あらすじ
ヨメザナドゥ
小野塚小町は悲しんだ。
「えーきさまに捨てられたぁ~」
それは大いに悲しんだ。
-今夜を-
「…と、いうわけなんです」
「……」
「あの…?」
「いや、まさか閻魔さまから人生相談を受けるとは、と思って」
「閻魔だって、女の子です」
「……」
「好きな人のことで、悩んだり、します…」
「(……かわいいなぁ)」
「…小町は私の何が不満なんでしょう…」
「たしかに…こんな可憐な」
「……よしてください…お世辞でも照れます…」
「(……かわいいなぁ)」
「………小町…」
「ああ、ほら、泣かないで」
「でも…」
「大丈夫、いい手があるから」
「……いい手……?」
「こういうときには本人に聞くのが一番だ。まぁ、任せて」
「……お願いします」
「ああ。しかしこんなかわいい女房を困らせるとはけしからんな」
「小町を、悪く言わないでください」
「……」
「あ、すみません、つい」
「(……かわいいなぁ)」
「あの……」
「あ、失礼。では―――」
-なかったことに-
夜もとっぷり暮れた頃。
うなぎ屋台に人影三つ。
「ちんちん~♪」
ひとつは店主のローレライ。
自慢の歌声、今夜も響く。
「ほらほら泣くな。もう一献」
ひとつは慧音、ワーハクタク。
酒を勧めるなだめ役。
「んぐ…ぐ…ぐ…ぷは、え~きさまぁ~」
最後は小町、よっぱらい。
嫁に逃げられ、なみだ酒。
夜のしじまに泣き声響き。
卓に突っ伏し、泣く小町。
「ああ、えいきさま…えいきさまぁ~!」
天狗じゃ天狗じゃ天狗のしわざじゃ。
ここまで泣くのは天狗のしわざじゃ。
そう思えるほど泣きじゃくる。
これはダメだとワーハクタク。
心行くまで泣かせてやった。
「泣きたいときは、泣けばいいさ」
「うわーん、あたいのえーきさまぁ~!」
しばらくたって。
「落ち着いたか?」
「ぐすっ……ちょっと…」
「そうか。ほら、飲め」
「ん…」
「ほら、串焼きも食べろ」
「ん…」
「鼻をかんで、ほら、ちーん」
「ちんちん~♪」
「いやそうじゃない」
ちーん
「ん…あんがと、あんた、名前は?」
「上白沢だ」
「雛見沢?」
カナカナカナカナ
「上白沢だ、上白沢」
なんで2回、言うのかな?
言うのかな?
「あたいの名前は小野塚小町…」
「そうか、小町か。私の方は慧音だ、上白沢慧音」
「うん…」
「今夜はおごりだ、飲むといい」
「うん…」
泣き虫小町の世話を焼き。
ワーハクタクは切り出した。
「そんなに泣いて、一体どうした?」
「……」
「いきなり来ては
『え~きさまぁ、え~きさまぁ』だ。
なにがあったか、さっぱりわからん」
「うう…え~きさまぁ」
「ほらほら泣くな。話してみろ。何か力になれるかもしれん」
小町の背中をやさしくさすり。
ワーハクタクはうしろをちらり。
小町は気づかず、話し出す。
「あれは今朝のことだったんだ……」
-おもひでぽろぽろ-
「小町、ちょっと座りなさい」
三途の川のほとりにひとつ。
つつましやかな一軒家。
ヤマザナドゥの映姫さま。
静かな声でのたまった。
「あの、映姫さま」
「座りなさい」
言われるままに正座して。
恐る恐るに上目づかい。
「あたい仕事が――」
「―――小町」
「はい……」
「ぱんつの数が足りません」
「――あのそ」
「ぱんつの数が足りません!!」
「きゃん!」
怒気もあらわに両手を組んで。
真っ赤な顔して怒ってる。
「どうしてあなたはそうなんですか!」
「え、映姫さま――」
「そんなにぱんつが好きですか!」
「きゃん!」
「ぱんつを隠して楽しいですか!」
「あぅ、あぅ」
「私だけでは不満ですか!」
「滅相もない!」
「それじゃあどうして隠すんですか!」
「う、それは――」
「ぱんつがごはんを作りますか!?
ぱんつが洗濯してくれますか!?
ぱんつが一緒に寝てくれますか!?
ぱんつがキスしてくれますかっ!?」
白黒つける、映姫さま。
言いたいことはハッキリ言うよ。
恥ずかしいけどハッキリ言うよ。
白いほっぺた真っ赤に染めて。
愛しい旦那に詰め寄った。
「え、映姫さま――」
「私に魅力がないからですか?
私に落ち度があるからですか?」
不安の覗く、強い声。
揺れる瞳に、悲しみの色。
「確かに、私に、魅力はないです。
胸は小さい、背は低い。小町に比べて…」
「そんなこと――!」
あるわけないと、言う夫。
妻は静かに、問いかける。
「それじゃあ、なにがダメなんです?」
たかが一枚、されど一枚。
欲求不満の、確かな証拠。
「それは――――」
そっと逸れてく小町の視線。
理由を言えず、噤む口。
妻には言えない、その悩み。
聞けない妻は、悲しんだ。
深く深く、悲しんだ。
「――――っ」
「! 映姫さま!?」
三途の川のほとりにひとつ。
つつましやかな一軒家。
一人飛び出す、一軒家。
-おもひでぽろぽろ-
映姫探して三千里。
どんな距離でもひとっとび。
けれどもさっぱり見つからない。
距離を操る程度の能力。
心の距離まで埋められぬ。
いつまで経っても追いつけぬ。
愛想を尽かしたお嫁の背中。
「あぁ、映姫さま……あたいが不甲斐ないばっかりに…」
再び突っ伏し泣く小町。
慧音はひとつ、頷いた。
「うそは言ってないな…」
「? なんか言ったかい…?」
「いや、なにも」
「あ、そ……うぅ、え~きさまぁ」
「まぁまぁ、ほら、飲んだ飲んだ」
どんどん飲ませるワーハクタク。
酔った小町の心の裡から。
ぽろりこぼれるその本音。
「ひっ……あたいのばかやろぉ~…」
「そうか? 今の話で落ち度があるのは向こうの方だろう」
「へ…? なんでさ…?」
「ぱんつ一枚、大激怒。なんとも心が狭いじゃないか」
「……」
「理由も聞かずに出て行くし、なんとも酷い細君だ」
「………」
「別れて正解なんじゃないのか?」
「映姫さまを悪く言うなよ…」
「だが」
「あたいの嫁は、いい嫁なんだ。
ホントに出来た、いい嫁なんだ…」
「……小町」
ちびりちびりとお猪口を傾け。
しみじみ彼女は語り出す。
「…あたいはね、三度の飯より酒より何より
四季映姫さまが好きなんだ。
米がなくても酒がなくても生きちゃいけるが
映姫さまが居てくれなくっちゃ、一日だって生きていけない…」
まぶたを閉じれば思い出す。
いつも一緒のあの姿。
「こんな気分で飲む酒は、タダ酒だっておいしかないよ…」
酒盃の中に、ぽつりぽつりと。
大粒涙が落ちていく。
「――もうすこし我慢してくれよ…」
「ん? なんか言ったかい?」
「いや、なにも」
「そう…ごめんね、おごりなのにさ」
「かまわんさ。それで小町」
「なんだい、慧音」
「――隠した理由は何なんだ?」
「――――」
歯に衣着せぬ問いかけに。
小町はひとつ、ため息こぼす。
「―――怖いんだ」
「怖い?」
「うん……」
星の瞬く夜空を見上げ。
酒精に乗せられ、舌先軽く。
秘めた想いを、さらけだす。
「あたいと違って映姫さまは
小柄で可憐なお方なんだよ。
抱けばポッキリ折れちまう。
あるわけないと思っちゃいても
心のどこかで思ってる。いつもどっかで遠慮する」
「――それで?」
「夫婦、だからね。夜も、あるさ。
だけど、あたいは加減しちまう。
あたいが本気で愛しちまったら
映姫さまが壊れちまう。
そいつを思って、加減して…知らないうちに、欲求不満さ」
「――業が深いな」
「助平なだけさ……。
嫁さんの下着でひとり遊びなんて、そりゃ愛想も尽くってもんさ」
浮かぶ笑みには自嘲の色。
そいつを酒盃に投げ込んで。
ぐっと一息、飲み干した。
「―――どうして、相談しないんだ?」
「……映姫さまは、まじめなお人だ。
必要以上に悩んじまう。
さっきの話をあたいがしたら
『自分のせいだ』と、お思いになる。
あたいは、見たくないんだよ…そんなあの人、絶対に」
夜のしじまに訥々と。
思いの丈が満ちていく。
愛の形は十人十色。
深い分だけ、すれ違い。
「それで逃げられてちゃ、世話ないけどね……はは」
「小町……」
「でも……こんなのイヤだ…つらすぎる…
今度はちゃんと話すから……苦しめるんなら、愛すから…」
―――戻っておくれよ、映姫さま。
突っ伏し、泣き伏す、一人の亭主。
「―――――バカ……小町の、バカ」
その背にそっと、手を触れて。
力の限り、抱きしめる。
「――――――そんな…」
たとえ顔が見えずとも。
声とぬくもり、忘れない。
「歴史を隠すのも限界か。よく我慢してくれたな、え――」
「―――映姫さま!!」
背中のぬくもり、そっと離れて。
ゆっくりゆっくり、振り返る。
流れる涙もぬぐわずに。
真っ直ぐ視線をそらさずに。
会いたい人が、立っていた。
「小町……っ」
「映姫さま……っ」
溢れる想いを両手に乗せて。
加減もせずに、抱きしめる。
本気の本気で、抱きしめる。
「映姫さま……映姫さま…!」
「小町……小町…!」
涙を流して心のままに。
堅く抱き合う夫婦の二人。
見守る半獣、吐息をひとつ。
「―――これにて一件落着かな」
「おつかれさま~♪」
「小町……」
「皆まで言わないでください、映姫さま」
「ん…」
「だから、映姫さまも……」
「うん…」
「あ……」
「……?」
「…始める前に、抱きしめていいですか?」
「……うん」
「………あったかい…」
「……小町」
「…はい?」
「…大好き」
「…あたいも、大好きです」
―――映姫さま。
三途の川のほとりにひとつ。
つつましやかな一軒家。
小野塚小町と四季映姫。
二人の住んでる一軒家。
愛の溢れる、一軒家。
ヨメザナドゥ
小野塚小町は悲しんだ。
「えーきさまに捨てられたぁ~」
それは大いに悲しんだ。
-今夜を-
「…と、いうわけなんです」
「……」
「あの…?」
「いや、まさか閻魔さまから人生相談を受けるとは、と思って」
「閻魔だって、女の子です」
「……」
「好きな人のことで、悩んだり、します…」
「(……かわいいなぁ)」
「…小町は私の何が不満なんでしょう…」
「たしかに…こんな可憐な」
「……よしてください…お世辞でも照れます…」
「(……かわいいなぁ)」
「………小町…」
「ああ、ほら、泣かないで」
「でも…」
「大丈夫、いい手があるから」
「……いい手……?」
「こういうときには本人に聞くのが一番だ。まぁ、任せて」
「……お願いします」
「ああ。しかしこんなかわいい女房を困らせるとはけしからんな」
「小町を、悪く言わないでください」
「……」
「あ、すみません、つい」
「(……かわいいなぁ)」
「あの……」
「あ、失礼。では―――」
-なかったことに-
夜もとっぷり暮れた頃。
うなぎ屋台に人影三つ。
「ちんちん~♪」
ひとつは店主のローレライ。
自慢の歌声、今夜も響く。
「ほらほら泣くな。もう一献」
ひとつは慧音、ワーハクタク。
酒を勧めるなだめ役。
「んぐ…ぐ…ぐ…ぷは、え~きさまぁ~」
最後は小町、よっぱらい。
嫁に逃げられ、なみだ酒。
夜のしじまに泣き声響き。
卓に突っ伏し、泣く小町。
「ああ、えいきさま…えいきさまぁ~!」
天狗じゃ天狗じゃ天狗のしわざじゃ。
ここまで泣くのは天狗のしわざじゃ。
そう思えるほど泣きじゃくる。
これはダメだとワーハクタク。
心行くまで泣かせてやった。
「泣きたいときは、泣けばいいさ」
「うわーん、あたいのえーきさまぁ~!」
しばらくたって。
「落ち着いたか?」
「ぐすっ……ちょっと…」
「そうか。ほら、飲め」
「ん…」
「ほら、串焼きも食べろ」
「ん…」
「鼻をかんで、ほら、ちーん」
「ちんちん~♪」
「いやそうじゃない」
ちーん
「ん…あんがと、あんた、名前は?」
「上白沢だ」
「雛見沢?」
カナカナカナカナ
「上白沢だ、上白沢」
なんで2回、言うのかな?
言うのかな?
「あたいの名前は小野塚小町…」
「そうか、小町か。私の方は慧音だ、上白沢慧音」
「うん…」
「今夜はおごりだ、飲むといい」
「うん…」
泣き虫小町の世話を焼き。
ワーハクタクは切り出した。
「そんなに泣いて、一体どうした?」
「……」
「いきなり来ては
『え~きさまぁ、え~きさまぁ』だ。
なにがあったか、さっぱりわからん」
「うう…え~きさまぁ」
「ほらほら泣くな。話してみろ。何か力になれるかもしれん」
小町の背中をやさしくさすり。
ワーハクタクはうしろをちらり。
小町は気づかず、話し出す。
「あれは今朝のことだったんだ……」
-おもひでぽろぽろ-
「小町、ちょっと座りなさい」
三途の川のほとりにひとつ。
つつましやかな一軒家。
ヤマザナドゥの映姫さま。
静かな声でのたまった。
「あの、映姫さま」
「座りなさい」
言われるままに正座して。
恐る恐るに上目づかい。
「あたい仕事が――」
「―――小町」
「はい……」
「ぱんつの数が足りません」
「――あのそ」
「ぱんつの数が足りません!!」
「きゃん!」
怒気もあらわに両手を組んで。
真っ赤な顔して怒ってる。
「どうしてあなたはそうなんですか!」
「え、映姫さま――」
「そんなにぱんつが好きですか!」
「きゃん!」
「ぱんつを隠して楽しいですか!」
「あぅ、あぅ」
「私だけでは不満ですか!」
「滅相もない!」
「それじゃあどうして隠すんですか!」
「う、それは――」
「ぱんつがごはんを作りますか!?
ぱんつが洗濯してくれますか!?
ぱんつが一緒に寝てくれますか!?
ぱんつがキスしてくれますかっ!?」
白黒つける、映姫さま。
言いたいことはハッキリ言うよ。
恥ずかしいけどハッキリ言うよ。
白いほっぺた真っ赤に染めて。
愛しい旦那に詰め寄った。
「え、映姫さま――」
「私に魅力がないからですか?
私に落ち度があるからですか?」
不安の覗く、強い声。
揺れる瞳に、悲しみの色。
「確かに、私に、魅力はないです。
胸は小さい、背は低い。小町に比べて…」
「そんなこと――!」
あるわけないと、言う夫。
妻は静かに、問いかける。
「それじゃあ、なにがダメなんです?」
たかが一枚、されど一枚。
欲求不満の、確かな証拠。
「それは――――」
そっと逸れてく小町の視線。
理由を言えず、噤む口。
妻には言えない、その悩み。
聞けない妻は、悲しんだ。
深く深く、悲しんだ。
「――――っ」
「! 映姫さま!?」
三途の川のほとりにひとつ。
つつましやかな一軒家。
一人飛び出す、一軒家。
-おもひでぽろぽろ-
映姫探して三千里。
どんな距離でもひとっとび。
けれどもさっぱり見つからない。
距離を操る程度の能力。
心の距離まで埋められぬ。
いつまで経っても追いつけぬ。
愛想を尽かしたお嫁の背中。
「あぁ、映姫さま……あたいが不甲斐ないばっかりに…」
再び突っ伏し泣く小町。
慧音はひとつ、頷いた。
「うそは言ってないな…」
「? なんか言ったかい…?」
「いや、なにも」
「あ、そ……うぅ、え~きさまぁ」
「まぁまぁ、ほら、飲んだ飲んだ」
どんどん飲ませるワーハクタク。
酔った小町の心の裡から。
ぽろりこぼれるその本音。
「ひっ……あたいのばかやろぉ~…」
「そうか? 今の話で落ち度があるのは向こうの方だろう」
「へ…? なんでさ…?」
「ぱんつ一枚、大激怒。なんとも心が狭いじゃないか」
「……」
「理由も聞かずに出て行くし、なんとも酷い細君だ」
「………」
「別れて正解なんじゃないのか?」
「映姫さまを悪く言うなよ…」
「だが」
「あたいの嫁は、いい嫁なんだ。
ホントに出来た、いい嫁なんだ…」
「……小町」
ちびりちびりとお猪口を傾け。
しみじみ彼女は語り出す。
「…あたいはね、三度の飯より酒より何より
四季映姫さまが好きなんだ。
米がなくても酒がなくても生きちゃいけるが
映姫さまが居てくれなくっちゃ、一日だって生きていけない…」
まぶたを閉じれば思い出す。
いつも一緒のあの姿。
「こんな気分で飲む酒は、タダ酒だっておいしかないよ…」
酒盃の中に、ぽつりぽつりと。
大粒涙が落ちていく。
「――もうすこし我慢してくれよ…」
「ん? なんか言ったかい?」
「いや、なにも」
「そう…ごめんね、おごりなのにさ」
「かまわんさ。それで小町」
「なんだい、慧音」
「――隠した理由は何なんだ?」
「――――」
歯に衣着せぬ問いかけに。
小町はひとつ、ため息こぼす。
「―――怖いんだ」
「怖い?」
「うん……」
星の瞬く夜空を見上げ。
酒精に乗せられ、舌先軽く。
秘めた想いを、さらけだす。
「あたいと違って映姫さまは
小柄で可憐なお方なんだよ。
抱けばポッキリ折れちまう。
あるわけないと思っちゃいても
心のどこかで思ってる。いつもどっかで遠慮する」
「――それで?」
「夫婦、だからね。夜も、あるさ。
だけど、あたいは加減しちまう。
あたいが本気で愛しちまったら
映姫さまが壊れちまう。
そいつを思って、加減して…知らないうちに、欲求不満さ」
「――業が深いな」
「助平なだけさ……。
嫁さんの下着でひとり遊びなんて、そりゃ愛想も尽くってもんさ」
浮かぶ笑みには自嘲の色。
そいつを酒盃に投げ込んで。
ぐっと一息、飲み干した。
「―――どうして、相談しないんだ?」
「……映姫さまは、まじめなお人だ。
必要以上に悩んじまう。
さっきの話をあたいがしたら
『自分のせいだ』と、お思いになる。
あたいは、見たくないんだよ…そんなあの人、絶対に」
夜のしじまに訥々と。
思いの丈が満ちていく。
愛の形は十人十色。
深い分だけ、すれ違い。
「それで逃げられてちゃ、世話ないけどね……はは」
「小町……」
「でも……こんなのイヤだ…つらすぎる…
今度はちゃんと話すから……苦しめるんなら、愛すから…」
―――戻っておくれよ、映姫さま。
突っ伏し、泣き伏す、一人の亭主。
「―――――バカ……小町の、バカ」
その背にそっと、手を触れて。
力の限り、抱きしめる。
「――――――そんな…」
たとえ顔が見えずとも。
声とぬくもり、忘れない。
「歴史を隠すのも限界か。よく我慢してくれたな、え――」
「―――映姫さま!!」
背中のぬくもり、そっと離れて。
ゆっくりゆっくり、振り返る。
流れる涙もぬぐわずに。
真っ直ぐ視線をそらさずに。
会いたい人が、立っていた。
「小町……っ」
「映姫さま……っ」
溢れる想いを両手に乗せて。
加減もせずに、抱きしめる。
本気の本気で、抱きしめる。
「映姫さま……映姫さま…!」
「小町……小町…!」
涙を流して心のままに。
堅く抱き合う夫婦の二人。
見守る半獣、吐息をひとつ。
「―――これにて一件落着かな」
「おつかれさま~♪」
「小町……」
「皆まで言わないでください、映姫さま」
「ん…」
「だから、映姫さまも……」
「うん…」
「あ……」
「……?」
「…始める前に、抱きしめていいですか?」
「……うん」
「………あったかい…」
「……小町」
「…はい?」
「…大好き」
「…あたいも、大好きです」
―――映姫さま。
三途の川のほとりにひとつ。
つつましやかな一軒家。
小野塚小町と四季映姫。
二人の住んでる一軒家。
愛の溢れる、一軒家。
ただ、抱きしめよう
('( ゚Д゚ ∩
なおるよ!
ひぐらしネタに吹いたw
なおるよ!!!!
二回言ったら効果大だと聞きました。
なおるよ!なおるよ!
なおるよ!
……私になにをしろと?
でもなおるよ!
なおるよ!
なおるよ!
なおるよ!
なおるよ!
なおるよ!
なおるよ!
寝る事は可能じゃないか……