二つの緑瞳が私を見つめていた。
私は妬む。
私は嫉む。
朝の光が妬ましい。
冷たい空気が、目覚めの挨拶が嫉ましい。
昼の陽気が妬ましい。
暖かい大地が、健やかな生活が嫉ましい。
夕の黄昏が妬ましい。
暁の雲が、帰り行く人影が嫉ましい。
月の満ち欠けが妬ましい。
夜の静けさが、安穏と眠りに落ちる連中が嫉ましい。
その巡りにいたあいつに嫉妬する。
私より長く生きてるあいつに嫉妬する。
私より思慮深いあいつに嫉妬する。
私より料理の上手なあいつに嫉妬する。
私より物を持ってるあいつに嫉妬する。
私より多くのものを見てきたあいつに嫉妬する。
私より大事にされるあいつに嫉妬する。
私より字の上手なあいつに嫉妬する。
私より優しいあいつに嫉妬する。
私と違ってお酒が呑めないあいつに嫉妬する。
私と違って煙草を吸わないあいつに嫉妬する。
私より知識のあるあいつに嫉妬する。
私より力の強いあいつに嫉妬する。
私よりスペルカードが得意なあいつに嫉妬する。
私より勝率の高いあいつに嫉妬する。
私より器用なあいつに嫉妬する。
私よりお金持ちなあいつに嫉妬する。
私より繊細なあいつに嫉妬する。
私より瞳が綺麗なあいつに嫉妬する。
私よりいい夢を見るあいつに嫉妬する。
私より器量良しのあいつに嫉妬する。
私より化粧の似合うあいつに嫉妬する。
私より魅力的なあいつに嫉妬する。
私より綺麗な髪を持ってるあいつに嫉妬する。
私より友達の多いあいつに嫉妬する。
私より気安く接せられるあいつに嫉妬する。
私より美しいあいつに嫉妬する。
慕う人がいるあいつに嫉妬する。
恋を知ってるあいつに嫉妬する。
愛を受けたことのあるあいつに嫉妬する。
私より優れた私に嫉妬する。
向こうのあいつを嫉妬する。
目の前のあいつを嫉妬する。
素直なあいつを嫉妬する!
砕いた。
千に割った。
二千の緑瞳が私を見つめていた。
一つをつまみあげた。
二つの緑瞳が私を見つめていた。
嗚呼、
私を、
私を見るな。
「──妬ましいわ」
ぶつん