Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

うぐいす

2010/04/02 15:08:40
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うぐいすは鳴き声の練習をするという。


ホーホケキョ。


正しく鳴く為に、必死に歌うのだ。


ホーホー。

キョケキョケ。

ホーホキョケ?


途中、之でいいの? というようなイントネーションで鳴いたりもする。

正直聞かれても困るのだが、少なくともその鳴き方は違うと私は思う。


ホーケキョ。

ホー……ホケキョ。

ホーホケキョ♪


そしていつの日か、綺麗な歌声を聞かせてくれるはずだ。

これはとある歌姫の物語。









<うぐいす>








「は~る~♪」


今日も幻想郷の空に、リリーホワイトの歌声が広がる。


「ですよ~♪」


博麗神社の風呂場から、春の歌声が響いていく。


「こら、じっとしてなさい。洗えないでしょう」

「はる~、あわあわなのですよー」


朝日が昇ってまだ数刻も経っていない、幻想郷の朝。

霊夢とリリーは一緒にお風呂に入っていた。

昨日の夜に汗をかく出来事があったからだ。


「それにしてもあんたさ、なにかおかしくない?」

「なにがですか~?」

「いんとねーしょん、っていうの? ちょっとはるですよーって言ってみて」

「はるですよー♪」


澄んだ声が辺りに反響した。

幼い声のなかに深みがあって、聞いていると心が落ち着く。

そんな声なのだが……


「やっぱり変よ」

「はる~?」

「なんていうかなぁ……そう! 関西弁!」

「かんさいってなんですかー?」


皆さんはお気づきだろうか。

霊夢は「はるですよー」の「は」の部分を強調した言い方なのだが、

リリーは「る」の部分が強調されているのだ。


「なんでやねんって言ってみて」

「なんでやねん?」

「ぷ、くくく……あははははは」

「はる~?」


リリーは何故笑われているのか分からないといった顔だ。

でも霊夢が笑ってるからいいかぁなんて考えてたりしている。


「あんた最高ね。でもね」


リリーの頭をわしわしと泡立てながら、霊夢は続けた。


「春が遅れてるのは、もしかしたらそのせいなのかもしれないわね」

「ん~?」

「あんたががんばってるのは知ってるわ。でも最近寒くなったり、雪が降ったりしたじゃない」

「る~……寒い、です」


人里でも桜は早く咲いたのだが、その日のうちに雪が振ったり、場所によっては霰が降ったという。

そして一度は見なくなったはずのレティ・ホワイトロックの姿を見かけたという情報もあった。


「レティさんにも言われたです。暖かくないから寝られないって」

「動物や木々も起きていいのか分からないのかもしれないわね」

「はる~……」


お湯掛けるわよ、と霊夢がリリーの頭を流す。

ぷるぷると頭を振ってお湯を弾いたら、霊夢に小突かれた。


「痛いです~」

「頭を振るからよ」


「霊夢さん~」

「何?」

「春……来たほうがうれしいですか?」

「そりゃそうよ。私は寒いの嫌いだもの。紫も寝てるし面白くないし」

「でも春が来たら……夏がくるです」


リリーは霊夢に聞こえないような声で、どこか寂しそうに俯いた。

どこかで雫が滴る音が聞こえるような気がする。


「リリー、お風呂入りなさい。風邪引くわよ」

「はる~きゅちゅんっ!」


いつの間にか霊夢は先に湯船に浸かっていた。

リリーもくしゃみを一つ、慌てて湯船に浸かる。

タオルを頭に巻いていないので、綺麗な金色の髪が広がった。


「あーもぅ、せっかく洗ったのに。ほら後ろ向きなさい」

「霊夢さん髪の毛ひっぱっちゃ、やーです!」

「じっとしてないと、お嫁にいけないようにしちゃうわよ」

「は、はる~……それは困るです……」

「こうやってトップで括るだけだから、ほほいっと完成」

「はる? あ、霊夢さんとおそろい、です♪」


リリーはお風呂に入るときの霊夢と同じ格好にしてもらった。

といっても、ただ頭の上で髪の毛を止めているだけなのだが。

またお互いに向き合うと、霊夢は空を見ながら話し出した。


「私は夏も好き。秋はご飯が美味しいし、冬も実はそんなに嫌いじゃないの」


目を瞑り、霊夢は自然のまま自分の想いを続ける。


「私はめまぐるしく変わる、この幻想郷が好き。騒がしかったり、時には静かだったり……そしてリリー」


そして、リリーに視線を戻すと、おでことおでこをくっ付けて言った。


「あんたと会える春が、一番好きなのよ?」

「霊夢さん……」


視線がぶつかり、リリーの頬が桜色に染まる。

なんだかもう上せてしまいそうだった。


「だから元気に春を告げてほしいのよ。皆が優しい気持ちになれる歌を聞かせてほしいの」

「歌を……幸せの歌……春……私がんばるです!」

「そう、その勢よ。でもがんばりすぎて倒れない用にね」


霊夢はウインクを一回して、徐に立ち上がった。

瑞々しい体にお湯が跳ね、少女の肢体を太陽が照らす。

リリーから見たらそれはまるで、女神のように美しかった。


「ん? どこ見てるのよ、えっち」

「ち、ちがうですよー! ただ綺麗ですと思っただけです」

「冗談よ。ありがとってあんた顔真っ赤じゃない。上せたの?」

「そういえばなんだか頭がぽーっと……はるる~? ぶくぶく」

「え、ちょっとリリー、リリー!?」


妖精の小さな体には、「春」はまだ暑すぎたみたいで。

しかし芽吹いた春の蕾は、いつか花を咲かせるだろう。

彼女は春を告げる妖精。その彼女に春を告げてくれる人はきっと……










◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


「はるですよー」

「だからそれじゃ関西弁だってば。はるですよー」

「パルですよー?」

「妬ましいわね」

「ハルデスヨー」

「あんたは上海か!」

「はるっ!?」




今日も博麗神社で歌の練習が行なわれている


でもどうやら春はまだまだ来ないらしい


まだ寒いかもしれないけれど


みんな、ちょっとだけ我慢してね


そして彼女の歌が聞こえたら


空を見上げて、声を掛けてあげてほしい


「はるですよー♪」
そそわのみなさーん、げーんきですかー、こじろーですよー♪
春が終わるまでの春の物語、3作品目かな。
現実でも寒い日が続いているのけど、リリーが霊夢と離れたくないからだと思ったら、なんだか許せるようになってきました。でも寒い。

誰かリリーに早く春を伝えてあげてください。
そして我に春をください。

ではまた将来にお会いいたしましょう。またにてぃ~♪
こじろー
[email protected]
http://maira001.blog113.fc2.com/
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
これはよいりりれいむ。
最近は暖かくなってきたから、リリーもがんばってるのかな。
2.奇声を発する程度の能力 in 携帯削除
幻想郷まで届け!春ですよー!!!!
3.名前が無い程度の能力削除
もっとちゅっちゅしてもいいのよ

というかするんだ!
4.ぺ・四潤削除
ホーホキョケ? でずっこけた。
変なイントネーションで「はるですよー」って飛んでたら頬が緩みまくりだろうww
ああ、もう、可愛いなwww
5.こじろー削除
>最近は暖かくなってきたから、リリーもがんばってるのかな。
でも時々急に寒くなったり。
リリーの心情の変化に左右されるのかな?

>幻想郷まで届け!春ですよー!!!!
天までとどけ、いちにのさ~ん♪ ってなんでしたっけ?
春「はる♪」

>もっとちゅっちゅしてもいいのよ
次はもう少し糖分をあげてみてもいいかも。ちゅっちゅとは即ちジャスティス

>ああ、もう、可愛いなwww
リリー可愛いよ可愛いいよリリー
妖々夢で打ち落とすのためらわれるよリリー
でも即ボム