いつも、つたえたいときはいっしょうけんめいで。わたしはきょうもこえにだそうとがんばったけど、けっきょくなにをいっていいかわからない。
あのひとにつたえたい。けど、わたしはもともとねこだから、しっぽふって「にゃーん」っていうことくらいしかできない。
もどかしくてもどかしくてもどかしくて。
でも、きょう、はじめておもいをことばいがいでつたえるほうほうがわかった。
なんでいままでわかんなかったんだろう。こんなにかんたんなのに。
あと、いっしょにいうことばもおしえてもらった。このことばは、わたしのきもちをてきかくにあらわしていて、わたしはびっくりしてしっぽがビーン、ってたった。
やっぱりわたしとはちがう。あのひとみたいになりたい。いつか、わたしにもこんなふうにひとになにかをおしえられるねこになれるのかな?
まぁ、そんなのはおいておいて。
とにかく、ぜんはいそげ、だ。はやく、あのひとにつたえたい。わたしがどんなきもちなのか。
はやくはやくはやく。
そして、いつものようにまったりとこたつでおちゃをのんでいたところをみつけて、わたしはとんだ。
もちろん、おしえてもらったことばをいってから。
「らんしゃま、だ~いすき!」
そして、わたしはらんしゃまにおもいっきりのちゅーをした。
「……紫様」
「あら、藍。どうしたのかしら? そんなグッタリして」
「いえ、橙の愛情表現を気が済むまで受けてただけですが……。そう、それで話があるんですよ」
「あら、何かしら?」
「橙にキスを教えたのは紫様ですよね? しかも言葉もしっかりとオマケに付けて」
「そうだとしたら?」
「何で教えたんですか?」
「あらあら。自分の気持ちをどう表していいか困っている娘を放っておける程、私は愚かではないわ」
「だからって……その……橙にはまだ早いというか……」
「ふふっ。恋するのに年齢なんて関係ないのよ。自分の気持ちに気が付いたら全力でぶつかっていけばいいの。成就するにしろ失恋するにしろ、何かをそこから学ぶのよ。人も、妖怪も」
「……はぁ、相変わらず、紫様には適いませんよ。――だったら、私もその言葉に従うとしましょう」
「はい? ――ん!?」
紫の唇を藍が奪う。今この時だけは、主従の関係が逆転した。
たっぷりと絡み合わせた後、藍は口を名残惜しそうに離す。
「……大好きですよ。紫様」
「……もう。困った式ね。こんなにも欲情して」
「紫様程ではありませんよ」
「あら? それはどういう意味かしら?」
「年がら年中博麗の巫女に欲情してるってことです」
「ふふっ。そう言えば、今度の巫女もなかなか良さそうな娘だったわね。確か霊夢って言ったむぅ、ん……」
「……ふぅ。今は、私だけを見て下さいよ。紫様」
「ふふふ……しょうがない娘ね」
「こんなしょうがないのにしたのは紫様ですよ?」
「あら、そうだったかしら?」
「そうですよ」
二人は艶やかに笑い合った。
「それじゃ、傾国の美女のテクを見せてもらおうかしら?」
「はい、喜んで」
そう囁き合って、紫と藍は布団に倒れ込んだ。
(……私は前座でも構いません。例え心が霊夢に向かっているとしても、私は……)
もどかしくてでは?
橙にはまだ早い。ここは私が藍様に気持ちを伝えねば。
良い主従関係ですね。