朝。
魔女は本を読んでいました。
いつものように、図書館の一角で、凄まじい速度でページを捲っていました。
どんどん積み上げられていく既読本。
それらを整理するために、小悪魔がパタパタと忙しなく走り回るのも、いつものことでした。
図書館は常に静かでした。
本を捲る音。慌ただしい足音。たまに、紅茶を啜る音。
広すぎる図書館に、それらは響くことなく、儚く消えていきました。
時間も、やはり静かに流れていきました。
昼になりました。
門の辺りから、聞き慣れた爆音が響いてきました。
図書館全体が少し揺れ、降ってきた埃が紅茶に少し入りました。
数分して、またか、と呆れた顔のメイドと、白黒の鼠が扉を開けました。
静かな世界が、少しだけ賑やかになりました。
白黒が勝手知ったる本棚を荒らしている間に、メイドが白黒の分の紅茶を用意しました。一瞬でした。
大量の本を抱えてきた白黒は、瞬く間に現れたティーセットに驚くこともなく、紅茶を啜りました。
魔女もつられたように紅茶を啜りました。いつの間にか、淹れ直されていました。
二人が本を読む体勢に入ったことを見届けると、メイドはやはり一瞬で姿を消しました。
図書館は再び静かになりました。
日が暮れました。
今日も知識欲を満たした白黒は、満足そうに帰っていきました。
突然現れたメイドが、夕食の用意が出来たと伝えに来て、また消えました。
魔女と小悪魔は、ほぼ24時間振りに図書館を出ました。
テーブルには、もう空席が二つしかありませんでした。
吸血鬼が、メイドが熟成させた赤ワインを嗜んでいました。
隣のメイドが吸血鬼の口元を拭きました。
吸血鬼の妹が、向かいの門番と楽しそうに話していました。
二人が席に着き、いつものように晩餐が始まりました。
他愛もない世間話をしながら、美味しい料理は減っていきました。
全ての皿が綺麗になっても、笑い声が絶えることはありませんでした。
月が高く昇りました。
今日も図書館にやってきた吸血鬼の妹は、何か面白い本はないかと魔女に訊きました。
いつものように絵本を渡すと、吸血鬼の妹は喜んで部屋に戻りました。
「死神の名付け親」という本でした。
珍しく吸血鬼もやってきました。
神社の宴会に誘われたんだが、パチェもどうだ、と言いました。
そうね、たまにはいいかもね、と魔女が返すと、吸血鬼は手を叩いて喜びました。
その時、小悪魔が慌てて飛んできました。
パチュリー様、また本が減ってますぅ……、と情けない声を上げました。
またあの鼠は……、と魔女は頭を抱えました。
そこで、目を覚ましました。
朝。
夢から目覚めた魔女は、いつものように本を読むことにしました。
いつものように、図書館の一角で、凄まじい速度でページを捲ります。
どんどん積み上げられていく既読本。
それらを整理するために、今日も悪魔がパタパタと忙しなく走り回ります。
図書館は常に静かです。
本を捲る音。慌ただしい足音。たまに、紅茶を啜る音。
広すぎる図書館に、それらは響くことなく、儚く消えていきます。
時間さえも静かに流れていきました。
いつの間にか、昼になっていました。
爆音も、紅茶に埃が入ることもありません。
唯々静かに、本が積まれていきます。
気がつくと、紅茶のポットが空になっていました。
魔女が悪魔に命じて、新しく淹れさせます。
紅茶が一瞬で用意されるはずもなく、魔女は暫く口寂しい思いをしなければなりませんでした。
やはり何事もなく、静かな時間が過ぎます。
鼠一匹居ない図書館に、ポットの甲高い音が響きました。
突然、ドアが開きました。
見慣れない妖精メイドが入ってきて、夕食の時間だと二人に伝えます。
もうそんな時期か、と魔女は重い腰を上げました。
二人が図書館を出るのは、ちょうど一年振りになります。
テーブルには、もう空席が三つしかありませんでした。
吸血鬼が、高級な赤ワインを嗜んでいます。
隣は空席でした。
吸血鬼の妹が、向かいの門番と優雅に話しています。
二人が席に着き、年に一度の晩餐が始まりました。
懐かしい人の話をしながら、料理は減っていきます。
空席以外の皿が綺麗になり、今日はお開きということになりました。
月が高く昇りました。
久しぶりに図書館にやってきた吸血鬼の妹に、何か面白い本が書けたのかと魔女が訊きます。
吸血鬼の妹は完成したばかりの長編小説を渡し、疲れた顔を綻ばせながら部屋に戻りました。
吸血鬼に名付けられた人間の話でした。
一年ぶりに図書館に吸血鬼がやってきました。
『まだ』なのね、と魔女が呟きます。
ああ、いつもこの日は、ジッとしていると思い出してしまう、パチェはどうだ、と返されました。
そうね、毎年、夢が騒がしくなるくらいかしら、と返すと、吸血鬼は悲しげに笑いました。
その時、ちょうど本棚の整理を終えた悪魔が、魔女に報告をしに来ました。
パチュリー様、今日も異常ありません。
ご苦労、と魔女は冷め切った紅茶を啜りました。
時間なんて、不平等だ。
魔女は本を読んでいました。
いつものように、図書館の一角で、凄まじい速度でページを捲っていました。
どんどん積み上げられていく既読本。
それらを整理するために、小悪魔がパタパタと忙しなく走り回るのも、いつものことでした。
図書館は常に静かでした。
本を捲る音。慌ただしい足音。たまに、紅茶を啜る音。
広すぎる図書館に、それらは響くことなく、儚く消えていきました。
時間も、やはり静かに流れていきました。
昼になりました。
門の辺りから、聞き慣れた爆音が響いてきました。
図書館全体が少し揺れ、降ってきた埃が紅茶に少し入りました。
数分して、またか、と呆れた顔のメイドと、白黒の鼠が扉を開けました。
静かな世界が、少しだけ賑やかになりました。
白黒が勝手知ったる本棚を荒らしている間に、メイドが白黒の分の紅茶を用意しました。一瞬でした。
大量の本を抱えてきた白黒は、瞬く間に現れたティーセットに驚くこともなく、紅茶を啜りました。
魔女もつられたように紅茶を啜りました。いつの間にか、淹れ直されていました。
二人が本を読む体勢に入ったことを見届けると、メイドはやはり一瞬で姿を消しました。
図書館は再び静かになりました。
日が暮れました。
今日も知識欲を満たした白黒は、満足そうに帰っていきました。
突然現れたメイドが、夕食の用意が出来たと伝えに来て、また消えました。
魔女と小悪魔は、ほぼ24時間振りに図書館を出ました。
テーブルには、もう空席が二つしかありませんでした。
吸血鬼が、メイドが熟成させた赤ワインを嗜んでいました。
隣のメイドが吸血鬼の口元を拭きました。
吸血鬼の妹が、向かいの門番と楽しそうに話していました。
二人が席に着き、いつものように晩餐が始まりました。
他愛もない世間話をしながら、美味しい料理は減っていきました。
全ての皿が綺麗になっても、笑い声が絶えることはありませんでした。
月が高く昇りました。
今日も図書館にやってきた吸血鬼の妹は、何か面白い本はないかと魔女に訊きました。
いつものように絵本を渡すと、吸血鬼の妹は喜んで部屋に戻りました。
「死神の名付け親」という本でした。
珍しく吸血鬼もやってきました。
神社の宴会に誘われたんだが、パチェもどうだ、と言いました。
そうね、たまにはいいかもね、と魔女が返すと、吸血鬼は手を叩いて喜びました。
その時、小悪魔が慌てて飛んできました。
パチュリー様、また本が減ってますぅ……、と情けない声を上げました。
またあの鼠は……、と魔女は頭を抱えました。
そこで、目を覚ましました。
朝。
夢から目覚めた魔女は、いつものように本を読むことにしました。
いつものように、図書館の一角で、凄まじい速度でページを捲ります。
どんどん積み上げられていく既読本。
それらを整理するために、今日も悪魔がパタパタと忙しなく走り回ります。
図書館は常に静かです。
本を捲る音。慌ただしい足音。たまに、紅茶を啜る音。
広すぎる図書館に、それらは響くことなく、儚く消えていきます。
時間さえも静かに流れていきました。
いつの間にか、昼になっていました。
爆音も、紅茶に埃が入ることもありません。
唯々静かに、本が積まれていきます。
気がつくと、紅茶のポットが空になっていました。
魔女が悪魔に命じて、新しく淹れさせます。
紅茶が一瞬で用意されるはずもなく、魔女は暫く口寂しい思いをしなければなりませんでした。
やはり何事もなく、静かな時間が過ぎます。
鼠一匹居ない図書館に、ポットの甲高い音が響きました。
突然、ドアが開きました。
見慣れない妖精メイドが入ってきて、夕食の時間だと二人に伝えます。
もうそんな時期か、と魔女は重い腰を上げました。
二人が図書館を出るのは、ちょうど一年振りになります。
テーブルには、もう空席が三つしかありませんでした。
吸血鬼が、高級な赤ワインを嗜んでいます。
隣は空席でした。
吸血鬼の妹が、向かいの門番と優雅に話しています。
二人が席に着き、年に一度の晩餐が始まりました。
懐かしい人の話をしながら、料理は減っていきます。
空席以外の皿が綺麗になり、今日はお開きということになりました。
月が高く昇りました。
久しぶりに図書館にやってきた吸血鬼の妹に、何か面白い本が書けたのかと魔女が訊きます。
吸血鬼の妹は完成したばかりの長編小説を渡し、疲れた顔を綻ばせながら部屋に戻りました。
吸血鬼に名付けられた人間の話でした。
一年ぶりに図書館に吸血鬼がやってきました。
『まだ』なのね、と魔女が呟きます。
ああ、いつもこの日は、ジッとしていると思い出してしまう、パチェはどうだ、と返されました。
そうね、毎年、夢が騒がしくなるくらいかしら、と返すと、吸血鬼は悲しげに笑いました。
その時、ちょうど本棚の整理を終えた悪魔が、魔女に報告をしに来ました。
パチュリー様、今日も異常ありません。
ご苦労、と魔女は冷め切った紅茶を啜りました。
時間なんて、不平等だ。
すごくしんみりしました。寂しいよなぁ…
それが同じ時間と思えるだけ充実した日々だったんだな……
でもこの書き方は気に入りました。
なるほど、「小悪魔」が「悪魔」になっていたのはそういうことでしたか