― キュッキュッキュッの話 ―
夏がおわり秋口を迎えた頃、
永遠亭にはのどかな雰囲気が満ちていた。
周りには多くの竹が生えており、それを微笑みながら優しそうに眺める輝夜がいた。
心なしか風に揺れる竹は嬉しそうに見える。
その輝夜は近くにいた兎を手招きした。てってってっと兎が近づくと話をしてくれた。
「あなたは蓬莱の薬の力を見たことがあるかしら」
「いえ、見たことはありません」
それを聞いた輝夜はナイフどこからか取り出し自分の手の甲を何度か突き刺した。
ぐちゃっ ぐちゃっ その音は静かにしつこく響いた。
手の甲は血だらけになり、そしてナイフは刺しっぱなしである。ナイフの刺さっている根元に目を凝らす。そこの血の溜まりの下にはうっすらと白いものが確認できた。
「なっ、何をしているのですか!」
「いいから見てなさい」
そう言うと手をまじまじと兎に見せた。兎は顔をそむけたかったが姫の命令なので出来なかった。
手の甲がジワジワと再生されていく。えぐれていた皮膚はもとの場所へ収まり順調に再生していくように思われた。
しかしナイフの刺さっている部分で止まる。ナイフが邪魔なのだ。
すると手の甲の表面がモジモゾと動き出し、ナイフをわずかながらでも抜き始めた。
キュッキュッキュッと音を鳴らしながら
数分経ち、抜けた。カランという高い音を響かせた。
輝夜の手の甲は元通りになり、綺麗な張りをもっていた。
「あのっ、痛くはないんですか」
「凄い痛いわよ」
ただねと輝夜は付け加えた。
「槍みたいなものをね妹紅の心臓に刺して抜かないでいてあげるの。そんであいつの心臓がキュッキュッキュッと鳴らしながら槍を追い出そうとする。そして激痛をアイツにもたらすの。私はさっきそんなことを想像しながら竹を眺めていたのよ」
風は止んだ。竹はどこか硬くなった。
姫様っていつもそんな事考えているのかな…
って歌いながら開いたら……ぎゃぁぁあぁああぁあ……!
胃のあたりがこう……キューッと鷲掴みされたような何とも言えないダメージを受けたような。
何というタイトル詐欺(違