月夜。
「――姫? ああ、そこにいらしたのですか」
永琳の声が聞こえた。
輝夜は言った。
「ええ、ここにいますよ」
「呼んでいるのが聞こえたでしょう。返事ぐらいしてくださらなければ」
永琳が言った。輝夜は静かに言い返した。
「一流の従者というのはね、永琳。主がどこにいるのか、声を聞かずともわかるのだそうだわ。あなたはきっと一流ではないのね」
「はいはい。至らぬ従者で申しわけありません。なにを見ていたんです?」
「月を見ていました。――ねえ、永琳。今夜は月がとってもきれいですね」
「……そうですか? 確かに綺麗ですが、格別と言うほどでは」
「ふふ」
「……なによ」
「なんでもないわ」
輝夜は言って、月を見上げた。隣で、永琳も月を見上げる。
きっと、今夜の月になにか意味があるのではないか、と思ったのだろう。
月を見たところで、そんなことはわからないのだが。
(そんなことがわからないわけよね、彼女には)
言葉遊びにくすりとしつつ、月を見る。
「お酒をご用意します?」
「あら、どうして?」
「しばらくここにいるんでしょう?」
「ふん。そうね。それじゃあいただこうかしら」
「では、持って参ります」
永琳は立ち上がった。
輝夜は、従者の白い髪が消えるのを見送った。
ふむ、と扇子を扇いで、そっとため息をつく。
ふと思う。
(千年か)
こうして、寄り添って暮らす生活を続けて。
けっこう長い間だな、と思っていたが。
それでもお互いの心は分からない。通じていない。通じ合うことは、滅多にない。
(私は、あなたと月を見上げたかったんだけどね)
ちょっと機嫌を損ねた顔で、輝夜は従者が戻ってくるのを待った。
今日はちょっと酔ってやろう、と思う。
「――姫? ああ、そこにいらしたのですか」
永琳の声が聞こえた。
輝夜は言った。
「ええ、ここにいますよ」
「呼んでいるのが聞こえたでしょう。返事ぐらいしてくださらなければ」
永琳が言った。輝夜は静かに言い返した。
「一流の従者というのはね、永琳。主がどこにいるのか、声を聞かずともわかるのだそうだわ。あなたはきっと一流ではないのね」
「はいはい。至らぬ従者で申しわけありません。なにを見ていたんです?」
「月を見ていました。――ねえ、永琳。今夜は月がとってもきれいですね」
「……そうですか? 確かに綺麗ですが、格別と言うほどでは」
「ふふ」
「……なによ」
「なんでもないわ」
輝夜は言って、月を見上げた。隣で、永琳も月を見上げる。
きっと、今夜の月になにか意味があるのではないか、と思ったのだろう。
月を見たところで、そんなことはわからないのだが。
(そんなことがわからないわけよね、彼女には)
言葉遊びにくすりとしつつ、月を見る。
「お酒をご用意します?」
「あら、どうして?」
「しばらくここにいるんでしょう?」
「ふん。そうね。それじゃあいただこうかしら」
「では、持って参ります」
永琳は立ち上がった。
輝夜は、従者の白い髪が消えるのを見送った。
ふむ、と扇子を扇いで、そっとため息をつく。
ふと思う。
(千年か)
こうして、寄り添って暮らす生活を続けて。
けっこう長い間だな、と思っていたが。
それでもお互いの心は分からない。通じていない。通じ合うことは、滅多にない。
(私は、あなたと月を見上げたかったんだけどね)
ちょっと機嫌を損ねた顔で、輝夜は従者が戻ってくるのを待った。
今日はちょっと酔ってやろう、と思う。
雰囲気いいなぁ
甘すぎず落ち着いた雰囲気が良かったです。
すわかなに続きえーてるまで……これはそろそろフラメイを期待しても良いのかな?(チラッ