「あなたは誰かしら」といつぞやと同じようにあなたは云うのです嗚呼そんな意地悪を仰らないで下さいな私はあなたの従者あなたが付けた名前よもやお忘れではありますまい天蓋をごらんあれ今日は見事な月ですわそうするとあなたは空を見上げて照り映える白い喉をコクリコクリと鳴らすのですその音の一つ一つに身を裂かれる私の思いをご存知の上でサクリサクリ生贄を求めるナイフの響きヒビをなぞるように滑るあなたの目が私をとらえサクリサクリと裂く点と線天に咲く紅い薔薇はあなたバラバラ私の魂は千々に乱れ撃たれ歌うような仕草で伸ばされるあなたの腕白く闇を切り分けサクリサクリ鎖を引くように緋狂う爪が舞う私を誘うイザナウ調べ知らずいざよう私いざ酔い前に出る脚あなたの指に結ばれた糸に手繰られる類稀なる喜悦消えつつ繰り返される惑い窓から射す月尽きず射しサクリサクリ刺して尽きず私はあなたの手元にて悶える事を夢見てもよろしいのでしょうかあなたは白い喉をコクリコクリと鳴らすばかり嗚呼一歩でも早く一歩一歩一方通行の違法にて手繰られる私今あなたの目の前にあなたは私の頬に触れ緋の爪稜線をなぞり火の灯り紅く舌をチロリチロリと伸ばし風前の灯フツと消え闇降りて私の喜悦止まず病める月のみテラテラ照らしあなたは緋の果実がドロリと割れるようにドロリドロリ過日のように嗤うのです「あなたは誰かしら」嗚呼おやめ下さいまし「あなたは誰かしら」おやめ下さいまし「あなたは誰かしら」殺め下さいまし殺めてくだされば良いものをあなたはあやまたず私の首筋に触れ殺さない残酷さで生かさない優しさで指をツツと軽やかに鮮やかに踊らせるのですいっそのことこの首にその爪が緋のナイフが突き立てられれば良いものを射すのは月ばかりこれでは緋に咲くこと叶わず裂くことを夢見る私に鉄輪つけるのはあなたそれが不満などとは誰が申しましょうかいざよう私は満月の虜宵酔い満ちず囚われる僕なりしもあなたはミチリと嗤い私の首に口付けツプリと牙が皮膚を裂きツツツと滲む緋火のように玉を作りツプツプツプ貫かれる私は身悶え身も絶え魂が透明になる感触止められず私の口からはアアアアと空気が抜けてゆくのですジワリジワリと取り返しのつかぬ紛失消失忘却理解しもつかぬ全身に冷たい電気ヌラリとあなたの唇が触れる首のみ灼ける温度に浮かされいざよう私あなたはコクリコクリと私の魂を舌で転がし悪戯に徒にピチャリピチャリと零れる魂をも紅く紅く飽かず舐めとるのです切なる刹那に乞い願わくは変わらず永久なる喜悦とは申せば如何にあなたは殺してくれるでしょうかコクリコクリいいえわかっております私はいざよいただただ手繰られるのでしょうあなたは殺してくれますまいそれでいいのです刹那は夢幻にして無限私の喜悦消えずただただあなたの虜であることが私サクリサクリと裂くことも咲くこともできましょう嗚呼どうか殺さないで下さいまし生かさないで下さいましあなたの手繰る糸に意図動かされ運ばれる命は此処にするとあなたは私の首から牙を抜き尖った口の端をぬぐい咎に朽ちる私をヌラリと嗤うと月灯りより紅く紅く紅く輝く目で私をサクリサクリと刺すのです
「あなたは誰かしら」
私は十六夜咲夜。あなたの虜。あなたの可愛い可愛い僕。
むむ、エロスが足りない。