べると
中に隠してあった食べ物を取り出して口に運び
「……里の人気メニュー練乳蜂蜜入りワッフルが……」
そのまま萃香は気絶する事になった
「それではそろそろ帰りましょうか?文様」
「カァー♪」
「えっ?今日は一緒に寝るですか?」
「クワァー」
「……わかりました、その代わり御風呂覚悟しておいてくださいね?」
「カァッ!?カアー!カアー!」
「はいはい、懐に入っていてくださいね♪」
当の本人達はそんな事などそっちのけであったが
終わり
今回も面白かったです。
続きが楽しみです。
>練乳蜂蜜入りワッフル
胸焼け起こしそうwwww
ウイスキーとかならともかく日本酒といっしょならマジ死ねる。
ワッフルワッフル。
環境変わるっていろいろ大変ですけど、お体大事になすってください。
>飲まざる終えなかった
もしかして: 飲まざるを得なかった
>蜂蜜練乳入りワッフル
タクティクスwww!
相変わらず仲良し文椛最高!
お仕事頑張って下さい!!
次の作品も待ってるぜー
あのワッフルを平気で食べられる天魔爺ちゃんはやはり恐れるべきお方。ていうか、それを秘蔵にすなよ。
今度はダブルスポイラーで新しく出てきたはたてを加えてひと騒動やってほしいです。
大変だぜ…
完全復活なのかは分かりませんが、これからもご自分のペースで頑張ってくださいませ。
文椛は嫌いじゃあない、うん。あやもみ良いよあやもみ。
不思議な事にどこにも売ってないんですよねぇ…
ワッフルつえぇwww
そして、お帰りなさい!!!!