Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

妹様とお姉様

2006/04/26 08:28:31
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 炎よりも熱っぽく。
 迷路みたいに複雑で。
 ベリーのように甘酸っぱい。


 秘めてる訳じゃないけれど。
 伝えれるほど利口じゃない。


 だから培ってきたのさ、暗くて狭い地下室で。
 だから育んできたのさ、飽くほど永い時の中。


 暴れられる程度しかない部屋は窮屈なのよ。
 たまに訪れてくれる家庭教師は退屈なのよ。


 普段から世話してくれるメイドはそれだけの意味しかない。
 次々と変わっていく家具とかは壊れるだけの意味しかない。


 眠って食べて、気が向けば壊す。
 思い出したように読書もするね。


 二十四時間、部屋に篭もっているのが日常。
 三百六十五日、地下室から出ないのが日常。


 暇という事を忘れそうなほどに暇過ぎるから。
 昨日と明日を間違えそうなほどに不変だから。


 募る想いは募り続けるしかないのさ。
 熱す想いは熱し続けるしかないのさ。


 カゴメカゴメと囲もうか。
 四人の私で責め立てようか。
 過去を刻めよ私の想いってね。


 積もり過ぎて屈折してるよ、この想い。
 心には永過ぎるのさ、四百と九十五年。


 大事に抱えるこの想い。
 歪んで膨らむこの想い。


 ずっとこのままでいいと考えてたわ、本当に。
 変わらず想えればいいと決めてたわ、本当に。


 だけど外に出たいのよ、今は。
 知りたい事があるのよ、今は。


 長い螺旋階段を翔け上がって、外へ。
 邪魔な障害物群を乗り越えて、外へ。


 だって気になるじゃない、外を気にするお姉様が。
 だって気になるじゃない、お姉様を変えた人間が。


 紅くて綺麗なお姉様。
 小さく気高いお姉様。


 貴女の下に急ぎたい。
 貴女と共に笑いたい。


 この想いを新たにしたいの。
 新たなお姉様を想いたいの。


 だから出ましょう私、この狭い世界を。
 だから出ましょう私、変わらぬ日常を。


 豪奢な扉に手を掛けて。
 暗い廊下に飛び立って。
 上の出口を目指そうか。


 帰らぬ訳じゃないけれど。
 戻されるのは嫌じゃない。


 邪魔をするのか、メイド達。
 壊れぬように頑張りな。


 通路を塞ぐか、図書館の司書。
 目障りだから失せなさい。


 立ちはだかるのか、家庭教師。
 授業の成果を見せようか。


 向かって来るのか、門の番。
 実力不足は否めないな。


 嗅ぎ付け来たのか、メイド長。
 日頃の感謝を示してやる。


 通せん坊かい、紅白の巫女。
 通り抜けるよその結界。


 遊んでくれるの、魔法使い。
 私の遊戯はちと激しい。


 ハードル走を完走し。
 長い廊下を翔け巡り。
 紅の部屋へ辿り着く。


 扉の向こうは貴女の世界。
 愛しき貴女は椅子に座す。


 微かに笑みを湛えつつ。
 優雅に紅茶を口にする。


 ああ、ああ、お姉様。
 私は貴女を慕います。


 初めて目にしたあの時を。
 微笑んでくれたあの時を。


 ここで再び刻みましょう。
 忘れ得ぬと刻みましょう。


 言葉なんて必要無いほどに。
 確認なんて要らないほどに。
 変わらず貴女と共に在ろう。


 私だけを見ていて欲しいけど。
 そこまで我が侭な訳じゃない。


 ホントは無色のお姉様。
 誰もそれに気付かない。


 理解していないのよ運命を。
 移ろう全てに付き纏うのに。


 どんなモノにでも染まるのに。
 どんなモノとでも在れるのに。


 自然過ぎてわからない。
 大き過ぎてわからない。


 だけど私には欠かせない。
 きっと私は忘れられない。


 見縊り過ぎなのよ破壊を。
 何より優れた概念なのに。


 死なんていう粗末なものじゃない。
 永遠なんてちゃちなものじゃない。


 生を壊しているだけでしょう。
 時を壊しているだけでしょう。


 形在るものも、形無きものも、壊れてしまう。
 そこに在る限り、何時かは壊れてしまうのよ。


 破れて、無くなって、つまらない。
 壊れて、亡くなって、さようなら。


 だけど貴女は違うもの。
 貴女の運命は違うもの。


 貴女の握る運命の糸を感じてる。
 身体に絡みついた糸を信じてる。


 運命を壊しても、壊れたという運命が。
 糸を千切っても、新しい糸が。
 再び私に、絡みつく。


 やっぱり変わらないのね、その運命は。
 やっぱり変わらないのね、その能力は。


 ああ、十分過ぎるほどの成果だよ。
 ああ、十分過ぎるほどに幸福だよ。


 また四百と九十五年は大丈夫。
 変わらず想いを抱いていける。


 言葉に出来るほど賢くはないから、私。
 精一杯の笑顔で伝えたいの、この想い。


 ありがとう、お姉様。
 ずっと慕っています。


 もっともっと一緒にいたい。
 貴女の笑顔を眺めていたい。


 でも残念、後ろの扉が責め立てる。
 邪魔臭く、急げ急げとがなってる。


 去りたい訳ではないけれど。
 迎えを抑える元気は無い。
 バイバイまた何時か。


 新たな貴女の、新たな運命を、身に纏い。
 古い住処の、古い寝床に、帰りましょう。


 扉を潜れば、壊した廊下が目に入る。
 地下へ潜れば、壊した扉が目に入る。
 ベッドへ入れば、壊れた記憶が蘇る。


 初めて出会った紅い夜、私の心は理解した。
 貴女と私の間の絆、離れぬ運命を理解した。


 何もかもを壊し尽す私は。
 貴女の運命に壊された。
 一番初めに壊された。




 ――――――――愛しています、お姉様。










 ~おわり~





こんにちは。【やみ】です。
今作は練習として一つ。
一気に書き上げたので少し雑になってるかもです。
【やみ】
コメント



1.名無し妖怪削除
良い姉妹ですよね。こんな文体も好きです。
2.名無し妖怪削除
詩の調子がフランのイメージにぴったり。