「そうだ。ぱんつ撮ろう」
夏である。
当然にしてひたすら暑いのである。
文の頭もいい感じに沸騰しているようである。
ちょうどネタもなかった事だしこれ幸い。
思い立ったら即行動。
傍迷惑な出歯亀が空に解き放たれた。
「誰もいないってどういうことよ!」
言葉どおりである。
まぁ、この暑さの中で好き好んで外に出る酔狂がそういるはずもなく。
文は自分が凄く馬鹿なことをしているんじゃないかという気になってきた。
実際目的を考えれば馬鹿そのものではあるが。
だが、そんな状況であってもやっぱり酔狂な奴はいるものである。
茹だる日の中をふよふよと動く青い塊。
文は幻想風靡もかくやと言わんばかりの速度ですっ飛んでいった。
「こんにちは、チルノさん。ちょっとお話いいですか?」
青い塊は氷精だった。
さすが馬鹿の代名詞。
こんな灼熱地獄でも平気で飛び回る能天気振り。
尤も本人の冷気で熱を遮断してるらしく、イメージとは裏腹に夏に弱いということは無いらしい。
全くうらやましい限りであるが、今現時点においてはどうでもいいことである。
こんな暑い中を散々飛び回ってようやく手にした獲物、逃す道理など無い。
「なに?ぶんぶんじゃない。なんか用なの?」
「ええ、ちょっとチルノさんにお願いがありまして」
ここからが勝負である。
沸いているとはいえ、文は自分の目的が普通で無いことくらいは理解している。
氷精が相手とはいえ、上手い事搦め手で進めることに越した事は無い。
腐っても天狗、腐っても出歯亀。
相手に気づかれぬように事を進め、目的のブツを堪能するのみである。
「ちょっとチルノさんのスカートめくってもらえませんか?」
ド直球。真ん中行った。
出歯亀ですらなかった。
残念ながら文は腐っていたのではなく、腐りきっていたのだ。
駄目だこの天狗、早く何とかしないと…。
と、考えるのは早計である。
文が腐りきっているのは事実ではあるが、決して浅はかというわけではない。
こんな事を乞われたら普通は思考が停止する。フリーズから回復したらしたで、今度は羞恥と怒りに塗れるものだ。
文は、そんな表情を眺めるのが好きだった。ええ、そりゃもう大好きだった。
そんな相手に二度三度と追い討ちをかけ冷静な判断力を奪い、その隙にパシャりとやる。
それが清く正しい射命丸の基本スタイル。
助平で傲慢不遜、手段を選ばぬえげつなさ。
文は実に正しい天狗なのだ。
腐りきってるが。
ゆえに先の台詞である。
相手が氷精だからと言って油断するような事はなく、文は基本に忠実に行動したに過ぎない。
結局基本の積み重ねこそが大事なのだ。
誤算があったとすれば、相手が氷精だったからという他無いであろう。
型にはまらぬ相手ほど厄介な事は無いのである。
「ん?別にいいけど」
何の疑問も抱かず氷精はスカートを手にする。
ぺらり。
……。
ぺしん。
「いたっ!ちょっと何するのさ!ちゃんとめくってあげたでしょ!」
めくられていたスカートが元に戻る。
怒っている氷精が視界に入る。声も聞こえる。
だが、それらの情報が上手く処理できない。
文は自分の目に何が映ったのかよくわかっていなかった。
どうやら数秒固まっていたらしい。
気がついたときには氷精の手を引っ叩いていた。
ぺしんはその時の音だった。
「な、ななななんではいてないんですか!」
「何言ってるのよ!ちゃんとスカートはいてるよ!」
「スカートじゃありません!ぱんつですよぱんつ!何でですか!」
文が固まったのはそういうことだった。
いきなりスカートをめくる相手の行動にも驚いたが、そんな状況でいきなりとんでもないものを見せられたら色々とダメージがでかい。
ガードクラッシュされた直後に超必を食らったようなものだ。
相手を固めるつもりが逆に自分が固められるとは世話が無い。
とにかく理由を問い詰めないといけない。
折角のぱんつが台無しになってしまったのだから。
「えー。だってぱんつってごわごわしててなんか気持ち悪いんだもん」
これだからお子様は。
そんな理由ではいてないのか。
文の絶望感は色々と半端なかった。
彼女の名誉のために言っておくが、別に文はぱんつフェチと言うことは無い。
いや、ぱんつは大好きだがぱんつだけが好きという事ではない。
むしろ『はいてない』のはぱんつ以上に大好物だし、普段の文ならそれこそ秒間128フレーム、
つまり1秒間に32枚撮りフィルムを4つ使い切る勢いで撮影完了するだろう。
だが、発酵しすぎて腐臭すら漂わせている今の文には、ぱんつがなかったことははいてない以上に深刻な問題となっていた。
大体なんだ、どうしてそんな至極当然のようにこちらに見せ付けてくるのだ。
少しは恥ずかしがってくれないと面白くない。
出し抜くつもりが結果的に出し抜かれた事、自分の思い通りに事が運ばない事、ついでに沸いていたことなどから、文はたまらない気持ちになった。
「チルノさんのバカー!もう知りません!」
一瞬で踵を返すとそのままはるか彼方へ。
あとには全く訳がわかっていない氷精が残されるのみ。
-------------------------------------------------------------------------------
先ほどは色々と失敗したが、この程度であきらめる文ではない。
そんなやわな精神では天狗もマスコミもやってられない。
残念ながら空にはめぼしい獲物が見つからないため、今度は地上に目を向ける。
しばらく探していると、湖のほとりの紅い屋敷の前に緑色の物体が動いていた。
今度こそはと意を決して近づくことにした。
門番は奇妙な踊りをやめて接近する文を見やる。
なんだかんだでちゃんと仕事はしているようである。
「こんにちは、美鈴さん。今日は紅魔館に取材に伺いました」
「ご丁寧にどうも。取材目的は何でしょうか」
妖怪の癖に実に礼儀正しい奴である。
が、考えてみると門番は受け付けも兼ねているわけだから、こういった態度になるのもおかしくは無いのだろう。
取材の時には、表面的なものだけでも礼節をわきまえる文と同じようなものなのかもしれない。
そんな門番の素の表情、それも羞恥や怒りを見てみたいと思う文だが、今度は本当に直球で行く事にした。
気を使う相手に下手な小細工は通用しない可能性があるし、何より文自身一刻も早くぱんつを拝みたかった。
「たいした事ではありません。そこに立っていてもらえるだけでいいんです…よっ!」
同時に風神扇を一閃。
巻き起こる突風。めくれ上がるスカート。
案の定、門番自体は吹き飛ばされる様子は無い。
これならじっくりと拝めるはずである。
さぁ、門番のぱんつは如何程か?
白?黒?ド派手な赤や紫?縞からレースから水玉透け々々なんでもござれ!
無地の肌色だーーっ!!!!
「ちょっと待って!なんで貴方まではいてないんですか!?」
「うわっとと…。もう、いきなりですね!もしかして勝負するんですか!?」
「そんなことはどうでもいいです!ぱんつですよぱんつ!なぜはいてないの!」
突風が収まり怒り気味の門番。
反応自体は求めていたものではあるのだが、もっと求めていたものが手に入らず、さらに求めていなかったものが手に入ってしまった。
正確には目に入ってしまった。
なんとなく呆れたような視線を向けながら門番曰く。
「このドレス、お嬢様の趣味でスリットがやたら深くなってる上に生地まで薄くされてしまいましてね。下着なんかつけたら横から見えるわ形がくっきり浮かび上がるわで却って恥ずかしいんですよ」
氷精に比べたら随分とまっとうな理由である。
これなら納得できなくもない。
出来なくもないが、この門番、怒ってはいるが恥ずかしがってる様子は無い。
この辺は氷精と全く同じである。
仮に文がはいてない状況でスカートを捲られでもしたなら怒り以上に羞恥で真っ赤になるだろう。
へたり込んでしまうかもしれない。
駄菓子菓子、門番にも氷精にも羞恥は無いようだ。
文との差は一体なんだろうか。
「そ、それはともかく恥ずかしくないんですか!?」
「んー、まぁ普段の行動であそこまでめくれるような事は無いし、そうじゃなくてもチルノちゃんとかにしょっちゅう捲られてるから慣れちゃってるしなぁ…」
驚きである。
というか、そんなことに慣れてしまっていいのだろうか。
文は自分の中の当たり前が揺らいでいくのを感じていた。
「ところで、もしかして取材ってこれが目的なんですか?」
「んぅえ!?そ、そうです。ぱんつ見たいと思っ……あ」
混乱の中にあってあっさりしゃべってしまう。
どう考えても死亡フラグです以下略。
だというのに豪快に笑い飛ばす門番。
「あはははは。そんなことなら普通に言ってくれればいくらでもお見せしますが。まぁ、見ての通り目的のものではなさそうですが」
再びすそをめくり上げる門番。
羞恥も何もあったものではない。
いくら好物といっても、やはりシチュエーションが大事。
こうもぽこぽこ見せられては有り難味もないし、相手に主導権を握られてしまってる状況では自分のペースも出しにくい。
結果、文の方が真っ赤になって大慌てである。
「もういいです!ぱんつじゃないなら意味ないですし!」
「そうですか。まぁ、お見せできるのはここまでです。これ以上は流石に駄目ですよ」
これ以上とはなんだろうか。
もっと凄い世界を想像してしまい、慌ててそのイメージを追い払う。
初心なねんねでもあるまいに、この程度で動揺するなんてどうかしてると思うが、完全に翻弄されている状況では中々立て直しも出来ない。
そんな文をニコニコ眺めながら門番は訂正する。
「これ以上とはこの先、つまり紅魔館の住人のことです。彼女達のぱんつを求めるつもりなら、仕方がないですけど本気で止めますよ」
口調が変わったわけでも、表情が変わったわけでもない。
だが、明らかに文は気圧されてしまった。
精神比重が重い妖怪にとって本気で戦う事の意味はとてつもなく重い。
特に精神的に負けた場合、その認識が自己を弱くし、結果的にこれまで勝てた相手にも勝てなくなり、といった負の螺旋に囚われる可能性すらある。
ゆえに、妖怪が本気で戦う事はすなわち背水の陣を敷いた事と同義。
呪符システムが導入された以降、その傾向はますます強くなった。
これらの状況の中で、それでも門番は本気を出すと言うのだ。
文とは覚悟が違う。
この時点で既に文に勝ち目は無い。
「そもそも、今の紅魔館でぱんつを見るというのは絶対に無理なんですけどね」
「え、それはどういう…」
疑問を投げてみたが、なんとなく想像がつく文。
「まぁ、大体想像されているとおりじゃないですかね。個人的にはあまりよろしくない風潮だとは思いますが」
その言葉につられてこの館の住人を思い浮かべる文。
先ほどアレな想像をしかけた事もあり、かなり鮮明な映像が浮かび上がってくる。
顔が出てきて、上半身が出てきて、下半身が出
「!?」
ふと気がつくと文字通り目の前に門番の握りこぶし。
「お嬢様たちのそういう姿を思い浮かべるのは、めっ、ですよ」
ちょっと意識を妄想の世界に飛ばしたと思ったらこれですよ。
だから現実っていやなんだ。
門番はかわいらしい感じで言ってるものの、目の前にあるグーパンチがすべて台無しにしてる。
そもそも、思い浮かべることすら禁止とはどういう了見だろうか。
思想の自由というものを窓から投げ捨てるその行為は、マスコミである文にとっては許しがたい暴挙である。
そんな輩には手取り足取りそれ以外にも色々取り取りしながら、その間違いを修正してやるのが文の使命であるし、実際そうしてきた。
もちろん、そんなこと誰にも命令されたわけではないがとにかくこれは使命なのだ。今決めた。
さぁ、立ち上がれ文よ!
かつての愚か者共同様、目の前のこいつにもわからせてやるのだ!
腹に力をこめ、今まさに突進するのだ!
--左脚部機関活動停止!
--右脚部機関活動停止!!
--腰部機関も活動停止しました!!腹部機関より下方は全滅の模様です!!
文の脳内にけたたましいアラートが響き渡る。
こんなときに緊急事態である。
突撃しようにもこれでは身動きすら取れないではないか。
動け、動け、動け!動け、動いてよ!今動かなきゃ、何にもならないんだ!
何にもなりませんでした。
思っただけでどうこうなるなら現実はもっと色々と楽だよねー、ですよねー。
まぁ、要するにびびって腰が抜けてしまったわけで。
だって、さっきのパンチ、明らかに殺りにきてたもん。
寸止めされたけど。
本気で来るって比喩でもなんでもなかった。
この門番マジパネェ。
「あー、言いたい事はわかりますよ。私だって個人の頭の中までどうこう出来るなんて本気で考えてるわけじゃないですから」
本気でびびり入った文の様子に苦笑しながらフォローする門番。
その割には言動不一致はなはだしい感じですが。
「ただまぁ、さすがに私の前であからさまにそういう事されるのは困ります。責務としても個人的な感情としてもね。せめて見えないところでやってください」
そう言って、にっこりと笑う門番。
太陽のようなと形容される笑顔が今の文にとってはただただ怖いものでしかなかった。
「まぁ、そんなわけですから今日のところはお引き取りくださいね」
「わ、わかりました!帰りますから!」
「そうしてもらえると助かります。今度はもっとまともな理由で来て下さいね」
結局文は紅魔館を後にせざるを得なかった。
-------------------------------------------------------------------------------
そんな感じで次の獲物を探し始めるが、中々引っかからない。
神社は巨大な結界が張られて侵入できず。
どうも魔法使いと協力して冷気を閉じ込めているらしく、ちょっとやそっとで突破できそうな代物ではなかった。
あきらめて永遠亭に行ってみれば、みんなそろって避暑旅行。
不死人や半獣も連れて行ったらしく、そちらの方面を攻める事も無理だった。
というか、人里ほっといていいのだろうか。
人里自体も論外。
傍若無人な文といえど、流石に弱い人間相手にどうこうする気は無い。
まぁ、下手な事して半獣と巫女に仕返しをされるのが怖いだけだが。
地底も却下。
鬼がいるところに向かうなんて想像しただけで身震いがする。
命蓮寺は寺ごと魔界へ里帰り。
いつのまに魔界が故郷になったのだろうか。
冥界も駄目。
庭師は強化合宿という名の爺の余興に付き合わされるために拉致されていたし、冥界の姫君は当然の如くはいてなかった。
別に和服にぱんつでも良いのではないかと文は思うのだが一般的にはやっぱりNGらしい。
その亡霊嬢から、妖怪の賢者は実は大変に純情で初心なのでからかうと面白いという有意義な情報を得て向かったマヨヒガでは、肝心の主は猫と一緒に避暑中、残った狐もくーるびずとかそんな感じで道士服の青い部分だけしか身につけてなかった。
当然はいてなかった。
最後の望みをかけた山の神社では、満面の笑みをたたえた巫女がのーおぱんつ健康法なるものを勧めてきた。
当然の如く本人も実践しているらしい。
密かにライバル視(おっぱい的な意味で)していた人物が、はるか未来に生きている事を実感させられて、文は大いに沈んだ。
妖怪の山上空に戻ってきた文は色々と思いを馳せる。
皆はいてなかった。
もちろん確認できた範囲は狭いのでそれだけで皆とくくるのは乱暴ではあるものの、それでも無視できない割合ではいてなかった。
ねっちょい事は大好きな文だが、それでも本人の中には境界線というものがあり、ぱんつはいてないはその線の向こう側の事象だ。
そのはずだった。
越えてはならない一線だからこそ惹かれ、情熱を燃やすことが出来た。
ぱんつも大事だがはいてないも大事という考えの根源はそこにあった。
だが、現実には何人ものうら若き乙女たち(少なくとも見た目は)がその境界の向こう側にいたのだ。
文は悩む。
自分が思い描いていた境界線は、実は一般的なそれとの剥離があるのではないのか。
この薄い布一枚にこれほど頭を悩まされることになるとは。
だが、いくら考えてもわからない。
わかるわけはないのだ。
だって、向こう側を知らないのだから。
なら答えは明白である
知らないのなら知ればいい。
何、難しいことはない。
両肩から伸びている機関をスカート内部の腰部機関に沿え、重力の方向に移動させるだけである。
それだけのことのはずなのになかなか実行に移せない。
自分の中の境界を超えるということがこれほど難しいとは。
境界を操るあの妖怪はこんなことを毎回やってるのか。
胡散臭いやつだとは思うが改めてそのすごさを思い知った。
何でこんなことで八雲のすごさを再認識しなければならないとか、そもそも境界を操ることと何の関係もないのではとか、そういった疑問は湧いてこなかったようだ。
頭のほうは沸きっぱなしなのにな。
とにかくこのままではどうにもならない。
行動するしかないのだ。
いいネタがあればわき目も振らずすっ飛んでくあの行動力の数万分の1程度の労力でしかないのだし。
目の前にある未知の領域を知るための手段が簡単に用意されてるのに、それを実行するのをためらうなど射命丸文にあってはならないのではないか。
文ちゃんのちょっといいとこ見てみたい
逝け逝け轟々頑張れ文ちゃん!
目を瞑り、一気に防壁を引き剥がす…っ!
風を感じる。
うだる暑さの中でふとささやくように吹く涼風のごとき爽やかさ。
優しく撫でるそれは文の心を落ち着かせる。
目を開くと青く澄んだ空。
眼下には雄大な山。
相変わらず日差しは厳しいものの、大いなる自然の恵みとして感じられる。
ふと視線を移せば、紅魔湖は陽光を煌かせその美しさを際立たせている。
深緑に染まる木々から聞こえるセミの声は今までのような雑音ではなく絶妙なハーモニーを奏でているようにすら感じられた。
どれも普段から目にしている光景。
気にしたこともなかったものたち。
それが今はどうだろう。
そのどれもが珠玉の宝石のように感じられる。
ああ、世界はこんなにも輝きに満ちていたのか。
文は手にした薄布を見上げる。
ただのぱんつだと思っていたが、どうやらこれは文字通りの境界だったようだ。
これが隔てていたものは今目の前に広がる光景なのだろう。
布一枚分とはいえ障壁を排除したことにより、今まで気にもしなかった自然の素晴らしさを感じることが出来る気がした。
はいていなかった彼女たちも同じような境地に至ったのだろうか。
いや、理由は個々にあるのだろう。
現に今日出会ったものたちで同じ理由を有するものは一人もいなかった。
それでいいと文は思う。
ぱんつが境界なのは間違いないだろうが、何と隔てているものであるかはそれぞれ違うのであろう。
文の場合はそれがこの大自然との境界であっただけである。
だが、文にも他のものたちにもおそらく共通することがある。
それは、文字通り自らの壁を壊し次の段階に上ったということだ。
風の巫女に感じた、彼女が未来を生きているという感覚は間違ったものではなかったのだろう。
同じステージに至った文にはそれがよくわかる。
-アバヨ、昨日!
-よろしく、未来!
文は静かに手を離した。
青い空の中を舞っていく白を見つめながら、文はこの世界に感謝し、自らの決意を新たにした。
夏である。
当然にしてひたすら暑いのである。
文の頭もいい感じに沸騰しているようである。
ちょうどネタもなかった事だしこれ幸い。
思い立ったら即行動。
傍迷惑な出歯亀が空に解き放たれた。
「誰もいないってどういうことよ!」
言葉どおりである。
まぁ、この暑さの中で好き好んで外に出る酔狂がそういるはずもなく。
文は自分が凄く馬鹿なことをしているんじゃないかという気になってきた。
実際目的を考えれば馬鹿そのものではあるが。
だが、そんな状況であってもやっぱり酔狂な奴はいるものである。
茹だる日の中をふよふよと動く青い塊。
文は幻想風靡もかくやと言わんばかりの速度ですっ飛んでいった。
「こんにちは、チルノさん。ちょっとお話いいですか?」
青い塊は氷精だった。
さすが馬鹿の代名詞。
こんな灼熱地獄でも平気で飛び回る能天気振り。
尤も本人の冷気で熱を遮断してるらしく、イメージとは裏腹に夏に弱いということは無いらしい。
全くうらやましい限りであるが、今現時点においてはどうでもいいことである。
こんな暑い中を散々飛び回ってようやく手にした獲物、逃す道理など無い。
「なに?ぶんぶんじゃない。なんか用なの?」
「ええ、ちょっとチルノさんにお願いがありまして」
ここからが勝負である。
沸いているとはいえ、文は自分の目的が普通で無いことくらいは理解している。
氷精が相手とはいえ、上手い事搦め手で進めることに越した事は無い。
腐っても天狗、腐っても出歯亀。
相手に気づかれぬように事を進め、目的のブツを堪能するのみである。
「ちょっとチルノさんのスカートめくってもらえませんか?」
ド直球。真ん中行った。
出歯亀ですらなかった。
残念ながら文は腐っていたのではなく、腐りきっていたのだ。
駄目だこの天狗、早く何とかしないと…。
と、考えるのは早計である。
文が腐りきっているのは事実ではあるが、決して浅はかというわけではない。
こんな事を乞われたら普通は思考が停止する。フリーズから回復したらしたで、今度は羞恥と怒りに塗れるものだ。
文は、そんな表情を眺めるのが好きだった。ええ、そりゃもう大好きだった。
そんな相手に二度三度と追い討ちをかけ冷静な判断力を奪い、その隙にパシャりとやる。
それが清く正しい射命丸の基本スタイル。
助平で傲慢不遜、手段を選ばぬえげつなさ。
文は実に正しい天狗なのだ。
腐りきってるが。
ゆえに先の台詞である。
相手が氷精だからと言って油断するような事はなく、文は基本に忠実に行動したに過ぎない。
結局基本の積み重ねこそが大事なのだ。
誤算があったとすれば、相手が氷精だったからという他無いであろう。
型にはまらぬ相手ほど厄介な事は無いのである。
「ん?別にいいけど」
何の疑問も抱かず氷精はスカートを手にする。
ぺらり。
……。
ぺしん。
「いたっ!ちょっと何するのさ!ちゃんとめくってあげたでしょ!」
めくられていたスカートが元に戻る。
怒っている氷精が視界に入る。声も聞こえる。
だが、それらの情報が上手く処理できない。
文は自分の目に何が映ったのかよくわかっていなかった。
どうやら数秒固まっていたらしい。
気がついたときには氷精の手を引っ叩いていた。
ぺしんはその時の音だった。
「な、ななななんではいてないんですか!」
「何言ってるのよ!ちゃんとスカートはいてるよ!」
「スカートじゃありません!ぱんつですよぱんつ!何でですか!」
文が固まったのはそういうことだった。
いきなりスカートをめくる相手の行動にも驚いたが、そんな状況でいきなりとんでもないものを見せられたら色々とダメージがでかい。
ガードクラッシュされた直後に超必を食らったようなものだ。
相手を固めるつもりが逆に自分が固められるとは世話が無い。
とにかく理由を問い詰めないといけない。
折角のぱんつが台無しになってしまったのだから。
「えー。だってぱんつってごわごわしててなんか気持ち悪いんだもん」
これだからお子様は。
そんな理由ではいてないのか。
文の絶望感は色々と半端なかった。
彼女の名誉のために言っておくが、別に文はぱんつフェチと言うことは無い。
いや、ぱんつは大好きだがぱんつだけが好きという事ではない。
むしろ『はいてない』のはぱんつ以上に大好物だし、普段の文ならそれこそ秒間128フレーム、
つまり1秒間に32枚撮りフィルムを4つ使い切る勢いで撮影完了するだろう。
だが、発酵しすぎて腐臭すら漂わせている今の文には、ぱんつがなかったことははいてない以上に深刻な問題となっていた。
大体なんだ、どうしてそんな至極当然のようにこちらに見せ付けてくるのだ。
少しは恥ずかしがってくれないと面白くない。
出し抜くつもりが結果的に出し抜かれた事、自分の思い通りに事が運ばない事、ついでに沸いていたことなどから、文はたまらない気持ちになった。
「チルノさんのバカー!もう知りません!」
一瞬で踵を返すとそのままはるか彼方へ。
あとには全く訳がわかっていない氷精が残されるのみ。
-------------------------------------------------------------------------------
先ほどは色々と失敗したが、この程度であきらめる文ではない。
そんなやわな精神では天狗もマスコミもやってられない。
残念ながら空にはめぼしい獲物が見つからないため、今度は地上に目を向ける。
しばらく探していると、湖のほとりの紅い屋敷の前に緑色の物体が動いていた。
今度こそはと意を決して近づくことにした。
門番は奇妙な踊りをやめて接近する文を見やる。
なんだかんだでちゃんと仕事はしているようである。
「こんにちは、美鈴さん。今日は紅魔館に取材に伺いました」
「ご丁寧にどうも。取材目的は何でしょうか」
妖怪の癖に実に礼儀正しい奴である。
が、考えてみると門番は受け付けも兼ねているわけだから、こういった態度になるのもおかしくは無いのだろう。
取材の時には、表面的なものだけでも礼節をわきまえる文と同じようなものなのかもしれない。
そんな門番の素の表情、それも羞恥や怒りを見てみたいと思う文だが、今度は本当に直球で行く事にした。
気を使う相手に下手な小細工は通用しない可能性があるし、何より文自身一刻も早くぱんつを拝みたかった。
「たいした事ではありません。そこに立っていてもらえるだけでいいんです…よっ!」
同時に風神扇を一閃。
巻き起こる突風。めくれ上がるスカート。
案の定、門番自体は吹き飛ばされる様子は無い。
これならじっくりと拝めるはずである。
さぁ、門番のぱんつは如何程か?
白?黒?ド派手な赤や紫?縞からレースから水玉透け々々なんでもござれ!
無地の肌色だーーっ!!!!
「ちょっと待って!なんで貴方まではいてないんですか!?」
「うわっとと…。もう、いきなりですね!もしかして勝負するんですか!?」
「そんなことはどうでもいいです!ぱんつですよぱんつ!なぜはいてないの!」
突風が収まり怒り気味の門番。
反応自体は求めていたものではあるのだが、もっと求めていたものが手に入らず、さらに求めていなかったものが手に入ってしまった。
正確には目に入ってしまった。
なんとなく呆れたような視線を向けながら門番曰く。
「このドレス、お嬢様の趣味でスリットがやたら深くなってる上に生地まで薄くされてしまいましてね。下着なんかつけたら横から見えるわ形がくっきり浮かび上がるわで却って恥ずかしいんですよ」
氷精に比べたら随分とまっとうな理由である。
これなら納得できなくもない。
出来なくもないが、この門番、怒ってはいるが恥ずかしがってる様子は無い。
この辺は氷精と全く同じである。
仮に文がはいてない状況でスカートを捲られでもしたなら怒り以上に羞恥で真っ赤になるだろう。
へたり込んでしまうかもしれない。
駄菓子菓子、門番にも氷精にも羞恥は無いようだ。
文との差は一体なんだろうか。
「そ、それはともかく恥ずかしくないんですか!?」
「んー、まぁ普段の行動であそこまでめくれるような事は無いし、そうじゃなくてもチルノちゃんとかにしょっちゅう捲られてるから慣れちゃってるしなぁ…」
驚きである。
というか、そんなことに慣れてしまっていいのだろうか。
文は自分の中の当たり前が揺らいでいくのを感じていた。
「ところで、もしかして取材ってこれが目的なんですか?」
「んぅえ!?そ、そうです。ぱんつ見たいと思っ……あ」
混乱の中にあってあっさりしゃべってしまう。
どう考えても死亡フラグです以下略。
だというのに豪快に笑い飛ばす門番。
「あはははは。そんなことなら普通に言ってくれればいくらでもお見せしますが。まぁ、見ての通り目的のものではなさそうですが」
再びすそをめくり上げる門番。
羞恥も何もあったものではない。
いくら好物といっても、やはりシチュエーションが大事。
こうもぽこぽこ見せられては有り難味もないし、相手に主導権を握られてしまってる状況では自分のペースも出しにくい。
結果、文の方が真っ赤になって大慌てである。
「もういいです!ぱんつじゃないなら意味ないですし!」
「そうですか。まぁ、お見せできるのはここまでです。これ以上は流石に駄目ですよ」
これ以上とはなんだろうか。
もっと凄い世界を想像してしまい、慌ててそのイメージを追い払う。
初心なねんねでもあるまいに、この程度で動揺するなんてどうかしてると思うが、完全に翻弄されている状況では中々立て直しも出来ない。
そんな文をニコニコ眺めながら門番は訂正する。
「これ以上とはこの先、つまり紅魔館の住人のことです。彼女達のぱんつを求めるつもりなら、仕方がないですけど本気で止めますよ」
口調が変わったわけでも、表情が変わったわけでもない。
だが、明らかに文は気圧されてしまった。
精神比重が重い妖怪にとって本気で戦う事の意味はとてつもなく重い。
特に精神的に負けた場合、その認識が自己を弱くし、結果的にこれまで勝てた相手にも勝てなくなり、といった負の螺旋に囚われる可能性すらある。
ゆえに、妖怪が本気で戦う事はすなわち背水の陣を敷いた事と同義。
呪符システムが導入された以降、その傾向はますます強くなった。
これらの状況の中で、それでも門番は本気を出すと言うのだ。
文とは覚悟が違う。
この時点で既に文に勝ち目は無い。
「そもそも、今の紅魔館でぱんつを見るというのは絶対に無理なんですけどね」
「え、それはどういう…」
疑問を投げてみたが、なんとなく想像がつく文。
「まぁ、大体想像されているとおりじゃないですかね。個人的にはあまりよろしくない風潮だとは思いますが」
その言葉につられてこの館の住人を思い浮かべる文。
先ほどアレな想像をしかけた事もあり、かなり鮮明な映像が浮かび上がってくる。
顔が出てきて、上半身が出てきて、下半身が出
「!?」
ふと気がつくと文字通り目の前に門番の握りこぶし。
「お嬢様たちのそういう姿を思い浮かべるのは、めっ、ですよ」
ちょっと意識を妄想の世界に飛ばしたと思ったらこれですよ。
だから現実っていやなんだ。
門番はかわいらしい感じで言ってるものの、目の前にあるグーパンチがすべて台無しにしてる。
そもそも、思い浮かべることすら禁止とはどういう了見だろうか。
思想の自由というものを窓から投げ捨てるその行為は、マスコミである文にとっては許しがたい暴挙である。
そんな輩には手取り足取りそれ以外にも色々取り取りしながら、その間違いを修正してやるのが文の使命であるし、実際そうしてきた。
もちろん、そんなこと誰にも命令されたわけではないがとにかくこれは使命なのだ。今決めた。
さぁ、立ち上がれ文よ!
かつての愚か者共同様、目の前のこいつにもわからせてやるのだ!
腹に力をこめ、今まさに突進するのだ!
--左脚部機関活動停止!
--右脚部機関活動停止!!
--腰部機関も活動停止しました!!腹部機関より下方は全滅の模様です!!
文の脳内にけたたましいアラートが響き渡る。
こんなときに緊急事態である。
突撃しようにもこれでは身動きすら取れないではないか。
動け、動け、動け!動け、動いてよ!今動かなきゃ、何にもならないんだ!
何にもなりませんでした。
思っただけでどうこうなるなら現実はもっと色々と楽だよねー、ですよねー。
まぁ、要するにびびって腰が抜けてしまったわけで。
だって、さっきのパンチ、明らかに殺りにきてたもん。
寸止めされたけど。
本気で来るって比喩でもなんでもなかった。
この門番マジパネェ。
「あー、言いたい事はわかりますよ。私だって個人の頭の中までどうこう出来るなんて本気で考えてるわけじゃないですから」
本気でびびり入った文の様子に苦笑しながらフォローする門番。
その割には言動不一致はなはだしい感じですが。
「ただまぁ、さすがに私の前であからさまにそういう事されるのは困ります。責務としても個人的な感情としてもね。せめて見えないところでやってください」
そう言って、にっこりと笑う門番。
太陽のようなと形容される笑顔が今の文にとってはただただ怖いものでしかなかった。
「まぁ、そんなわけですから今日のところはお引き取りくださいね」
「わ、わかりました!帰りますから!」
「そうしてもらえると助かります。今度はもっとまともな理由で来て下さいね」
結局文は紅魔館を後にせざるを得なかった。
-------------------------------------------------------------------------------
そんな感じで次の獲物を探し始めるが、中々引っかからない。
神社は巨大な結界が張られて侵入できず。
どうも魔法使いと協力して冷気を閉じ込めているらしく、ちょっとやそっとで突破できそうな代物ではなかった。
あきらめて永遠亭に行ってみれば、みんなそろって避暑旅行。
不死人や半獣も連れて行ったらしく、そちらの方面を攻める事も無理だった。
というか、人里ほっといていいのだろうか。
人里自体も論外。
傍若無人な文といえど、流石に弱い人間相手にどうこうする気は無い。
まぁ、下手な事して半獣と巫女に仕返しをされるのが怖いだけだが。
地底も却下。
鬼がいるところに向かうなんて想像しただけで身震いがする。
命蓮寺は寺ごと魔界へ里帰り。
いつのまに魔界が故郷になったのだろうか。
冥界も駄目。
庭師は強化合宿という名の爺の余興に付き合わされるために拉致されていたし、冥界の姫君は当然の如くはいてなかった。
別に和服にぱんつでも良いのではないかと文は思うのだが一般的にはやっぱりNGらしい。
その亡霊嬢から、妖怪の賢者は実は大変に純情で初心なのでからかうと面白いという有意義な情報を得て向かったマヨヒガでは、肝心の主は猫と一緒に避暑中、残った狐もくーるびずとかそんな感じで道士服の青い部分だけしか身につけてなかった。
当然はいてなかった。
最後の望みをかけた山の神社では、満面の笑みをたたえた巫女がのーおぱんつ健康法なるものを勧めてきた。
当然の如く本人も実践しているらしい。
密かにライバル視(おっぱい的な意味で)していた人物が、はるか未来に生きている事を実感させられて、文は大いに沈んだ。
妖怪の山上空に戻ってきた文は色々と思いを馳せる。
皆はいてなかった。
もちろん確認できた範囲は狭いのでそれだけで皆とくくるのは乱暴ではあるものの、それでも無視できない割合ではいてなかった。
ねっちょい事は大好きな文だが、それでも本人の中には境界線というものがあり、ぱんつはいてないはその線の向こう側の事象だ。
そのはずだった。
越えてはならない一線だからこそ惹かれ、情熱を燃やすことが出来た。
ぱんつも大事だがはいてないも大事という考えの根源はそこにあった。
だが、現実には何人ものうら若き乙女たち(少なくとも見た目は)がその境界の向こう側にいたのだ。
文は悩む。
自分が思い描いていた境界線は、実は一般的なそれとの剥離があるのではないのか。
この薄い布一枚にこれほど頭を悩まされることになるとは。
だが、いくら考えてもわからない。
わかるわけはないのだ。
だって、向こう側を知らないのだから。
なら答えは明白である
知らないのなら知ればいい。
何、難しいことはない。
両肩から伸びている機関をスカート内部の腰部機関に沿え、重力の方向に移動させるだけである。
それだけのことのはずなのになかなか実行に移せない。
自分の中の境界を超えるということがこれほど難しいとは。
境界を操るあの妖怪はこんなことを毎回やってるのか。
胡散臭いやつだとは思うが改めてそのすごさを思い知った。
何でこんなことで八雲のすごさを再認識しなければならないとか、そもそも境界を操ることと何の関係もないのではとか、そういった疑問は湧いてこなかったようだ。
頭のほうは沸きっぱなしなのにな。
とにかくこのままではどうにもならない。
行動するしかないのだ。
いいネタがあればわき目も振らずすっ飛んでくあの行動力の数万分の1程度の労力でしかないのだし。
目の前にある未知の領域を知るための手段が簡単に用意されてるのに、それを実行するのをためらうなど射命丸文にあってはならないのではないか。
文ちゃんのちょっといいとこ見てみたい
逝け逝け轟々頑張れ文ちゃん!
目を瞑り、一気に防壁を引き剥がす…っ!
風を感じる。
うだる暑さの中でふとささやくように吹く涼風のごとき爽やかさ。
優しく撫でるそれは文の心を落ち着かせる。
目を開くと青く澄んだ空。
眼下には雄大な山。
相変わらず日差しは厳しいものの、大いなる自然の恵みとして感じられる。
ふと視線を移せば、紅魔湖は陽光を煌かせその美しさを際立たせている。
深緑に染まる木々から聞こえるセミの声は今までのような雑音ではなく絶妙なハーモニーを奏でているようにすら感じられた。
どれも普段から目にしている光景。
気にしたこともなかったものたち。
それが今はどうだろう。
そのどれもが珠玉の宝石のように感じられる。
ああ、世界はこんなにも輝きに満ちていたのか。
文は手にした薄布を見上げる。
ただのぱんつだと思っていたが、どうやらこれは文字通りの境界だったようだ。
これが隔てていたものは今目の前に広がる光景なのだろう。
布一枚分とはいえ障壁を排除したことにより、今まで気にもしなかった自然の素晴らしさを感じることが出来る気がした。
はいていなかった彼女たちも同じような境地に至ったのだろうか。
いや、理由は個々にあるのだろう。
現に今日出会ったものたちで同じ理由を有するものは一人もいなかった。
それでいいと文は思う。
ぱんつが境界なのは間違いないだろうが、何と隔てているものであるかはそれぞれ違うのであろう。
文の場合はそれがこの大自然との境界であっただけである。
だが、文にも他のものたちにもおそらく共通することがある。
それは、文字通り自らの壁を壊し次の段階に上ったということだ。
風の巫女に感じた、彼女が未来を生きているという感覚は間違ったものではなかったのだろう。
同じステージに至った文にはそれがよくわかる。
-アバヨ、昨日!
-よろしく、未来!
文は静かに手を離した。
青い空の中を舞っていく白を見つめながら、文はこの世界に感謝し、自らの決意を新たにした。
駄菓子菓子、それがいい
ガークラで聖帝思い出した
続報待ってます。
写真はただ仁王立ちしてるだけで別に見えてるわけでも何でもないんだ。そもそも見えてたら新聞に載せられないしな。
そう思うことにする。すっぱい葡萄ってやつだな。
ええい、もっとしっかり念写せぬか!
拡大写真を! 一心不乱に拡大写真を念写してくださいお願いします!!