『御人好しな悪霊へ』
そんな名前が書かれた手紙が届いた
前に会ったのは少し前だったので少しだけ顔がにやけた
お気に入りのボロボロの神社の境内に座り込むと手紙を読むことにした
「おお怖い怖い……暫く帰れないねこれは」
その手紙を見て笑みを浮かべながら
悪霊は再び歩き始めた
頭を掻きながら次はどんなお土産を買って帰ろうかと考えながら
・・・
元気にしてるかしら?まあ、貴方なら死んでも
簡単に姿を現せそうな気がするけど
そんな事はどうでもいいわね
それよりも、貴方から押し付けられたあの鳥が孵りました
全く、私に面倒な物を押し付けて……
餌の準備に環境の整備……どれだけ面倒だったか
苦労を聞かせるから帰って来たら覚悟してなさいよ?
・・・
再び届いた手紙を見て、悪霊が苦笑を受かべると
頼んでいたかけそばをズズッと啜り
「ぬあっ!?終電!」
次の電車が来たので大急ぎでかけそばの汁を飲み干して
慌てながら電車の方に向かって走り出した
・・・
貴方から押し付けられたあの子のおかげで
今私は幻想郷中を動き回る羽目になってるわ
環境整備の為に河童一人さらおうとしたら
妖怪の山と戦争になりかけちゃったし
あの子に食べさせる物を手に入れる為に隙間妖怪と協定結ぶ事になったり
どんな食事を食べさればいいか、紅い屋敷にある図書館に向かったり
全く……おかげで暇な時間が無くなってしまったじゃない
・・・
「なんだい……随分と楽しそうにしてるじゃないか」
人が来ない山の秘湯の中でまた届いた手紙をみて呟いた
その隣には博麗神社で貰った御酒を徳利に入れた物をお盆に乗せながら
手紙を肴にまた美味しい御酒を口に含んだ
・・・
あの子も随分大きくなったわ
涼しい所で育つらしいので、河童に作らせた小屋の中で過させていたのだけど
もうそろそろ小屋だと狭くなってきたみたい
そう思っていたら、どう言う心境かあの隙間妖怪が手を貸してくれたわ
なんでも、彼女の式の式があの子を気に入ったみたい
まあ、他にも数人遊びに来る子がいるからかなりの人気者みたいよ?
少し御馬鹿な氷の妖精がお気に入りみたい
この前も、氷の上で腹ばいになって氷の妖精と一緒に滑っていたわ
あら?餌の時間みたいね……ではまた
・・・
「ん?また手紙かい?……何時もよりもペースが速いけど」
そして、何時もよりも早い間隔で手紙が届いた
何時もよりも早いペースに少し違和感を覚えながら
近くにあった公園のベンチに座り、次の手紙を読むと
真剣な眼差しで座っていたベンチから起き上がり移動を開始し始めた
・・・
あの子が倒れたわ……
大急ぎで永遠亭に連れて行こうとしたら
動物なら永遠亭よりも良い場所が有るって
何時も遊びに来る4人組みに教えられたから
あの子を4人に任せて地下に向かったわ
そんな急いでいる時に、私の姿を見た地下の鬼達が道を阻んできたのよ
『地下を侵略しにきたのか!?』って
頭にきてるから、地下ごと纏めて吹き飛ばそうかとした時に
紫髪の女の子が姿を現したの
……彼女が探していた人物さとりだったわ
大急ぎで彼女を抱きかかえて、あの子の元に走ったわ
後ろから猫と鴉っぽいのがなにか言っていたけどそんなの無視して
・・・
手紙を読みつつ、悪霊は大急ぎで幻想郷に向かっていた
もう暫くは外をぶらぶらしようとしていたが
その計画はいったん打ち切る事を決めた
「……急いで戻らないとね」
戻る途中も手にした手紙を読み続ける
・・・
さとりのおかげで、あの子が何故こうなったのかを知った
一つは病気……あの子の体の中にカビが生えていたの
ペンギン特有の病気だから、こうなる事も有ると教えてもらった
……でも、もっと残酷な事を教えられた
『残念ですが、この子の体は生まれながらにしての疾患があるようです』
その言葉に、私は一瞬無表情になって妖気を開放した
周りに居た四人組がその妖気を感じ取って縮こまったけど
目の前のさとりは一切ひるまずに私に告げたわ
『……持って数日です』……って
・・・
魅魔が幻想郷にたどり着くと
人が居るはずの神社に誰も居ない
「急がないと!」
魅魔は幽香がいるであろう畑に向かった
向日葵畑の中に風見幽香の姿はあった
少し前までは沢山の妖怪達が彼女の元に集っていた……
正確に言うのならば、彼女の手の中で静かに眠りを迎えた者の元に
永遠の眠りについてしまったペンギンの頭を静かに撫でる
そして、振り返らずに後ろからきた人物に声をかけた
「……遅かったわね」
「これでも急いだんだけどね」
「薄情ね……貴方が一番最後よ?」
風見幽香の隣に大急ぎでやってきた魅魔が座り込む
暫くの間、二人とも顔を会わせず無言になる
そのまま、どれだけか時間が過ぎてから魅魔が口を開く
「……本来なら、そいつはこの世に縁がある者じゃなかった」
「…………」
魅魔の言葉に、幽香は無言で答える
「本当は親が育てるのを放棄したんだよ……生き残る為に」
ペンギンにとってそれはおかしな事ではない
過酷な地での生活は楽ではないのだ、生き残る為に
「……」
本来なら、そのまま消えていく命だったのだ
だが、何の縁か悪霊に拾われて、大妖怪の手に渡った
そして、短いながらも生涯を終える事が出来たのだ
「だから、私は胸を張ってお前さんに言ってやる事が出来る」
魅魔が幽香の方を向いて伝えた
「そいつは『風見幽香』に生かされて幸せだったと!」
『スパァン!』
その言葉を合図に魅魔が幽香の頬を張り倒した
「女々しく泣いている向日葵妖怪なんて怖くもなんともないね!」
張り倒された幽香が暫くの間、驚いた顔をしていたが
『スパァーン!』
「ふん、遅刻してきた上に出番も無い悪霊に何が出来るって言うのかしら?」
うれしそうに頬を押さえながら立ち上がり魅魔を逆に張り倒す
「それで良い!さあ、弔砲なんて物じゃないが幻想郷らしく送ってやろうじゃないか」
「上等!この子の体に悪霊が付かないように盛大にぶった押してあげるわ!」
魅魔と幽香がその場から立ち上がる
それから暫くして、轟音が鳴り響く
その音は幻想郷中に響く事になった
・・・
それから数ヶ月して、再び手紙が届いた
手紙の内容はこうある
『約束どおり、あの子の亡骸は南極の地に戻してきたよ
……他のペンギン達があの子の亡骸をそっと滑らせて
全てを受け入れてくれる海の中に返してくれたさ……
あ~それにしても寒い!
すぐに幻想郷に帰るから、その時にまた話そう!
『京の何とか』って言う良い御酒が有るんだ、
酒の肴はお前さんの育てたあの子の話で決まり!それじゃあまた』
その手紙を受け取った人物は嬉しそうに微笑むと
手に紙とペンを取り短い手紙を書いた
『遅刻してきたんだから当たり前よ馬鹿……
親愛なる友、魅魔へ』
>神綺様と霖之助の作品を書きたくなってきましたよ?
よっしゃー!!!これから脇役旋風を巻き起こすんですね!
ペンちゃん、君の生は儚い幻想のようだったかもしれないけど、確かに幸せな時を生きていた…あれ目から汗が出て画面がよく見えないなぁ
旧作は良いメンバーがそろってますよね
主に一緒に飲み交わしたい人が
さて京の風を友人にたのんで1ダース…あれ足りない気がしてきたぞ?
ペンちゃんのために幻想郷を駆け回るゆうかりんが可愛いなぁもう。
これ東方でやる必要あるんですか?
うぐゅる、ぺん……ペんギんんっふっ、ぺんぎぃひ……
ゆうかりんにとって大切な存在になってたんだね…
それにしても立ち直り方が何とも男らしいw