か~ぜもないのにぶ~らぶら♪
はい、わいせつなこと考えた人挙手。ダメよ、そういうことばっかり考えてちゃ。もちろん、私の言っているのは霊夢のこ・と☆
……何よ、藍、その目は。
何ですか、その『☆』は、って? それはもちろん、私はゆかりんで18歳ですもの☆
……ほほう、「そんなんだから、年増扱いされるんですよ」ときたもんだ。何で聞こえるのか、って? それはもちろん、素敵な素敵な隙間通信の、お・か・げ♪
うふふふふふふ。
ねぇ、藍。あなたには選択肢があるわ。
一番。ここではない地獄を垣間見る。
二番。この世の地獄を垣間見る。
三番。ミックス。
どれがいいかしら? 私のお薦めは、三番よ。
さてさて、今日も元気にスキマウォッチング。
この前、始めたばっかりだけど、何か妙にはまっちゃってねぇ。ただでさえ、幻想郷をのんびりと眺めるのが趣味なのに。これだと年寄り臭くなっちゃうわ。ただ、まぁ、ね? この幻想郷自体を我が子とすれば、こうして見守る私は、優しい優しい美人のお母さん! これはこれではまらないかしら!?
え? 藍?
ああ、それなら……………………………………ごめん、やりすぎた。
ケース1
さて、それじゃ、今日はまずどこからにしようかしら。
こんな時は、悩まないように、適当に隙間を開きましょう。そーれ、ひらけー、ごまー。
ん? 今のは何、って? 私が隙間を開く時の合図みたいなものよ。これが、遠い遠いアラブの方まで行くと、何か四十人も盗賊がいる連中の合図になっていたみたいだけどね。
さてさて、開きましたのは…………ここ、どこ?
「春も過ぎちゃったねー、ブラックちゃーん」
「別にいいじゃない。世の中、万物は流転の法則に従うものよ」
「栄枯盛衰?」
「と言うよりも、常に世の中、光陰矢のごとし」
「そーなんだー」
……えーっと、ここはリリーたちの住処かしら? ……しかし、脳天気なことばかりを言っている、あのリリーホワイトが『栄枯盛衰』なんて単語を知っているとは……。
ゆかりん、びっくりしちゃう。
「退屈だねー」
「また来年の春まで英気を養うのも、あたし達、リリーの務めよ」
「でも、ブラックちゃん、この頃、ご飯食べすぎだよ? 太っちゃったんでしょ?」
「ばっ……! こ、このあたしが太るわけないでしょ!?」
「でもでも、昨日の夜、お風呂の後、体重計に乗って『げっ!』って顔したの、見たよ?」
「んな!? あんた、いつの間に!?」
……女の子の永遠の悩み。それはダイエット。
ブラック……あなたも苦労してるのね。
そうなのよねぇ……。基本的に、美容を一番とするなら、やせているのがいいとは言うけれど。でも、がりがりなのは、見た目にもね。本当にバランスよく、やせているわけでもない太っているわけでもないを維持するのは大変なのよ。
そこんところ行くと、幽々子は楽よね。絶対太らないし。
「やっぱり運動しないとダメだよ。一日中、ソファの上にごろごろしておせんべいかじってたら太っちゃうよ」
「うぐぐ……」
「でも……どんなことしたらいいんだろう。私たちは自機扱いじゃないから、お外に気軽に遊びに行けないし……」
「あんた、何わけのわからないことを……」
『そんな時は!』
へっ!? な、何事!?
あっ、ドアの向こうに人影!? くっ! 逆光になっていてよく見えない!
「あなた達は、リリーの役目が春を伝える、ただそれだけだと思っているようね!」
な、何者!? あの神々しいポーズ……まさか、クロノスの英雄!?
「な、何者!?」
「我が名は!
夏を伝える妖精、リリーレッド!」
しゃきーん!
「私は、秋を伝える妖精、リリーイエロー!」
どーん!
「そして、冬を伝える妖精、リリーシルバー!」
じゃきーん!
『三人そろって!』
どっかーん!
『春風戦隊ぶ……!』
「それ以上はまずいからやめろーっ!」
きゃーっ! ノイズ、ノイズよー! しゃれにならないくらいまずいわっ! っていうか、あんたら、自分たちの名乗りと戦隊の名前が矛盾してるわよっ!
らーん! ちょっと、ノイズキャンセラー持ってきてー!
「というのは冗談として。
あなた達も、ようやく、新しい任務に目覚めたようね」
「この幻想郷において、季節を伝えるのは、我々、リリーに課せられた偉大なる使命!」
「それを達成するために、日夜、リリーは空を飛ぶ!」
……そ、そーなの……?
っていうか、色とりどりで目に痛いわねぇ……このリリーたち……。
「……ホワイト、あんた知ってた?」
「うん」
「げっ」
「でもでも、リリー戦隊には、私たちは入れない、って……」
「ふふっ。あなた達は春を過ぎても、まだ何かをしたい――それは、すなわち、この幻想郷を心より愛していると言うことに相違ないわ!」
いや、あんたら、さっきの話聞いてなかったの……?
「だからこそ、私たちはあなた達を迎えに来た! 具体的にはあっちの方から!」
あっちってどっちよ……。
「さあ、私たちの手を取りなさい! そして、共に!」
「この幻想郷に、全てを伝えて回りましょう!」
「春を伝えてくれるリリーは、我らリリー一族の中で、至高を冠する究極のリリー! あなた達が入ってくれるのなら、我がリリー戦隊は、未来永劫、安泰なの!」
「どうする? ブラックちゃん」
「……好きにして……」
……いや、わかる、わかるわ、ブラックちゃん。あなたの言いたいことが。
どうしてあなたの知らないところに、こういう世界があるのかしらね……。ほんと、幻想郷って奥が深いわ……。……というかさ、私が知らないことがあるのはまずくない? 色々と。
「……ところで、全てを伝える、って。季節以外に何があるの?」
「えーっと、朝を伝えるリリーサンシャインに、夜を伝えるリリー・ザ・ナイトメア。その他に、嵐が来るのを知らせるリリーテンペストとか、日照りを伝えるリリーフレアとか……」
「つまり!
我々、リリーは、幻想郷における全ての自然現象を伝えるもの達だったんだよ!!」
な、なんだって――――――っ!?
ケース2
……なんかすごいことを知っちゃったわ。
え? ホワイトとブラック? 何か、丁重にお断りしてたわよ。そしたら、リリー戦隊の子達、『次なる同志を求めて』って飛んでっちゃったわ。
……しかし、あんなカラフルな衣装のリリーたちがいたのね。最終的には、虫の知らせを伝えるリリーなんてのも出てきてたし……。
さあ、口直しに、別の隙間の向こうを覗き見覗き見、っと……。
「……ふぅ」
あら、この向日葵畑は。
そして、あそこに立つ人影は。
「美しい……」
何、紅の鶴の人みたいなこと言ってますか、あんたは。
第一、原色で一杯の向日葵畑で、その赤と白のチェック衣装ってのは目に痛いから何とかしなさいよ。ほんとにもう……。これだから、旧作キャラは遠慮がなくて困るわ。ゆかりん、ぷんぷん。
「……でも、私には足りないものがあるのよね……」
……あら?
「ねぇ……」
……あらあら?
「あなたは……私に足りないもの……わかるわよね……」
え、えっと……その……幽香さん?
そ、その……何というか……花に話しかけるのはやめた方がいいわよ……? 何か、すごくアレっぽいから……。
「ふふっ……ええ、そうね……。あなた達は、唯一無二の私の親友だもの……」
うわぁ……。
は、花が友達……って……。ボールが友達よりも……痛い……。
「ううっ……えぐっ……ひっく……」
な、何か泣き出したわよ!?
「うぅぅ~……。そりゃ、私は確かに性格きつめでいじめっ子キャラで、実際、そう言う立ち位置にいるけれどぉ~……。どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、だぁぁぁぁぁぁぁれも私と友達になってくれないのよぉぉぉぉぉ…………」
うっわぁ~…………。
い、痛々しい……ち、ちょっと、これから先は見るの……やめようかしら……?
「同じ旧作が立ち位置のアリスにですら、今は何か友達っぽいのがいるのにぃ~……。私なんて、第一印象そのまま街道突っ走っちゃってるじゃないのよぉ~………。
お酒の席に座れば、みんなが、ざざっと後ろに引いて、楽しく遊んでいる所に声をかけたら逃げられて……あまつさえ、私だけ宴会に呼んでもらえないぃ~…………」
う……あの……えっと……。
「ううぅ……お花さん……あなた達が……あなた達だけが、私の唯一の友達よ……。これから一緒に、力強く生きていこうね……うぇぇぇぇぇ~ん……」
……こ、これはまた何というか……。
普段の、Sっ気満載のいじめっ子お姉さんの裏の顔は、寂しがりの子猫ちゃんだったのね……。ま、また意外というか……これは……。
……よし、幽香ちゃん、任せなさい。
私が……この、幻想郷と共に生きる、幻想郷のお母さんである八雲紫が、あなたに友達を作ってあげるわ!
え? 何するのですか、って?
それはもちろん、幽香を嫌う心と幽香を想う心の境界を操作するのよ! そしたら、明日から、幽香ちゃんの周りには、あの子を慕う友達で一杯よ!
まあ、あの子のことだから、絶対に素直にそれを認めようとしないだろうけど、新たなツンデレキャラの誕生として、幻想郷の歴史に長く語り継がれて行くであろう事は間違いないわっ!
人助けなんて珍しいですね、って? よく言ってくれるわね、藍。あなたはあれを見て、それでもなお、シカトすることが出来るの?
「うふふ……お花さん、あなた達は今日もきれいに咲いているわね……。かわいくて……優しくて……お友達も……しくしくしく……」
……ね?
ごめんなさい? うん、謝ればよし……わかってくれればいいのよ。
待っていてね、幽香ちゃん!
ケース3
とりあえず、私にやるべき事は、後一つ。
「きょ~も特ダネ探して西東~♪ わったしっはげんそ~きょぉ~の新聞屋~さ~ん♪」
いた。
そう! この八雲ゆかりんの完璧な計画とは!
境界を操るだけではなく、あの天狗を捕まえて、それっぽい記事を書いてもらうと言うことだっ!(ドォォォォーンッ!)
「う~ん、なかなか面白いことがありませんね~。チルノさんがかえるに負けるのはいつものこととして……。
あ、そうだ」
あっ! 逃げられる!
「せっかくですから、今日はお昼寝でもしましょう。えーっと、いい樹は……」
……何だ、休憩するのね。ちょっとほっとしたわ。
しかし、止まり木を探すとは……。天狗って、鳥類とは関係……ないわよね? 普通……。
「ああ、ここがいいですね。はー、やれやれ」
……またおっさんくさいセリフを……。
「風を受けながら、のんびりと時間を過ごして暮らす。幸せですね~」
うーん……何か、あんたと霊夢は似てるところがあるような。
あの子も、日頃を、どうやってのんびり暮らすかに人生かけているような気もするし……。悪いことではないけど、刺激の少ない人生は、そのまま脳を腐敗させるわよ。
「はぁ……気持ちいいですね~……。さやさやと梢がゆれて……。ああ、眠くなってきちゃいますね~……」
お昼寝かぁ……。
天気のいい日に、縁側とか……まぁ、何でもいいけど、時間を感じることの出来る場所で横になるのは幸せよねぇ。うちでも、よく、橙がひなたぼっこしながら丸まってるし。
ちなみに、そんな橙にお布団をかけるのは、ゆかりんの場合もあるのよ☆
「ん~……ダメです……睡魔に勝てません……。こんな事では記者失格ですが……まぁ、元々、昼寝が目的でしたし……。それじゃ、おやすみなさ~い……」
あっ、しまった!
「す~……す~……」
あっちゃ~……。
さすがに、寝付いたばかりの子を叩き起こすのはかわいそうよねぇ……。さすがに、それはゆかりんの良心が許さないわ。
……いや、私が寝付いたばかりの所を起こされるのは大嫌いだから、って理由なんだけど……。
あ、何よ、その目は!
わからないの!? あの、とろけるような感覚! ふわふわって漂っていく、あの意識が波に揺られる感覚が! 幸せなのよ!? 最高なのよ!? 二つ合わせて幸せ最高よ!?
故に!
……起こすのはかわいそうだから……しばらく、ここで待ってようかしら……。
まぁ……ねぇ。
他人の寝顔を見るのは嫌いじゃないし……。だって、みんな、かわいいもの。
……子供かぁ。こういうの見てると、本当に欲しくなるわよねぇ。作っちゃってもいいんだけど……ねぇ?
何でこっちを見るのですか、って? あら、藍。そんなの言わなくてもわかってるんじゃないの? そうやって、ほっぺたふくらましちゃって。
「ん~……むにゃ……」
ああ、危ない。樹から落ちるわよ。
やれやれ、仕方ない。軽く面倒を……って……。
「す~……」
…………………………………ね、ねぇ、藍。
い、今、私が見たのは……何なのかしら……。
「く~……」
み、見間違い? そ、そうよね! 見間違いよね! あ、あははは、そう、そうなのよ! 見間違いに決まっているわ!
そ、そうと決まれば……。
「むにゃむにゃ……」
…………………………。
み……見間違いじゃ……なかった……。
……藍、私は、射命丸文に対して、新たな属性と評価を下したいと思うわ。あなたに、異論はある? ……ないわね、よし。
射命丸文:ぱんつはいてないっ娘
ケース4
ああ……いつの間にか夜になっちゃったわ……。
文ちゃん……あの短さでそれは犯罪よ。あんまりにもあんまりだから、ちゃんとはかせてきてあげたけど……大丈夫かしら……。
確かに、風を操れば絶対領域を操ることは可能だろうけど……それでも……ねぇ……。
……ま、まぁ、気を取り直して、今日のスキマウォッチングのラストと行きましょう!
幽香ちゃんの件は、また後で、ってことで。
えーっと……夜……夜と言えば……あの子がいいかしら。
さて、どこにいるのかなぁ……っと。
……ん? 声?
何か、これに似たような展開が紅魔館であったけど、これは何か毛色が違うわね……何かしら。
さてさて……?
……あら、ルーミアちゃん。
「……ふに?」
あら、こっちに気づいたみたいね。
「こんばんはー」
「はい、こんばんは」
にこにこ笑顔の彼女を見て、私は確信する。
「何してたの?」
それでも、私はあえて問いかける。
ルーミアちゃんは、にっこりと。
「晩ご飯ー」
「あら、そう。美味しそうなご飯ね」
「うん。紫おば……じゃなくて、お姉ちゃんも食べるー?」
「そうねぇ……。帰ったら、藍のご飯があるのだけど……小腹も空いているし。少しだけ、ご相伴にあずかろうかしら」
「そーなのかー」
彼女に案内されるまま、私は彼女の食卓へ。
月と星の光に照らされて、浮かび上がる彼女のお食事。
「美味しそうね」
「美味しいよー」
「柔らかそうね」
「柔らかいよー」
「新鮮ね」
「まだ生きてるもん」
「うふふふ」
そう。
本当に、美味しそう。
「それじゃ、いただきましょうか」
「うん」
「じゃあ」
いただきます。
ぐちゅ。くちゅ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。にちゃ。ごきん。ぱきん。ずるずる。じゅくっ。ぐちゃり。
「少し、無粋ね」
がぶり。
「静かになったね」
「本当ね。でも、まだまだ生きはいいわよ」
小腹が空いていると言ったけど。
お腹一杯、食べてしまいそうで。
少しだけ、自分に正直すぎかな、と笑ってしまった。
本日のスキマウォッチング、これにて終了。
ああ、美味しかった。
でも、藍に、『ご飯を残さないでください』って叱られてしまったのよね。それについては、ゆかりんも反省しないと。
けど、ルーミアちゃんはよく食べるわね。「まだお腹が空いてるー」ってふらふら飛んでいっちゃったし。きっと、あの子、将来は大きくなるわよ。
そう。
色々と。
ね。
ふふふふふふ。
はい、わいせつなこと考えた人挙手。ダメよ、そういうことばっかり考えてちゃ。もちろん、私の言っているのは霊夢のこ・と☆
……何よ、藍、その目は。
何ですか、その『☆』は、って? それはもちろん、私はゆかりんで18歳ですもの☆
……ほほう、「そんなんだから、年増扱いされるんですよ」ときたもんだ。何で聞こえるのか、って? それはもちろん、素敵な素敵な隙間通信の、お・か・げ♪
うふふふふふふ。
ねぇ、藍。あなたには選択肢があるわ。
一番。ここではない地獄を垣間見る。
二番。この世の地獄を垣間見る。
三番。ミックス。
どれがいいかしら? 私のお薦めは、三番よ。
さてさて、今日も元気にスキマウォッチング。
この前、始めたばっかりだけど、何か妙にはまっちゃってねぇ。ただでさえ、幻想郷をのんびりと眺めるのが趣味なのに。これだと年寄り臭くなっちゃうわ。ただ、まぁ、ね? この幻想郷自体を我が子とすれば、こうして見守る私は、優しい優しい美人のお母さん! これはこれではまらないかしら!?
え? 藍?
ああ、それなら……………………………………ごめん、やりすぎた。
ケース1
さて、それじゃ、今日はまずどこからにしようかしら。
こんな時は、悩まないように、適当に隙間を開きましょう。そーれ、ひらけー、ごまー。
ん? 今のは何、って? 私が隙間を開く時の合図みたいなものよ。これが、遠い遠いアラブの方まで行くと、何か四十人も盗賊がいる連中の合図になっていたみたいだけどね。
さてさて、開きましたのは…………ここ、どこ?
「春も過ぎちゃったねー、ブラックちゃーん」
「別にいいじゃない。世の中、万物は流転の法則に従うものよ」
「栄枯盛衰?」
「と言うよりも、常に世の中、光陰矢のごとし」
「そーなんだー」
……えーっと、ここはリリーたちの住処かしら? ……しかし、脳天気なことばかりを言っている、あのリリーホワイトが『栄枯盛衰』なんて単語を知っているとは……。
ゆかりん、びっくりしちゃう。
「退屈だねー」
「また来年の春まで英気を養うのも、あたし達、リリーの務めよ」
「でも、ブラックちゃん、この頃、ご飯食べすぎだよ? 太っちゃったんでしょ?」
「ばっ……! こ、このあたしが太るわけないでしょ!?」
「でもでも、昨日の夜、お風呂の後、体重計に乗って『げっ!』って顔したの、見たよ?」
「んな!? あんた、いつの間に!?」
……女の子の永遠の悩み。それはダイエット。
ブラック……あなたも苦労してるのね。
そうなのよねぇ……。基本的に、美容を一番とするなら、やせているのがいいとは言うけれど。でも、がりがりなのは、見た目にもね。本当にバランスよく、やせているわけでもない太っているわけでもないを維持するのは大変なのよ。
そこんところ行くと、幽々子は楽よね。絶対太らないし。
「やっぱり運動しないとダメだよ。一日中、ソファの上にごろごろしておせんべいかじってたら太っちゃうよ」
「うぐぐ……」
「でも……どんなことしたらいいんだろう。私たちは自機扱いじゃないから、お外に気軽に遊びに行けないし……」
「あんた、何わけのわからないことを……」
『そんな時は!』
へっ!? な、何事!?
あっ、ドアの向こうに人影!? くっ! 逆光になっていてよく見えない!
「あなた達は、リリーの役目が春を伝える、ただそれだけだと思っているようね!」
な、何者!? あの神々しいポーズ……まさか、クロノスの英雄!?
「な、何者!?」
「我が名は!
夏を伝える妖精、リリーレッド!」
しゃきーん!
「私は、秋を伝える妖精、リリーイエロー!」
どーん!
「そして、冬を伝える妖精、リリーシルバー!」
じゃきーん!
『三人そろって!』
どっかーん!
『春風戦隊ぶ……!』
「それ以上はまずいからやめろーっ!」
きゃーっ! ノイズ、ノイズよー! しゃれにならないくらいまずいわっ! っていうか、あんたら、自分たちの名乗りと戦隊の名前が矛盾してるわよっ!
らーん! ちょっと、ノイズキャンセラー持ってきてー!
「というのは冗談として。
あなた達も、ようやく、新しい任務に目覚めたようね」
「この幻想郷において、季節を伝えるのは、我々、リリーに課せられた偉大なる使命!」
「それを達成するために、日夜、リリーは空を飛ぶ!」
……そ、そーなの……?
っていうか、色とりどりで目に痛いわねぇ……このリリーたち……。
「……ホワイト、あんた知ってた?」
「うん」
「げっ」
「でもでも、リリー戦隊には、私たちは入れない、って……」
「ふふっ。あなた達は春を過ぎても、まだ何かをしたい――それは、すなわち、この幻想郷を心より愛していると言うことに相違ないわ!」
いや、あんたら、さっきの話聞いてなかったの……?
「だからこそ、私たちはあなた達を迎えに来た! 具体的にはあっちの方から!」
あっちってどっちよ……。
「さあ、私たちの手を取りなさい! そして、共に!」
「この幻想郷に、全てを伝えて回りましょう!」
「春を伝えてくれるリリーは、我らリリー一族の中で、至高を冠する究極のリリー! あなた達が入ってくれるのなら、我がリリー戦隊は、未来永劫、安泰なの!」
「どうする? ブラックちゃん」
「……好きにして……」
……いや、わかる、わかるわ、ブラックちゃん。あなたの言いたいことが。
どうしてあなたの知らないところに、こういう世界があるのかしらね……。ほんと、幻想郷って奥が深いわ……。……というかさ、私が知らないことがあるのはまずくない? 色々と。
「……ところで、全てを伝える、って。季節以外に何があるの?」
「えーっと、朝を伝えるリリーサンシャインに、夜を伝えるリリー・ザ・ナイトメア。その他に、嵐が来るのを知らせるリリーテンペストとか、日照りを伝えるリリーフレアとか……」
「つまり!
我々、リリーは、幻想郷における全ての自然現象を伝えるもの達だったんだよ!!」
な、なんだって――――――っ!?
ケース2
……なんかすごいことを知っちゃったわ。
え? ホワイトとブラック? 何か、丁重にお断りしてたわよ。そしたら、リリー戦隊の子達、『次なる同志を求めて』って飛んでっちゃったわ。
……しかし、あんなカラフルな衣装のリリーたちがいたのね。最終的には、虫の知らせを伝えるリリーなんてのも出てきてたし……。
さあ、口直しに、別の隙間の向こうを覗き見覗き見、っと……。
「……ふぅ」
あら、この向日葵畑は。
そして、あそこに立つ人影は。
「美しい……」
何、紅の鶴の人みたいなこと言ってますか、あんたは。
第一、原色で一杯の向日葵畑で、その赤と白のチェック衣装ってのは目に痛いから何とかしなさいよ。ほんとにもう……。これだから、旧作キャラは遠慮がなくて困るわ。ゆかりん、ぷんぷん。
「……でも、私には足りないものがあるのよね……」
……あら?
「ねぇ……」
……あらあら?
「あなたは……私に足りないもの……わかるわよね……」
え、えっと……その……幽香さん?
そ、その……何というか……花に話しかけるのはやめた方がいいわよ……? 何か、すごくアレっぽいから……。
「ふふっ……ええ、そうね……。あなた達は、唯一無二の私の親友だもの……」
うわぁ……。
は、花が友達……って……。ボールが友達よりも……痛い……。
「ううっ……えぐっ……ひっく……」
な、何か泣き出したわよ!?
「うぅぅ~……。そりゃ、私は確かに性格きつめでいじめっ子キャラで、実際、そう言う立ち位置にいるけれどぉ~……。どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、だぁぁぁぁぁぁぁれも私と友達になってくれないのよぉぉぉぉぉ…………」
うっわぁ~…………。
い、痛々しい……ち、ちょっと、これから先は見るの……やめようかしら……?
「同じ旧作が立ち位置のアリスにですら、今は何か友達っぽいのがいるのにぃ~……。私なんて、第一印象そのまま街道突っ走っちゃってるじゃないのよぉ~………。
お酒の席に座れば、みんなが、ざざっと後ろに引いて、楽しく遊んでいる所に声をかけたら逃げられて……あまつさえ、私だけ宴会に呼んでもらえないぃ~…………」
う……あの……えっと……。
「ううぅ……お花さん……あなた達が……あなた達だけが、私の唯一の友達よ……。これから一緒に、力強く生きていこうね……うぇぇぇぇぇ~ん……」
……こ、これはまた何というか……。
普段の、Sっ気満載のいじめっ子お姉さんの裏の顔は、寂しがりの子猫ちゃんだったのね……。ま、また意外というか……これは……。
……よし、幽香ちゃん、任せなさい。
私が……この、幻想郷と共に生きる、幻想郷のお母さんである八雲紫が、あなたに友達を作ってあげるわ!
え? 何するのですか、って?
それはもちろん、幽香を嫌う心と幽香を想う心の境界を操作するのよ! そしたら、明日から、幽香ちゃんの周りには、あの子を慕う友達で一杯よ!
まあ、あの子のことだから、絶対に素直にそれを認めようとしないだろうけど、新たなツンデレキャラの誕生として、幻想郷の歴史に長く語り継がれて行くであろう事は間違いないわっ!
人助けなんて珍しいですね、って? よく言ってくれるわね、藍。あなたはあれを見て、それでもなお、シカトすることが出来るの?
「うふふ……お花さん、あなた達は今日もきれいに咲いているわね……。かわいくて……優しくて……お友達も……しくしくしく……」
……ね?
ごめんなさい? うん、謝ればよし……わかってくれればいいのよ。
待っていてね、幽香ちゃん!
ケース3
とりあえず、私にやるべき事は、後一つ。
「きょ~も特ダネ探して西東~♪ わったしっはげんそ~きょぉ~の新聞屋~さ~ん♪」
いた。
そう! この八雲ゆかりんの完璧な計画とは!
境界を操るだけではなく、あの天狗を捕まえて、それっぽい記事を書いてもらうと言うことだっ!(ドォォォォーンッ!)
「う~ん、なかなか面白いことがありませんね~。チルノさんがかえるに負けるのはいつものこととして……。
あ、そうだ」
あっ! 逃げられる!
「せっかくですから、今日はお昼寝でもしましょう。えーっと、いい樹は……」
……何だ、休憩するのね。ちょっとほっとしたわ。
しかし、止まり木を探すとは……。天狗って、鳥類とは関係……ないわよね? 普通……。
「ああ、ここがいいですね。はー、やれやれ」
……またおっさんくさいセリフを……。
「風を受けながら、のんびりと時間を過ごして暮らす。幸せですね~」
うーん……何か、あんたと霊夢は似てるところがあるような。
あの子も、日頃を、どうやってのんびり暮らすかに人生かけているような気もするし……。悪いことではないけど、刺激の少ない人生は、そのまま脳を腐敗させるわよ。
「はぁ……気持ちいいですね~……。さやさやと梢がゆれて……。ああ、眠くなってきちゃいますね~……」
お昼寝かぁ……。
天気のいい日に、縁側とか……まぁ、何でもいいけど、時間を感じることの出来る場所で横になるのは幸せよねぇ。うちでも、よく、橙がひなたぼっこしながら丸まってるし。
ちなみに、そんな橙にお布団をかけるのは、ゆかりんの場合もあるのよ☆
「ん~……ダメです……睡魔に勝てません……。こんな事では記者失格ですが……まぁ、元々、昼寝が目的でしたし……。それじゃ、おやすみなさ~い……」
あっ、しまった!
「す~……す~……」
あっちゃ~……。
さすがに、寝付いたばかりの子を叩き起こすのはかわいそうよねぇ……。さすがに、それはゆかりんの良心が許さないわ。
……いや、私が寝付いたばかりの所を起こされるのは大嫌いだから、って理由なんだけど……。
あ、何よ、その目は!
わからないの!? あの、とろけるような感覚! ふわふわって漂っていく、あの意識が波に揺られる感覚が! 幸せなのよ!? 最高なのよ!? 二つ合わせて幸せ最高よ!?
故に!
……起こすのはかわいそうだから……しばらく、ここで待ってようかしら……。
まぁ……ねぇ。
他人の寝顔を見るのは嫌いじゃないし……。だって、みんな、かわいいもの。
……子供かぁ。こういうの見てると、本当に欲しくなるわよねぇ。作っちゃってもいいんだけど……ねぇ?
何でこっちを見るのですか、って? あら、藍。そんなの言わなくてもわかってるんじゃないの? そうやって、ほっぺたふくらましちゃって。
「ん~……むにゃ……」
ああ、危ない。樹から落ちるわよ。
やれやれ、仕方ない。軽く面倒を……って……。
「す~……」
…………………………………ね、ねぇ、藍。
い、今、私が見たのは……何なのかしら……。
「く~……」
み、見間違い? そ、そうよね! 見間違いよね! あ、あははは、そう、そうなのよ! 見間違いに決まっているわ!
そ、そうと決まれば……。
「むにゃむにゃ……」
…………………………。
み……見間違いじゃ……なかった……。
……藍、私は、射命丸文に対して、新たな属性と評価を下したいと思うわ。あなたに、異論はある? ……ないわね、よし。
射命丸文:ぱんつはいてないっ娘
ケース4
ああ……いつの間にか夜になっちゃったわ……。
文ちゃん……あの短さでそれは犯罪よ。あんまりにもあんまりだから、ちゃんとはかせてきてあげたけど……大丈夫かしら……。
確かに、風を操れば絶対領域を操ることは可能だろうけど……それでも……ねぇ……。
……ま、まぁ、気を取り直して、今日のスキマウォッチングのラストと行きましょう!
幽香ちゃんの件は、また後で、ってことで。
えーっと……夜……夜と言えば……あの子がいいかしら。
さて、どこにいるのかなぁ……っと。
……ん? 声?
何か、これに似たような展開が紅魔館であったけど、これは何か毛色が違うわね……何かしら。
さてさて……?
……あら、ルーミアちゃん。
「……ふに?」
あら、こっちに気づいたみたいね。
「こんばんはー」
「はい、こんばんは」
にこにこ笑顔の彼女を見て、私は確信する。
「何してたの?」
それでも、私はあえて問いかける。
ルーミアちゃんは、にっこりと。
「晩ご飯ー」
「あら、そう。美味しそうなご飯ね」
「うん。紫おば……じゃなくて、お姉ちゃんも食べるー?」
「そうねぇ……。帰ったら、藍のご飯があるのだけど……小腹も空いているし。少しだけ、ご相伴にあずかろうかしら」
「そーなのかー」
彼女に案内されるまま、私は彼女の食卓へ。
月と星の光に照らされて、浮かび上がる彼女のお食事。
「美味しそうね」
「美味しいよー」
「柔らかそうね」
「柔らかいよー」
「新鮮ね」
「まだ生きてるもん」
「うふふふ」
そう。
本当に、美味しそう。
「それじゃ、いただきましょうか」
「うん」
「じゃあ」
いただきます。
ぐちゅ。くちゅ。くちゃ。くちゃ。くちゃ。にちゃ。ごきん。ぱきん。ずるずる。じゅくっ。ぐちゃり。
「少し、無粋ね」
がぶり。
「静かになったね」
「本当ね。でも、まだまだ生きはいいわよ」
小腹が空いていると言ったけど。
お腹一杯、食べてしまいそうで。
少しだけ、自分に正直すぎかな、と笑ってしまった。
本日のスキマウォッチング、これにて終了。
ああ、美味しかった。
でも、藍に、『ご飯を残さないでください』って叱られてしまったのよね。それについては、ゆかりんも反省しないと。
けど、ルーミアちゃんはよく食べるわね。「まだお腹が空いてるー」ってふらふら飛んでいっちゃったし。きっと、あの子、将来は大きくなるわよ。
そう。
色々と。
ね。
ふふふふふふ。
そして文ファンとしてこれだけは言わせていただきたく。
す ば ら し い
は い て な い !
沁みるぜ……
あるときは自転車販売店。またあるときはラジコン販売店。いかに商品を変えたとて、人の記憶に残るのは優良移植のみ…人それを『V(幻想郷へ
それは置いといて、文の設定がステキスギマス(悦
自分で良ければ… 人間なので数十年しか付き合えないですけど…w
ああ懐かしい。