「おーいこ――」
「いらっしゃいませぇ! お客様ぁ!」
「!?」
店に入るなりいきなり大声を出した霖之助に魔理沙は驚き言葉が出なかった。
「さぁさぁ、今日は寒いですから、どうぞこちらの席まで!」
満面のこーりんスマイルに魔理沙は不意にときめいてしまい、その誘導に従ってしまう。
「な、何だよこーりん。今日はご機嫌じゃねぇかよ……」
「そりゃ機嫌もよくなりますって。だって……こんな綺麗な娘が来てくれたんだからさ」
「なっ……! き、きき綺麗!?」
魔理沙は顔を真っ赤にしてたじろぐ。霖之助は笑みをそのままに魔理沙の後ろに回り込む。
「魔理沙。肩は凝ってないか? この頃研究に没頭しているらしいじゃないか」
「な、か、肩に触るな!」
「どうしてだい?」
「ど、どうしてって……」
魔理沙は自分が何で嫌がっているのか分からなかった。いつもの自分なら「おう。じゃあ肩でも揉んでくれ」とでも言って、霖之助を馬車馬のように働かせるだろう。しかし、この日に限ってはドキドキが理性に勝り、冷静な思考が出来なくなっていた。
魔理沙は自分を落ち着かせるために息を深く吸って、それで気が付いた。
「あれ……? この匂い……」
「気が付いてくれたかい? 外の世界からアロマというものが流れてきたから、試しに使ってみたんだ。どうだい、気分は?」
「うん……結構、いい。私、この匂い好き……」
魔理沙は半ばうっとりとして、ハッ! と気が付き首を降る。
(いかんいかん! さらに深みにハマってどうするんだ! しっかりしろ! 私!)
魔理沙は気を取り直し、霖之助に向かう。
「こーりん! 一体何を企んでいるんだ?」
「企んでいる?」
「とぼけるな! 普段はこんなにも優しくない! あれか! 私をおちょくってるのか! 私が乙女であることを笑ってるのか!」
「ま、魔理沙。少し落ち着こうか。ほら、お茶を飲むといいよ」
「お茶なんかで私が落ち着くわけがないだろ!」
「魔理沙……」
「言え! 私をどうするつもりなんだ!? あぁ!?」
「……」
魔理沙は心の中ではニヤリと笑った。
霖之助は明らかに自分の機嫌をとろうとしている。恐らくは機嫌がよくなった後、今までのツケを請求したり、何か買わせるに違いない。
しかし、そうは問屋は卸さねえ、と魔理沙は笑った。
機嫌が悪くなってしまえば、霖之助は何も出来まい。これで、霖之助はすごすごと退散せざるを得ない。
魔理沙はそう思っていた。しかし、実際に取った霖之助の行動は
「……はぁ~」
深くため息を吐くだけだった。
魔理沙は違和感を覚える。魔理沙に金を払わせたいだけなのなら、こんな憂いを帯びた表情を浮かべない。こんなに悲しそうな目にはならない。
「……気に入ってもらえなかったようだね」
「お……おう。第一、そんなあからさまに不自然な行動を取ったら、誰もが怪しむだろうが」
「そうか……それはそうだな。やはり、慣れないことはするもんじゃないね」
そう霖之助は苦笑した。さっきに比べればはるかに自然な笑顔なのに、こっちのほうが魔理沙の心臓を鷲掴みにした。
溢れる鼓動が漏れていないかどうか気にしながら、魔理沙はぶっきらぼうに訊く。
「そ、それで何でまたこんな悪趣味は真似をしたんだよ……」
「あぁ……それは…………いや」
霖之助は首を振って、何も話さない。その行動に魔理沙は苛立ちを覚えた。
「何だよ。そこまで話したんなら、話せよ!」
魔理沙がそう言った後、霖之助は不意に立ち上がった。そうしてゆっくりと魔理沙のほうまで歩む。
魔理沙は霖之助が何をしてくるのか分からなかった。無知は恐怖を生み、霖之助がいつもの霖之助に見えなかった。逃げ出すことも出来ず、ただその場に縫われたように動けずにいる。
そうして霖之助は魔理沙のすぐ傍まで来た。霖之助が懐に手を入れた時、魔理沙は目を瞑った。
霖之助に何かされるかもしれない。それは怖い。出来ればこの場から逃げ出したい。
けど……一方で霖之助になら何をされてもいいという自分もいた。それは不思議だ。でも、違和感はない。何だろう? この矛盾は?
そこまで考えて、魔理沙は不自然に感じた。何時まで経っても、霖之助からのアクションがないのである。
「何をしてるんだい? 魔理沙」
霖之助の声が急に聞こえて、魔理沙は反射的に目を開けた。そして目の前にあったものは――星が散りばめられた小さな袋だった。
「ほんとは、ドサクサに紛れて渡そうかと思ったんだけどね。僕はこういうの苦手だからさ……」
霖之助は苦笑して、ポカンとしている魔理沙に手渡し、そして一言呟いた。
「誕生日おめでとう。魔理沙」
「あっ……」
魔理沙はこの時、初めて今日が自分の誕生日であることに気が付いた。
無理もない話である。実家からは出て行き、誰にも自分の誕生日は知らせていない、いや、知らせるのを忘れてしまったのだから。
本来ならいつもと同じように過ごすはずだった特別な日。けれど、その特別な日を覚えていてくれた人がいた。
それが、目の前で微笑んでいる半人半妖。森近 霖之助。
「うわっ、魔理沙!?」
魔理沙の目からは涙が止めどなく溢れ、鼻からは鼻水が漏れる。
そんな醜態を見せても、魔理沙は恥ずかしくは思わなかった。なぜなら、目の前の半人半妖はきっと笑わないから。むしろ、優しく抱きしめてくれるから。
予想通りに、霖之助は驚いた顔から一転、優しく微笑み、自分より小さい体の魔理沙を懐へと包み込んだ。
その日。魔理沙は誕生日を泣くことに費やし、霖之助は魔理沙の気が済むまで自分の服をハンカチの代わりとしたのだった。
「いらっしゃいませぇ! お客様ぁ!」
「!?」
店に入るなりいきなり大声を出した霖之助に魔理沙は驚き言葉が出なかった。
「さぁさぁ、今日は寒いですから、どうぞこちらの席まで!」
満面のこーりんスマイルに魔理沙は不意にときめいてしまい、その誘導に従ってしまう。
「な、何だよこーりん。今日はご機嫌じゃねぇかよ……」
「そりゃ機嫌もよくなりますって。だって……こんな綺麗な娘が来てくれたんだからさ」
「なっ……! き、きき綺麗!?」
魔理沙は顔を真っ赤にしてたじろぐ。霖之助は笑みをそのままに魔理沙の後ろに回り込む。
「魔理沙。肩は凝ってないか? この頃研究に没頭しているらしいじゃないか」
「な、か、肩に触るな!」
「どうしてだい?」
「ど、どうしてって……」
魔理沙は自分が何で嫌がっているのか分からなかった。いつもの自分なら「おう。じゃあ肩でも揉んでくれ」とでも言って、霖之助を馬車馬のように働かせるだろう。しかし、この日に限ってはドキドキが理性に勝り、冷静な思考が出来なくなっていた。
魔理沙は自分を落ち着かせるために息を深く吸って、それで気が付いた。
「あれ……? この匂い……」
「気が付いてくれたかい? 外の世界からアロマというものが流れてきたから、試しに使ってみたんだ。どうだい、気分は?」
「うん……結構、いい。私、この匂い好き……」
魔理沙は半ばうっとりとして、ハッ! と気が付き首を降る。
(いかんいかん! さらに深みにハマってどうするんだ! しっかりしろ! 私!)
魔理沙は気を取り直し、霖之助に向かう。
「こーりん! 一体何を企んでいるんだ?」
「企んでいる?」
「とぼけるな! 普段はこんなにも優しくない! あれか! 私をおちょくってるのか! 私が乙女であることを笑ってるのか!」
「ま、魔理沙。少し落ち着こうか。ほら、お茶を飲むといいよ」
「お茶なんかで私が落ち着くわけがないだろ!」
「魔理沙……」
「言え! 私をどうするつもりなんだ!? あぁ!?」
「……」
魔理沙は心の中ではニヤリと笑った。
霖之助は明らかに自分の機嫌をとろうとしている。恐らくは機嫌がよくなった後、今までのツケを請求したり、何か買わせるに違いない。
しかし、そうは問屋は卸さねえ、と魔理沙は笑った。
機嫌が悪くなってしまえば、霖之助は何も出来まい。これで、霖之助はすごすごと退散せざるを得ない。
魔理沙はそう思っていた。しかし、実際に取った霖之助の行動は
「……はぁ~」
深くため息を吐くだけだった。
魔理沙は違和感を覚える。魔理沙に金を払わせたいだけなのなら、こんな憂いを帯びた表情を浮かべない。こんなに悲しそうな目にはならない。
「……気に入ってもらえなかったようだね」
「お……おう。第一、そんなあからさまに不自然な行動を取ったら、誰もが怪しむだろうが」
「そうか……それはそうだな。やはり、慣れないことはするもんじゃないね」
そう霖之助は苦笑した。さっきに比べればはるかに自然な笑顔なのに、こっちのほうが魔理沙の心臓を鷲掴みにした。
溢れる鼓動が漏れていないかどうか気にしながら、魔理沙はぶっきらぼうに訊く。
「そ、それで何でまたこんな悪趣味は真似をしたんだよ……」
「あぁ……それは…………いや」
霖之助は首を振って、何も話さない。その行動に魔理沙は苛立ちを覚えた。
「何だよ。そこまで話したんなら、話せよ!」
魔理沙がそう言った後、霖之助は不意に立ち上がった。そうしてゆっくりと魔理沙のほうまで歩む。
魔理沙は霖之助が何をしてくるのか分からなかった。無知は恐怖を生み、霖之助がいつもの霖之助に見えなかった。逃げ出すことも出来ず、ただその場に縫われたように動けずにいる。
そうして霖之助は魔理沙のすぐ傍まで来た。霖之助が懐に手を入れた時、魔理沙は目を瞑った。
霖之助に何かされるかもしれない。それは怖い。出来ればこの場から逃げ出したい。
けど……一方で霖之助になら何をされてもいいという自分もいた。それは不思議だ。でも、違和感はない。何だろう? この矛盾は?
そこまで考えて、魔理沙は不自然に感じた。何時まで経っても、霖之助からのアクションがないのである。
「何をしてるんだい? 魔理沙」
霖之助の声が急に聞こえて、魔理沙は反射的に目を開けた。そして目の前にあったものは――星が散りばめられた小さな袋だった。
「ほんとは、ドサクサに紛れて渡そうかと思ったんだけどね。僕はこういうの苦手だからさ……」
霖之助は苦笑して、ポカンとしている魔理沙に手渡し、そして一言呟いた。
「誕生日おめでとう。魔理沙」
「あっ……」
魔理沙はこの時、初めて今日が自分の誕生日であることに気が付いた。
無理もない話である。実家からは出て行き、誰にも自分の誕生日は知らせていない、いや、知らせるのを忘れてしまったのだから。
本来ならいつもと同じように過ごすはずだった特別な日。けれど、その特別な日を覚えていてくれた人がいた。
それが、目の前で微笑んでいる半人半妖。森近 霖之助。
「うわっ、魔理沙!?」
魔理沙の目からは涙が止めどなく溢れ、鼻からは鼻水が漏れる。
そんな醜態を見せても、魔理沙は恥ずかしくは思わなかった。なぜなら、目の前の半人半妖はきっと笑わないから。むしろ、優しく抱きしめてくれるから。
予想通りに、霖之助は驚いた顔から一転、優しく微笑み、自分より小さい体の魔理沙を懐へと包み込んだ。
その日。魔理沙は誕生日を泣くことに費やし、霖之助は魔理沙の気が済むまで自分の服をハンカチの代わりとしたのだった。
後書きの数字は何かと思ったらそういう事ねwwwwww
大体二週間後ってことでいいのかな?www
不器用だっていいじゃない。こーりんだもの。
で?本当のところどうなんですか?