Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ほのぼの分が足りないんだ!

2010/04/13 19:36:19
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「ほのぼのしたい」

 何を言うてるんやこいつは。
 思わず言語に乱れが起きた魔理沙は、煎餅を紫の口の中に突っ込んだ。

「ふぐ……こんな固いものを無理矢理口の中に入れるなんて……いじわる」
「あーあー聞こえない」

 頬に手を当てていやん、と声をあげる紫。
 魔理沙は大きな声で棒読みしながらお茶をすすった。

 ここは神社。主人は不在である。
 居るかと思って訪ねたら居なかった、それがこの二人の共通点である。
 霊夢が帰るまで二人で会話でもしよう、とお茶を入れ煎餅をかじっていた矢先に冒頭のセリフ。
 はあ、と魔理沙が溜息を吐こうとしたその時、ピーッというけたたましいホイッスルが鳴った。
 慌てて振り向くと、体操服にブルマという、紫が笛を口にこちらを見ていた。

「このままじゃギャグよ!ほの点マイナス1」

 すると魔理沙の口から「ほ」という文字が書かれたブロックが飛び出した。

「うわああああなんじゃこりゃああああ!」
「ほのぼのとギャグの境界を操りました。それはほの点。持ち点は10、0になればギャグ体質になるから」
「そうか、わかった。紫、頼む、死んでくれ」
「はい殺伐。マイナス1」
「うええっ!!」

 明らかに自分のせいじゃないのに減っていく点。
 魔理沙は理不尽さを感じずにはいられなかった。心で泣いた。

「……わかった、わかったよ。付き合えばいいんだろ」
「物分かりがよくて助かりますわ」
「具体的に私は何をすればいいんだ」
「ほのぼのすればいいのよ、ほのぼの」

 そう言われても、と顔をしかめる魔理沙。ほのぼのって何だろうな、と思いつつ、お茶をすする。
 ふは、と息を吐き、煎餅をかじるように食べて、口を尖らせた。

「プラス0.5ね」
「……まじか」

 横を見ると、スーツを着て赤い眼鏡をつけた紫が座っていた。
 0.5と書かれたチョコが渡される。怖いが食べなければもっと怖い。
 もぐもぐ、口を動かしつつ魔理沙は思う。
 じゃあずっとこうしてりゃいいのか。
 そして、同じ動作を繰り返してみた。

「単調!マイナス1」
「げふっ、私が何をした!」
「何もしてないから減点したのだけど」

 そういう意味じゃねーよ。
 思わず口の悪くなった魔理沙は、心を精一杯落ち着けて、考える。
 ほのぼのとは何をすればいいのだろうか。

 ちらっ。
 横を見た。
 エプロンつけた紫が微笑んでいる。
 何かを期待するように。催促するように。笑って、魔理沙を見ている。
 ああ、何がしたいのかわかってしまう自分が憎い。
 血涙を心で流しながら、口をおずおずと開く。

「……お、お」
「マイナs」
「お母さん!」

 半ばヤケクソだったのは言うまでもない。顔は真っ赤だ。
 ふふ、よく出来ました。そう言って魔理沙を抱き寄せて撫でる紫。
 魔理沙はちょっと泣いた。本当に。

「でもこんな少女捕まえてお母さんはないわよねぇ、マイナス2」
「えふぁっ、ちょ、ま、増やす気ないだろ!?」
「そんなことありませんわ」

 胡散臭い笑みをこれでもかと浮かべながら、三角巾を被った自称少女は扇を口にあてる。
 いよいよもって勘忍袋の緒が切れたほの点5.5の魔理沙は、八卦炉を片手に紫に突き付けた。

「ほのぼのなんて要らないだろ。私たちの日常は、これだ」
「そうね、その通り」

 ぱちん、と扇を閉じて、それから微笑む。服はいつの間にか戻っている。
 八卦炉からは今にもレーザーが飛び出そうにも関わらず物おじしない。
 そんな様子に、魔理沙が眉をひそめた時、紫は、にやり、とした笑みに変わった。

「なら、ほの点、要らないわよね?」
「は?っ、ま、まりっ!?」

 ぼろり、と口から「ほ」が落ちる。

「や、やめ、ありぃっ」
「ああ、ほのぼのの世界にギャグが満ちる……」
「それパクリ、がぁっ」

 三個目が口から落ちる。
 何故口なのか、それがそもそもほのぼのではないのは、わかってやってるのだろう。
 紫はいつだってお茶目だ。

「ふふ、なんて情けない顔なのかしら?」
「くっそぉ、……じゃふっ」
「ああもうめんどくさいわね、全部出ちゃえ」
「てぃす!?」

 魔理沙が正義を叫び終えたところで「ほ」が一気に全部落ちた。
 ほの点、0である。

「くっ、丸焦げにしてやる!逃げるなよ!」

 ひどい屈辱を感じた魔理沙はぐいぐいと目尻の涙を拭い、改めて八卦炉を構えた。

「もちろん。必要ありませんもの」
「このっ、何処まで私を馬鹿にすれば……」

 あくまでも余裕たっぷりな紫に向かい、集束する光を解放しようとした時。

「マスタースパれいったぁああ!」

 上からたらいが振ってきた。
 何で帽子があるのにこんなに痛いのかと魔理沙は思った。

「ドリフね」
「何でだよ、何でたらいなんだよ……!」
「ドリフだし」
「ばかやろう!」

 また涙目になった魔理沙可愛い。
 くすくす、と楽しそうに笑う紫の横には、いつの間にか大きな水槽。
 誰の良心なのか中身はただの水である。
 そしてその淵の上には、今にも落ちそうな魔理沙がいる。
 服はスクール水着だ。

「え、何で、え?」

 それににじり寄る紫。不思議な力で自分では動けない魔理沙。

「や、やめろ、押すなよ、絶対押すなよ」
「どーん」
「ゆかりぃっ!?」

 紫の手は非情にも魔理沙を突き落とす。
 彼女にはたった一つの選択肢しかなかったのだから。
 見捨てられた魔理沙はもがもがと暫く水中で暴れて、端になんとか手を伸ばし、はい上がる。

「ふざけんなおい!」
「振りでしょ?ほら、手」
「何がだよ全く……」
「えい」
「うなぁああ!!」

 そして支える振りをして再び落とす。
 二段階の振りであった。

「……というように、外の世界ではこんなにギャグが過酷なのよ」
「もうやだ……」

 普通の服に戻った魔理沙は、膝を抱えて顔を伏せていた。
 その横で、少しやり過ぎたかしらと思いながらも反省はしていない紫。

「それにしても、霊夢遅いわねえ」
「……どこで油売ってんだろうな」

 そこでようやく頭をあげると、むすっ、とした顔を膝の上に乗せて、呟きに返す。
 その頭を撫でる。
 触るなスキマ、と手を跳ね退けられる。
 と思ったら、いつの間にか紫の膝の上に居た。

「……何だよ」
「ほのぼのしましょ?」
「……」

 魔理沙はそのまま黙りこんで、何も言わなくなった。
 抵抗するのが面倒だったのかもしれないし、意外と居心地がいいのかもしれない。
 ただし、頬は、ちょっと赤くなっていた。



「……すさまじいわね、あれ何だったのかしら」
「紫の暇潰しでしょ。ったく、人の神社を何だと思ってんのか」
「あら、邪魔しなかった癖に」
「巻き込まれたら嫌だもの」

 途中でアリスと会って話をしていたものの、随分前から帰っていた霊夢。
 二人はいつ出たらいいのかなあ、と考えつつ木々に隠れてそっと溜息を吐いた。



おまけ

「どうしよう」
「じゃあ私から行くわ」
「いやいやここは私が」
「え?じゃ、じゃあ私が」
「「どうぞどうぞ」」
「って紫!あんたいつの間に」
「てへ」
「霊夢もつられてんじゃないわよ」
「いや何か急に神様から思し召しが」
「嘘つけ」
「あっ、霊夢!遅いぜ、もうお腹いっうひゃぁあああ!」
「……あ、ほの点返すの忘れてた」
「見事なたらいね」
「美しいたらいだわ」
「お前ら絶対泣かす……」
ほのぼのが書きたかった、ただそれだけなんだ。
で、どうしたらほのぼのするんですかね?
……微妙にネタがかぶったような気がして怖いです。

紫は何着ても似合うと思うの。
南乃
コメント



1.四潤・ぺ削除
貴方が書くほのぼのってどんなんだ……って思ったら
1行目でもう諦めたよwww馬鹿野郎www
2.奇声を発する程度の能力削除
ごめん…四潤・ペに全て持ってかれた…orz

でも、とっても楽しそうでした!
紫さまは何でも似合うスタイルですよね。
3.玖爾削除
「~したい」きたあーw
しかし紫+魔理沙がナイスコンビな話も以外と少ない気がするなあ。
次は「ギャグしたい」でお願いします。一体どうなる。
4.名前が無い程度の能力削除
ゆかりんかわいい
5.名前が無い程度の能力削除
さりげなくジャスティスwww