「こんばんは、妹紅」
「あれ、慧音。どうしたの?こんな遅くに」
普通の人間だったら、とっくに寝てしまっているだろう遅い時間に、私は目を覚ました。
こんな時間に目を覚ますなんて珍しい。眠気も全く無く、そのまま寝る気にはなれなかったので、
家の外に出て夜空を見上げていた。
ひっそりと静まり返った闇の中、考え事をしていると、この世界には、あたかも自分だけしか居ないような錯覚を覚える。
そんなことを考えているときに、後ろから声が聞こえた。
振り返ってみると、月明かりに照らされた慧音が立っていた。
「ああ、最近妹紅の顔を見てなかったからな。急に妹紅の顔を見たくなってな」
「ふうん、私に会えなくて寂しくなったんだ?」
「まぁそんなところだ」
慧音の言葉を聞き、一瞬で体温が上がった気がした。主に顔が。
慧音はズルい。こういう恥ずかしいことをサラッと言うから、こっちのほうが照れるじゃないか。
私の能力は炎を操ることなので、顔から火が出る、という表現がピッタリな気がした。
「どうした妹紅、顔が赤いぞ? 何処か調子が悪いのか?」
「だ、大丈夫だよ慧音。何でもないよ」
「ならいいんだが…」
慧音は心配そうに顔を覗き込んできた。
自分が恥ずかしい事を言っている自覚が無いから、更に厄介だ。
そこも慧音の良い所かもしれないけど。
「ここで立ち話も何だから、とりあえず上がってよ。お茶くらい入れるからさ」
「そうだな、ありがとう妹紅」
お茶を入れながら、私は慧音のことを考える。
人里で、寺子屋の先生をしている慧音。
何かと私に世話を焼き、いつも気にかけてくれる。
慧音は頑固で、お節介で、優しくて、頼りになって、綺麗で、カッコよくて、可愛くて、あったかくて。
「妹紅、妹紅!」
「ん、何? 慧音?」
「お茶、こぼれてるぞ」
「うわぁ!!!」
「もう、ボーっとしすぎだぞ」
「ご、ごめんごめん」
危ない危ない。慧音の事を考えていたらついつい。
苦笑いしながら零したお茶を拭いていると、慧音は心配そうな顔でこちらを見ていた。
「何か悩み事でもあるのか?」
「そういう訳じゃ無いんだけどさ」
「そうか。私で良ければいつでも相談にのるから、何かあったら話してくれ」
私は死ぬ事が出来ない人間。怪我もすぐ治るし、病気にもならない。それでも慧音は、いつも私の事を心配してくれる。
「慧音は心配性だなぁ。私は死なないし、大丈夫だよ」
「確かに不死だが、その前に一人の人間だ。心配だってするさ。私にとって妹紅は、大切な人だから尚更だ」
…まただ。やっぱり慧音はズルい。ズルいと思う反面、とても嬉しい気持ちになる。慧音の声が、言葉が、私の心に染み込んでいく。
私は長い間、人との付き合いを避けてきた。
私は死なない人間。周りの人はすぐに私を置いて行ってしまう。
自分で選んだ道だけれど、私はそれが悲しかった。寂しかった。
別れが悲しいなら、深く関わらなければいい。
そんな冷めた私の心の壁を、壊してくれたのが慧音だった。
昔、慧音にこんな質問をしたことがある。
「慧音は何で私を心配してくれるの?」
「んー? どうして心配するか、か。妹紅を見ていると放っておけないんだよ」
「放っておけない?」
「気になるというか何というか。お前は大好きな人が苦しんでいたら、助けたいと思わないか?」
私の顔が真っ赤に染まった事は言うまでもない。
思い出しただけでも顔が赤くなったじゃないか。
慧音は、私の顔を真っ赤に染める程度の能力も、持っているに違いない。
「そういえば慧音、時間も遅いけど明日は大丈夫なの?」
「ああ…そうだな。もしよければ、今夜は泊めてもらっていいか?」
「え!? あ、あぁ大丈夫だよ。もう遅いし、そのほうがいいよ」
私の布団の隣に慧音の布団を敷きながら、
生きている時間がいくら長くても、慧音には勝てない、これからも勝てないんだろうなぁと思った。
でも、私はそれでいい。慧音の隣に居ることができれば、それでいい。
いつかは慧音との別れのときも来るだろう。でも、それまでは精一杯、慧音と一緒に居たいと願う。
慧音は一番大切な、大好きな人だから。
「今日は久々に妹紅の顔が見れてよかった」
「いつも心配ばっかりかけてごめんね、慧音」
「気にするな妹紅。それに、こういう時は『ごめんね』じゃなく『ありがとう』だ」
「そうだね。ありがとう、慧音。それじゃあ、おやすみ」
「どういたしまして妹紅。おやすみ」
真夜中に目が覚めてしまったが、今日は良い夢が見られそうな気がする。
これからもよろしくね、慧音。
「あれ、慧音。どうしたの?こんな遅くに」
普通の人間だったら、とっくに寝てしまっているだろう遅い時間に、私は目を覚ました。
こんな時間に目を覚ますなんて珍しい。眠気も全く無く、そのまま寝る気にはなれなかったので、
家の外に出て夜空を見上げていた。
ひっそりと静まり返った闇の中、考え事をしていると、この世界には、あたかも自分だけしか居ないような錯覚を覚える。
そんなことを考えているときに、後ろから声が聞こえた。
振り返ってみると、月明かりに照らされた慧音が立っていた。
「ああ、最近妹紅の顔を見てなかったからな。急に妹紅の顔を見たくなってな」
「ふうん、私に会えなくて寂しくなったんだ?」
「まぁそんなところだ」
慧音の言葉を聞き、一瞬で体温が上がった気がした。主に顔が。
慧音はズルい。こういう恥ずかしいことをサラッと言うから、こっちのほうが照れるじゃないか。
私の能力は炎を操ることなので、顔から火が出る、という表現がピッタリな気がした。
「どうした妹紅、顔が赤いぞ? 何処か調子が悪いのか?」
「だ、大丈夫だよ慧音。何でもないよ」
「ならいいんだが…」
慧音は心配そうに顔を覗き込んできた。
自分が恥ずかしい事を言っている自覚が無いから、更に厄介だ。
そこも慧音の良い所かもしれないけど。
「ここで立ち話も何だから、とりあえず上がってよ。お茶くらい入れるからさ」
「そうだな、ありがとう妹紅」
お茶を入れながら、私は慧音のことを考える。
人里で、寺子屋の先生をしている慧音。
何かと私に世話を焼き、いつも気にかけてくれる。
慧音は頑固で、お節介で、優しくて、頼りになって、綺麗で、カッコよくて、可愛くて、あったかくて。
「妹紅、妹紅!」
「ん、何? 慧音?」
「お茶、こぼれてるぞ」
「うわぁ!!!」
「もう、ボーっとしすぎだぞ」
「ご、ごめんごめん」
危ない危ない。慧音の事を考えていたらついつい。
苦笑いしながら零したお茶を拭いていると、慧音は心配そうな顔でこちらを見ていた。
「何か悩み事でもあるのか?」
「そういう訳じゃ無いんだけどさ」
「そうか。私で良ければいつでも相談にのるから、何かあったら話してくれ」
私は死ぬ事が出来ない人間。怪我もすぐ治るし、病気にもならない。それでも慧音は、いつも私の事を心配してくれる。
「慧音は心配性だなぁ。私は死なないし、大丈夫だよ」
「確かに不死だが、その前に一人の人間だ。心配だってするさ。私にとって妹紅は、大切な人だから尚更だ」
…まただ。やっぱり慧音はズルい。ズルいと思う反面、とても嬉しい気持ちになる。慧音の声が、言葉が、私の心に染み込んでいく。
私は長い間、人との付き合いを避けてきた。
私は死なない人間。周りの人はすぐに私を置いて行ってしまう。
自分で選んだ道だけれど、私はそれが悲しかった。寂しかった。
別れが悲しいなら、深く関わらなければいい。
そんな冷めた私の心の壁を、壊してくれたのが慧音だった。
昔、慧音にこんな質問をしたことがある。
「慧音は何で私を心配してくれるの?」
「んー? どうして心配するか、か。妹紅を見ていると放っておけないんだよ」
「放っておけない?」
「気になるというか何というか。お前は大好きな人が苦しんでいたら、助けたいと思わないか?」
私の顔が真っ赤に染まった事は言うまでもない。
思い出しただけでも顔が赤くなったじゃないか。
慧音は、私の顔を真っ赤に染める程度の能力も、持っているに違いない。
「そういえば慧音、時間も遅いけど明日は大丈夫なの?」
「ああ…そうだな。もしよければ、今夜は泊めてもらっていいか?」
「え!? あ、あぁ大丈夫だよ。もう遅いし、そのほうがいいよ」
私の布団の隣に慧音の布団を敷きながら、
生きている時間がいくら長くても、慧音には勝てない、これからも勝てないんだろうなぁと思った。
でも、私はそれでいい。慧音の隣に居ることができれば、それでいい。
いつかは慧音との別れのときも来るだろう。でも、それまでは精一杯、慧音と一緒に居たいと願う。
慧音は一番大切な、大好きな人だから。
「今日は久々に妹紅の顔が見れてよかった」
「いつも心配ばっかりかけてごめんね、慧音」
「気にするな妹紅。それに、こういう時は『ごめんね』じゃなく『ありがとう』だ」
「そうだね。ありがとう、慧音。それじゃあ、おやすみ」
「どういたしまして妹紅。おやすみ」
真夜中に目が覚めてしまったが、今日は良い夢が見られそうな気がする。
これからもよろしくね、慧音。
やっぱりこの二人は良いなぁ。
けーね先生いいキャラです^^
伝わってくる心温まる文章でした。初作品という事で、今後の作品にも期待します。
見返りを求めない愛っていうやつ。こういう関係が愛の最終形ってやつなのかな。
次回作にも期待します。
どうでもいいけどここまで全員名前付きコメントだ。本当に関係ないけどww