Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ミッドナイト・ワッフル

2010/04/16 19:14:44
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『小悪魔レシピ

 愛しい彼女もこれで一ピチュ♪

 ☆ワッフル

 材料……

 強力粉    :150グラム
 ドライイースト:3グラム
 牛乳     ;60CC
 無塩バター  :50グラム
 卵      :1個
 塩      :ひとつまみ
 白砂糖    :大さじ1,5
 ざらめ糖   :大さじ3
 バニラオイル :少々     

 作り方……         』



 真夜中。
 紅い悪魔が治める館、その厨房にて。
 レシピ通りの材料を揃えた十六夜咲夜は、袖をまくった。

 細く白い二の腕が露わになる。

「いや、まくる意味はないんじゃないかと」
「……うっさい。気合入れてんのよ」
「良い子は眠る時間ですものねぇ」

 憐れんでいるのか童扱いしているのか、或いは両方か――並び立つ紅美鈴に、咲夜は噛みつきそうな表情を向けた。

 手を広げて咲夜の怒気を鎮めつつ、美鈴が続ける。

「何故こんな時間にお菓子作りを?」
「貴女こそ、なんでいるのよ」
「休憩時間ですって」
「む。お嬢様が、食べたいって」
「ははぁ、なるほど。三時のおやつ」

 真夜中――正確には、午前三時だった。

 くるくると目頭を指で押し、ぐるぐると腕を回し、咲夜は戦闘、もとい料理への態勢を整える。

「……珍しいですね。普段はお嬢様、この時間、食べてもあり合わせのものくらいなのに」
「有り難い気遣いだわ。要らないけど。……妹様に、せがまれたらしいの」
「それは……いかんともしがたいですねぇ」

 そも、フランドールが何かを要求すること自体、珍しい。
 レミリアがピチュったのは言うまでもないだろう。
 その上での、咲夜への命令。

『咲夜、起きなさい、咲夜。
 あのね、フランがね、私とワッフルを食べたいって。
 だけどね、台所を探しても見つかんなくてね、だからね』

 無論、みなまで言わせる‘完璧で瀟洒な従者‘ではなかった。

「ベッド際に顔を乗せての命令って言うかお願いに、メイド長、超ハッスル!」
「寝起きでテンション高いのはわかりますが、超とか言わないでください」
「ハッスルはいいの!?」

 頷く美鈴。いいらしい。

 与太話をしつつも、咲夜の腕は迅速に動いていた。
 強力粉と砂糖をふるいにかけ、ダマをなくす。
 既にバターは湯煎にかけている。

「ふぅむ。レシピを読む限り、結構時間がかかるんじゃないですか?」
「一時間くらいかしら。その間、おフタリは小悪魔に頼んでいるわ」
「まぁ、夜の小悪魔さんなら大丈夫でしょう」

 大図書館の小悪魔は、昼は女豹で夜は聖母らしい。
 主たるパチュリー・ノーレッジが呆れていた。
 ……‘小悪魔‘?

 共通認識を持っているフタリは特に詰まることなく、話を続ける。

「手伝いましょうか」
「卵は室温、牛乳は人肌程度に温めて」
「あー……さらっと難しいことを言いますね」

 レンジなどない。

 とりあえずはそれぞれを手に取る美鈴に、強力粉と砂糖を混ぜていたボールに塩とドライイーストを投入しつつ、咲夜は言う。

「出せばいいじゃない」

 爽やかに提案する。
 メイド長のテンションは高すぎたのだ。
 けれども、言った直後に額を抑える辺り、色々と振りきれていない。

 そんな咲夜に、美鈴が応える。

「わかりました」
「出るの!?」
「冗談、わ」

 振り向く咲夜。
 態勢を崩す美鈴。
 落ちる、卵と牛乳。

 ぱきょ――と殻が割れ、卵白と卵黄が、牛乳ともども、尻もちをつく美鈴に降り注いだ。

 咲夜は慌てて、手を差し出した。
 掴み、立ち上がる美鈴。
 ――直前に舌を出す。

「人肌に、なっちゃいましたね」

 自身に付着するだくだくした物を舐め取り、美鈴は、おどけて言った。



 ピッチューン。



「やや作っどーっ!」



 そして、咲夜の色々が振りきれた。

「や、あの、咲夜さん、作れません」
「ふふ、安心なさい、美鈴」
「へ?」

 自身の髪をかきあげ、咲夜は笑った。
 瞳は既に、貪欲な獣の色を浮かべている。
 ――つまり、美鈴が見たものは、銀髪の……。



「私に、不可能はない」







《一方、大図書館では》



「できましたー」



 ワッフルが、である。
 所は大図書館の給湯所。
 声の主は、勿論、小悪魔だ。

「……器具はともかく、なんで此処に材料があるのよ」

 仲良くほおばるレミリアとフランドールを眺めつつ、パチュリーは首を捻った。

「以前、アリスさんに頂きました」
「あーそー」
「ええ」

 応えながらも小悪魔は、当主姉妹の口をハンカチで柔らかく拭う。

「‘小悪魔‘……?」
「なんでしょう、パチュリー様」
「呼んだ訳じゃない。……ともかく、咲夜、遅いわね」

 掛け時計を見ながら、パチュリー。

 推定制作時間が大幅に過ぎている。

「代わりに作りましたし、いいじゃないですか」
「貴女は貴女で、どうして、待たなかったの?」
「そうですねぇ、空気を読んだと言いますか」

 ぴっ、と自身の耳を指差して、
 天使のような笑顔で、
 小悪魔は応えた。



「攻守のシャッフルされた音が、聞こえたんですよ。ふふ」



《‘夜は聖母‘の小悪魔が、なんとかしていました。……‘聖母‘?》





                   <了>
・あー、ワッフル食いてぇ、と腹を抱えていた昨日の夜に思いつきました。お読み頂きありがとうございます。

・どうしようもないネタだったので、一晩寝かせました。
・寝かせても変わらなかったので、書き上げました。
・どうしようもないのは私の頭ですね。わかります。

・……どうして私は一人美咲祭りをやっているんだろう(これは咲美だけども)。

※咲夜さんの叫びは某所で見かけた腐敵な四コマから拝借しました。こんな素敵な言葉、私には思いつかない。

・いじょ
道標
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
聖母のよーおなー
小悪魔の声がー
きーこえーてるー♪
BGMミッドナイト・シャッフル
2.名前が無い程度の能力削除
わっふるわっふる
3.名前が無い程度の能力削除
銀○思い出した、タイトルで。

てーんーしーのーよーうなー♪
4.奇声を発する程度の能力削除
聖母と小悪魔の意味調べなおしてくる!
わっふるわっふる
5.名前が無い程度の能力削除
「やや作っどーっ!」で吹いた
子作りですか…
6.名前が無い程度の能力削除
↑と同じ感想なのが悔しいっ!でも感(ry