Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

私が家庭を持ったらどんな感じになるのかしら。お母さんってどんな事してたっけ。いつもニコニコとお払い棒を振り回してた記憶しかないのだけど

2010/04/08 12:13:33
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この作品は「そろそろこの巫女服も買い替えモードね。胸周りが小さくなってきたし、胴回りも……いやそんなはずは無いわ、胴回りは正常のはず……早苗にダイエット方法教えてもらおうかしら。後学の為によ? 」の続編になっています。
そちらから読んでもらえると、ニヤリとする場面が多々あると思います。


















「雛~今日もちゅっちゅしよ?」

「雛様なら居ませんよ」

「あれ椛じゃん。雛どこ行ったか知ってる?」

「風邪をひかれて、家で寝込んでおられます」

「え!? それは急いで看病しないと、っとと……椛なんで邪魔をするのさ」

「着替えにシーツ替え、おかゆに氷枕。全て私が用意しました。だからにとりさんは何もしなくてもいいですよ」

「……どういうことさ」

「雛様が、私に看病してほしいと。そう仰られたのですよ」

「雛が?」

「はい。さらに、にとりさんだけは絶対に近づけさせないで、とも仰られてました」

「!!」

「という訳ですので、お引取り願えますか?」

「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

「……あんな赤い顔をして、"風邪をうつしたくないから、にとりを近づけさせないで"って言われたら、ちょっと意地悪したくなりますよ。わふぅ」








◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 





~あらすじ~


神奈子がぎっくり腰になりました。

霊夢が紫に(親友的な意味で)好きって言いました。

以上、あらすじでした。

あぁ、「すじ」ってそういう……









ガタン


「霊夢さん」

「あ、美鈴来てくれたのね。さっそくで悪いんだけど、神奈子の腰の痛みを和らげ……」

「霊夢さんが好きなのは、やっぱり紫さんだったんですね」

「……え?」


霊夢が振り向くと、泣きそうな、でも何かを諦めたような顔がそこにあった。

まるで心臓を鷲づかみされたかのような鈍い苦しみが、霊夢の胸を襲った。

彼女はまだ気が付いていない。それが……大切な想いであることを。






<- 私が家庭を持ったらどんな感じになるのかしら。お母さんってどんな事してたっけ。いつもニコニコとお払い棒を振り回してた記憶しかないのだけど ->






「霊夢さん! 神奈子様はご無事ですか!?」


互いに想いが違う目で見詰め合っていた霊夢と美鈴を押しのけ、早苗が霊夢に掴みかかった。

その後ろでは、神奈子がどこか安堵したような雰囲気で布団に突っ伏している。


「早苗落ち着きなさいってば。神奈子なら元気だし、今から治療もするから。ね、美鈴?」

「え? あ、はい。ぎっくり腰でしたよね?」

「炎症を起こしてるから多分。でも一応確認お願いね」

「分かりました。任せてください!」


先までの修羅場っぽい雰囲気はどこへやら。

二人はいつもの霊夢と美鈴に戻っていた。

ただし、それは表向き。

裏では特殊な符による、テレパシーでやり取りが行なわれていたのだ。


「(美鈴、これは違うのよ)」

「(何がデスカ? どう違うのデスカ?)」

「(だから私が紫の事好きっていうのは、あくまでも友人として……)」

「(霊夢さんが誰の事を好きになろうと、私には関係の無いことなので)」

「(関係あるわよ! あんたは私にとって大切な……し、師匠なんだから。だから……そんな悲しいこと言わないでよ)」

「(師匠ですか。いい響きですね。感動的です。でも無意味です)」

「(め、美鈴……)」

「(ほら、患者さんに安心してもらう為、いつでもスマイルって最初に教えたじゃないですか。師匠である私の顔に泥を塗るおつもりですか?)」

「(そんなつもりは……)」

「(テレパシーは之で終わりです。今からはいつもの私達で行きますよ)」

「(うん、分かった。でも終わったらちゃんと話を……)」


ビリッ!


最後は美鈴が、符を破ることでテレパシーは終わった。

一緒に、何か大切な関係も終わったのかも知れない。


「貴女が神奈子さんですね?」

「君は霊夢の言っていた門番さんか。いつつ……早いとこ頼むよ。これじゃ早苗の朝ごはんを食べることも出来ないんだ」

「ではまずは痛みを緩和させますね。ちょっと触りますよ」


神奈子の腰に乗っていた氷を退け、美鈴は頭、首、肩と、足の先まで順に触れていった。

そして神奈子の腰に手を当て、じっと動かなくなる。


「ん……なんだか腰が熱いな」

「動かないで下さい。今溜まった悪い気を流してますから」


その様子をハラハラしたように見守る早苗は、霊夢の腕を抱きぺったりとくっ付いている。

年齢のわりに、大きな胸が霊夢の腕にはさみ込み、形をゆがめている。


「神奈子様……」

「随分と心配性ね。というかあんた……さらしちゃんと巻いてる?」

「……朝からバタバタしていたので、ブラ着けるの忘れてました」

「ねぇねぇ霊夢、私も今ノーブラなのよ?」

「紫はブラつける必要ないじゃない」

「がーーーん!! 霊夢が巨乳好きだったなんて……ゆかりんショックだわぁ」


早苗は胸を意識したのか、腕を抱く力を緩め、紫は床に蹲った。

なにやら大人バージョンに戻ろうかしら、とぶつぶつ呟いている。


「今思ったけど、私の周りって貧乳か巨乳のどっちかが多いわね」

「私は別にそんな大きいわけでは……」

「手からあふれ出しそうなサイズの塊が、私の腕を放さないのだけど?」

「実は私は隠れ巨乳なのよ? 大人になったらバインバインなんだから」

「はいはい。ついでに心も早く大人になってね」

「あら、私は心も体もとうの昔に大人になっておりますわよ?」

「な、なんの話ですか。大人とかえっちなのはいけないと思います!」

「うるさいです! 邪魔をするなら出て行ってください!」

「あんたたち邪魔らしいわよ。さぁ出てった出てった」

「霊夢さんもです」


わいわいと姦しい乙女(一部除く)に美鈴は一喝した。

よく見たらどう説得したのか、神奈子のパジャマの腰部分が破れて露出している。

今から針を使うようだ。


「あ、美鈴。針は何番を使う?」

「すでに持っているので必要ありません」


美鈴の声のトーンが低い。

こんな美鈴を見るのは紅魔館に住むものでも、まだ数人しか居ないだろう。

恐怖とは違う、別の意味の怖さを霊夢は感じていた。


「そ、そう……あ、なら針使ってるところ近くで見てもいい?」

「気が散るのでだめです」

「でも今後の参考に……」

「集中したいので、できれば出て行ってほしいのですが」


美鈴の気に当てられたのか、早苗は霊夢の腕を放し何も言えずにいる。

紫は、真剣な表情で美鈴を視線で射抜いていた。


「でもいつまでも美鈴に頼ってばかりではいられないじゃない? これも修行ということで」

「聞こえなかったのですか? 邪魔なんですよ。早く出て行ってください」

「!!」


この言葉にはその場に居た全員が驚いた。

温厚な彼女から、冷たく突き放す言葉が放たれたのだ。

それも、完全なる拒絶として。


「……によ……」


霊夢は一歩後ずさる。


「なによ……」


もう一歩後ずさり、感情をそのまま美鈴の背中にぶつけた。


「なによなによなによ!! 美鈴なんて大っ嫌い!!」

「別に霊夢さんに好かれたくなんかありませんから」

「っ!」


襖を開け放ち、廊下を駆け出す音がその場から遠ざかっていった。

もう一つ、美鈴の顔を見て神奈子の顔を見て、霊夢を追いかけるように駆け出す音があった。

風が3人を取り残す。


「いいのかい? 泣いてるよ?」

「私は酷い妖怪なんです。霊夢さんを泣かせるなんて」

「違うよ。泣いているのは、貴女」

「私……あれおかしいな。どうして? どうして勝手に涙が出てるんだろう」


美鈴の目からは、ぽろぽろと大粒の涙があふれ出していた。

落ちた雫が、神奈子の腰に刺さった針にあたり弾かれる。


「悲しい風だね。他に方法もあったろうに」

「私に泣く資格なんて無いんです」


涙をふき取り、震える手を膝に置いて少しでも心を落ち着かせようとしていた。

しかし次から次へと流れ出す想いに、その行為は役に立たないようだった。


「やっぱり貴女、この時を待っていたのね」

「……私は妖怪ですから。人とは……違いますから」

「嘘の修羅場を作ってまで、彼女を突き放す必要はあったのかい?」

「あはは。一度嫌われてしまえば、私も諦めがつきますから」


乾いた笑顔。涙は流れるがままに、美鈴は虚空を見上げた。

その目には、霊夢と過ごした楽しい日々が写っているだろう。

自らの手で手放した、溺れてしまうくらいに幸せな毎日が……


「随分と自分勝手な事ですわね。尤も、妖怪らしくて素敵ですけれど」

「紫さん……申し訳ありません。紫さんを利用するような形になってしまって」

「別にライバルが減る分には、私は歓迎なのだけれど……でもね」


パンッ!!


「痛っ!」

「私は霊夢を泣かせる人を、絶対に許さないわ」


美鈴は叩かれた頬を押さえた。

光りが消えていた目で紫を睨む。

かなうはずも無いと分かっていても、今にも飛び掛りそうな猛獣の目に、それはなっていた。

だけどそれは、完全な八つ当たりだと、美鈴自身だれよりも分かっている。


「貴女を此処で存在すら消し去ってもいいのだけれど、霊夢が悲しむから止めておいてあげる」

「……」

「所詮貴女は犬畜生ね。ずっと泣いて逃げているのがお似合いだわ」

「わ、私は……」

「といっても、あの子から逃げ続けることなんてできるのかしら?」


紫は隙間から愛用の扇子を取り出すと、口元へとそれを運ぶ。

それは彼女が何か大事なことを伝えるときのクセ。


「あの子は超が付くほどの鈍感なのだけれど、異常なほどに勘が鋭いのよ?」

「鈍感なのか敏感なのかどっちですか……」

「ふふ、感度はいいかもしれないわ♪」

「なんの話ですかまったく。なんだか泣いてるのも馬鹿らしくなってきましたよ」

「そうね、貴女は馬鹿。大馬鹿者よ。むしろ馬鹿の金メダリストね。好きと伝えることもできない臆病者」


随分な言われようだと言う美鈴の目に、光りが戻り始めていた。

手の振るえも、いつの間にか収まっているようだ。


「そうですよ、ね。好きなら好きと言って玉砕すればよかったのに、私なにやってるんだろう」

「一人で勝手にダンスを踊って、自分のスカートを踏んで扱けたんだろう?」

「あら神奈子さんでしたっけ? なかなかいい事言いますわね」

「……怖かった。拒絶されることが……それならいっそ嫌われたほうがマシだなんて。あぁもう私の馬鹿馬鹿」

「嫌われても友達ではいられると思ってたのでしょう? 馬鹿の上に臆病者で、さらに甘い。ダメ妖怪の三拍子そろってるじゃないおめでとう♪」


ぱちぱちと手を叩く紫に、美鈴はキックを繰り出した。

有無を言わさないまっすぐな早いキックだったが、紫はそれをスルリと回避する。


「そんな馬鹿馬鹿言わないで下さい。さすがの私も我慢しきれませんよ?」

「あらあら、欲望に忠実な犬はこれだから困りますわ。では私は噛まれる前に逃げようかしら」

「だれが犬ですか! がるるるる」

「おぉ怖い怖い。飼い主に似て本当獰猛だこと」

「お前たち、人の背中の上で争わないでくれるか?」


にらみ合う二人の交差点にいる神奈子は、ため息しかつけなかった。

今日はもう治療はしてもらえないという諦めも混じっていただろう。

寝ながらお手上げのポーズをとっている。


「私は一足先に退散するけれど……ちゃんと霊夢に謝っておくのよ?」

「夢想封印……うーん、夢想転生は覚悟しておかないといけないですね」

「自業自得よ。じゃぁね、生きて会えることを楽しみにしているわ」


そのまま隙間へと消え行く紫に、小さくありがとうございますと、頭を下げる。

ひらひらと隙間から手が振られたところを見ると、きっちり耳に届いたようだ。

そして美鈴はしばらく目を瞑った後、さてっと神奈子に向き合った。


「お待たせしました。治療を再開しますね」

「おや、霊夢の所に行かなくいいのかい?」

「はい。だって……」


一拍置いて美鈴は言った。

大きな声で。

幻想郷中に響かせるような想いで言った。


「私の好きな霊夢さんなら、許してくれると信じてますから♪」
















その後、美鈴は許してもらう条件として暫くの間、博麗神社の巫女として住み込みで働くことになった。

レミリアは

「私の好きなレミリアなら、許可してくれるわよね?」

という霊夢の一言で陥落。紅魔館の未来が心配だがそれはまた別の話。



「思い出したわ」

「霊夢さん、急になんですか?」


霊夢と美鈴が境内の落ち葉を箒で集めていると、霊夢が手を止めて話しだした。

美鈴はそのまま箒を動かす手を止めずに、霊夢の話を聞いている。


「私が子供のときに、紫って母さんに告白したことがあるのよ」

「そうなんですかー……ええええぇぇぇぇ!?」

「こう思うといつも傍に紫が居たのよね。なんで覚えてなかったんだろう? どうせ紫の仕業だろうけど」

「いやいや、それも大切ですけど、紫さんが告白したって、えぇぇぇ!?」


あまりの驚きに、気が発散されたのかせっかく集めた落ち葉がまた舞ってしまった。

なにやってんのよ、と霊夢が呆れ顔で箒を構え直した。


「そ、それでどうなったんですか?」

「何が?」

「だから紫さんの告白ですよ! もしかして紫さんが霊夢さんの義理の父親、いえ母親? あれ?」

「たしか母さんが、気持ち悪いってキッパリ返したと思うわよ」

「う、うわぁ……」


霊夢母は霊夢とそっくり、いやそれ以上の人物らしい。

霊夢の話によると、それからしばらく紫の姿を見なかったとかなんとか。


「紫って友達とか恋人とかじゃなくさ、もう一人の母親って感じがするのはそのせいかも」

「霊夢さんを娘のように可愛がっていたってことですか?」

「いんや、私にはいじめられてた記憶しかないわ。どんな事されてたか記憶にないけどね……でも、暖かかったわ」

「少し、妬けますね」


落ち葉がさらさらと二人の前を凪いで行く。

散らばった落ち葉も、いつの間にか霊夢の箒によって集め直されていた。


「あんたは私の母親でもなければ、友達でもないじゃない」

「あはは~。私は師匠ですもんね?」

「さぁそれはどうかしら?」

「え、それはどういう意味ですか?」

「さぁ。自分で考えなさい、よっと」

「わっぷ! 落ち葉が顔に……う~やりましたね、お返しです。とりゃ!」

「当たらないわよ~ってうきゃ!」


美鈴の攻撃を避けたところに、頭上から落ち葉が大量に落ちてきた。

こんなことができるのは一人だけ。


「ゆ~~~か~~~り~~~!!」

「うきゃっですって。霊夢かわいいわぁ。昔と全然変わらないわよね」

「昔の事は分かりませんが、霊夢さんがかわいいのは同意ですよ、っと!」

「わぷ! 美鈴あんたまで……もう許さないんだから!」

「「きゃぁぁぁぁぁぁ♪」」



駆け抜けていく風と舞う木の葉が、少女たちの声を空へと届ける。

既にセピア色に色あせた思い出。

所々写真の抜けたアルバム。

それを"彼女"はそっと机の中にしまった。

そしてそれとは別に用意された新しいアルバム。

そこに貼られた新しい写真。

"彼女"はじっと見つめる。その幸せの一ページを。

そしてこれからも待ち続けるだろう。

彼女達の声を届けてくれる風を。

古いアルバムと共に……
最近はたてが食べたいこじろーです。
間違えた、はたてじゃない、ほたてだ。いや間違っても無いか? うーん……

さてこの作品についてですが、霊夢視点をあえて書きませんでした。
一体向こうでは何があったのか。気になる? 気になりますよね? 我も気になる!
という事で、次はこれのアナザーサイドを書いてみようと思います。

ではまた将来にお会いいたしましょう。またにてぃ~♪
こじろー
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コメント



1.名前が無い程度の能力削除
続き来た!
霊夢サイドのほうも気になるケド…
美鈴と霊夢が仲直りするところも見たかったかな。
2.こじろー削除
>美鈴と霊夢が仲直りするところも見たかったかな
霊夢サイドでその部分も補完するつもりですー
いま意欲がふらふらしてるけどがんばってかくよ!