Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

2010/03/10 05:43:19
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 春。爛漫。

 魔法の森も、この季節になるとにわかに朗らかな空気が漂いはじめる。相変わらず鬱蒼とはしているものの、こんなに不細工な森でも何だか美しいとさえ感じてしまうのだ。キノコの胞子は飛び交い、陽の光も遮ってしまう大きな古木の傘があるにもかかわらずだ。春とは……不思議なものだ。

 つまりは、春は偉大である、ということだろう。何もかもを浮き立たせて、人々は寒く厳しい冬の終わりを喜ぶ。人間の里では、人々は悩みなんて何もかも忘れて、今頃花見をしようと家族や友達で桜の木の下に集まって、酒盛りでもしているんだろう。コタツで丸くなっていた猫も、今や陽の下で寝そべっているに違いない。そんな中で、私も陽気に空を飛んでいるはずだったのだが……。今は絶望の淵にいるのである。

 唐突なことを言うようだが、私は人間をやめようかと悩んでいる。以前はずっと人間でいる、そのことに私のアイデンティティがあるのだと信じていたのだが、こんな有様ではその信念も揺らいでしまう。恐ろしい病というのは、実に、全くもって忍び足でやってくる卑怯者だ。それを身をもって私は知ってしまった。
 こんなにも身体が弱っているせいだろうか、以前、同じ森に住んでいる魔法使い仲間、アリスが言っていたことを思い出す。
「人間っていうのは本当に弱い生き物だと思うわ。気がつけば、その人のお墓が建っているもの」
 私はその時、反論した。
 人間にしかわからない、時間の流れがある。
 人間にしかわからない、情緒がある。
 人間にしかわからない、生き方があるんだ! 
 人間をなめるなと、声を大きくして演説したのだった。だが、それも今となっては、アリス、お前が正しいのではないかと私の心は傾きはじめている。私は強がりなだけの人間だった。いっそ妖怪に、魔法使いなってしまえば、この苦しみから抜け出せるのではないかと、今、私は思ってしまったのだ。人間をやめる……病から逃れるために……、全ての発言を撤回して、なんとも無様な話、情けない話だ。

 私はベッドに座り込んで、そんなことばかりを考えていたのだった。
 突然、扉を叩く音が聞こえた。私はひどくびっくりして、椅子から転げ落ちそうになった。しかしすぐに声が聞こえて、それがアリスだとわかると、私は心からほっとする。
 死に神ではなかった、とすると花見のお誘いかもしれない。当然のことながら、去年の今頃は、私も大酒を飲んで、桜吹雪に声をあげていたのである……。
「え、魔理沙、どうしたの。なんで泣いているの?」
部屋に入ってきたアリスが慌てて近寄ってきた。私は泣いていた。涙は、たとえ私が止めようと努めても、流れてゆくばかりだった。もう、皆と花見をすることもかなわない。
「魔理沙、ねえ、大丈夫。どうしたのよ」
アリスは私のやつれ姿に明らかに狼狽していた。普段はこんな声じゃないし、もっとつっけんどんな口調なのだ。
「と、ともかく部屋もこんなにぐしゃぐしゃ……空気も悪いわね。窓開けないと」
アリスはそう言って、私の肩に置いていた手を離した。アリスの足音が遠のく。私は目を見開いて、そちらを向いた。アリスが丁度窓の格子に手をかけようとしている。
「やめてくれ! 花粉症なんだ!」
「でも、魔法使いになったからって、花粉症は治らないわよ」
「っ!?」
コメント



1.脇役削除
魔理沙もパチュリーの気持ちがわかっただろうなぁw
鍼と御灸で体質改善できるらしいから花粉症が楽になる事もあるらしいよ?
2.ぺ・四潤削除
「今度図書館で暴れたら来年の春先にあなたの家の窓を全部叩き割るわよ」
土下座して謝る魔理沙の姿があった。
えーりんのところに行けば何とかなるかも?
3.名前が無い程度の能力削除
アリスに付着してきた花粉は?
4.名前が無い程度の能力削除
つ[甜茶]
5.こじろー削除
アリスが来て泣いたのはそのせいか!
なぜか魔界神さまがくちゅんとしてる姿が目に浮かんだ
我も花粉症なのかなー
6.奇声を発する程度の能力削除
な、なんだってー!?
マジか…じゃあ如何すればいいんですか!(完全な八つ当たり
>1氏&2氏
本当ですか!やってみます!
7.名前が無い程度の能力削除
さあ、アガリクスの栽培を始めるんだ
8.名前が無い程度の能力削除
そういったアリスの顔にはゴーグルとマスクが……
仮に花粉症がない種族があるとするならばこの時期闇討ちに気をつけなければならないだろう。
9.ずわいがに削除
魔理沙の決心揺るがすとかww花粉症さんマジぱねぇッスwww