寂れた神社では、ただ私一人。
動けない私は、ただ天井を見るか、庭に広がる景色を見るしかない。
後任の人も決まったようだ。もう、私は博麗の巫女としての務めを果たさなくていい。
ただ……こうして寝てるしか出来ないのだ。後、何十年か、あるいはもっと早くか。
……私はいる価値があるのだろうか?
こうしてただ寝ているだけで、何の役にも立たない。博麗の巫女として妖怪を退治することはおろか、立ち上がることさえ出来ないこの私に。
きっと……誰もが心の中で嘲笑っているだろう。
それはそうだ。異変解決の途中で大怪我を負ってリタイアなんて、博麗の巫女としては最も恥ずべきことだろう。その異変は魔理沙や早苗が解決したらしいし。
むしろ、私は最初っからいらなかったのではないか?
だって、異変解決は魔理沙や早苗がしてくれる。結界は紫で十分だし、後、私がすることと言えば縁側でお茶を飲むだけ。
今は、それさえ出来ないのだが……。
……あれ? 本当に私はいらなくないか? こうなった以上、もう生きる価値すらない。
次の巫女は決まっているし、誰も私に構うやつなんていない。
……死のう、かな。
そうだ。死んでしまおう。これ以上見苦しく生きるのは、もう懲り懲りだ。
体は動かないけど、手くらいなら動かせる。幸い、と言っていいのか、手元には果物を剥くためのナイフもある。
これを自分の喉に刺せばいい。
私の手が、果物ナイフを握る。変な汗が止めどなく流れて、滑らないようにしっかりと握りしめる。
…………。
あぁ……私は、結局、こういう運命だったのかも知れないわね。
そう思って、私は、一気にナイフを自分の喉へ突き立てた。
気が付いたら、見覚えのない天井が広がっていた。
そして、そこには涙で顔をグシャグシャに濡らしている、魔理沙、早苗、紫。そして数多くの人妖。
みんな、どうしたの? と思って、声を出そうとしたけど、
声が、出ない。
「霊夢……あなたはもう喋ることは出来ないわ。自分で自分の喉を潰してしまったんですもの」
……そっか。そう言えばそうだった。私は、自分の喉を刺したんだった。
「『……そっか。そう言えばそうだった。私は、自分の喉を刺したんだった』」
さとりが私の声を代弁する。
「私があなたの声を代弁……ですか。まさかこの忌み嫌われた能力が人の役に立つとは思いませんでした」
それはそうよね。ここは?
「ここは永遠亭の診療室です。あなたは第一発見者の八雲 紫によって連れて来られて、八意 永琳によって治療を受けました。幸い、隙間による運搬と、素早い治療によって命はギリギリ助かりましたが……声までは取り戻せなかったようです」
さとりの隣で永琳が悔しそうに唇を噛んでいる。永琳は本当に悔しそうな声で私に言った。
「……霊夢。あなたはナイフで自分の喉を刺す際に、弾幕に使うエネルギーと全く同じものをナイフに込めていたの。それが、喉の組織を完全に破壊して、再起不能にした。何とか喉自体は最低限に戻すことは出来たけど……声までは……戻らなかった」
永琳がそう言って泣き崩れた。きっと自分の力量のなさに嘆いていると思うんだけど、私の命を救ったこと自体すごいことだと思う。
さとりは私が思ったことをそのまま永琳に伝えて、永琳は私に礼をしてその場から立ち去っていった。
「……なんで、何でなんだよ! 霊夢! 何でそんなことを……!」
魔理沙はボロボロと涙をこぼしながらも、しっかりと私の目を見る。目は真っ赤に充血していて、きっと私のために泣いてくれたのだろう。こんな私のために、目を真っ赤にして……。
そう思ったら、急に死んでいた感情が蘇ってきた。見れば、みんながみんな涙を流した跡があるのだ。
レミリアや天子と言った面々はいつもと変わらず不遜な態度を保っているものの、明らかにその目は濡れていた。
幽々子や幽香は泣いてはいないものの、いつもの余裕の笑みはなく、険しい顔をしていた。
早苗や紫なんてもっと顕著だ。髪はボサボサで、身だしなみが崩れていても、それを気にする素振りすら見えない。
全てのエネルギーを私に使ってくれているのだ。
あぁ……涙が止まらない。鼻水が遠慮なく出てくる。どんどん顔がみっともなくなっていく。
でも、三人はさらに涙が出てみっともなくなって、そして私の体を抱き起こして、一緒に泣いてくれた。
病室にはたくさんの人がいるのに、それを気にすることもなく、大声で泣いた。
声が声じゃなくて、それでも何かを一生懸命に伝えようと必死になる。
三人に体が壊れるような抱擁を受けて、私は三人を有らん限りの力で抱き締めて分かったことは――
私はいてもいいんだ、生きてていいんだ、ということ。
それから、私は新しい巫女になった娘を指導する立場になった。
紙とペンで弾幕のイメージを伝え、ボディタッチ(時には拳骨)で心を伝える。
きっと、私の育てた娘(むすめ)はあらゆる異変を解決する優秀な巫女となるだろう。
そして平時は何時も通りに宴会を催したりするのだ。それで交流を深め、この娘は繋がりを持つ。もしかしたら、異変解決を助けてくれる友人が出来るかもしれない。
けれども、宴会は何よりこの娘に絶望や虚無感を感じさせないのが目的だ。かつて私が感じたような、あの馬鹿げた考えを持たないように。
娘には、自分がいる意味というものを実感してもらいたい。
そのためには、まず私がこの娘にそう感じさせるようにしないとね。
その立場を失ってしまった時の喪失感は計り知れないものなんでしょうね。
まあ、主役の気持ちは脇役にはわからないと思うけど言える事は一つ
霊夢は要石のような物、霊夢が居ないと東方の世界が成り立たないって事だね
慕ってくれる人が少数であったとしても、その人にとっては“あなた”は大事な人なのです。なんかうまく言えませんが。
少なくとも意味の無い人は一人もいないと、私は思ってます。
分からない以上はいてもいなくてもいい人なんていません
とにかく書いて投稿することが大事なんだと思う
あれ・・・霊夢にレスするつもりがいつのまにか(ry
何やらで娘を指導したり宴会に参加できたりする。
ナイフで喉を刺したら意味不明の理由で話せなくなる。
ちょーっと展開に無理があり過ぎるような。
霊夢はどこでも絶対に愛されてますね。
ありますが、自分は書ける時に叫ぶように書きます。東方が好きで、書きたいから。
だから、それに対して何か反応があった時は、とても嬉しいです。
…個人的な話ですみません。
愛されいむ、とても良かったです。