フランちゃんはちびっこです。お子様です。
お子様ですから好奇心旺盛、無邪気、天真爛漫です。それ故の凶悪弾幕だと思えば、紅魔郷のEXも微笑ましく思えませんか? 皆さん。
……こほん。
まぁ、それはともかくとして、ちびっこでお子様だから、こんな事をしても許されるのです。
たったったっ、という軽快な足音。続けて、ぱたぱたという可愛らしい羽音が響き、その少女がやってくる。
「めーりーん!」
「はい?」
後ろからかけられた、子供っぽい甘ったるさを残した声に振り返った彼女は、次の瞬間、「げふぅぅぅぅぅっ!?」というかっこいい悲鳴を上げて廊下の上をずざーっと滑っていった。そこに素早くメイドが駆け寄って、「飛距離、百二十メートル! 新記録ですわ、美鈴さま!」とよくわからない声を上げたりもする。
ともあれ。
「フ、フランドール様……何かご用ですか……」
自分に抱きついて、ごろにゃんしている少女――この館の主人、レミリア・スカーレットの妹、フランドール・スカーレットに、無理してるなぁ、というのが誰にもわかる笑顔を浮かべる美鈴。
「ふかふかー」
「あの……?」
彼女は、美鈴の、初代(恐らく)東方系大キャラとしての威厳と尊厳と周囲からのねたみなどなどを一身に集める、絶対峡谷、ASフィールド――Absolute sexualityフィールドの略称である――に顔を埋めつつ、ふかふかしていた。
どうしたものかと視線をあちこちに向ける美鈴。だが、誰もが声をかけてこない。なぜかというと『関わり合いになると痛い目を見る』からである。
「ねぇねぇ、めーりん」
「はい?」
「めーりんって、おっぱい、おっきいね」
「あ、はあ……ありがとうございます」
「ねぇねぇ、どうしたら大きくなるの?」
きらきらと、純粋な視線を向けてくるフランドール。
さて、どうやって答えたものか。
何で大きいのかと言われたら、『知りません』としか答えられない。しかし、そんな冷たい返答をしてフランドールが泣きべそかこうものなら、その姉がすっ飛んできて秘奥義を喰らわせられることは間違いない。
……なので、適当に、美鈴は話をごまかすことにした。
「えーっと……そうですね。毎日、規則正しい生活と、規則正しく栄養たっぷりの食事をすること。これが一番です」
「そうなの?」
「そうなんです」
「でも、咲夜とかは……」
その一言を口に出そうとした瞬間、フランドールの背中に、えもいわれぬ寒気が這い上がる。思わず、びくっ、と背筋をすくませて辺りをきょろきょろするのだが、当然、誰もいない。
「……フランドール様、おいたわしや……」
「い、今の……何……?」
未知の恐怖に顔を引きつらせるフランドール。一体、この館の中で、それがどれほど絶対的なものであるのか、それを知るものは、今のところ、この場にはいない。
「え、えっとね……」
声を引きつらせながら、んーっと、と話題を変えるフランドール。
「じゃ、じゃあ、大きくなる方法、教えて!」
「え? ですから、先の……」
「そうじゃなくて、もっと簡単なの!」
「どうしてですか?」
「大きくしてみたいから」
「……はぁ」
さすがに、子供故の強引な理論で押し切られてしまっては反論することも出来なかった。
「そう……ですねぇ……。一朝一夕、というわけにはいきませんし……。と言うか、フランドール様は、まだまだこれからですから……」
「すぐに大きくしてみたいのー」
ぷぅ~っとほっぺた膨らませて、フランドール。目が、じっと美鈴をにらんでいる。このままでは癇癪起こして暴れ出すのは目に見えていた。そうなれば、美鈴の命など、風前の灯火である。
「え、えっと……ぎ、牛乳を飲むとか、マッサージしてみるとか……」
「うんうん」
「あとは……好きな人に揉んでもらう……。あ、い、いや、今のは忘れてください!」
「好きな人……? めーりんは、誰にもみもみしてもらってるの?」
「へっ? そ、それは……えっと……」
「誰ー?」
「……フ、フランドール様は、し、知らなくていいんですよ!」
「えー?」
「そ、その……お、お風呂とか、ほら、色々ありますし!」
「お風呂? 咲夜と一緒にお風呂に入った時とかなの?」
「あ、そ、そうです。毎晩、ゆっくり、こう……愛情を持って、柔らかく、円を描くように……時に、激しく……って……」
何を思いだしたのか。
なぜか、うっとりとした表情になって語り出した美鈴が、はっとなった。視線を恐る恐るフランドールにやれば、そこには、目をきらきらさせているフランドールの姿。
「好きな人にもみもみしてもらったら大きくなるんだね!?」
「え!? い、いえ、そ、それは……!」
「じゃ、お姉さまの所に行ってくるー」
「あぁぁぁぁっ! お、お待ち下さい、フランドール様ぁぁぁぁっ!」
「めーりん、ありがとー」
言うが早いか、あっという間に少女の姿は廊下の向こうへ。
そして一人、呆然となる美鈴。
どうする。この状況をどうしたらいい。っていうか、あんな小さな子に、自分はなんてことを言ってしまったんだ。さらにプラスして、あの子、お嬢様の妹よ? そんな邪でやましい知識を私が教え込んだとお嬢様に知られたら……!
「に、逃げよう!」
思い立ったが吉日。速攻で荷物をまとめて、紅魔館から旅立つ準備を整えようと、立ち上がった美鈴だったが。
「あら、美鈴。ちょうどよかった。これから、あなた達の所にお茶を持って行くところだったの。いらっしゃい、美味しい紅茶を用意したわ」
「げげっ、咲夜さん!?」
「……げげっ?」
さあ、どうする、紅美鈴!
ここで逃げれば咲夜さんの好意を無にするぞ! しかし、逃げなければ、恐らくお前の命はないぞ! 目の前の幸せか、それとも、遠い先の平穏か。お前が取るべきなのはどっちなのだ!
「……ご、ご一緒します」
「そう」
――結局、断って逃げてもナイフで蜂の巣にされるだけだとわかったのか、目先の幸せを思う存分楽しむことに決めた美鈴であった。
「おねーさまー」
「あら」
ばたん、とドアを開けて飛び込んできた妹の方に、何やら、手にした本に視線をやっていたレミリアが顔を向けた。なお、本のタイトルは、『愛故に人は悲しまねばならぬ』という、どこぞの聖帝のセリフみたいなタイトルであった。
「どうしたの?」
「あのね、お姉さま」
「?」
「おっぱいもみもみして」
「……はい?」
待て、今、この子は何と言った?
「え、えっと……フラン? その……?」
「フランも、めーりんみたいにおっぱいおっきくなりたい」
「そ、そう。で、でも、それで、何でそこに話がつながるの……?」
「好きな人に揉んでもらうと大きくなる、って」
「だ、誰がそんなことを言ったの?」
「えへへー」
にこにこ笑うだけで、美鈴の名前は口に出さないフランドール。幸か不幸か、美鈴が死を回避できる確率は格段に高まったようであった。
「ま、まぁ、そういう迷信は確かにあるけれど……。
で、でもね、フラン。あなたは、まだまだ子供でしょう? 大きくしてどうするの」
「んー……ふかふかしてみたい」
「ふかふか?」
「うん。めーりんとかにだっこしてもらったら、柔らかくてあったかくて。気持ちいいんだもん」
「ああ……」
なるほど、そういう、子供らしい目的なのか。
こっそり、ある意味では安堵のため息を漏らすレミリア。しかし、現状がそれで何か変わったわけでもない。
「おねーさま」
「……何でわたしなの?」
「フランの好きな人は、一杯いるけど、お姉さまが大好きだから」
「……そ、そう」
あ、あら、嬉しいわね。そんなことを思ってくれるなんて。思えば、わたし、この子には色々と……、ああ、いけない、目頭が熱くなって……。
「お姉さま?」
「あ、ご、ごめんなさいね。
そ、そう……それじゃ、ちょっとだけね」
まぁ、フランドールは子供だ。結局、自分の好奇心が、ある意味で満たされてしまえば、すぐに次の『楽しいこと』に意識を向けてしまうだろう。
なぁに、揉むと言っても妹のだ。これは単なる姉妹のじゃれ合い。そう考えておけばやましいものなど何もない。
「じゃあ……」
けど、いいのかしら。こんなことして。……ま、いいか。深い意味はないんだし。
そう思いながら、ぺたぺたとフランドールの、胸と言うよりは胸部に手を当てて、軽く掌を動かし、
「はい、おしまい」
「やったぁ。これで、フランもおっきくなるかな」
「そうね。毎日、規則正しい生活をしていたら、きっと大きくなるわね」
「じゃ、次はお姉さまの番だね」
「……はい!?」
「だって、お姉さまもちっちゃいし。おっきくなりたいよね?」
「え? い、いや、それは確かに……って、ちょっと待ってちょっと待って! フラン、ちょっと!?」
「こんな感じかな?」
「いや、だから、フラァァァァァァンッ!?」
「私としたことが」
門番隊の詰め所にお茶を一式、運んでから、咲夜は新たに用意した紅茶のカップをトレイに載せて、一路、館の主の元に足を運んでいた。
本来なら、こちらを先に訪れるべきなのに、どうしてあっちを先に考えてしまったのか。それを思うと、自分のドジっぷりに肩を落としたくなる。とりあえず、お茶を届けて、まずは頭を下げよう。
「お嬢様、失礼致します。咲夜でございます。お茶をお持ち致しました」
こんこん、とドアをノックして、佇むことしばし。返事はなし。
「……お嬢様?」
そっと、ドアに耳を寄せてみれば、何やらどたばたという音が聞こえてくる。
……何事?
これ以上、主の部屋に対して聞き耳を立てるというのは無礼である。不敬を承知で、彼女は己の得物を手に取るとドアを一気に開け放ち、叫んだ。
「何者!? お嬢様のお……へ……や……」
もしかしたら、レミリアに何かがあったのかもしれない。そう思ってしまえば、行動の原理にも説明がつく。後から叱られたら、それを理由に、簡単な言い訳を用意しておこう。
咲夜は頭の片隅でそれを考えながら、しかし、脳の大半を『お嬢様を守る』という意識に置き換えて、ナイフの先端を室内へと向けていた。
向けていたのだが……。
「さ……さく……や……」
「お……おじょ……さま……」
「あ、さくやだー」
その室内の光景は。
――ありのまま、見たままを述べよう。
ベッドの上にレミリアが押し倒されていて、フランドールが、そのお腹の上にまたがっていた。ついでに言えば、その小さな可愛らしい手はレミリアの胸にぺたりと当てられている。
「しっ、失礼致しましたっ!」
「ちっ、ちょっと咲夜ー!?」
音速を、この時、メイド長は確実に超えた。
まさに刹那の瞬間に頭を下げ、ドアを閉め、さらに靴音すらレミリアの耳に届かないほどの高速で脱兎。もうすでに、レミリアの声が届かないところにまで逃げ出していた。
「あ、あぁぁぁぁ……」
「咲夜、どうしたの? 何か……」
「あぁぁぁぁぁっ!」
「すいませーん、レミリアさーん。先日のお約束通り、新聞の取材に来させて頂きましたー」
こんこん、と窓をノックする音が響き、がらっとそれが開けられる。
「いやぁ、門番隊の皆さんやメイドの皆さんにお取り次ぎをとお願いしたんですけど、どなたもお忙しそうで。それで、失礼ながら、直接……」
ぎぎぎぎぎっ、と鈍い音を立てて、レミリアの視線が窓から入ってきた相手に向く。
――そこにいたのは、一番、見られてはならない相手――射命丸文。
「……スクープ……」
ぱしゃ、と機械的にシャッターを切る文に。
「いっやぁぁぁぁぁぁっ!」
さすがに絶叫するレミリアだった。
『紅魔館、真昼の情事!』
その見出しが、文々。新聞の一面を飾ったのはその翌日のことである。内容をかいつまんで説明すると、『レミリアがフランドールに押し倒され、胸もまれていた』というもの。さらにそこには咲夜のコメントも掲載されていて、『お二人が仲良くされているのを見るのは微笑ましいですわ』という、どう考えても取り繕ったとしか思えない内容が書かれていた。
その新聞を見たもの達の反応を、一部抜粋しよう。
「いや、まぁ……あんたらが仲良くするのはいいことだけど……さすがに近親はまずいんじゃ?」
「違うの! 誤解なのよ、霊夢!」
「……うーん……。まぁ、お幸せにな……」
「ちょっと待ってよ、そこの黒白! 何で帽子を目深にかぶり直すの!?」
「あ、レミリアさん、その……ある意味、おめでとうございます。これ、幽々子様からのお祝いのお赤飯です……それじゃ」
「だから待てって、その庭師! 顔を赤らめてそそくさと立ち去るなぁぁぁぁっ!」
「あら、レミリア。新聞、見たわよ。なかなか、かわいいふりしてやるじゃない」
「何勘違いしてるのよ、このスキマぁぁぁぁぁぁっ!」
「レミリア。はいこれ。避妊薬と、ゴムと、あと、特別なお薬ね。使い方はラベルに書いてあるから。行くわよ、ウドンゲ」
「は、はい。あの……お幸せに」
「こんなもん押し付けて何しろってのよあんた達ぃぃぃぃぃぃっ!」
人の噂も七十五日。確かに、『人』の間では、七十五日で忘れ去られてしまうだろうが、忘れてはならないのは、ここは幻想郷、人と妖が共に住まう所であると言うこと。
つまり、人間は七十五日で忘れようとも、妖怪連中は七十五日程度じゃ、どう頑張っても忘れないと言うことである。
それからしばらくの間、『レミリア×フランドール 禁断の姉妹』という内容で変な本が香霖堂経由で売りに出されたと言うが……それはまた、別の話。
「しくしく……もうお嫁に行けない……」
「お姉さま、どうしたのかな?」
「……フランドール様。お嬢様をお願いします」
「ほえ?」
一人、部屋でさめざめと泣くレミリアと、状況全く理解してないフランドール、そして、その姉妹を暖かい眼差しで見つめる咲夜。紅魔館で、それからかなり長い間に渡って見受けられた光景である。なお、事の発端である美鈴は、新聞によって事が大事になってすぐに『修行に出てきます』との書き置きを残して紅魔館から姿を消して、三日後に咲夜によって発見されたりするのだが、それも割愛しよう。
ちなみに、その時、交わされた会話であるが。
「美鈴、あなた、しばらくお嬢様のケアに付き合ってちょうだい。私も協力するけれど、やっぱり、そういうことはあなたには及ばないでしょうし」
「はっ、はいっ! おっ、お任せくださひぶっ!?」
「何やってるのよ。何で舌を噛まないといけないの。名誉なことではあるけど、そこまで緊張しなくていいのに。もう、ドジなんだから。
ほら、舌、見せて。手当してあげるわ」
「は、はひぃ……」
「ん……ちゅっ……」
「ひゃうっ!?」
「うふふ……はい、おしまい」
事の発端が、一番いい思いをしたという話はなしの方向で。
お子様ですから好奇心旺盛、無邪気、天真爛漫です。それ故の凶悪弾幕だと思えば、紅魔郷のEXも微笑ましく思えませんか? 皆さん。
……こほん。
まぁ、それはともかくとして、ちびっこでお子様だから、こんな事をしても許されるのです。
たったったっ、という軽快な足音。続けて、ぱたぱたという可愛らしい羽音が響き、その少女がやってくる。
「めーりーん!」
「はい?」
後ろからかけられた、子供っぽい甘ったるさを残した声に振り返った彼女は、次の瞬間、「げふぅぅぅぅぅっ!?」というかっこいい悲鳴を上げて廊下の上をずざーっと滑っていった。そこに素早くメイドが駆け寄って、「飛距離、百二十メートル! 新記録ですわ、美鈴さま!」とよくわからない声を上げたりもする。
ともあれ。
「フ、フランドール様……何かご用ですか……」
自分に抱きついて、ごろにゃんしている少女――この館の主人、レミリア・スカーレットの妹、フランドール・スカーレットに、無理してるなぁ、というのが誰にもわかる笑顔を浮かべる美鈴。
「ふかふかー」
「あの……?」
彼女は、美鈴の、初代(恐らく)東方系大キャラとしての威厳と尊厳と周囲からのねたみなどなどを一身に集める、絶対峡谷、ASフィールド――Absolute sexualityフィールドの略称である――に顔を埋めつつ、ふかふかしていた。
どうしたものかと視線をあちこちに向ける美鈴。だが、誰もが声をかけてこない。なぜかというと『関わり合いになると痛い目を見る』からである。
「ねぇねぇ、めーりん」
「はい?」
「めーりんって、おっぱい、おっきいね」
「あ、はあ……ありがとうございます」
「ねぇねぇ、どうしたら大きくなるの?」
きらきらと、純粋な視線を向けてくるフランドール。
さて、どうやって答えたものか。
何で大きいのかと言われたら、『知りません』としか答えられない。しかし、そんな冷たい返答をしてフランドールが泣きべそかこうものなら、その姉がすっ飛んできて秘奥義を喰らわせられることは間違いない。
……なので、適当に、美鈴は話をごまかすことにした。
「えーっと……そうですね。毎日、規則正しい生活と、規則正しく栄養たっぷりの食事をすること。これが一番です」
「そうなの?」
「そうなんです」
「でも、咲夜とかは……」
その一言を口に出そうとした瞬間、フランドールの背中に、えもいわれぬ寒気が這い上がる。思わず、びくっ、と背筋をすくませて辺りをきょろきょろするのだが、当然、誰もいない。
「……フランドール様、おいたわしや……」
「い、今の……何……?」
未知の恐怖に顔を引きつらせるフランドール。一体、この館の中で、それがどれほど絶対的なものであるのか、それを知るものは、今のところ、この場にはいない。
「え、えっとね……」
声を引きつらせながら、んーっと、と話題を変えるフランドール。
「じゃ、じゃあ、大きくなる方法、教えて!」
「え? ですから、先の……」
「そうじゃなくて、もっと簡単なの!」
「どうしてですか?」
「大きくしてみたいから」
「……はぁ」
さすがに、子供故の強引な理論で押し切られてしまっては反論することも出来なかった。
「そう……ですねぇ……。一朝一夕、というわけにはいきませんし……。と言うか、フランドール様は、まだまだこれからですから……」
「すぐに大きくしてみたいのー」
ぷぅ~っとほっぺた膨らませて、フランドール。目が、じっと美鈴をにらんでいる。このままでは癇癪起こして暴れ出すのは目に見えていた。そうなれば、美鈴の命など、風前の灯火である。
「え、えっと……ぎ、牛乳を飲むとか、マッサージしてみるとか……」
「うんうん」
「あとは……好きな人に揉んでもらう……。あ、い、いや、今のは忘れてください!」
「好きな人……? めーりんは、誰にもみもみしてもらってるの?」
「へっ? そ、それは……えっと……」
「誰ー?」
「……フ、フランドール様は、し、知らなくていいんですよ!」
「えー?」
「そ、その……お、お風呂とか、ほら、色々ありますし!」
「お風呂? 咲夜と一緒にお風呂に入った時とかなの?」
「あ、そ、そうです。毎晩、ゆっくり、こう……愛情を持って、柔らかく、円を描くように……時に、激しく……って……」
何を思いだしたのか。
なぜか、うっとりとした表情になって語り出した美鈴が、はっとなった。視線を恐る恐るフランドールにやれば、そこには、目をきらきらさせているフランドールの姿。
「好きな人にもみもみしてもらったら大きくなるんだね!?」
「え!? い、いえ、そ、それは……!」
「じゃ、お姉さまの所に行ってくるー」
「あぁぁぁぁっ! お、お待ち下さい、フランドール様ぁぁぁぁっ!」
「めーりん、ありがとー」
言うが早いか、あっという間に少女の姿は廊下の向こうへ。
そして一人、呆然となる美鈴。
どうする。この状況をどうしたらいい。っていうか、あんな小さな子に、自分はなんてことを言ってしまったんだ。さらにプラスして、あの子、お嬢様の妹よ? そんな邪でやましい知識を私が教え込んだとお嬢様に知られたら……!
「に、逃げよう!」
思い立ったが吉日。速攻で荷物をまとめて、紅魔館から旅立つ準備を整えようと、立ち上がった美鈴だったが。
「あら、美鈴。ちょうどよかった。これから、あなた達の所にお茶を持って行くところだったの。いらっしゃい、美味しい紅茶を用意したわ」
「げげっ、咲夜さん!?」
「……げげっ?」
さあ、どうする、紅美鈴!
ここで逃げれば咲夜さんの好意を無にするぞ! しかし、逃げなければ、恐らくお前の命はないぞ! 目の前の幸せか、それとも、遠い先の平穏か。お前が取るべきなのはどっちなのだ!
「……ご、ご一緒します」
「そう」
――結局、断って逃げてもナイフで蜂の巣にされるだけだとわかったのか、目先の幸せを思う存分楽しむことに決めた美鈴であった。
「おねーさまー」
「あら」
ばたん、とドアを開けて飛び込んできた妹の方に、何やら、手にした本に視線をやっていたレミリアが顔を向けた。なお、本のタイトルは、『愛故に人は悲しまねばならぬ』という、どこぞの聖帝のセリフみたいなタイトルであった。
「どうしたの?」
「あのね、お姉さま」
「?」
「おっぱいもみもみして」
「……はい?」
待て、今、この子は何と言った?
「え、えっと……フラン? その……?」
「フランも、めーりんみたいにおっぱいおっきくなりたい」
「そ、そう。で、でも、それで、何でそこに話がつながるの……?」
「好きな人に揉んでもらうと大きくなる、って」
「だ、誰がそんなことを言ったの?」
「えへへー」
にこにこ笑うだけで、美鈴の名前は口に出さないフランドール。幸か不幸か、美鈴が死を回避できる確率は格段に高まったようであった。
「ま、まぁ、そういう迷信は確かにあるけれど……。
で、でもね、フラン。あなたは、まだまだ子供でしょう? 大きくしてどうするの」
「んー……ふかふかしてみたい」
「ふかふか?」
「うん。めーりんとかにだっこしてもらったら、柔らかくてあったかくて。気持ちいいんだもん」
「ああ……」
なるほど、そういう、子供らしい目的なのか。
こっそり、ある意味では安堵のため息を漏らすレミリア。しかし、現状がそれで何か変わったわけでもない。
「おねーさま」
「……何でわたしなの?」
「フランの好きな人は、一杯いるけど、お姉さまが大好きだから」
「……そ、そう」
あ、あら、嬉しいわね。そんなことを思ってくれるなんて。思えば、わたし、この子には色々と……、ああ、いけない、目頭が熱くなって……。
「お姉さま?」
「あ、ご、ごめんなさいね。
そ、そう……それじゃ、ちょっとだけね」
まぁ、フランドールは子供だ。結局、自分の好奇心が、ある意味で満たされてしまえば、すぐに次の『楽しいこと』に意識を向けてしまうだろう。
なぁに、揉むと言っても妹のだ。これは単なる姉妹のじゃれ合い。そう考えておけばやましいものなど何もない。
「じゃあ……」
けど、いいのかしら。こんなことして。……ま、いいか。深い意味はないんだし。
そう思いながら、ぺたぺたとフランドールの、胸と言うよりは胸部に手を当てて、軽く掌を動かし、
「はい、おしまい」
「やったぁ。これで、フランもおっきくなるかな」
「そうね。毎日、規則正しい生活をしていたら、きっと大きくなるわね」
「じゃ、次はお姉さまの番だね」
「……はい!?」
「だって、お姉さまもちっちゃいし。おっきくなりたいよね?」
「え? い、いや、それは確かに……って、ちょっと待ってちょっと待って! フラン、ちょっと!?」
「こんな感じかな?」
「いや、だから、フラァァァァァァンッ!?」
「私としたことが」
門番隊の詰め所にお茶を一式、運んでから、咲夜は新たに用意した紅茶のカップをトレイに載せて、一路、館の主の元に足を運んでいた。
本来なら、こちらを先に訪れるべきなのに、どうしてあっちを先に考えてしまったのか。それを思うと、自分のドジっぷりに肩を落としたくなる。とりあえず、お茶を届けて、まずは頭を下げよう。
「お嬢様、失礼致します。咲夜でございます。お茶をお持ち致しました」
こんこん、とドアをノックして、佇むことしばし。返事はなし。
「……お嬢様?」
そっと、ドアに耳を寄せてみれば、何やらどたばたという音が聞こえてくる。
……何事?
これ以上、主の部屋に対して聞き耳を立てるというのは無礼である。不敬を承知で、彼女は己の得物を手に取るとドアを一気に開け放ち、叫んだ。
「何者!? お嬢様のお……へ……や……」
もしかしたら、レミリアに何かがあったのかもしれない。そう思ってしまえば、行動の原理にも説明がつく。後から叱られたら、それを理由に、簡単な言い訳を用意しておこう。
咲夜は頭の片隅でそれを考えながら、しかし、脳の大半を『お嬢様を守る』という意識に置き換えて、ナイフの先端を室内へと向けていた。
向けていたのだが……。
「さ……さく……や……」
「お……おじょ……さま……」
「あ、さくやだー」
その室内の光景は。
――ありのまま、見たままを述べよう。
ベッドの上にレミリアが押し倒されていて、フランドールが、そのお腹の上にまたがっていた。ついでに言えば、その小さな可愛らしい手はレミリアの胸にぺたりと当てられている。
「しっ、失礼致しましたっ!」
「ちっ、ちょっと咲夜ー!?」
音速を、この時、メイド長は確実に超えた。
まさに刹那の瞬間に頭を下げ、ドアを閉め、さらに靴音すらレミリアの耳に届かないほどの高速で脱兎。もうすでに、レミリアの声が届かないところにまで逃げ出していた。
「あ、あぁぁぁぁ……」
「咲夜、どうしたの? 何か……」
「あぁぁぁぁぁっ!」
「すいませーん、レミリアさーん。先日のお約束通り、新聞の取材に来させて頂きましたー」
こんこん、と窓をノックする音が響き、がらっとそれが開けられる。
「いやぁ、門番隊の皆さんやメイドの皆さんにお取り次ぎをとお願いしたんですけど、どなたもお忙しそうで。それで、失礼ながら、直接……」
ぎぎぎぎぎっ、と鈍い音を立てて、レミリアの視線が窓から入ってきた相手に向く。
――そこにいたのは、一番、見られてはならない相手――射命丸文。
「……スクープ……」
ぱしゃ、と機械的にシャッターを切る文に。
「いっやぁぁぁぁぁぁっ!」
さすがに絶叫するレミリアだった。
『紅魔館、真昼の情事!』
その見出しが、文々。新聞の一面を飾ったのはその翌日のことである。内容をかいつまんで説明すると、『レミリアがフランドールに押し倒され、胸もまれていた』というもの。さらにそこには咲夜のコメントも掲載されていて、『お二人が仲良くされているのを見るのは微笑ましいですわ』という、どう考えても取り繕ったとしか思えない内容が書かれていた。
その新聞を見たもの達の反応を、一部抜粋しよう。
「いや、まぁ……あんたらが仲良くするのはいいことだけど……さすがに近親はまずいんじゃ?」
「違うの! 誤解なのよ、霊夢!」
「……うーん……。まぁ、お幸せにな……」
「ちょっと待ってよ、そこの黒白! 何で帽子を目深にかぶり直すの!?」
「あ、レミリアさん、その……ある意味、おめでとうございます。これ、幽々子様からのお祝いのお赤飯です……それじゃ」
「だから待てって、その庭師! 顔を赤らめてそそくさと立ち去るなぁぁぁぁっ!」
「あら、レミリア。新聞、見たわよ。なかなか、かわいいふりしてやるじゃない」
「何勘違いしてるのよ、このスキマぁぁぁぁぁぁっ!」
「レミリア。はいこれ。避妊薬と、ゴムと、あと、特別なお薬ね。使い方はラベルに書いてあるから。行くわよ、ウドンゲ」
「は、はい。あの……お幸せに」
「こんなもん押し付けて何しろってのよあんた達ぃぃぃぃぃぃっ!」
人の噂も七十五日。確かに、『人』の間では、七十五日で忘れ去られてしまうだろうが、忘れてはならないのは、ここは幻想郷、人と妖が共に住まう所であると言うこと。
つまり、人間は七十五日で忘れようとも、妖怪連中は七十五日程度じゃ、どう頑張っても忘れないと言うことである。
それからしばらくの間、『レミリア×フランドール 禁断の姉妹』という内容で変な本が香霖堂経由で売りに出されたと言うが……それはまた、別の話。
「しくしく……もうお嫁に行けない……」
「お姉さま、どうしたのかな?」
「……フランドール様。お嬢様をお願いします」
「ほえ?」
一人、部屋でさめざめと泣くレミリアと、状況全く理解してないフランドール、そして、その姉妹を暖かい眼差しで見つめる咲夜。紅魔館で、それからかなり長い間に渡って見受けられた光景である。なお、事の発端である美鈴は、新聞によって事が大事になってすぐに『修行に出てきます』との書き置きを残して紅魔館から姿を消して、三日後に咲夜によって発見されたりするのだが、それも割愛しよう。
ちなみに、その時、交わされた会話であるが。
「美鈴、あなた、しばらくお嬢様のケアに付き合ってちょうだい。私も協力するけれど、やっぱり、そういうことはあなたには及ばないでしょうし」
「はっ、はいっ! おっ、お任せくださひぶっ!?」
「何やってるのよ。何で舌を噛まないといけないの。名誉なことではあるけど、そこまで緊張しなくていいのに。もう、ドジなんだから。
ほら、舌、見せて。手当してあげるわ」
「は、はひぃ……」
「ん……ちゅっ……」
「ひゃうっ!?」
「うふふ……はい、おしまい」
事の発端が、一番いい思いをしたという話はなしの方向で。
性的指向絶対領域ですかー……グレイズ出来ません!!
>「おっぱいもみもみして」
はははっ。それじゃお兄さんが揉んであg(不夜城レッド
>そう言えば、もうそろそろ、春も終わりですね。
心配無用!。貴方がいる限り春頭症候群は消えはしない。
ないないペタンが悪いとは言わんけど、せめて「ふに」ぐらいになれれb(全世界ナイトメア)
めーりんは
たゆんだ
な
でも、どんなに速いボールでも飛んでくる方向、タイミングさえ分かれば避けられると思ってましたから軽い気持ちでクリックしたんですよ。ちなみに方向もタイミングもバッチリだった。
でもね…地球サイズのボールは避けれねぇ!
いや、近親はまずいと思うんだ?
いいけどさ、同人だからw
氏は春が過ぎるまでずっと続けるおつもりですかw
もう逝くところまで逝ってしまってください、お付き合いしますよw
ごちそうさまでした
よーし、お兄さん張り切っちゃうぞー!!あれ咲夜さんくぁwせdfrtgy
ふじこ
特別なお薬
特別なお薬
ゴチになりました。(鼻血を盛大に垂らしながら
森羅結界が常時発動してるよ。
自分の住んでいるところでは、数週間前まで黒幕が頑張ってました・・・。
紅い魔の館の中も一年中春ですね。もちろん、性的な意味で。
有難う御座いますッッ!!!
フ「すごく・・大きいです。」
萌えス
妖怪の噂話は何年だろうね?。
知りたいわ~wwwwww
噂が忘れられる日がくるのかね