" />犬の願い 作者: 駄文を書き連ねる程度の能力
Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

犬の願い

2006/05/07 07:06:12
最終更新
サイズ
1.78KB
ページ数
1
閲覧数
560
評価数
0/0
POINT
0
Rate
5.00




少女は十六夜の晩、仔犬を拾った。

仔犬は酷く飢えていて、疲弊した顔は闇よりも冥い。

しかしその双眸は血よりも赤い紅を宿し、鋭かった。

少女は仔犬に遅い夕餉を振舞う事にした。

仔犬は出された食事に手を付けようとはしない。

怯えきったその目はナイフの様に尖り、少女を睨んでいた。

少女は仔犬を叩いた。力いっぱい何度も叩いた。

その度仔犬は悲鳴を上げてのた打ち回り、だが眼光は緩む事は無い。

打ち据える音が響く。仔犬の悲鳴が響く。

ぼろぼろになって横たわる仔犬の前に、少女はもう一度スープの皿を差し出す。

仔犬は食器と少女を交互に睨み、やがて貪る様に食べ始めた。

新しく生まれた復讐のために。生き伸びてその喉笛を食い千切るために。

少女はうんと頷いた。何があったかは知らない。何に恐れているかはわからない。

しかし恐れるだけでは生きてはいけない、私が新しい理由になろう。

恐れるだけの子犬に、少女はもう一度生きる理由を与えた。

紅い瞳に気概を宿した仔犬の快復は早かった。

少女は仔犬を躾けた。完璧であるように。瀟洒であるように。

執拗に。徹底的に。その牙が哀しみを忘れぬように。

能く躾けられ能く学んだ犬に、少女は多くを任せる事にした。

犬は快く従った。任された万の仕事を完璧にこなした。

常に少女の横に付き、行儀正しく瀟洒に振舞った。しかし決して尻尾は振らなかった。

見え透いた慇懃無礼に、少女はうんと頷いた。

犬の時間は短かった。美しい毛並みはやがて艶が抜ける。

変わらぬ物は、一対の紅だけだった。

犬は病床に伏せながらも、見苦しく鳴く事も無く節度良く振舞った。

十六夜の晩に犬は返事をしなくなった。

水も飲まず、食事も摂らない。少女は犬を抱き上げた。

尻尾を振れと少女は言う。犬はそれに従わなかった。

雄弁なる紅に、少女は己が見た運命の訪れを悟った。

それでも少女は、嘘でもいいから尻尾を振れと叫んだ。犬はやはり従わなかった。

温度無き少女の腕の中。犬は静かに息を引き取った。

犬の復讐は終わった。少女は頷かず、温度無き犬をじっと見つめていた。


最近活気付いているプチ創想話。
こんなの投稿して怒られやしないかと恐れつつ。

と、言うわけでみんながあんまり犬犬言うもんだから、別アプローチ!
駄文を書き連ねる程度の能力
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.簡易評価なし
1.無評価鱸 削除
涙腺がーぁーぁー
2.無評価名無し妖怪 削除
GJ!
3.無評価床間たろひ 削除
その誇り高き狗の、魂の安らぎを願いつつ……
それでもその狗は、少女の腕に抱かれ幸せだったと信じつつ……

良い生涯でしたw