今年ももう冬が終わってしまう。既に春は私の愛する冬景色を侵食し、木々に柔らかな若葉の芽吹きを促している。
「……もう寝ちゃうの? レティ」
「うん、もう春だからね」
私は寒気を操る妖怪だから、周りが暖かくなると自然と力が落ちてくる。多分死ぬことはないのだろうが、それでも夏なんかになったら暑さで死ぬ程辛い目にあうだろう。だから私は冬が終わる頃になると涼しい場所にねぐらを構え、次の冬が来るまで眠ることにしている。
「ちぇっ、もう少し起きててくれてもいーのになー」
「今年はこれでも長居した方なんだけどね」
これは本当。今も私にピッタリくっついているチルノが駄々をこねたので、今年は少しだけ睡眠の時期をずらしたのだ。
「それにしても……春の景色を見るなんて何年ぶりかしらね……」
いつもなら冬が終わる前にはねぐらに入り、次の冬が始まった頃に目覚める。だから私が目にする季節はいつも冬で、記憶にある季節も冬だけだった。
冷たく吹き荒ぶ冬の風とは真逆の、暖かく柔らかい春の風。でも、私にとっては少し熱い。
「これからもっと暖かくなってね、そしたら次に夏が来るんだよ! 夏にはみんなでスイカ割りしたり……」
「はいはい、夏なんかに起こされたら死んじゃうわ、暑くて」
「ちぇー」
「ほら、そんな顔しない」
ぷくー、と頬を膨らませるチルノがおかしくて、少し笑ってしまう。
今年の冬もチルノとはたくさん遊んで、たくさんお話しした。私が寝ている間に起こった楽しかったこと、おかしかったこと、ビックリしたこと。オーバーな身振り手振りを交えて話してくれた。
チルノは私が寝ている間にたくさんのことを経験している。次の冬に再会する時にも、きっとたくさんのことを話してくれるのだろう。
「それじゃあ。おやすみ、チルノ。大ちゃんにもよろしくね?」
「うんっ! またね、レティ」
チルノに背を向け、ねぐらのドアに手をかける。
その時だった。
ふわっ、と。私の手に、白くて軽い何かが降ってきた。
桜の花びらにも似たそれは、しかし音もなく消えてしまい、後には水だけが残された。これは……
「雪?」
空を仰ぐと、さっきまではあんなに晴れていた空が鈍色の雲に覆われていた。白い大粒の雪は、次から次へと空から舞い降りてくる。
「レティ、雪だよっ! 雪!」
「そうみたいね……」
もう卯月の中頃だというのに珍しいこともあるものだ。異変という訳ではないだろう。時折見られる自然のイタズラだろうか。
「これでもう少しだけ遊べるよね! ね!」
「……仕方ないわねぇ」
「やったぁ!」
この程度の寒気ならば恐らく三日も保たないだろう。でもそれでいい。思いがけず手に入った残り時間を、チルノと一緒に有意義に過ごそう。それからゆっくり眠ることにしよう。
一年分の思い出と共に。
「……もう寝ちゃうの? レティ」
「うん、もう春だからね」
私は寒気を操る妖怪だから、周りが暖かくなると自然と力が落ちてくる。多分死ぬことはないのだろうが、それでも夏なんかになったら暑さで死ぬ程辛い目にあうだろう。だから私は冬が終わる頃になると涼しい場所にねぐらを構え、次の冬が来るまで眠ることにしている。
「ちぇっ、もう少し起きててくれてもいーのになー」
「今年はこれでも長居した方なんだけどね」
これは本当。今も私にピッタリくっついているチルノが駄々をこねたので、今年は少しだけ睡眠の時期をずらしたのだ。
「それにしても……春の景色を見るなんて何年ぶりかしらね……」
いつもなら冬が終わる前にはねぐらに入り、次の冬が始まった頃に目覚める。だから私が目にする季節はいつも冬で、記憶にある季節も冬だけだった。
冷たく吹き荒ぶ冬の風とは真逆の、暖かく柔らかい春の風。でも、私にとっては少し熱い。
「これからもっと暖かくなってね、そしたら次に夏が来るんだよ! 夏にはみんなでスイカ割りしたり……」
「はいはい、夏なんかに起こされたら死んじゃうわ、暑くて」
「ちぇー」
「ほら、そんな顔しない」
ぷくー、と頬を膨らませるチルノがおかしくて、少し笑ってしまう。
今年の冬もチルノとはたくさん遊んで、たくさんお話しした。私が寝ている間に起こった楽しかったこと、おかしかったこと、ビックリしたこと。オーバーな身振り手振りを交えて話してくれた。
チルノは私が寝ている間にたくさんのことを経験している。次の冬に再会する時にも、きっとたくさんのことを話してくれるのだろう。
「それじゃあ。おやすみ、チルノ。大ちゃんにもよろしくね?」
「うんっ! またね、レティ」
チルノに背を向け、ねぐらのドアに手をかける。
その時だった。
ふわっ、と。私の手に、白くて軽い何かが降ってきた。
桜の花びらにも似たそれは、しかし音もなく消えてしまい、後には水だけが残された。これは……
「雪?」
空を仰ぐと、さっきまではあんなに晴れていた空が鈍色の雲に覆われていた。白い大粒の雪は、次から次へと空から舞い降りてくる。
「レティ、雪だよっ! 雪!」
「そうみたいね……」
もう卯月の中頃だというのに珍しいこともあるものだ。異変という訳ではないだろう。時折見られる自然のイタズラだろうか。
「これでもう少しだけ遊べるよね! ね!」
「……仕方ないわねぇ」
「やったぁ!」
この程度の寒気ならば恐らく三日も保たないだろう。でもそれでいい。思いがけず手に入った残り時間を、チルノと一緒に有意義に過ごそう。それからゆっくり眠ることにしよう。
一年分の思い出と共に。
まだ、少しだけならレティさんが居ても良いかなと思いました。