プチ60『性的な意味じゃなく』
プチ61『幻想郷グルメレポート』
を既読推奨。
でも読んでなくても今回はいけると思います。
簡単あらすじ。
「週4でキス魔の霊夢が満足するまで神社に通うアリスは紅茶味」
キスははないです、がキス成分がまた含まれております。
霊夢さんが無自覚に変態なのが許せないお方はブラウザバック推奨。
「あれ。霊夢、何してるの?」
「苺を貰ったから洗ってる」
いつの間にか、いや強制されて、今や日課になりつつある神社通い。
表にも縁側にもいない霊夢を台所で発見して、アリスは尋ねた。
せっせと水洗いをしている霊夢は、視線をくいと向けて、何でもないように答えた。
「わあ、おいしそう」
「でしょ。アリスと一緒に食べようと思って。苺好き?」
「あ、うん」
アリスは少し戸惑った。
なんだか妙に霊夢を優しく感じたからである。
せっせと器に苺を盛りつけて、霊夢は左手にそれを持った。
そしてその右手には、何かがあった。
赤くて、先が大きくて、後ろがひらべったい。
「ねえ霊夢」
「ん?」
「何それ」
怪訝に思い問うと、霊夢はそれをアリスの眼前に差し出した。
真ん中に白い部分があり、そこに牛がプリントされたパッケージ。
練乳、と書いてあった。
「これも紫がくれた。かけると美味しくなるからって」
「ああ……」
そんな奇妙で珍しいものはあのスキマしか持ってないだろう。
苺も、ちょうど旬の辺りだから里から貰ったのかと思いきや紫経由。
そう知った途端その苺に対する不安が湧いてきた。
「その苺大丈夫なんでしょうね?」
「大きい以外は普通。さっき味見したし」
ことり、と器を縁側に置いた。
霊夢はアリスと話す時は、縁側に座る。
前にアリスがその理由を聞いたところ、
『隣に座りたいから』
だそうだ。
アリスが思わず黙ってしまうのも無理はない理由だった。
ぽかぽかと陽の暖かい縁側にアリスも腰を下ろして、苺を見つめる。
「ふーん、まあ、それなら大丈夫ね」
「食べてみてよ」
言われてひとつ指でつまんでみる。
大ぶりな実は、まるで真っ赤な宝石。
かじると、甘さが口いっぱいに広がって、それでいてほのかに香る酸味が鼻を通る。
人里で食べたものには甘味は劣るけれど、大きさを考えればそれは素晴らしいものだった。
「おいしい」
「でしょ」
ほのぼのとした今。心が暖かくなっていく。
ふ、とアリスが横を向くと、霊夢と視線がぶつかった。
キスの想像。されるわけでもないのに、頭が映像を作る。
頭がチンと音を立てる前に、顔をそらした。
「どうしたの」
「何でもないわ」
この頃、アリスは霊夢のことをどう思っているか、わからなくなっていた。
自分勝手な、ともすれば妖怪よりも恐ろしい人間、というのは間違っていないが、何か足りないのだ。
「ね、アリス、食べないの?」
「ああいやうん、頂くわ」
声をかけられてはっとした。
今考えることじゃない、とにかく後少しいれば霊夢は満足してくれる。
帰ってから色々することにして、今はとにかく霊夢との会話に集中しよう。
そう思いながら、苺に手を伸ばした。
しかし、そう思うこと自体が間違いだったのである。
アリスは、横を見ずに苺に手をかけてしまったから。
「おおっと、アリスの指に練乳が!」
「きゃ」
霊夢が苺にかけようとした練乳は、苺に手を伸ばしたアリスの指にどぺりと零れた。
言っておくが、あくまで不慮の事故である。悪しからず。
「やだこれー、洗わなきゃ」
「洗う!?そんなもったいないことをよくも……!」
くわっ、と目を見開いた霊夢は、そのままアリスの指にくらいついた。
「うきゃっ、ちょ、な」
何をしているんだと理解するまでに数秒。
左手が霊夢の頭をはたく。
「ふぐっ」
「この春巫女!」
霊夢は、むすっ、と不機嫌そうにしながら、いったん口を離し、アリスの左手首を右手で掴む。
右手もしっかりと掴まれたまま。
「なっ、やめなさいっての!」
「かけると美味しいっていわれたっていったじゃない」
「それ苺のことだから!?」
「ほら、まだ練乳ついてるじゃないの。ん、おいひー」
そして再び口に運ばれた。
「う、うう、助けて……」
霊夢はアリスの指をこれでもかという程に舐める。えろい。いや気持ち悪い。
人一倍指先の感覚が鋭いアリスは、ぞわぞわとした感覚に耐えながら、思った。
こいつは自分勝手な、ともすれば妖怪より恐ろしく、変態な人間なのだと。
無自覚なところがまたむかつく。後で仕置きしてやろう。
「ぷは、アリスの指って甘いのね。口の中は紅茶の癖に」
「練乳ついたんだから当たり前じゃないの!それに、紅茶は直前まで飲んでるからで」
「他の部分はどんな味がするのかしら、私の食欲が食べろって言ってるわ」
「ふざけんじゃないわよ!誰が食べさせるもんですか!」
「アリス」
凜と、静かだが強い音で呼ばれた名前。
ヒートアップしていた頭が急に冷めていく。
霊夢はいつの間にか真剣な顔になっていた。
「私、アリスがもっと欲しい。もっとアリスを味わいたいし、アリスのことが知りたい。だから、だから、……もっと好きにさせて欲しいの」
そう言って、俯く。
アリスの顔が赤く染まる。
そんな顔されて、そんな事言われたら、頭の中が全て爆発したみたいに、真っ白で。
おかげで、霊夢が口を歪めたのを、見逃した。
「じゃあまずはここからね」
「えっ」
「好きにしていいんでしょ?」
「好きにってそれですかよ!いやっ、まって、そこはぁ」
「よいではないかー、よいではないかー」
「よ、よくないーッ!!やっぱ変態ぃい!!」
場の雰囲気が不健全度410点を示し始めた時、かの救世主はやってきた。
「そこまでだッ!」
「魔理沙っ!?」
魔理沙が上空から降り立ちダッシュしながら霊夢に回し蹴りをいれた。
俗にいうDAである。
ちなみに、この場合誰にとって救世主かといえばアリスだけに過ぎない。
色んな人がこの時点で舌打ちをしたような気がする。
続いて魔理沙は追い打ちをかけた。
「お前はッ」
「ふがっ」
A。
「ここをッ」
「あぶっ」
AA。
「発禁ッ」
「ひぎぃっ」
AAA。
「処分にッ」
「にゃんっ」
B。
「する気かッ!!」
「あひぃぃんっ」
極めつきの214C。
吹っ飛んだ霊夢はあいていた障子の奥の机で、したたかに腰を打ち付けた。
しかも当然の報いといわんばかりに頭まで打って、そのまま意識を失った。
博麗の巫女、堕つ。そんなタイトルで飾られた新聞が想像できるほどのダメっぷりである。
「不健全な霊夢あるところに私在り。ようアリス、無事だったか」
「あ、うん、まあ、ね」
突然の展開にしどろもどろとしつつも、アリスははにかんで、ありがとうとお礼を言おうとした。
魔理沙のこと手のかかるただの子供って思ってたけど、ちょっとは考えを改めていいかな、とも思いながら。
「つーわけで私が消毒がわりに指をなめてやるぜ」
やっぱやめた。
笑顔のアリスが、腕を振りかぶる。
神社の境内に大きな爆発音が響いた。
***
気絶した人間二名を尻目に、アリスは自分の指を見つめていた。
それは先ほどまで霊夢が口の中に入れていたもの。
何を思ったか、アリスはちろりとそれを舐めてみた。
「……甘い」
そのまま自分の行為で顔をかぁあと朱に染める。
ものすごく破廉恥なことをした気がして、今すぐ死んでしまいたいくらいだった。
そんなやり場のない感情に迷い、とりあえず霊夢に蹴りをいれて、逃げるように上空へと舞い上がる。
どんなに速度をあげて風に当たっても、顔の熱は全然取れなくて。
「気の迷いよ、気の迷い。何か悪いものが取り付いたんだわ、そうじゃなきゃ……」
まるで、好きになっちゃったみたいじゃない。
自分の思考が弾きだしたそれを、アリスは白い絵の具で無理矢理塗り潰す。
全部あの頭がぱっぱらぱーな巫女のせいなのよ、私は悪くない。
それでも、アリスの胸の奥のしこりが、取れることはなかった。
次回も楽しみです!!
レイアリが来ている!!何か分からんがレイアリが来ている!!!
アリスかわいいよアリス。
あれだね、一方通行はみててつらいけど、アリスの場合なんだかんだで受け入れてくれる安心感がある。
とりあえず某所で待っていてやるし!
次で終わりか。残念だな……