" />すんすん 作者: 無言坂
Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

すんすん

2010/03/26 19:45:17
最終更新
サイズ
4.74KB
ページ数
1
閲覧数
1006
評価数
0/0
POINT
0
Rate
5.00

分類タグ

満月。




アリスが月を見ていた。

少し酔った赤い瞳に、煌煌とした空の満月が映っている。
くい、とコップの酒をあおった。
白い喉が動く。
やがて、はなした唇が、陰気な息を吐く。
宴会の席である。
アリスは一人でいた。
「よう、人形遣い。今日の月はきれいかね?」
と、そこへ、鬼の萃香が近寄ってきた。
アリスはなげやりに応対した。
「ああ……そうね。綺麗ね。まるでこんがり焼けたオムレツみたい」
「風情がないなあ。せめて花みたいと言ってよ」
萃香はケチをつける。
アリスは言った。
「花みたいってね。月と花とは、全然別物でしょ? どうやって結びつくのよ?」
「風情だよ風情。風情の心」
「風情ィ?」
と、アリスは露骨に眉をひそめた。
赤い顔で、不満げに言う。
「ふん。ずいぶん便利な言葉ね。あーそう。そうですかなんでもかんでも風情、風情って言ってれば、あんたはそうやってなあなあで誤魔化されるわけね。ふぜいふぜいふぜい。なに、あんたの価値観からすると、花や月にはその風情ってのがあって、オムレツにはそういうのがないっていうわけ? それって偏見じゃないの?」
「おー? どうしたのよ。荒れてるね、珍しい」
「べっつに」
アリスは言った。
が、鬼はにまにまとして勘ぐってくる。
「ほほう。なぁーんかいやあなコトでもあったのかな? んん?」
「あんたには関係ないし、話したくもないな」
「財布でも落としたか?」
「あんたには関係ないし、話したくもないな」
「お気に入りの服が破けた」
「あんたには関係ないし、話したくもないな」
「あんただと人形かな? お気に入りの人形が壊れた」
「あんたには関係ないし、話したくもないな」
「うーん、思いつかん。霊夢か魔法使いと喧嘩でもしたか? そうそう、あんたは魔女と仲が良かったな。あいつとか? 今日は来ていないね」
「あんたには関係ないし、話したくもないな」
「あんたには関係ないし、話したくもないな」
鬼が言った。かぶせるように。
アリスは黙りこんだ。
「……」
「……」
鬼は、にやにやとしたり顔でいる。
アリスは、眉間にしわを寄せ、そろそろ無視を決めこむことにしたようだ。
気分悪げにコップをあおる。
鬼が横から言った。
「いや、悪い悪い。あんたからかうと面白くてな、つい」
「別に良いからとりあえず向こう行け」
アリスは言った。
が、鬼はけらけらと笑って言う。
「あんたは本当に馬鹿だな。宴の席に来てまで一人でぶちぶち腐っているんじゃないよ、まったく。空気が悪くなるだろ」
「うるさい。いいからほっとけ」
「べつに笑えとは言わんが、あんたはもっと、人様にカラんだほうが良いな。なんだい、なんでもあんたら魔法使いってのも、妖怪なんだって? じゃあそうやって腐るのは、ほんとに身体の毒だろう。え。どうだい」
鬼が言う。
アリスは答えず、コップに口をつけた。
やがて、むすっとして聞きかえす。
「カラむってなに。あんたみたいにか?」
鬼は言った。
「まあそうなるかなー。でも、あんたは私みたいにはやれないだろうね。なんていうかさ、あんたは、そう、湿り気ってものが足りないからね。けっして余計な嘘をつかず、常に自分に正直に生きているから」
「そうね」
アリスはうんざりと言った。
鬼はさらに言ってくる。説教顔で。
「それは、けっして悪いコトじゃあないが、自分にも他人にも、薬にならない。毒にもならんけどね。ただ、毒ってやつは、ただ生きているだけでも、少しづつすこしづつ、身ににじみでちまうものさ。無駄に長く生きているやつってのは、よくどこかしらがおかしくなったり、狂ったりするようなんだが、それはきっとそのせいだろう。あんたの毒ってものは、そういう風に溜まり続け、けっして自分一人では癒されることはない。哀しいことだけどね」
「つまり?」
「つまりもなにも、最初に言っただろ。だから、他人にぬるぬるカラんでいけってさ」
鬼は言う。
どことなく誠意に欠けた、軽い口調で。
「他人にカランでいくのはね、そういう毒に対して、薬になる。少しでも、あんたがおかしくなるのを防いでくれることだろうよ。おかしくなったやつってのはね、絶対に自分ではわからないもんだからね」
「ふーん」
アリスは興味なさげに唸った。
「それで」
「まあ終わり」
「ああそう」
「そう。まあ、それじゃあな」
鬼は笑って、アリスから離れていった。
アリスはくいと酒をあおった。
唇を通る感触が軽い。
もう中身がないようだ。
脇の酒瓶を見る。
こちらも空いていた。
アリスはしばし、空のコップを見つめた。
「……ふん」
言って、立ち上がる。
ちょっと足どりがよろけるのに気づく。
少々、飲みすぎたようだ。
途中、霊夢となにやら楽しげに話している魔理沙の姿が視界に入る。
アリスはそちらを見た。
ちょっと考えた。
「……」
やがて、きびすを向けると、すたすたと、何気ない足どりで近寄っていく。
「お? なんだ。アリスか」
と、魔理沙が気づいて言ってくる。
いつものからかい調子で。
「どうしたよ、顔が赤いぞ? 飲み過ぎか? 人形みたいに真っ白い顔が台無しだな?」
魔理沙は笑う。
アリスは魔理沙を見下ろした。
じっと黙ってまじまじと見る。
やがて、黙って、魔理沙の肩に腕を回す。
がしっ。
「おう?」
魔理沙が言う。
アリスは、魔理沙を小脇に抱えて、わしゃわしゃっと、突如その金髪を撫でた。
「お? なんだおい」
「魔理沙~。あんたって、よく見ると、くぁーあわいいわね~とーっても」
アリスはいきなり言い出した。魔理沙に頬ずりしてやる。柔らかい金髪が肌に当たって、気持ちが良かった。
「んーいいにおいー」
「おい? アリス……ちょ。おい。なんだよ」
魔理沙は言ったが、アリスはしばらく、それをやめなかった。
隣で霊夢がちょっと目を丸くしていたが、知らない。
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.簡易評価なし
1.無評価名前が無い程度の能力 削除
なんだこれw でも……なんかいいなあ
2.無評価名前が無い程度の能力 削除
相変わらず素晴らしい無言坂クオリティごちそうさまでした
3.無評価名前が無い程度の能力 削除
そうか、アリスは絡み酒か。
4.無評価名前が無い程度の能力 削除
無言坂さんのアリス来た。これで勝つる
5.無評価ずわいがに 削除
滲み出る毒は誰かになすりつけてしまえww
6.無評価名前が無い程度の能力 削除
酒はとんがった人も丸くさせるってね
7.無評価奇声を発する程度の能力 in 携帯 削除
何故かニヤニヤが止まらなくなったw
8.無評価名前が無い程度の能力 削除
これは良い。すっごい良い。