その男、しゃっくりが止まらずにいる男であった。
ここ一週間はしゃっくりが止まらず、止むなく名医がいる永遠亭へ向かうことに男は決めた。
決めたのだが、男は実は永遠亭には行きたくなかったのである。
と言うのも、その男には金がない。しかも、家には妻と子の二人がいて、毎日の食い扶持を稼ぐだけでも大変なのに、たかがしゃっくりで医者に向かうのは気が引けるのである。
しかし妻は
「しゃっくりが悪化すると呼吸が止まってしまうと聞きます。軽い内に早めに治してしまった方が得策ですよ。なに、お金は私が何とかしますよ」
と、微笑んだ送り出してくれたのだ。
妻の気遣いに感動し、早めに治さなければいかん、と男は思い、永遠亭に向かうことを決めたのだが、やはり「たかがしゃっくりで……」という思いは捨てきれない。
しかし、どうにか金がかからない方法で治そうと試みたものの、治る気配全くなかった。
だから、こうして永遠亭への道を歩んでいるのだが……。
時折、しゃっくりを起こしながら、男はやはりどうにか治らないものかと考えていた。
故に、茂みから覗く、分かりやすい目印を見逃していたのだ。
「ばぁーー!」
「うおわぁ!?」
茂みからいきなり現れたのは茄子色の傘を持った両の瞳の色が違う女の子であった。
「わーい! 驚いた! 驚いた~!」
「な、何だね君は! 急に人を驚かしたりして失礼……な……?」
男は違和感を感じて短い呼吸を繰り返した。一週間苦しめられていた元凶は音もなく消えている。
「や……やったー!」
「ひぅっ!?」
男は飛び上がり、女の子の手を握る。
「ありがとう! 君が驚かしてくれたおかげでしゃっくりが治ったよ! ありがとう! ほんっとうにありがとう!」
「!? !? !?」
女の子は訳が分からず目をパチクリとしていた。男は一週間振りの大声を上げて、息切れ覚悟で人里へと走り出した。
女の子は突然男が大声を上げたのに体をビクッと震わせ、気が付いたらそこに一人ぼっちとなっていた。
「……何か……違う」
女の子は男が走っていた方向を呆然と眺めながら、もう一回呟いた。
「何か……違う」
ここ一週間はしゃっくりが止まらず、止むなく名医がいる永遠亭へ向かうことに男は決めた。
決めたのだが、男は実は永遠亭には行きたくなかったのである。
と言うのも、その男には金がない。しかも、家には妻と子の二人がいて、毎日の食い扶持を稼ぐだけでも大変なのに、たかがしゃっくりで医者に向かうのは気が引けるのである。
しかし妻は
「しゃっくりが悪化すると呼吸が止まってしまうと聞きます。軽い内に早めに治してしまった方が得策ですよ。なに、お金は私が何とかしますよ」
と、微笑んだ送り出してくれたのだ。
妻の気遣いに感動し、早めに治さなければいかん、と男は思い、永遠亭に向かうことを決めたのだが、やはり「たかがしゃっくりで……」という思いは捨てきれない。
しかし、どうにか金がかからない方法で治そうと試みたものの、治る気配全くなかった。
だから、こうして永遠亭への道を歩んでいるのだが……。
時折、しゃっくりを起こしながら、男はやはりどうにか治らないものかと考えていた。
故に、茂みから覗く、分かりやすい目印を見逃していたのだ。
「ばぁーー!」
「うおわぁ!?」
茂みからいきなり現れたのは茄子色の傘を持った両の瞳の色が違う女の子であった。
「わーい! 驚いた! 驚いた~!」
「な、何だね君は! 急に人を驚かしたりして失礼……な……?」
男は違和感を感じて短い呼吸を繰り返した。一週間苦しめられていた元凶は音もなく消えている。
「や……やったー!」
「ひぅっ!?」
男は飛び上がり、女の子の手を握る。
「ありがとう! 君が驚かしてくれたおかげでしゃっくりが治ったよ! ありがとう! ほんっとうにありがとう!」
「!? !? !?」
女の子は訳が分からず目をパチクリとしていた。男は一週間振りの大声を上げて、息切れ覚悟で人里へと走り出した。
女の子は突然男が大声を上げたのに体をビクッと震わせ、気が付いたらそこに一人ぼっちとなっていた。
「……何か……違う」
女の子は男が走っていた方向を呆然と眺めながら、もう一回呟いた。
「何か……違う」
何かは分からないが…
いや、違うのか……?
連投ごちそうさまです。
でも復讐という意味で小傘は負けww