Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ふたりはリリキュア!

2010/04/05 19:40:32
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8:30











「……ほ~ら、いいじゃないのよ~」
「だっだめです!」
 幻想郷は初夏を迎えていた。
 
 ここは霧の湖。
 ちょうど紅魔館の対岸にあたる場所では、夏を迎えてドS具合が絶好調になってきた
『四季のフラワーマスター「風見幽香」』が名もなき大妖精をいじめていた。

「ねえ、わたしにも紅魔郷の中ボスやらせないさいよ~。どうせ同じような髪の色だからばれやしないわよ」
「そ、そんなこと言われてもっ……」
 必死に抵抗する大妖精。
 すでに涙目である。
 彼女が担当する紅魔郷2面中ボスといえば、シリーズを初めてプレイする初心者が最初に出会う中ボスである。
 世間では一見軽く見られがちな立場の彼女ではあるが、そんな彼女だからこその立場やプライドというものもある。

――初心者さんに気持ち良く倒される。

 もし2面中ボスにいるのが大妖怪「風見幽香」だったとしたら……。
 そのあまりに高い壁に多くの人たちが阻まれ、幻想郷という世界から去ってしまうかもしれない。

 そんなことをさせるわけにはいかない!
 中ボスには中ボスの意地があるのだ。
 あまり中ボス中ボスと連呼すると悲しくなる時もあるけど、大ちゃんは元気です。
 だが所詮彼女は名もなき大妖精。
 フラワーマスターとまで呼ばれている大妖怪にかなう術など無い。
 
 そのとき。

『待ちなさい!』

 高らかに響く二つの声が、大空にユニゾンする。
「誰だ!!」
 大妖精のサイドテールを引っ張っていた幽香が声のした方をにらみつける。
 雑魚妖精程度ならその視線だけでにらみ殺せそうな壮絶な視線だ。

「リリー・ブラック!」
「リリー・ホワイト!」
 そこにいたのは白と黒の色違いのドレスに身を包んだ二人の少女。
 湖を見下ろす小高い崖の上でポーズを決めて名乗りを上げる。
『ふたりはリリキュア!!』 

(あんなところに崖なんてあったかしら……)
 突然の展開に大妖精の髪をつかんでいた幽香の拳がゆるむ。
 その隙に大妖精は幽香から離れ、近くにあった大樹の陰に隠れる。
「リリキュア……。だが、見たところお前たちも所詮妖精。いったい何をしてくれるのかしら?」
 優雅な仕草で愛用の日傘を広げて構えるフラワーマスター。
 その顔には涼やかな微笑みを浮かべているが、彼女をよく知るものならばその笑みがとてつもなく危険だということを皆知っている。
「確かに私達は妖精です」(ビシッ!)
「ついでに中ボスです」(ビシッ!)
 一言発するたびにいちいちポーズをとるリリキュア。
「だけど、妖精には妖精の戦い方があるんです!」(ビシシッ!!)
 
「はっ!」
 気合いとともに空高く飛び上がるリリキュア。

『スプリングウェーブ』
 技の名前らしきものを叫び、幽香をはさんで着地するリリキュア。
 そして二人は幽香を中心にして回りながら歌いだした。
「春ですよ~♪」
「春ですよ~~♪」

 ここで説明しよう。
 向日葵をかたどった弾幕を使うことから夏のイメージが強い風見幽香であるが、
 彼女がサディスティックな性格を発揮するのは主に夏だけである。
 あまり知られてはいないが彼女は季節によって性格が一変するという特殊な体質の持ち主だった。


 春は『清純系お嬢様』

 夏は『アルティメットサディスティッククリーチャー』
 
 秋は『天然系お姉さん』

 冬は『病弱系メガネ少女』

(※春や秋でも気温が高くなったりすると夏の性格になる事があるので注意してください)


「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 
 リリーの歌を聴いた幽香は少女にあるまじき絶叫を発しながら悶絶し、その場に倒れこんだ。
「い、今のは……」
 隠れていた大妖精が好奇心に負けて恐る恐る樹の陰から出てきた。
「この技を食らったものは頭の中が一週間くらい春になってしまうのよ」(ビシッ!) 
 これがリリキュアの恐るべき必殺技であるが、恐らく幽香以外の者に対しては何の効果も発揮しないと思われる。
 ひょっとしたら秋姉妹にも若干効果はあるかもしれない。
「う…………んっ……ここは?」
 倒れていた幽香が目を覚ました。
 ふわりと優雅に立ち上がり、服についたホコリをゆっくりとした仕草で払い落す。
 だが、その顔には先ほどまでの鋭い視線はもう微塵も無い。
「あらあら、そこの可愛い妖精さん。リボンが曲がっているわよ」
 そういって大妖精のサイドテールを結んでいるリボンにそっと手を触れ曲がりを直す。
 自分が曲げたということは覚えていない様子だった。
「きれいな髪ね……うらやましいわ……」
 大妖精の背筋にゾワゾワっと得体のしれない寒気が走る。
(こ……これはこれで怖いよう……)
 もうおしっこちびっちゃいそうな大妖精であった。
 そんな大妖精にひらひらと手を振り、それではごきげんようとスカートの裾をひるがえして幽香は飛び去って行った。

「…………えーと……どなたかは知りませんが、助けていただいてありがとうございました」
 二人のリリキュアに向かってお辞儀をする大妖精。
 本当はどなたか知っていた大妖精であったが、こういう場合は知らないふりをするのがマナーである。
 単に関わりたくなかっただけという可能性もあるが。

「気にすることはないわ」(ビシッ!)
「だって私達仲間だもの」(ビシッ!)
「は……はぁ……」 

 確かに同じ中ボスで妖精同士。
 仲間と言えない事も無い……………………………………が、

「おめでとう、今日からあなたはリリー・グリーンよ!」(ビシッ!)
「一緒に幻想郷の平和を守りましょう」(ビシッ!)
 二人は左右から大妖精の両脇に腕をからませ、しっかりと確保しながら空いた片手でポーズを決める。
『一緒に幻想郷の平和を守りましょう』(ビシシシッ!!)

「誰かたすけて~!」
 



 次回。
 
 ふたりはリリキュア マックスハート!
プチ初投稿になります。

嘘々話に投稿しようとしたが他の人の作品を読むのが楽しくなっちゃって間に合わなかった作品です。
封印するのももったいないのでプチに乗っけてみる。
次回はありません。
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コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
春と秋の幽香に凄く会いたい
2.名前が無い程度の能力削除
え…変身シーンは?


>近く似合った
→『近くにあった』
3.see削除
>2様
誤字指摘ありがとうございました。
勢いで一時間くらいで書いたものなので推敲とか全くしてませんでした。
4.名前が無い程度の能力削除
春と夏の中間のゆうかりんが一番理想