今作品は、下のほうにある「はるですよー」の続きにはなっていますが、
読まなくても、のほほんとできると思います。
今は春。
桜がお酒の入った杯に舞い散ると、風流だと自然に心が温まる季節。
昨日も博麗神社の境内では、宴会が開かれていた。
さくらさくら、桃色の絨毯を敷き詰め、一面を春に染めよ。
朝日と共に、世界に光りを燈せ。
「風流ねぇ」
「春です♪」
「頭痛い……」
宴会が夢の後。
境内に敷かれたシートに寝転ぶのは、幻想郷の母「八雲 紫」。
その膝の上に頭を乗せて、蒼白になっているのは、楽園の巫女「博麗 霊夢」
そして、正座して桜を見上げているのは、春を告げる妖精「リリー・ホワイト」である。
つい先刻まで普通の魔法使いや、永遠に幼き吸血鬼、さらには冥界の姫などなど、
女性ばかりが沢山集まり、飲み食べ騒ぎチャンバラバラと弾幕り、まるで地獄絵図のように楽しんでいたのだが、
朝日が昇ると同時に皆自宅へと帰って行った。
もちろん後片付けもせず、である。
「ちょっと霊夢大丈夫なの?」
「無理、死ぬ……後片付けは任せた」
「藍ー、霊夢直々のご指名よ?」
「今食器洗いで忙しいので、ゴミだけはそっちで分けておいて下さいー!!」
「らんしゃまー! 泡が泡がー!」
「え、ちょっと橙、何をしてあわわーー!!」
おそらく台所であろう所からが聞こえた。
台所から此処までは結構離れているので、隙間経由のやり取り。実に便利だ。
「んー……私も霊夢の膝枕で忙しいのよね~」
「膝枕はもういいわ。私布団で寝てくるから……」
そう言ってなんとか起き上がろうとする霊夢の額を、紫は体を屈めることで止めた。
これ以上霊夢が体を起こすと、唇と唇がコンニチワしそうな距離に、紫の笑顔がある。
「霊夢も、私の、膝枕で、忙しいのよね?」
「コラ、対象が変わってるわよ」
「些細な事ですわ」
「むぅ……」
微妙に体をあげた体制がきつかったのか、霊夢は何も言わず後頭部を柔らかな布地へと着地させた。
霊夢は紫の足に対して体をまっすぐ正面に向けているからか、完全に力を抜いても安定しているようだ。
「はわ……春です」
「あー……リリー、悪いんだけどある程度ゴミ片してもらえる?」
「わかりました~おかたづけ開始です~」
二人を赤面しながら見ていたリリーが、霊夢の託どおり片付けを始めた。
でも横目でチラチラと二人を見ているためか、躓いたり、せっかく集めた桜の花びらに正面から突撃したりと、なかなか作業が進まない。
紫は紫で、そんなリリーを見てクスクスと笑い、霊夢の髪を撫でている。
「はぅあぅ~……桜集めても集めてもまた落ちてきます~」
「先に酒瓶や食器を一纏めにしたらどうかしら?」
「それです! さすが妖怪の賢者さまです~ありがとうございます♪」
「ふふ……どう致しまして」
紫の助言を聞きながら、せっせと仕分けする。
空き瓶、ちょっと残っている瓶。大きなお皿、小さなお皿。
せっせと仕分けする。
燃えるゴミ、燃えないゴミ。誰かの帽子……の上に猫さん?
「にゃー? ねこさん~そこあたたかいです~?」
「……」
「ぶらっくちゃんみたいに黒いねこさん~」
「……ふにぁ……にゃーん」
「あ、どこ行くですかー?」
リリーに声を掛けられた尻尾が二本ある黒い猫はとことこと歩き出した。
そして寝ている霊夢の足に擦り寄ると、そのまま丸くなって欠伸を一つ。
リリーを一目見て、再び目を閉じた。
「はる~……ちょっとうらやましいです」
「確かに羨ましい」
「はるっ!?」
いきなリリーの後ろから声が聞こえた。
振り返ると、背の高い金髪の女性が立っている。
その女性の背中には、ふさふさとした尻尾が沢山生えている。
鼻の頭や、尻尾に泡が付いているのが、少し気になった。
「らんさんでしたかー。びっくりしたです」
「すまない、驚かせてしまったね」
藍はリリーの頭を撫で、紫と霊夢と黒猫を見た。
どうやら紫も春の暖かさに、いつのまにか寝てしまっているようだ。
自然な笑顔のまま、すーすーと寝息を立てている。
「でも……本当に羨ましい。私もこのまま寝てしまいたい」
「食器は仕分けておきましたー」
「お、ありがとう。じゃあ後はやっておくから君も休んでいいよ」
「はい~眠たいです~」
藍は集まった食器を、よいせっと担ぎ上げ、神社の方へ戻って行った。
きっと沢山の食器の量に、まだ台所でがんばっている藍の式が驚くことだろう。
リリーは、藍が見えなくなるのを確認すると、口を両手で押さえながら欠伸をした。
そして、とことこと寝ている三人のところへ。
黒猫とは反対側の、霊夢の腕を抱き枕に目を瞑る。
「今年は、とてもあたたかいです♪」
春の夢を見る眠り子達に、桜は母のように布団を被せる。
楽園の夢よ、永遠に。
そして夢から覚めても、其処が春であり続けますように。
「らんしゃまの尻尾ぽかぽか~♪」
「こら橙、まだ食器拭けてないだろう?」
「ふにゃ~zzz」
「まったく……私も少しだけ休憩するか」
「むにゅ……らんしゃま~……」
「ふふ。おやすみ、橙」
私が今居る場所は寒いけど、ほっこり温まりました!
続きがあるなら期待して待ってます。
リリーが一家に一人いたらこの世から争いごとはなくなると思う。
このままシリーズ化で見たいです。
リリーは居るだけでも暖かくなる気がします。
リリー人形を作ってみようかなぁ
>続きがあるなら期待して待ってます。
次は桜が散る季節かなと考えてます。がんばって書くよ!
>リリーが一家に一人いたらこの世から争いごとはなくなると思う。
喧嘩してても、リリーが一言、めっ!って言ってくれたらすぐにおさまりそうですよね。
せっかくだから春の間、シリーズ化してみようかな?
今ならそっと加われば気づかれないかもしれませんよ?
ちょっとらんしゃまのしっぽにうずもれてきます