Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

カゴノトリ

2006/05/07 23:28:17
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 夜雀の鳴き声がうるさくて、夜も寝ていられません。どうにかして下さい。

「そんな依頼がここのところよく来るの」
「へえ。そういえば、依頼っていつお前のとこに届くんだ? 神社でついぞ人間を見たことがないぜ」
「人が来なくたって届くわよ」
「妖怪ポストでも置いてあるのか」
「電波」
「…………深い追求は避けるぜ」
「賢明ね」

 霊夢が眉ひとつ動かさずに茶をすするので、魔理沙も仕方なくそれにならった。ずずず。真っ赤な鳥居越しに見える空は、無駄に青い。

「それで、夜雀は退治たのか」
「まさか」霊夢はせんべいをつまんでポリポリ食べ始めた。「そんなことくらいでいちいち私が動いてたら、人間と妖怪のバランスが崩れるわ」
「じゃあどうするんだよ、博麗の巫女」

 霊夢はせんべいを一枚食べ終えると、親指と人さし指をぺろりと舐め、お茶で口の中のものを流し込んだ。ほう、と一息吐く。

「歌を教えたわ」

「……は?」
 魔理沙はせんべいに伸ばしかけた手を思わず止めた。
「芸術的にとても価値のある曲よ、って教え込んだらものすごく感動してたわ。これで迷惑もかからないし、しばらくは問題も起きないでしょ」
「……あー、すまんが霊夢、日本語で話してくれここは幻想郷だ」
「聞けばわかるわよ」

 霊夢がパンと手を鳴らすと、神社の陰から件の夜雀が出てきて、人間二人の前に立つとぺこりとお辞儀をした。

「なんだなんだ、いきなりライブコンサートか? 耳栓は持ってきてないぜ」
「黙って聞く。みすちー、いいわよ」

 みすちー? と魔理沙はツッコみそうになったが、なんだかもういろいろ無意味な気がしたのであきらめた。ミスティアはもう一度お辞儀をすると、足を肩幅に開いて胸を張り、歌う姿勢を作った。左手が青い空を指し、右手を軽くみぞおちに添えて目をつぶる。何が始まるのか、と魔理沙が固唾を呑むと、ミスティアのかわいらしい唇が花のように開き、すう、と息を吸った。そして――


















































































































 ひばりのおしゃべり。



「……なあ、霊夢。歌はいつ始まるんd」
「いいから黙って聞く」






















































































































































 何の前触れもなく、ミスティアは左手を下ろして、ぺこりと腰を折った。

「素晴らしかったわ、みすちー」
 ぱちぱちと拍手をして、霊夢が讃える。
「……なあ、霊夢」
 たまりかねて魔理沙は言った。「何だったんだ一体。歌う姿勢で固まってただけじゃないか」
「失礼ね。ちゃんと歌ってたじゃない」
「電波か? 超音波か? 妖怪と巫女にしか聞こえない歌か? すまんが私は普通の魔法使いだ」
「ちゃんと人間にも聞ける曲よ」
「どんな曲だよ」

 ただただ青い空を眺めながら、ずず、と霊夢はお茶をすすった。






「『4分33秒』よ」

ジョン・ケージに捧ぐ。
みすちー可愛いよみすちー
つくし
http://www.tcn.zaq.ne.jp/tsukushi/
コメント



1.名無し妖怪削除
「無音の音楽」ですか
しかしみすちー、それで満足なのかw
2.久遠の夢削除
まさかプリズムリバーにも教え込んだりは………
3.名無し妖怪削除
あまりの行間にもしやと思ったが・・・
もしやと思ったが吹いたww
4.削除
吹いた。
5.名無し妖怪削除
「沈黙の時間は4分33秒、つまり273秒だ。これは摂氏-273度(絶対零度)と同じである。これはあらゆる分子運動が静かに止まる温度である。」

通り掛かりのチルノが語り、そして場が凍りついた。
6.名無し妖怪削除
オチに吹いた。

>沈黙の時間は4分33秒、(中略
> 通り掛かりのチルノが語り、そして場が凍りついた。

これも腹を抱えて笑った。
7.無銘削除
このままヴェクサシオンがはじまるのかと
8.名前が無い程度の能力削除
行間が長いので、もしかしたらと思ったんですが…
しかし、みすちー、よく納得したなぁ

これがまだプリズムリバーなら、すんなり(比較的)
いきそうな気もするんですが