はぁ~い、みんなのアイドル、幻想郷と共に生きる隙間妖怪のゆかりん、18歳よ☆
……何よ、藍、その視線は。っていうか、何よ、その目は! いいじゃない、鯖読んだって。
え? 読み過ぎ?
……よっぽど、隙間に落ちたいみたいね。
最近の私は暇人なのよ。普段から寝てばかりの生活をしているから、どうにも、生活サイクルがずれこんじゃってるみたいで。あの永遠亭の薬師にも、「そう言う自堕落な生活をしていると、まず、体に来ますよ」っていわれちゃって。ゆかりんの、この素晴らしいプロポーションが崩れちゃうのは、大きいのが好きなみんなの夢を打ち砕くことだと思ったから、今日は暇つぶしに、何をしようか考え中。
え? 藍? ああ、そういえば、さっき、「うわー!? スペルカードが! スペルカードに手足が生えて襲ってくるー!」ってわけのわからないこと言ってたけど?
さて、それはさておいて。
暇だから、この隙間を使って、隙間ウォッチングでもしちゃいましょうか。どこぞの鬼とやっていることは同じだけど、暇つぶしにこれ以上適したものはないもの。見たところで面白いことやってたら、運動もかねて参加させてもらいましょうか。
さて、それじゃ。
ケース1
はい、開きました、魔法の森への隙間。見えてきましたよ、森の中にぽつんと佇む一軒家。人の気配がするみたいだから、ちょっと中に……っと。
「この、バカ魔理沙ーっ!」
「うわっ、ちょっ、落ち着けアリスっ!」
……あら? いきなり修羅場?
どうやら、アリスが魔理沙の所に来ていたようね。あの二人、仲が悪いように見えてコンビネーションがよかったり、よくわからないのよね。まぁ、そういうのもいいものでしょ。青春ってやつね。
で、何でこんな状況になっているわけ?
「せっかく、私の創った人形壊して! これ、どうしてくれるのよー!」
「だから落ち着けって! それくらい、お前なら簡単に作れるじゃないかっ!」
……ははぁ、なるほど。アリスの足下に転がっている残骸は、どうやら、人形だったものみたいね。何があったのか知らないけど、真っ黒焦げだし。で、それにご立腹のアリスちゃんは、その犯人である魔理沙に向けて怒りをぶつけている、ってことか。
でもね、アリスちゃん。手当たり次第にものを投げるのはよくないと、お姉さんは思うわよ?
「だーっ! あぶなっ! アリス、包丁はっ! 包丁はやめろー!」
……ほら。
「せっかく……! せっかく、私が創ったのよ!? それなのに、何よ! その言いぐさ!」
「だから、悪かったって謝ったじゃないか! 謝ったのに、その謝意を受け入れないなんて傲慢だぞ、アリス!」
「どっちが傲慢なのよ! 私が……私が……っ……!」
あらあら、泣かせちゃった。
まぁ、わからないでもないわねぇ。何を作っていたか知らないけど、アリスにとって、それは大切なものだったんでしょうね。それを壊されたと言うだけでもショックなのに、ましてや魔理沙のこの態度。あなた、反省しなさいよ。
「あ……いや、その……」
ほら、うろたえだした。今さら遅いのよ。
アリスなんて、完全に乙女モード。ぺたんとへたりこんじゃってるし。かわいそうにね。
……おや? 魔理沙、何するつもり?
「……わかったよ。私が悪かった、ごめん。
……その……同じものが出来るかどうかはわからないけど、精一杯、直してみるよ。だから……ほんと……ごめんなさい」
あらまぁ! あの魔理沙が、あんなにしおらしく! ……ふーん……ちゃんと、自分が悪いことは悪いと認めるタイプなのかしら、案外。
けどねぇ……魔理沙じゃ、アリスみたいに芸術的なドールを作るのは無理じゃないかしら。それでも、まぁ、健気だこと。
「……ふん……いいわよ。別に。
どうせ、魔理沙に直せるわけ……ないし……。もういい……私が直すから……」
「いいよ、私が……」
「謝ってくれたんだし……もういい」
涙をふいて立ち上がって。これぞ乙女、女の子。
魔理沙の手から、黒こげの物体を取り上げて、べーっ、と舌を出して。あらあら、かわいいんだから。
「お詫びに、お茶の一つや二つ、淹れてよね」
「……ま、そんくらいなら」
そうそう。人間、仲良しを作るのが一番よ。やっぱり、最後に頼れるのは友達だものねぇ。
お互い、もう少し、生活態度を改めて。たまには素直になりなさいな。
ケース2
さて、次にやって参りましたのは、竹林の奥の永遠亭。
今日もしんと静まりかえった、静かな世界に佇む幻想的な和風の建物は、これだけで一枚の写真になりそうね。いい感じじゃない。あら、門番のうさぎちゃん達は暇そうね。まぁ、こんな所に攻めてくるような奴らなんて、私たち以外にはいないか。
さてさて。この中で、見ていて楽しいところは……やっぱり、あの薬師のところかしら。
えーっと、確かこっちの方に……あ、ここね。
どれどれ?
「ウドンゲ、脱ぎなさい」
「はい」
何っ!? ちょっ、こやつら、真っ昼間から何してますか!?
いやん、ゆかりん、目撃者!? こ、これはしっかり見ておく必要があるわね! 藍! カメラ持ってきなさい、カメラ! ああ、そこの天狗でもいいわ! ほら、しっかり撮影を!
「何、顔を赤くしてるの。いつものことでしょう」
「は、はい……で、でも、恥ずかしいですよぅ……」
まぁぁぁぁ! 聞きましたか、奥様! いつものことなんですって!
ってことは、あれかしら!? あなた達、もう、畳の跡が肌につくなんて当たり前の関係なんでございますか!? まあまあまあ! あらあらまあまあ!
「どれ」
「……はぅ」
……あら?
「胸には異常なし……と。背中……呼吸、異常なし」
……あらあら?
「やっぱり、ただの風邪みたいね」
「……やっぱりですか」
……えっと……。
「全く。何で、足を滑らせて池に落ちないといけないの」
「うぅ……」
「仕方ないわね。とりあえず、注射、打っておくから。服を着て、腕まくりしなさい」
「はい……」
……お医者さんごっこ……というわけじゃないわよね? うどんげちゃん、何か顔赤いし……。
……これって、ただの診察……? えー……つまんなーい……。
「本当にもう。ドジなんだから」
「ごめんなさい……」
「謝らなくていいわ。あと、風邪薬も用意しておくから。さっさと部屋に戻って、ちゃんとあったかくして横になってなさい。ご飯は、私が美味しい薬膳を作っておくわ」
「ありがとうございます……師匠」
「いいのよ。患者を治すのは医者の役目だものね」
はぁ……なんだ、そんなことなの。てっきり、あれこれ色々想像しちゃった私がバカみたいじゃない。ゆかりん、がっかり。
「でも、ドジじゃなくなったら……真面目すぎるウドンゲも、何かつまらないわね」
「ふぇ……それ、ほめてませんよね?」
「当然よ。お願いだから、大切な薬の瓶を割らないでよね」
「うぐぅ……」
ふーん……なるほど。隠れドジっ娘属性か。これは一本取られたわね。
「じゃ、部屋に戻りなさい。……戻れる?」
「はい」
「風邪を引いた時は、栄養のあるものを食べて寝ているのが一番よ」
「はい」
「よろしい」
あらら……やっぱり、これだけだったのね。つまんないの。
……と、永琳、何やってるのかしら。
「全く、本当に。ああやって私に手をかけさせてくれて」
また幸せそうな顔しちゃって。母性本能が強いというか、単に弟子思いというか。
……案外、彼女、子供を持ったらいいお母さんになるかもね。彼女にとっては、この屋敷に住まうもの、みんながかわいい子供ということかもしれないし。
子供を守るのは母親の役目、ってところかしら。お疲れ様。
ケース3
さて、次にやってきたのは紅魔館よ。相変わらず、門番が暇そうにあくびしてメイド長にナイフ投げられるのを横目にしつつ、建物の中へ~、っと。
えーっと、どこが楽しいかしら。一番、見ていて飽きないのは、あのちみっこ吸血鬼の妹だけど。だけど、この時間帯だと寝てるかしら? 健康的な生活してるって言ってたし。
となると……ん?
……声? 何かにぎやかね。何してるのかしら。
えっと……声が聞こえるのはこっち、と。ああ、ここだ、ここ。
……ヴワル図書館? 何があるのかしら。どれどれ……。
「何よ、レミィ! その程度なの!?」
おおっと。何か怒声が聞こえてきたわよ。……にしても、普段、そんなに大きな声を出さない人のこんな声を聞けるなんて。長生きはしてみるものね。
声の場所は……。
「くっ……!」
「何? その目は。あなたが、自分で宣言したことが出来てないのが問題なのでしょう? そういう目を向ける相手を間違っていると思わない?」
「……」
「レミィ、私はあなたに期待しているわ。わかる? その意味が」
何やってるのやら。
本棚の陰の……ここね。えーっと………………………………………………………。
「咲夜が、本格的に魔法少女の立場をあなたに譲った以上、あなたは幻想郷を背負って立つ『魔法の吸血鬼 ヴァンパイア☆レミちゃん』なのよっ!」
見てはいけないものを見てしまったかもしれない。
「以前のイベントの時、あなたは輝いていたわ! この幻想郷で一番輝いてたと言ってもいい! でも、何!? この体たらくは!
あなたが目指したものは、こんなものだったの!? 米倉さんが泣くわよ!?」
誰よ、米倉さんって。
「誰もが探した夢は、今、ここにあるのよ! そんな程度で、魔法少女の歴史に残る、幻の大技を描くことが出来ると思っているの!?」
……そんな歴史、あったかしら。あとで半獣に聞いてみないと……。
「……わかったわ。わたしは、別に、自分に甘えているとは言わないけど……」
おお、闘気が揺れてる……。
……だけどね、レミリアちゃん。そのふりふりの衣装に魔女っ娘ルックじゃ、そのセリフに勢いというか、説得力というか……とにかく、何か色んなものが足りないわよ? わかってる……わよね?
「そこまで言われたら、この、夜の王としてのプライドをくじかれるも同じ事……!」
「誓いを立てたのはあなたよ!」
「わかってるわ! だから、それに見合うだけのことをやってみせる……演じてみせる!」
「そう、その意気よ! 私は、あなたにこそ、見込みがあると信じている! あなたなら、この幻想郷の人々全ての心に残る、伝説の魔法少女になれると!」
……えっとね……その……まぁ……うん……。
いや、魔法少女が悪いとは言わないわよ? かわいいし。この前のショーは、それはそれは面白かったし。ついつい、グッズも買いあさっちゃったし。あ、でも、あれって全部プレミアものなのよねぇ……香霖堂で、フィギュアが倍以上の値段で、即日販売されてたし……って、それはどうでもいいとして。
それはいいのよ、あなた達。だけどね……その……何というか。
何か色々間違ってない?
「レミィ、そこで回転! 違う、遅いっ!」
「これでいいのよ! 見てなさい、パチェ! 台本に従うだけが演技じゃないと言うことを見せてあげるわ!」
「そこまで言うのなら……わかった、見せてもらおうじゃない!」
「見せてあげるわ、この、魔法の吸血鬼ヴァンパイア☆レミちゃんの実力をっ!」
あー……うー……その……ごめん、コメント無理。
何か、紅魔館も、どんどん愉快なところになっていくわねぇ……。紅魔郷の頃の、あのシリアスでカリスマに満ちた世界はどこいったのかしら。って、あら? 何かしら、紅魔郷って。何か変なノイズが入ったわね。
「ああ……ご立派です、お嬢様……。これで……これで、私も、あなた様に魔法少女の地位を譲ることが出来ますわ……」
って、こら、そこのメイド。本棚の陰に隠れてはらはら泣かないの。あんた性格変わってない?
「なっ!? こ、これはっ!?
これは、かつて、魔法少女の歴史に飾られた、伝説の奥義の一つっ!?」
「ふっ……ふふっ、どうかしら!? 毎日の練習が、ついにこの技を成功に導いたのよ!」
何やったの!? しまった! 見逃したっ!!
ケース4
えーっと……ちょっと口直しを、と。
白玉楼なんかいいかしら。あそこなら気心の知れた人しかいないから、そのまま遊びにいってもいいしね。
さてさて、幽々子と妖夢はどこかしら?
「よーむー」
「はーい」
あ、いた。
「妖夢」
「はい、何でしょう、幽々子さま」
相変わらず、主を立てる健気な性格してるわよねぇ。
幽々子なんて、普段は天然おっとり大食いちゃんでカリスマなんて欠片もないっていうのに。それなのに、この子は常に主を立てて……ああ、いいわねぇ、正しい従者の形だわ。……って、何よ、藍、その目は。
「ちょっとこっちにいらっしゃい」
「はい?」
あら? 何かしら。
テーブルの上にはお茶もお菓子もちゃんと残ってるし。気に入らないから別のものを持ってこいとか? そんなことはないわよね、幽々子は何でも好き嫌いせず残さず食べるし。それが健康の秘訣よね。だから、好き嫌いしちゃダメよ、みんな。
「ここに座りなさい」
「は、はあ……」
あらあら、妖夢ってば。顔が引きつってるわよ。
何したんだろう。私は何をしてしまったんだろう、って。動揺している気配が伝わってくるわ。あの子は真面目だから、いざ、こういう事態になると、すぐに悪いことを想像してしまうのね。ま、わからないでもないけど。
「ほら、早く」
「す、すいません」
あらあら、かわいそうに。体をかちこちにしちゃって。
これは助け船を出した方がいいかしら。今日は、見た限り、特に何かがあったわけでもないようだし。かわいい妖夢ちゃんを助ける優しいお姉さんのゆかりん。あら、絵になるわ。
……だから、何よ、藍。その目は。
「ほら」
「し、失礼します……」
あらあらあらあら。
「よいしょ」
「……へっ?」
あら?
「よし、完成」
「……みょん?」
えっと……これはどういう状況?
幽々子が妖夢を隣に座らせて、それでそのまま、ぱたんと横に……膝枕?
「ゆっ、ゆゆこしゃまぅっ!?」
「舌を噛むほど慌てることじゃないでしょ」
いや、慌てるわよ。事、相手が妖夢なのよ? あなた。
「な、何でしょうか……これは……」
「今日は、朝から色々忙しかったでしょ? だから、たまにはのんびりさせてあげようかな、って」
「で、でも、私、まだやることが……」
「そんなのはいいの。今夜の晩ご飯は、紫のうちでごちそうになるから」
だってさ、藍。
こら、泣くな。ついでに逃げるな。
「でも……」
「妖夢はね、真面目すぎるの」
「……」
「真面目でいい子なのはいいことよ。でもね、もう何度も言ってるけれど、たまには私に甘えてちょうだい」
……ふーん。
「こうやって、私が気を遣わないといけないなんて。主人に対して不敬よ?」
「も、申し訳……」
「謝らなくていいの。
せっかくだから、のんびりしなさい」
「……はい」
「よしよし」
あらま……いいわねぇ。
幽々子って、普段はいまいち何考えているかわからないけど、ちゃんと、やるべきことはやるし、考えるべき事は考えている、ってことかしら?
まあまあ、妖夢の幸せそうなこと。
「お昼時、ご飯を食べたら、こうやってのんびり過ごさないと」
「……」
「妖夢?」
おや?
「……あら」
あらま、寝ちゃってるわ。
多分、朝から忙しかったのね。それで、自分の慕う主人の優しい言葉に気を緩めてしまって、そのまますやすや。ありがちねぇ。
でも、ありがちだから、よけいかわいらしいのかしら。ほんと、かわいい寝顔。ほっぺたぷにぷにしたいわ。
「ほんと、真面目なんだから」
幽々子も幸せそうね。
あの子達も、幸せになれるのかしら。幸せって何? って? それは自分たちで考え、定義するものでしょ。一人の幸せがみんなの幸せとイコールで結ばれるわけじゃないんだから。
ただ、あの子達にとっては、こういうのが幸せなのかもしれないけど。
幽々子はいい従者を持てたし、妖夢はいい主人を持てたし。
羨ましいわね、ほんと。
……あら、藍。何かしら? 私はあなたにとって、いい従者でしょうか、って? そんなの、何を答えろと言うの、あなたは。
ケース5
さてさて、楽しみは最後に取っておかないと。
ついにやってきました、博麗神社。辺りはすっかり夕暮れ時。ものぐさぐーたら巫女は、さて、何しているかしら。
「……す~……す~……」
ありゃま。
母屋の縁側でお昼寝ですか。幽々子達を見てきたばかりだから、また何とも言い難いわね。
朝から、別段、何かのお勤めしてるってわけじゃないくせに。ほんと、サボってばかりなんだから。
「ん~……」
だけど、こうやって寝ている姿は、どんな子供でも天使と言われるだけはあるわ。私にとっては、ここに生きる全てのものが子供に過ぎないわけだし。
ほんと、こやつも、こうしているとかわいいんだけど。どうして、目を覚ましたらあんなに態度が悪いのかしら。育て方、間違ったかしらねぇ。
「ん~……ふぁ~……」
あら、起きた。
「んむ……?」
どうやら、寝ぼけてるみたいね。ぽや~んとした顔しちゃって、まあ。
「あ~……もうこんな時間か~……。今日も、たっぷり巫女やったなぁ」
寝てるのが巫女の仕事なのかしら。
……ま、仕事なんでしょうね。霊夢にとっては。
「さて、ご飯でも作ろうかな。確か、昨日、慧音にもらった鮭の切り身が……」
つましい生活、のんびり生活、悠々自適な根無し草。
どれもが、この子を表しているとは思うけど。根無し草はちょっと違うかしら? でも、無重力巫女にとっては、それも正しいかもしれないわね。
……さて、と。
「何してるのかしら、霊夢」
「何しに出てきたの、紫」
「あら、大層なご挨拶だこと。
よだれ。ほっぺた」
「はっ!?」
ふふっ、かわいいんだから。
よだれなんてついてるわけないじゃない。ねぇ?
「……何よ、その目は」
「べっつにー?」
「もう。
ご飯ならあげないわよ。うちの財政とか食糧事情とか、知ってるんでしょ?」
「別に食べさせてもらいに来たのではないわ。逆よ」
「え?」
「うちでご飯、食べない?」
「いいのっ!? 行く行くっ! と言うわけだから、早く連れてって!」
……ほんと、見ていて飽きないわ。
藍、ため息つかないの。幽々子の料理を作る片手間に、この子の分を作るだけなんだから。幽々子に比べたらマシでしょうが。
「現金ね」
「現金でもいい! プライドで腹はふくれない!」
「ほんと、切羽詰まってるわねぇ。
何でこんなに困窮しているのやら」
「ほっといて。ほら、早く。早く、ご飯!」
「はいはい。焦らない焦らない」
ま、たまにはこういうのもいいでしょ。結局、デバガメしてただけだったけどさ。
それでも、のんびり過ぎていく時間を見ているのは好きだし。むしろ、嫌いじゃない、というレベルを超えてるわね。
これからも、ちょくちょく、隙間ウォッチングしようかしら。次は、今日、見られなかった子達を中心に、ね。
これにて、ゆかりんの隙間ウォッチング、しゅーりょー、っと。
-エピローグ-
「らーん! よーむー! おかわりー!」
「よぉむぅ~、おかわりぃ~」
「……なぁ、妖夢。教えてくれ。私たちは、あと、どれくらい飯を作ればいい……?」
「お二人のお腹が満足するまでですよ……ふっ……」
「おかわりおかわりおかわりー」
「おーかーわーりー」
「……あんたらねぇ……!」
「ん? 何よ、紫」
「人がせっかく、きれいに話をまとめて終わらせたのに、台無しにしてんじゃないわよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「紫ぃ、おかわりぃ」
……何よ、藍、その視線は。っていうか、何よ、その目は! いいじゃない、鯖読んだって。
え? 読み過ぎ?
……よっぽど、隙間に落ちたいみたいね。
最近の私は暇人なのよ。普段から寝てばかりの生活をしているから、どうにも、生活サイクルがずれこんじゃってるみたいで。あの永遠亭の薬師にも、「そう言う自堕落な生活をしていると、まず、体に来ますよ」っていわれちゃって。ゆかりんの、この素晴らしいプロポーションが崩れちゃうのは、大きいのが好きなみんなの夢を打ち砕くことだと思ったから、今日は暇つぶしに、何をしようか考え中。
え? 藍? ああ、そういえば、さっき、「うわー!? スペルカードが! スペルカードに手足が生えて襲ってくるー!」ってわけのわからないこと言ってたけど?
さて、それはさておいて。
暇だから、この隙間を使って、隙間ウォッチングでもしちゃいましょうか。どこぞの鬼とやっていることは同じだけど、暇つぶしにこれ以上適したものはないもの。見たところで面白いことやってたら、運動もかねて参加させてもらいましょうか。
さて、それじゃ。
ケース1
はい、開きました、魔法の森への隙間。見えてきましたよ、森の中にぽつんと佇む一軒家。人の気配がするみたいだから、ちょっと中に……っと。
「この、バカ魔理沙ーっ!」
「うわっ、ちょっ、落ち着けアリスっ!」
……あら? いきなり修羅場?
どうやら、アリスが魔理沙の所に来ていたようね。あの二人、仲が悪いように見えてコンビネーションがよかったり、よくわからないのよね。まぁ、そういうのもいいものでしょ。青春ってやつね。
で、何でこんな状況になっているわけ?
「せっかく、私の創った人形壊して! これ、どうしてくれるのよー!」
「だから落ち着けって! それくらい、お前なら簡単に作れるじゃないかっ!」
……ははぁ、なるほど。アリスの足下に転がっている残骸は、どうやら、人形だったものみたいね。何があったのか知らないけど、真っ黒焦げだし。で、それにご立腹のアリスちゃんは、その犯人である魔理沙に向けて怒りをぶつけている、ってことか。
でもね、アリスちゃん。手当たり次第にものを投げるのはよくないと、お姉さんは思うわよ?
「だーっ! あぶなっ! アリス、包丁はっ! 包丁はやめろー!」
……ほら。
「せっかく……! せっかく、私が創ったのよ!? それなのに、何よ! その言いぐさ!」
「だから、悪かったって謝ったじゃないか! 謝ったのに、その謝意を受け入れないなんて傲慢だぞ、アリス!」
「どっちが傲慢なのよ! 私が……私が……っ……!」
あらあら、泣かせちゃった。
まぁ、わからないでもないわねぇ。何を作っていたか知らないけど、アリスにとって、それは大切なものだったんでしょうね。それを壊されたと言うだけでもショックなのに、ましてや魔理沙のこの態度。あなた、反省しなさいよ。
「あ……いや、その……」
ほら、うろたえだした。今さら遅いのよ。
アリスなんて、完全に乙女モード。ぺたんとへたりこんじゃってるし。かわいそうにね。
……おや? 魔理沙、何するつもり?
「……わかったよ。私が悪かった、ごめん。
……その……同じものが出来るかどうかはわからないけど、精一杯、直してみるよ。だから……ほんと……ごめんなさい」
あらまぁ! あの魔理沙が、あんなにしおらしく! ……ふーん……ちゃんと、自分が悪いことは悪いと認めるタイプなのかしら、案外。
けどねぇ……魔理沙じゃ、アリスみたいに芸術的なドールを作るのは無理じゃないかしら。それでも、まぁ、健気だこと。
「……ふん……いいわよ。別に。
どうせ、魔理沙に直せるわけ……ないし……。もういい……私が直すから……」
「いいよ、私が……」
「謝ってくれたんだし……もういい」
涙をふいて立ち上がって。これぞ乙女、女の子。
魔理沙の手から、黒こげの物体を取り上げて、べーっ、と舌を出して。あらあら、かわいいんだから。
「お詫びに、お茶の一つや二つ、淹れてよね」
「……ま、そんくらいなら」
そうそう。人間、仲良しを作るのが一番よ。やっぱり、最後に頼れるのは友達だものねぇ。
お互い、もう少し、生活態度を改めて。たまには素直になりなさいな。
ケース2
さて、次にやって参りましたのは、竹林の奥の永遠亭。
今日もしんと静まりかえった、静かな世界に佇む幻想的な和風の建物は、これだけで一枚の写真になりそうね。いい感じじゃない。あら、門番のうさぎちゃん達は暇そうね。まぁ、こんな所に攻めてくるような奴らなんて、私たち以外にはいないか。
さてさて。この中で、見ていて楽しいところは……やっぱり、あの薬師のところかしら。
えーっと、確かこっちの方に……あ、ここね。
どれどれ?
「ウドンゲ、脱ぎなさい」
「はい」
何っ!? ちょっ、こやつら、真っ昼間から何してますか!?
いやん、ゆかりん、目撃者!? こ、これはしっかり見ておく必要があるわね! 藍! カメラ持ってきなさい、カメラ! ああ、そこの天狗でもいいわ! ほら、しっかり撮影を!
「何、顔を赤くしてるの。いつものことでしょう」
「は、はい……で、でも、恥ずかしいですよぅ……」
まぁぁぁぁ! 聞きましたか、奥様! いつものことなんですって!
ってことは、あれかしら!? あなた達、もう、畳の跡が肌につくなんて当たり前の関係なんでございますか!? まあまあまあ! あらあらまあまあ!
「どれ」
「……はぅ」
……あら?
「胸には異常なし……と。背中……呼吸、異常なし」
……あらあら?
「やっぱり、ただの風邪みたいね」
「……やっぱりですか」
……えっと……。
「全く。何で、足を滑らせて池に落ちないといけないの」
「うぅ……」
「仕方ないわね。とりあえず、注射、打っておくから。服を着て、腕まくりしなさい」
「はい……」
……お医者さんごっこ……というわけじゃないわよね? うどんげちゃん、何か顔赤いし……。
……これって、ただの診察……? えー……つまんなーい……。
「本当にもう。ドジなんだから」
「ごめんなさい……」
「謝らなくていいわ。あと、風邪薬も用意しておくから。さっさと部屋に戻って、ちゃんとあったかくして横になってなさい。ご飯は、私が美味しい薬膳を作っておくわ」
「ありがとうございます……師匠」
「いいのよ。患者を治すのは医者の役目だものね」
はぁ……なんだ、そんなことなの。てっきり、あれこれ色々想像しちゃった私がバカみたいじゃない。ゆかりん、がっかり。
「でも、ドジじゃなくなったら……真面目すぎるウドンゲも、何かつまらないわね」
「ふぇ……それ、ほめてませんよね?」
「当然よ。お願いだから、大切な薬の瓶を割らないでよね」
「うぐぅ……」
ふーん……なるほど。隠れドジっ娘属性か。これは一本取られたわね。
「じゃ、部屋に戻りなさい。……戻れる?」
「はい」
「風邪を引いた時は、栄養のあるものを食べて寝ているのが一番よ」
「はい」
「よろしい」
あらら……やっぱり、これだけだったのね。つまんないの。
……と、永琳、何やってるのかしら。
「全く、本当に。ああやって私に手をかけさせてくれて」
また幸せそうな顔しちゃって。母性本能が強いというか、単に弟子思いというか。
……案外、彼女、子供を持ったらいいお母さんになるかもね。彼女にとっては、この屋敷に住まうもの、みんながかわいい子供ということかもしれないし。
子供を守るのは母親の役目、ってところかしら。お疲れ様。
ケース3
さて、次にやってきたのは紅魔館よ。相変わらず、門番が暇そうにあくびしてメイド長にナイフ投げられるのを横目にしつつ、建物の中へ~、っと。
えーっと、どこが楽しいかしら。一番、見ていて飽きないのは、あのちみっこ吸血鬼の妹だけど。だけど、この時間帯だと寝てるかしら? 健康的な生活してるって言ってたし。
となると……ん?
……声? 何かにぎやかね。何してるのかしら。
えっと……声が聞こえるのはこっち、と。ああ、ここだ、ここ。
……ヴワル図書館? 何があるのかしら。どれどれ……。
「何よ、レミィ! その程度なの!?」
おおっと。何か怒声が聞こえてきたわよ。……にしても、普段、そんなに大きな声を出さない人のこんな声を聞けるなんて。長生きはしてみるものね。
声の場所は……。
「くっ……!」
「何? その目は。あなたが、自分で宣言したことが出来てないのが問題なのでしょう? そういう目を向ける相手を間違っていると思わない?」
「……」
「レミィ、私はあなたに期待しているわ。わかる? その意味が」
何やってるのやら。
本棚の陰の……ここね。えーっと………………………………………………………。
「咲夜が、本格的に魔法少女の立場をあなたに譲った以上、あなたは幻想郷を背負って立つ『魔法の吸血鬼 ヴァンパイア☆レミちゃん』なのよっ!」
見てはいけないものを見てしまったかもしれない。
「以前のイベントの時、あなたは輝いていたわ! この幻想郷で一番輝いてたと言ってもいい! でも、何!? この体たらくは!
あなたが目指したものは、こんなものだったの!? 米倉さんが泣くわよ!?」
誰よ、米倉さんって。
「誰もが探した夢は、今、ここにあるのよ! そんな程度で、魔法少女の歴史に残る、幻の大技を描くことが出来ると思っているの!?」
……そんな歴史、あったかしら。あとで半獣に聞いてみないと……。
「……わかったわ。わたしは、別に、自分に甘えているとは言わないけど……」
おお、闘気が揺れてる……。
……だけどね、レミリアちゃん。そのふりふりの衣装に魔女っ娘ルックじゃ、そのセリフに勢いというか、説得力というか……とにかく、何か色んなものが足りないわよ? わかってる……わよね?
「そこまで言われたら、この、夜の王としてのプライドをくじかれるも同じ事……!」
「誓いを立てたのはあなたよ!」
「わかってるわ! だから、それに見合うだけのことをやってみせる……演じてみせる!」
「そう、その意気よ! 私は、あなたにこそ、見込みがあると信じている! あなたなら、この幻想郷の人々全ての心に残る、伝説の魔法少女になれると!」
……えっとね……その……まぁ……うん……。
いや、魔法少女が悪いとは言わないわよ? かわいいし。この前のショーは、それはそれは面白かったし。ついつい、グッズも買いあさっちゃったし。あ、でも、あれって全部プレミアものなのよねぇ……香霖堂で、フィギュアが倍以上の値段で、即日販売されてたし……って、それはどうでもいいとして。
それはいいのよ、あなた達。だけどね……その……何というか。
何か色々間違ってない?
「レミィ、そこで回転! 違う、遅いっ!」
「これでいいのよ! 見てなさい、パチェ! 台本に従うだけが演技じゃないと言うことを見せてあげるわ!」
「そこまで言うのなら……わかった、見せてもらおうじゃない!」
「見せてあげるわ、この、魔法の吸血鬼ヴァンパイア☆レミちゃんの実力をっ!」
あー……うー……その……ごめん、コメント無理。
何か、紅魔館も、どんどん愉快なところになっていくわねぇ……。紅魔郷の頃の、あのシリアスでカリスマに満ちた世界はどこいったのかしら。って、あら? 何かしら、紅魔郷って。何か変なノイズが入ったわね。
「ああ……ご立派です、お嬢様……。これで……これで、私も、あなた様に魔法少女の地位を譲ることが出来ますわ……」
って、こら、そこのメイド。本棚の陰に隠れてはらはら泣かないの。あんた性格変わってない?
「なっ!? こ、これはっ!?
これは、かつて、魔法少女の歴史に飾られた、伝説の奥義の一つっ!?」
「ふっ……ふふっ、どうかしら!? 毎日の練習が、ついにこの技を成功に導いたのよ!」
何やったの!? しまった! 見逃したっ!!
ケース4
えーっと……ちょっと口直しを、と。
白玉楼なんかいいかしら。あそこなら気心の知れた人しかいないから、そのまま遊びにいってもいいしね。
さてさて、幽々子と妖夢はどこかしら?
「よーむー」
「はーい」
あ、いた。
「妖夢」
「はい、何でしょう、幽々子さま」
相変わらず、主を立てる健気な性格してるわよねぇ。
幽々子なんて、普段は天然おっとり大食いちゃんでカリスマなんて欠片もないっていうのに。それなのに、この子は常に主を立てて……ああ、いいわねぇ、正しい従者の形だわ。……って、何よ、藍、その目は。
「ちょっとこっちにいらっしゃい」
「はい?」
あら? 何かしら。
テーブルの上にはお茶もお菓子もちゃんと残ってるし。気に入らないから別のものを持ってこいとか? そんなことはないわよね、幽々子は何でも好き嫌いせず残さず食べるし。それが健康の秘訣よね。だから、好き嫌いしちゃダメよ、みんな。
「ここに座りなさい」
「は、はあ……」
あらあら、妖夢ってば。顔が引きつってるわよ。
何したんだろう。私は何をしてしまったんだろう、って。動揺している気配が伝わってくるわ。あの子は真面目だから、いざ、こういう事態になると、すぐに悪いことを想像してしまうのね。ま、わからないでもないけど。
「ほら、早く」
「す、すいません」
あらあら、かわいそうに。体をかちこちにしちゃって。
これは助け船を出した方がいいかしら。今日は、見た限り、特に何かがあったわけでもないようだし。かわいい妖夢ちゃんを助ける優しいお姉さんのゆかりん。あら、絵になるわ。
……だから、何よ、藍。その目は。
「ほら」
「し、失礼します……」
あらあらあらあら。
「よいしょ」
「……へっ?」
あら?
「よし、完成」
「……みょん?」
えっと……これはどういう状況?
幽々子が妖夢を隣に座らせて、それでそのまま、ぱたんと横に……膝枕?
「ゆっ、ゆゆこしゃまぅっ!?」
「舌を噛むほど慌てることじゃないでしょ」
いや、慌てるわよ。事、相手が妖夢なのよ? あなた。
「な、何でしょうか……これは……」
「今日は、朝から色々忙しかったでしょ? だから、たまにはのんびりさせてあげようかな、って」
「で、でも、私、まだやることが……」
「そんなのはいいの。今夜の晩ご飯は、紫のうちでごちそうになるから」
だってさ、藍。
こら、泣くな。ついでに逃げるな。
「でも……」
「妖夢はね、真面目すぎるの」
「……」
「真面目でいい子なのはいいことよ。でもね、もう何度も言ってるけれど、たまには私に甘えてちょうだい」
……ふーん。
「こうやって、私が気を遣わないといけないなんて。主人に対して不敬よ?」
「も、申し訳……」
「謝らなくていいの。
せっかくだから、のんびりしなさい」
「……はい」
「よしよし」
あらま……いいわねぇ。
幽々子って、普段はいまいち何考えているかわからないけど、ちゃんと、やるべきことはやるし、考えるべき事は考えている、ってことかしら?
まあまあ、妖夢の幸せそうなこと。
「お昼時、ご飯を食べたら、こうやってのんびり過ごさないと」
「……」
「妖夢?」
おや?
「……あら」
あらま、寝ちゃってるわ。
多分、朝から忙しかったのね。それで、自分の慕う主人の優しい言葉に気を緩めてしまって、そのまますやすや。ありがちねぇ。
でも、ありがちだから、よけいかわいらしいのかしら。ほんと、かわいい寝顔。ほっぺたぷにぷにしたいわ。
「ほんと、真面目なんだから」
幽々子も幸せそうね。
あの子達も、幸せになれるのかしら。幸せって何? って? それは自分たちで考え、定義するものでしょ。一人の幸せがみんなの幸せとイコールで結ばれるわけじゃないんだから。
ただ、あの子達にとっては、こういうのが幸せなのかもしれないけど。
幽々子はいい従者を持てたし、妖夢はいい主人を持てたし。
羨ましいわね、ほんと。
……あら、藍。何かしら? 私はあなたにとって、いい従者でしょうか、って? そんなの、何を答えろと言うの、あなたは。
ケース5
さてさて、楽しみは最後に取っておかないと。
ついにやってきました、博麗神社。辺りはすっかり夕暮れ時。ものぐさぐーたら巫女は、さて、何しているかしら。
「……す~……す~……」
ありゃま。
母屋の縁側でお昼寝ですか。幽々子達を見てきたばかりだから、また何とも言い難いわね。
朝から、別段、何かのお勤めしてるってわけじゃないくせに。ほんと、サボってばかりなんだから。
「ん~……」
だけど、こうやって寝ている姿は、どんな子供でも天使と言われるだけはあるわ。私にとっては、ここに生きる全てのものが子供に過ぎないわけだし。
ほんと、こやつも、こうしているとかわいいんだけど。どうして、目を覚ましたらあんなに態度が悪いのかしら。育て方、間違ったかしらねぇ。
「ん~……ふぁ~……」
あら、起きた。
「んむ……?」
どうやら、寝ぼけてるみたいね。ぽや~んとした顔しちゃって、まあ。
「あ~……もうこんな時間か~……。今日も、たっぷり巫女やったなぁ」
寝てるのが巫女の仕事なのかしら。
……ま、仕事なんでしょうね。霊夢にとっては。
「さて、ご飯でも作ろうかな。確か、昨日、慧音にもらった鮭の切り身が……」
つましい生活、のんびり生活、悠々自適な根無し草。
どれもが、この子を表しているとは思うけど。根無し草はちょっと違うかしら? でも、無重力巫女にとっては、それも正しいかもしれないわね。
……さて、と。
「何してるのかしら、霊夢」
「何しに出てきたの、紫」
「あら、大層なご挨拶だこと。
よだれ。ほっぺた」
「はっ!?」
ふふっ、かわいいんだから。
よだれなんてついてるわけないじゃない。ねぇ?
「……何よ、その目は」
「べっつにー?」
「もう。
ご飯ならあげないわよ。うちの財政とか食糧事情とか、知ってるんでしょ?」
「別に食べさせてもらいに来たのではないわ。逆よ」
「え?」
「うちでご飯、食べない?」
「いいのっ!? 行く行くっ! と言うわけだから、早く連れてって!」
……ほんと、見ていて飽きないわ。
藍、ため息つかないの。幽々子の料理を作る片手間に、この子の分を作るだけなんだから。幽々子に比べたらマシでしょうが。
「現金ね」
「現金でもいい! プライドで腹はふくれない!」
「ほんと、切羽詰まってるわねぇ。
何でこんなに困窮しているのやら」
「ほっといて。ほら、早く。早く、ご飯!」
「はいはい。焦らない焦らない」
ま、たまにはこういうのもいいでしょ。結局、デバガメしてただけだったけどさ。
それでも、のんびり過ぎていく時間を見ているのは好きだし。むしろ、嫌いじゃない、というレベルを超えてるわね。
これからも、ちょくちょく、隙間ウォッチングしようかしら。次は、今日、見られなかった子達を中心に、ね。
これにて、ゆかりんの隙間ウォッチング、しゅーりょー、っと。
-エピローグ-
「らーん! よーむー! おかわりー!」
「よぉむぅ~、おかわりぃ~」
「……なぁ、妖夢。教えてくれ。私たちは、あと、どれくらい飯を作ればいい……?」
「お二人のお腹が満足するまでですよ……ふっ……」
「おかわりおかわりおかわりー」
「おーかーわーりー」
「……あんたらねぇ……!」
「ん? 何よ、紫」
「人がせっかく、きれいに話をまとめて終わらせたのに、台無しにしてんじゃないわよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「紫ぃ、おかわりぃ」
つーか、休めって言われながら、結局藍と一緒に飯作らされてるのね妖夢w
よし!続きを!!
悪になった妖夢にやられちゃいますよ。
つーか紅魔館はもう駄目だwww
このセリフはゆかりんが言うと真実に聞こえてくるから困る。(AAry
他の人々も見てみたいですね。次回の隙間ウォッチング期待して待ってます。
だが気持ち良い一撃だ。
ご馳走様でした。
そしてお嬢様!なにやってるんですかw
「…私はあと何回ご飯とおかずを作ればいいんだ……?」
「…橙は私に何も言ってはくれない……」
「教えてくれ妖夢!」
こんな感じ?
藍、妖夢、二人して健気だな本当に。