Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

えーりん

2006/05/12 23:27:02
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1
あらすじ  

  にゅーくれらっぷー♪




 あのね  あのね  

 えーりん  あのね?



 永遠亭の部屋の奥。
 ひそひそ、ひそひそ。
 ないしょのおはなし。


「それじゃあ皆、お願いね」

「はい姫さま」


 てゐに鈴仙、うさぎたち。
 皆でいっしょにないしょの話。


 えーりんだけには、ないしょの話。


 それはある日の晴れた朝。
 月の頭脳の八意永琳。
 いつもの時間に目が覚めた。

 朝日がひょっこり顔を出す。
 朝も早くに目が覚めた。


「ふぁ…」


 口の手を当てあくびをひとつ。
 作らなくっちゃ、朝ごはん。

「今朝は何がいいかしら?」

 頬に指あて、軽く腕組み。
 朝食メニューを考える。

   とんとんとん

「師匠、師匠、永琳師匠」
「あらまぁうどんげ。珍しいわね」

 障子の格子を叩く音。
 彼女を呼んでる弟子の声。
 
 いつもは寝ているこの時間。
 今朝は早起き、どうしてかしら?

「おはよう、うどんげ」
「はい師匠」
「何かあったの?」
「大事はないです」
「小事はあったの?」
「目の前に」
「障子じゃなくて」
「小事じゃなくて?」
「小事なのよ」
「障子ですか?」


 あぁややこしい。


「日本語ねぇ」
「日本語ですねぇ」


 むずかしい。


「それでうどんげ、朝ごはん?」
「はい、そうなんです」
「わかったわ。すぐに行くわね」
「あ、師匠」
「なにかしら?」

「今朝は私が、髪を結います」

 今朝はホントに珍しい。


 着替えた永琳、鏡の前。
 鈴仙、師匠の髪を結う。

 長い長い銀の髪。
 するりと櫛で梳いたなら。
 きゅっきゅと三つ編み、編んでいく。

 いつもは編むのがへたっぴだからと。
 髪を編んではくれない鈴仙。

 なのに今朝は、自分から。
 編んでくれてる、長い髪。


「今日はホントに珍しいわね」


 鏡に映る、その笑顔。
 八意永琳、うれしそう。


「でもいいの?」
「? なにがです?」
「朝ごはん。急ぐんでしょう?」
「朝ごはん? 急ぎませんよ?」
「あら、そうなの?」

 さっきの会話を思い出す。
 
「用意をしてるの?」
「はい師匠」

 用意はしなくていいみたい。
 メニューのことも一安心。

「今朝は朝から大サービスね」
「はい師匠」

 のんびり味わう朝のひととき。
 たまにはまったりしなくっちゃ。

 編む手が止まって、できた三つ編み。
 やっぱりちょっぴり、ぶかっこう。


「うう、すみません」
「いえ、いいわ」

 
 弟子のあの子の編んだ三つ編み。
 かっこはちょっぴり悪いけど。
 とっても愛がこもってた。


「ありがと、うどんげ」


 微笑んだ。



 笑顔の永琳、照れてる鈴仙。
 二人並んで廊下を歩く。
 朝食待ってる食堂目指して。
 二人並んで廊下を歩く。

 ぱたぱたぱたと、足音弾む。
 朝日も昇って、いい天気。
 
 ぱたぱたぱたと、洗濯物が。
 朝日の中で、揺れていた。


「洗濯物?」


 小首を傾げてなぜなにえーりん。
 まだしてないのに洗濯物。
 綺麗に庭に、干してある。


「鈴仙、鈴仙」


 お宇佐さま。

 てゐがひょっこり顔を出す。
 他のうさぎもひょっこりひょっこり。
 洗濯物から顔を出す。


「洗濯全部、終わったよ~」
「おつかれ皆。ごはんにしよっか?」


 うさうさうさーっとうさぎのダンス。
 おつかれイナバのうさぎのダンス。


「ご苦労さま」


 うさうさうさーっとうさぎの挨拶。
 おはようイナバのうさぎの挨拶。

 てゐと一緒に頭を下げて。
 はらぺこイナバは食堂へ。

 
 見渡す限りの洗濯物に。
 永琳、ほぅっと息を吐く。

「今日はホントに大サービスね」

 今日は皆がやけに優しい。
 なぜなにえーりん考えて。

「師匠、師匠、急ぎましょう」

 弟子のあの子に急かされる。


 右手をつないで手を引かれ。
 なぜなにしながらたどり着く。

 食堂からは、いい匂い。
 障子をすぅっと開けてみる。



 そこには赤い、カーネーション。



「おはよう、永琳。いい朝ね。
 いつもお仕事、ごくろうさま」


 姫さまにっこり微笑んで。
 てゐもみんなも微笑んで。


 いつもがんばる永琳を。
 いたわる一日、始まった。


 今日は母の日。
 感謝の日。


 月の頭脳の八意永琳。
 永遠亭のおかあさん。




 目尻の浮かんだ涙のせいで。
 おいしいけれど、しょっぱいごはん。

 けれども永琳、うれしくて。
 たくさんたくさん、おかわりしたよ。


 ごはんが終わって休憩したら。
 姫さま、肩を叩いてくれた。
 たんとんたんとん、叩いてくれた。


「永琳、永琳。気持ちいい?」
「はい、とても」




 あのね  あのね  

 えーりん  あのね?


 まいにち  まいにち


 ありがとう
おかあさん  いつもありがとう
じょにーず
コメント



1.名無し妖怪削除
うるっときましたよ。
2.SSを探すスレ77削除
ありがとう、ありがとうございます…こんなに優しい永遠亭。
あぁもう幸せだー!だいすきだ!涙でた。
3.名無し妖怪削除
おかあさーん!
4.名無し妖怪削除
母の日かぁ~
5.名無し妖怪削除
ありがとうございます。
本当にありがとうございます。
6.名無し妖怪削除
心が温かくなった。おかあさーん!
7.はむすた削除
お、おかあさーん!!!
8.床間たろひ削除
むぅん、思わずほっぺが緩んだ。
暖かくて柔らかな世界を、いつもありがとうw
9.草月削除
最近一人暮らしをはじめて、母親のありがたみをより一層感じるようになりました。 
元気にしてるかなぁ?
10.名無し妖怪削除
すばらしい。この短さなのに、ほろっとくるよ。
11.無銘削除
えーりんえーりんありがとえーりん
12.名無し妖怪削除
素晴らしい
優しいお話をありがとう
13.MIM.E削除
こう、ストレートに表現できるのよいなぁ
14.名無し妖怪削除
えーりん!えーりん!
15.K-999削除
なんて良い永遠亭だッ・・・!!
16.翔菜削除
   _ ∩
( ゚∀゚)彡 えーりん!えーりん!ありがとえーりん!
 ⊂彡
17.博麗の氏子削除
芸術の本質は読者との相互理解にあるというが、じょにーず氏はそれを最小限の表現でそれを可能にしている。
つまりはじょにーず氏の心的世界というべきものが、このわずかな行数の詩(あえてそう言わせてもらう)に過不足なく表されているのだ。
わかりやすい単語を組み合わせ、ひらがなを多くいれることで誰にでも読めるようにし、なおかつその上で実質や抽象を説明できる。
こうした「やさしさ」が、さらに我々とじょにーず氏の脳を共有させやすくしてくれている。
じょにーず氏はもっと大きな場で、その力を発揮すべきだ、と私は思うのだが。
18.名無し妖怪削除
なんだろな、良質な絵本読んでる感覚というか。
感覚的に、すっと自分の中に言葉が入ってくるのが心地よくて。
だから、ありがとえーりん。ありがとじょにーずさん。
19.名無し妖怪削除
すげえ。あんたプロか!?と思うほどです。
とてもほんわかとした気持ちになりました。えーりんとじょにーず氏にありがとう。