だって会いたかったのだもの! だからパッチェに相談したの
秘密の魔法 夢見て変身 意地悪姉さま騙してバイバイ♪
あなたへと繋がる秘密は枕 かかって真っ暗 意識はくらくら
あなたはふらふら 私をムギュって 抱きしめてもらえたら らら、ららら♪
「でも、難しいわね。貴女みたいな吸血鬼には魔法の効きが弱いのよ」
そこを何とか 頼むわパッチェ 待ち焦がれて焼ききれて 私の意識はばらばらなのよ
どんな手を使っても あの人の元へ 託されたい
私と言う名の存在は あの人のために尽くされたい 道具になるなら枕ら ららら♪
私をぎゅって抱きしめて 小夜に流るる時間を共に 寄り添う吐息を重ねて えへへ♪
「そうね、それならこんな方法。私の魔法とあの人の魔薬、併せて貴女を枕に変える」
それは名案 素敵よパッチェ!
あの人も呼び出せ一石二鳥 微熱めくめく麻薬な魔薬 素敵なお礼に 私が枕♪
運命だって見逃すの 全てを壊せるそれならば 私の心を壊したい
運命は心で出来ている ほつれた私の心はぱらぱら 金糸は全部あの人を向いて 寄り添って
だから だから だからさぁ ぜええったいにうまくいくんだよ? うまく いくんだよー♪
「急にこんな魔法薬を欲しがるなんて、珍しいなパチュリー」
「ええ、どうしても必要になったのよ」
「お礼は魔道書で良いぜ」
「いいえ、お礼は枕よ枕。あなたはぐっすり休めば良いの。少し待ってて持ってくる」
くるくるららら くるくるららら まくら真っ暗眩ませ魔理沙と運命♪
「妙に……少女趣味な枕だなぁ」
「ピンクの生地はふかふか更紗。白い水玉無邪気に跳ねて、七色のフリルがあなたをくらくら♪ よ」
「パチュリー……」
「分かってるから突っ込みは要らないわ。それで、要るの? 要らないの?」
どきどきわくわく まるまる魔理沙!
「貰うぜ」
「……貴女も、結構好きよねこういうの」
「気のせいだぜ」
そして私はあの人に 魔理沙にそっと掴まれて 持ち上げられて 抱きしめられた
運命だって見逃すの 枕と魔理沙の まるまる逢瀬 そっとふわふわ あなたに届け
触ってふっくら魔理沙の頬と 抱き抱かれて胸の中 私はただただそれだけで 自身がふわふわになっていく
私は枕 あなたにギュゥゥって 抱きしめてもらえたから 枕♪
風に乗って 星を縫い 月にかかった雲までハレルヤ!
駄目よ 夜はこれからよ
あなたの家に連れられて まんまと運命出し抜いた そっと白い雲の上
あなたと一緒にのせられて 間近の瞳に星を入れるの 薄紅膨らむ吐息湿って
私の心を濡らしていくの 睫毛が私を優しくなでる あなたの耳が 心の音を直に聴く♪
初めての夜 二人の逢瀬 まるまる小夜に流るる時を 全て二人で染み居ましょう
あなたの顔が私にうずまる 私の全てがあなたを包む 枕らららら 魔理沙と枕
こうして、枕の初めての夜は、最高の思い出となって、夢と続いたのでした♪
白むまどろみ 赤らむ明るみ 朝の訪れ 私は枕
あなたは起きて 顔を洗うの? 朝ごはんは何かしら 私は興奮冷めやらず
いつもは寝てしまうこの時間 まだまだ元気! 眠れない! おなかもぐうぅって空いてるの
そろそろ魔法が解けてハレルヤ♪
驚くあなたの視界は私 埋め尽くしたい思考まで 小夜の思い出実感となり 私との二人で書き換えられる
そんな手品の種明かし 私はドキドキ待ってたのです
あなたは寝返り うーんと吐息 目蓋にかかる夢の圧力 ゆっくりじんわり軽まっていく
あなたが起きるその前に 熔けて私の心と魔法!
あなたが起きるその前に 大きくなって埋め尽くしたい!
あれ もどらないなぁ? あれぇぇぇえ
不思議びっくり うっかり捻り 私の魔法が解けないよ?
私はまだまだ枕ら ららら ららら ららら ららららら……
私は焦ってぐいぐい動いた 枕だってがんばるの!
思いは生地に染め色に通じ 枕の四隅がくいくい動いた
魔理沙の顔から這い出して 枕は動いた 布団の上を 闇雲に跳ねて飛び回る
やがて魔理沙の足元に ぐるっとベットを一周したわ それでも魔法が解けないの
どおしよぉー
「ん、朝か……あれ、枕は?」
魔理沙が起きた!
「無くなった? 夢?」
ちがうよ魔理沙! 枕は私はここにいるよ!
「なんだ、足元にいってただけかって、まさかこれって」
そうなの魔理沙! 枕は足元 私はここよ!
あー、そうね。これってパッチェに聞いたことあるけど
「枕返し!!」
うん 多分そうね くいくいくい
「枕が動いた!!」
それってびっくり? くいくいくい
「か」
か?
「かわいーーー♪」
私がかわいい?
かわいいかぁ どうしよう 心が跳ねて止まらない 更紗ら生地が 緩んでくいくい
ギュウってされた ムギュってされた 私包まれたら くらくらくらら。
運命だって見逃すの 枕と魔理沙の まるまる逢瀬 あなたのために私は枕
あなたが私にくらくらしたなら こんなに抱きしめて貰えるのなら
私はずっと これからずっと あなたの枕のままで良い♪
くるくるお日様まわって枕 くるくる月もまわって真っ暗
あれから三日 魔理沙と一緒 持ち運ばれて 抱きしめられて
時に野原で一緒にお昼ね 勿論私と魔理沙の顔が 優しい瞳がずうっと一緒
寝相でつぶされ でも幸せ♪ たまには水で洗われて 優しく揉まれて 乾かされたわ
体から水分がほんわか飛んで また あなたの寝息で潤されたくなる
そんな日々が続いたけれど ひとつだけ ひとつだけ 大変な事があったのです
おなか空いて限界だよぉぉ
「枕……最近元気ない? どうした?」
くい くい く……
「おい、枕! 枕!」
もうだめ おてあげ ばたんきゅう
枕の桃色薄まって 白い斑点黒ずんだ 七色のふりるカサカサになり それはさながら
「枕が壊死なんだ!」
「それで枕返しに来たの?」
「そうなんだパチュリー! どうしよう! 私、何かまずい事しちゃったのか!?」
「っていうか、どうして未だに枕なのよ?」
「何言ってるんだパチュリー。枕は枕だろう? マジックアイテムで意識があってクイクイ動くけど」
「あぁ……そうね、ちょっと見せて」
「ほら、頼むよ! 枕が、枕が死んじゃったら私!」
「魔理沙、そんなに枕の事を……ふむ。これは、一度枕の魔法を解かないと駄目ね」
「どういうことだ?」
「魔理沙、貴女、こないだ持ってきた魔法薬の成分言ってたのより強いの使ったでしょう?
そのせいでシンデレラが続いたのよ。一度すべて元に戻すわ。というより、枕とはもうお別れね」
「そんな! どうにかならないのかパチュリー!!」
「出来ない事は無い。このままこの枕を安定させる事は出来るわ。
でもそうしたら、枕はもう動けなくなるでしょう。枕は残るけれど枕の心は消えるわ。
あるいは、枕の魔法を解いて、枕の心を開放させてあげる事も出来る。二度と枕には会えないけれど。
選ぶのは、貴女よ、魔理沙」
「そんな……」
魔理沙 魔理沙 泣かないで 私のために苦しまないで
貴女が愛してくれるなら 私を永久に抱きしめてくれるのならば
私は くらくら まま枕 このままアナタノソバニイタイ……
「枕…」
「だめよ!」
「レミリア!?」
「レミィ」
「やっと見つけた 枕の運命 真っ暗の運命 そのまま進むは闇色 暗ら 枕を闇には落とさせない!」
「レミリア、何の権利があって私から枕を奪うんだ!?」
「それが運命だからよ魔理沙 枕暗らの運命輪 逃げた人形をやっと捉えた
これ以上 好き勝手にはさせないわ! それに 本当はどうしたら良いか分かっているんでしょう?
枕はあなたの幸せ望んだ でも 枕の幸せを私が望んじゃいけないの? その黒くくすんだ枕の色が
幸せに満ちていると思うの? ねぇ魔理沙 思い直しなさい魔理沙 枕の暗い運命輪 断ち切りなさい」
レミリアは強く言い切った けれど魔理沙は迷い断ち切れず
悩みは暗闇 落ち行って 涙流して首を振る
「でも」
レミリアは そんな魔理沙の顔を上げ 細い瞳を真っ直ぐ向けて言った
それは 魔理沙に負けず劣らない慟哭だった 心の底からの叫びだった
「魔理沙……私だって枕で寝たいのよ!!」
レミリアはここ数日 ずっと枕を探していたのだ 愛する愛しい枕を
「レミリア…」
「レミィ…」
魔理沙はハッと気がついた レミリアだけじゃない きっとパチュリーだって枕で寝たい
みんな枕に恋してる 掴んでいた枕を そっとレミリアの手におさめる 優しい声で呟いた
「パチュリー、今夜一晩枕と共に、最後の夜を過ごすくらい。そのくらいの時間はあるのかな?」
「あるわ」
魔理沙はこくんと頷いて レミリアの手を握り締めた
「最後の今夜は枕と一緒に寝よう」
「ありがとう、魔理沙」
二人の少女は手を取り合い 間に枕を挟んで眠った
怪訝な顔したメイド長も 二人の間に挟まれた 黒ずんだ枕を見て何も言えなくなった。
魔法使いの吐息と吸血鬼の吐息が枕を濡らした。
そっと染み込む二つの魔 それは抗えない魔力となって 枕の呪いを解かす
最後の夜に二人の奇跡 枕暗らの運命輪 ここに閉じて 夜明けハレルヤ
「起きて魔理沙! 枕が! 枕が!」
「あぁ! 枕が動いた! 色も戻ってる!」
「それだけじゃないわ! よく見て! 枕が! 枕が!」
「枕が立った! 枕が立ったわ!」
そして 枕は光に包まれた やがて膨らんで 膨らんでいくフランドール。
「魔理沙! お姉様! 私やっぱり両方とも好き!」
「フラン! 枕はお前だったのか!」
「帰ってきてくれてありがとう! 返してくれてありがとう! フラン!」
私ね 枕になってみて 抱きしめられる嬉しさを知った
魔理沙にたくさん愛してもらった お姉さまにもこんなに愛されてた
だから だから 魔理沙にお姉様
今度は 二人が私の枕になって♪
そしてやはりフラマリはいいなぁ。
枕を抱いてる魔理沙に一票。抱かれてるフランドールにも一票
お嬢ちゃん、そろそろ年貢の納め時だぜ!?
まだ、何かできることがあると思うんです
世界が歪んだとき、浮いて見えるフランドールが描きたいなぁ