この話では、霊夢と早苗の間に『早織(さおり)』という女の子が生まれております。
詳しくは プチ作品集55、『コウノトリでもキャベツ畑でもなく、神様に頼る。』をご覧下さい。
春の麗らかな日のこと。
博霊神社の境内裏で、赤ん坊を抱いた霊夢が縁側に立っていた。
霊夢が声を掛ける度に、赤ん坊はそれに応えるように「きゃきゃ」と高い声で笑う。
そして縁側の奥の居間では、そんな二人を見守る早苗の姿が。
三人とも絶えず笑みを浮かべており、幸せいっぱいな家族の姿がそこにはあった。
「可愛いねぇ……赤ちゃん。」
そんな博霊一家を遠巻きに見守る影が三つ。
その内の一匹、リーダー格であるサニーが一緒にいるルナとスターに声を掛けると、同意するように二匹はしきりに頷いて見せた。
「あの緑の巫女が来た時は人が次第に集まるようになって、騒がしくてやだねーなんて話してだけど……」
「赤ちゃんをこうして眺められるから悪い事ばっかじゃなかったね。」
「ホント……ああ私も赤ちゃんを抱っこして見たいなぁ……。」
サニーが零したその一言に釣られるように、皆揃って感嘆とした溜め息を付いた。
「もしさ! あのこが一人で歩けるくらい大きくなったら、私達でイタズラを教えて上げない?」
「良いねぇ、それ!」
「ステキ! そしたらきっと私達の事、『お姉様』とか呼んでくれたりして──」
「「お姉様かぁ~……。」」
サニーの提案を否定する者など居らず、更にはスターが零したその一言に、またもや揃って溜め息を付く三匹。
きっと自分達が『お姉様』と呼ばれている姿を想像しているのだろう。
一匹残らずだらしない笑みを浮かべ、心此処にあらずといったところだ。
「あっ……あっ……あ゛あぁ~!」
妄想に浸っていた三匹だったが、突然聞こえた泣き声にハッと我に返った。
どうした、何があったと、口々に言いながら赤ん坊を見る。
「どうしたの~、早織~?」
するとあの鬼巫女があやすためとは言え、猫なで声を出している──三匹は背筋に冷たい物を感じたが、心配で赤ん坊から目を離せなかった。
「きっとごはんですよ。朝上げたっきりですから。霊夢さん、早織を貸して頂けますか?」
「うん……。そうね、おしめじゃ無いみたいだし。間違いなさそう。お願いね、早苗。」
「はい。では──」
赤ん坊を受け取った早苗は、直ぐに自らの上着へと手を掛けるとスルリと肩を肌蹴させた。
それを遠巻きに見ていた三匹が一斉に色めき立った。
「ねぇ! 赤ちゃんのごはんって、今!」
「うそ! 見られるの!」
「うわぁ……何だかドキドキするよぉ……。」
三匹の好奇の目が、赤ん坊と早苗へと注がれる──妖精である彼女たちが興奮しているのは、純粋な好奇心であって決してやましい気持ちなどでは無いのである……多分。
「待って!」
しかし霊夢は三匹の熱い視線を敏感に察知した。
流石に数多の異変を解決へと導いたのは伊達では無かったのか、それとも嫁のピンチ(?)に勘が働いたか……かくにも霊夢は姿の見えないサニー達に警戒し、辺りを見回しながらもゆっくり襖を閉めた。
「きぃー! 何あの鬼巫女!? 私達に赤ちゃんを見せないつもり!?」
「多分その通りだと思うけど……?」
「でもさ、私達ちゃんと姿隠せてるよね?」
折角のチャンスをふいにされたとあって憤慨するサニー。
それを冷静にもルナが突っ込みをいれた。
とは言え姿の見えない自分達に気付く筈はないのだ。ここで唯一能力を使ってないスターがサニーとルナに疑惑の目を向ける。
「当たり前でしょ!? 今更私達がそんなミスする訳ないじゃない!!」
疑われたサニーは怒りの矛先をスターへと変えた。
しかしスターも別に本気で疑っていたわけでは無いらしく、「そうだよねぇ」と言って首を傾げてみせた。
結局答えが見つからないまま、うんうんと頭を悩ませるサニーとスター。
そこへ、ルナがサニーの肩をちょんちょんと突付いた。
「ねぇ……それより、今ならもっと近寄れるんじゃない?」
「た、確かに……うまく行けば、もっと近くで赤ちゃんが見られるかも……!」
「だ、大丈夫かなぁ……?」
「なによ、スター? スターは赤ちゃんがおっぱい貰ってるところ、見たくないの!?」
「み、見たいけど……でも何かその言い方はちょっと……えっちな気がする……///」
恥ずかしそうに赤らめた頬を押さえるスターに、サニーは「うっ」と唸った。
どうも『えっち』呼ばわりされるのはプライドが傷つくらしい。
「じゃ、じゃあ…………授乳っ!!!」
サニーが極限まで頭を振り絞って出した答えだったのだが、スターの幻滅した顔を見るにどうやら今度はお気に召さなかったようだ。
「…………なんかそれは卑猥。」
「あああ!? じゃあ何て言えば良いのよ!?」
「そんな事どうでも良いから早く行こうよ!」
ルナの一喝に、二匹はハッとなって、口を塞ぐ。
そして三匹で頷き合うと、そろそろと茂みを抜け出してさっきまで霊夢が立っていた縁側まで移動する。
『どうしちゃったんですか、霊夢さん?』
『ん? ああ……誰かの視線を感じてね。』
『そうですか? 私は全然気付きませんでしたけど……霊夢さんの考え過ぎじゃあ……?』
『はぁ……あんたが警戒心無さ過ぎなのよ、早苗。』
縁側まで辿り着くとしっかりと聞き耳を立てる三人。
さっきまでは会話の内容がおぼろげだったが、今は襖越しに霊夢達の会話がハッキリと聞こえていた。
「ああっ! 中は一体どうなってるの!? 赤ちゃんは? 今おっぱ……ミルクを飲んでるのかな?」
「ん……あの早苗って巫女と赤ちゃんの気配が重なってるから間違いないと思う。」
そう言ったのはスター。能力からレーダーの役割を担っているからだ。
それを聞いて、サニーは鼻息を荒くした。
「ど、どうする? 開けちゃう……?」
「だ、ダメだよ! それは流石にバレちゃうよ!?」
「でもでも! やっぱり直で見たいよ!」
「もう……サニーったらおませさん///」
「なに!? あんたさっきからおちょくってんの!?」
「五月蝿い! ちょっとは音を誤魔化す立場にもなってよ!?」
ぎゃーぎゃーと喚く三匹。
目標を目前にこうして三匹が殺気立っているのは、決してやましいry
「あっ!? 鬼巫女が来る……!」
そんなスターの慌てた声に釣られ、残る二匹も顔を上げる。
すると襖に音も無く人影が映った。
(やばっ……!?)
逃げ損ねた三匹は咄嗟に縁側の下に顔を伏せた。そうして襖を開けて現れた霊夢を見上げる。
「どこかには居るのよ……どこかには……。」
どうやら霊夢はまだ完全に三匹を捉えた訳ではないらしく、その証拠にキョロキョロと忙しなく周りを見渡していた。
「ね、ねぇ……これってチャンスじゃない?」
これに気付いたルナは霊夢に声が聞こえないよう、音を調整させながらそう言った。
霊夢には声はおろか、姿さえ見えはしないのだ。中を覗くなら、襖が開いている今しかない。
残る二匹もその事に気が付いたのだろうか。同時に頷いてみせた。
そうして意を決した三匹は縁側に手をかけ、霊夢に踏まれないよう注意しながら顔だけを覗かせる。
(おおおぉ……?)
(ああ……あと、あとちょっと!)
(うわぁ……///)
立ちはだかる霊夢のせいで殆ど見えないが、赤ん坊が早苗の膝に乗っているのを確かに視認できる。
そんな神秘的な光景に魅入られるように浮き足立つ三匹。
すっかり興奮しきっている三匹が歓喜に震えながら、もっと良く見ようと身を乗り出した、その時──
「やっぱり居たわね……!」
上から降ってきた、重く怒気を含んだ霊夢の声に、三匹は思わず肩をびくっと震わせた。
そして恐る恐る見上げると霊夢は確かに三匹がいる真下を見下ろしていた。
どうして──?
「姿隠したって無駄よ……早苗に色目使うたぁ良い度胸じゃない。どこのどいつか知らないけどただじゃ返してやらないわよ……?」
手首をゴキゴキと鳴らせて、不気味な笑みを浮かべる霊夢を前に三匹は同時に同じ事を思った。
ガ、ガチだ──!!!
「て、撤収~!!!」
本気の眼をしている霊夢に恐れを為した三匹の決断は早かった。
サニーの号令の後、余りの恐怖に統率を失った三匹は散り散りになって逃げ出した。
そのため霊夢たちにも逃げていく妖精たちの後ろ姿がハッキリと見えた。
「ふふふ、霊夢さんたら。そんなに目くじら立てなくても。妖精の可愛い悪戯じゃないですか。」
奥の居間でクスクスと早苗が笑っているのを受けて、霊夢は深い溜め息を付いてもう一度目線を下に向けた。
「気楽で良いわね、あんたは……ったく。妖精の癖に鼻血垂らしていくなんて……後始末くらいしていけってのよ。」
苦々しく呟いた霊夢の視線の先には、三匹が残していった思われる鼻血の跡が…………妖精でもやましい気持ちは有るのかもしれない。
── おまけ ──
「霊夢さん……?」
「……なに?」
「霊夢さんも、その……飲みます?」
「ぶっ!? なっ……? なに言っちゃってんのよ、あんたは!?」
「だってぇ……霊夢さん、最近遠慮しているみたいだったから……」
「えええ遠慮? 一体何のこと!?」
「……付き合い始めた頃は私の……、あんなに揉んでくれたのに……」
「いや、あのね……そ、そうよっ……! だって減っちゃったら大変じゃない……その、早織の、なんだからさ。」
「そんな簡単に減ったりしませんよ。それに早織は少食ですし……。」
「…………。」
「それとも…………私の……に、興味無くなっちゃいましたか?」
「………ず…ない……」
「え…………?」
「そんな筈ないでしょっ、バカ!」
「そ、それじゃあ──」
「…………ご、ご馳走になります///」
(注)所々聞き取りづらいのは全て襖越しの会話だからです。実際とは若干異なるかも知れません。また、その後霊夢が一体何をご馳走になったかは、これを読んだ方のご想像にお任せします。
詳しくは プチ作品集55、『コウノトリでもキャベツ畑でもなく、神様に頼る。』をご覧下さい。
春の麗らかな日のこと。
博霊神社の境内裏で、赤ん坊を抱いた霊夢が縁側に立っていた。
霊夢が声を掛ける度に、赤ん坊はそれに応えるように「きゃきゃ」と高い声で笑う。
そして縁側の奥の居間では、そんな二人を見守る早苗の姿が。
三人とも絶えず笑みを浮かべており、幸せいっぱいな家族の姿がそこにはあった。
「可愛いねぇ……赤ちゃん。」
そんな博霊一家を遠巻きに見守る影が三つ。
その内の一匹、リーダー格であるサニーが一緒にいるルナとスターに声を掛けると、同意するように二匹はしきりに頷いて見せた。
「あの緑の巫女が来た時は人が次第に集まるようになって、騒がしくてやだねーなんて話してだけど……」
「赤ちゃんをこうして眺められるから悪い事ばっかじゃなかったね。」
「ホント……ああ私も赤ちゃんを抱っこして見たいなぁ……。」
サニーが零したその一言に釣られるように、皆揃って感嘆とした溜め息を付いた。
「もしさ! あのこが一人で歩けるくらい大きくなったら、私達でイタズラを教えて上げない?」
「良いねぇ、それ!」
「ステキ! そしたらきっと私達の事、『お姉様』とか呼んでくれたりして──」
「「お姉様かぁ~……。」」
サニーの提案を否定する者など居らず、更にはスターが零したその一言に、またもや揃って溜め息を付く三匹。
きっと自分達が『お姉様』と呼ばれている姿を想像しているのだろう。
一匹残らずだらしない笑みを浮かべ、心此処にあらずといったところだ。
「あっ……あっ……あ゛あぁ~!」
妄想に浸っていた三匹だったが、突然聞こえた泣き声にハッと我に返った。
どうした、何があったと、口々に言いながら赤ん坊を見る。
「どうしたの~、早織~?」
するとあの鬼巫女があやすためとは言え、猫なで声を出している──三匹は背筋に冷たい物を感じたが、心配で赤ん坊から目を離せなかった。
「きっとごはんですよ。朝上げたっきりですから。霊夢さん、早織を貸して頂けますか?」
「うん……。そうね、おしめじゃ無いみたいだし。間違いなさそう。お願いね、早苗。」
「はい。では──」
赤ん坊を受け取った早苗は、直ぐに自らの上着へと手を掛けるとスルリと肩を肌蹴させた。
それを遠巻きに見ていた三匹が一斉に色めき立った。
「ねぇ! 赤ちゃんのごはんって、今!」
「うそ! 見られるの!」
「うわぁ……何だかドキドキするよぉ……。」
三匹の好奇の目が、赤ん坊と早苗へと注がれる──妖精である彼女たちが興奮しているのは、純粋な好奇心であって決してやましい気持ちなどでは無いのである……多分。
「待って!」
しかし霊夢は三匹の熱い視線を敏感に察知した。
流石に数多の異変を解決へと導いたのは伊達では無かったのか、それとも嫁のピンチ(?)に勘が働いたか……かくにも霊夢は姿の見えないサニー達に警戒し、辺りを見回しながらもゆっくり襖を閉めた。
「きぃー! 何あの鬼巫女!? 私達に赤ちゃんを見せないつもり!?」
「多分その通りだと思うけど……?」
「でもさ、私達ちゃんと姿隠せてるよね?」
折角のチャンスをふいにされたとあって憤慨するサニー。
それを冷静にもルナが突っ込みをいれた。
とは言え姿の見えない自分達に気付く筈はないのだ。ここで唯一能力を使ってないスターがサニーとルナに疑惑の目を向ける。
「当たり前でしょ!? 今更私達がそんなミスする訳ないじゃない!!」
疑われたサニーは怒りの矛先をスターへと変えた。
しかしスターも別に本気で疑っていたわけでは無いらしく、「そうだよねぇ」と言って首を傾げてみせた。
結局答えが見つからないまま、うんうんと頭を悩ませるサニーとスター。
そこへ、ルナがサニーの肩をちょんちょんと突付いた。
「ねぇ……それより、今ならもっと近寄れるんじゃない?」
「た、確かに……うまく行けば、もっと近くで赤ちゃんが見られるかも……!」
「だ、大丈夫かなぁ……?」
「なによ、スター? スターは赤ちゃんがおっぱい貰ってるところ、見たくないの!?」
「み、見たいけど……でも何かその言い方はちょっと……えっちな気がする……///」
恥ずかしそうに赤らめた頬を押さえるスターに、サニーは「うっ」と唸った。
どうも『えっち』呼ばわりされるのはプライドが傷つくらしい。
「じゃ、じゃあ…………授乳っ!!!」
サニーが極限まで頭を振り絞って出した答えだったのだが、スターの幻滅した顔を見るにどうやら今度はお気に召さなかったようだ。
「…………なんかそれは卑猥。」
「あああ!? じゃあ何て言えば良いのよ!?」
「そんな事どうでも良いから早く行こうよ!」
ルナの一喝に、二匹はハッとなって、口を塞ぐ。
そして三匹で頷き合うと、そろそろと茂みを抜け出してさっきまで霊夢が立っていた縁側まで移動する。
『どうしちゃったんですか、霊夢さん?』
『ん? ああ……誰かの視線を感じてね。』
『そうですか? 私は全然気付きませんでしたけど……霊夢さんの考え過ぎじゃあ……?』
『はぁ……あんたが警戒心無さ過ぎなのよ、早苗。』
縁側まで辿り着くとしっかりと聞き耳を立てる三人。
さっきまでは会話の内容がおぼろげだったが、今は襖越しに霊夢達の会話がハッキリと聞こえていた。
「ああっ! 中は一体どうなってるの!? 赤ちゃんは? 今おっぱ……ミルクを飲んでるのかな?」
「ん……あの早苗って巫女と赤ちゃんの気配が重なってるから間違いないと思う。」
そう言ったのはスター。能力からレーダーの役割を担っているからだ。
それを聞いて、サニーは鼻息を荒くした。
「ど、どうする? 開けちゃう……?」
「だ、ダメだよ! それは流石にバレちゃうよ!?」
「でもでも! やっぱり直で見たいよ!」
「もう……サニーったらおませさん///」
「なに!? あんたさっきからおちょくってんの!?」
「五月蝿い! ちょっとは音を誤魔化す立場にもなってよ!?」
ぎゃーぎゃーと喚く三匹。
目標を目前にこうして三匹が殺気立っているのは、決してやましいry
「あっ!? 鬼巫女が来る……!」
そんなスターの慌てた声に釣られ、残る二匹も顔を上げる。
すると襖に音も無く人影が映った。
(やばっ……!?)
逃げ損ねた三匹は咄嗟に縁側の下に顔を伏せた。そうして襖を開けて現れた霊夢を見上げる。
「どこかには居るのよ……どこかには……。」
どうやら霊夢はまだ完全に三匹を捉えた訳ではないらしく、その証拠にキョロキョロと忙しなく周りを見渡していた。
「ね、ねぇ……これってチャンスじゃない?」
これに気付いたルナは霊夢に声が聞こえないよう、音を調整させながらそう言った。
霊夢には声はおろか、姿さえ見えはしないのだ。中を覗くなら、襖が開いている今しかない。
残る二匹もその事に気が付いたのだろうか。同時に頷いてみせた。
そうして意を決した三匹は縁側に手をかけ、霊夢に踏まれないよう注意しながら顔だけを覗かせる。
(おおおぉ……?)
(ああ……あと、あとちょっと!)
(うわぁ……///)
立ちはだかる霊夢のせいで殆ど見えないが、赤ん坊が早苗の膝に乗っているのを確かに視認できる。
そんな神秘的な光景に魅入られるように浮き足立つ三匹。
すっかり興奮しきっている三匹が歓喜に震えながら、もっと良く見ようと身を乗り出した、その時──
「やっぱり居たわね……!」
上から降ってきた、重く怒気を含んだ霊夢の声に、三匹は思わず肩をびくっと震わせた。
そして恐る恐る見上げると霊夢は確かに三匹がいる真下を見下ろしていた。
どうして──?
「姿隠したって無駄よ……早苗に色目使うたぁ良い度胸じゃない。どこのどいつか知らないけどただじゃ返してやらないわよ……?」
手首をゴキゴキと鳴らせて、不気味な笑みを浮かべる霊夢を前に三匹は同時に同じ事を思った。
ガ、ガチだ──!!!
「て、撤収~!!!」
本気の眼をしている霊夢に恐れを為した三匹の決断は早かった。
サニーの号令の後、余りの恐怖に統率を失った三匹は散り散りになって逃げ出した。
そのため霊夢たちにも逃げていく妖精たちの後ろ姿がハッキリと見えた。
「ふふふ、霊夢さんたら。そんなに目くじら立てなくても。妖精の可愛い悪戯じゃないですか。」
奥の居間でクスクスと早苗が笑っているのを受けて、霊夢は深い溜め息を付いてもう一度目線を下に向けた。
「気楽で良いわね、あんたは……ったく。妖精の癖に鼻血垂らしていくなんて……後始末くらいしていけってのよ。」
苦々しく呟いた霊夢の視線の先には、三匹が残していった思われる鼻血の跡が…………妖精でもやましい気持ちは有るのかもしれない。
── おまけ ──
「霊夢さん……?」
「……なに?」
「霊夢さんも、その……飲みます?」
「ぶっ!? なっ……? なに言っちゃってんのよ、あんたは!?」
「だってぇ……霊夢さん、最近遠慮しているみたいだったから……」
「えええ遠慮? 一体何のこと!?」
「……付き合い始めた頃は私の……、あんなに揉んでくれたのに……」
「いや、あのね……そ、そうよっ……! だって減っちゃったら大変じゃない……その、早織の、なんだからさ。」
「そんな簡単に減ったりしませんよ。それに早織は少食ですし……。」
「…………。」
「それとも…………私の……に、興味無くなっちゃいましたか?」
「………ず…ない……」
「え…………?」
「そんな筈ないでしょっ、バカ!」
「そ、それじゃあ──」
「…………ご、ご馳走になります///」
(注)所々聞き取りづらいのは全て襖越しの会話だからです。実際とは若干異なるかも知れません。また、その後霊夢が一体何をご馳走になったかは、これを読んだ方のご想像にお任せします。
授乳が卑猥って……卑猥なのはスター、お前の頭の中だーー!!
宗教画のような神々しい早苗さんの授乳姿に興奮するなどとんでもないエロ妖精どもだな!
おっといけね。ティッシュなくなっちゃった。(鼻にねじ込みつつ)
『手首をゴキゴキ』怖ぇえええーー!!!
まあ大半は妄想だけどな…