鼻が冷たい。
目が覚めて朝一番の素直な感想。
「さむっ」
おもわず声に出してしまう。
寒い。
布団から出たくない。
出たらきっと、雪かきをしなきゃならない。
昨日物凄く降ってたもの。
この寒い中大量の雪を片付ける。
あぁ、やだやだ。
布団から出たくない、出れない、だって寒いもの。
そうか、出なければいい、名案ね。
きゅぅぅぅ
おなかが鳴った。
おなかすいた。
朝だもの、しかたない。
朝ごはん・・・は布団から出ないと無理か。
うぅ、いやだ。
ずっとこうしていたいけど、そしたら死んじゃうわね。
でも、出たらきっと凍死しちゃうわね。
困ったわね、布団の中でじっくり考えないと。
むぎゅっと抱き枕を抱きなおして瞑想する。
「餓死と凍死って、どっちが楽かしら・・・?」
なんとなく呟いてみた。
そういえば抱き枕なんて持っていたかしら?
「凍死じゃないかしら?」
まさか抱き枕から返事が返ってくるとは思わなかった。
「なんでよ?」
「朝ごはん食べてないだけでしょ~?餓死するまでかなり時間かかるんじゃない~?」
「なるほどね」
「それに~凍死なら私も手伝えるし~。寒気操れるもの~」
「なるほどなるほど。ていっ」
「ひゃ~にゃにひょ~」
「凍死させられる前に正当防衛」
抱き枕のほっぺたをむに~とひっぱる。おぉ、のびるのびる。
「にゅ~。もう、まだやってないじゃない~やらないけど~」
「うっさい。まず、なんであんた勝手に布団に入ってるのよ?」
抱き枕の口から指を放してやった。
抜いた指にヨダレが付いてたのでそいつの服で拭ってやる。
「恋人の布団に入るのに許可なんているのかしら?」
「てい」
むにっとな。
「ひゃ~、ひゃからいひゃいっへ~」
「あんたからからかわれるのは何か癪に障る」
むにむに。
面白い顔。
「うぅ、ひどいわ~。霊夢が凍えてるといけないから暖めにきたのに~。」
「何よそれ?」
「なんていうの~?抱き枕役?」
「抱き枕は暖房器具じゃないわ」
「じゃあ~、お布団役?」
「あんたが布団・・・圧死するわね」
「ひどい~そこまで重くないわよ~。」
むぅ、と困った顔をするレティ、じゃなかった抱き枕。
「ていうかやたら寒いんだけど。あんたなんかしたでしょ?」
「てへっ☆ちょっとお部屋の温度を下げてみました」
「てい」
ぴしっ!
「ひゃん!でこぴんはやめて~」
「あんたが余計なことするからじゃないの」
「だって~夜中に布団に潜り込んだら霊夢がすぐ抱きついてきたのよ?」
そんなことしてたのか私。
「嬉しかったわ~。でもちょっと暖かくなったら離れちゃうんだもの・・・」
ずっと抱きついてるのも疲れるものね。
「だから~試しに寒くしてみたのよ。そしたら霊夢ったら・・・ぎゅって力いっぱいだきしめてくれ・・・ひゃ~」
むに~むに~、妖怪退治~。
今は抱き枕退治か。
「もう・・・そんなに照れなくてもいいのに・・・ひゃ~やめへ~」
うっさいうっさい照れてない。
「それより朝よ~?起きないの~?」
ああ、そうだった。
問題は何も解決してなかった。
「むぅ・・・出たくない」
「雪かきしないの~?神社つぶれるわよ~?」
大丈夫、うちの神社は強い子出来る子頑張る子。
だけどもう地震は勘弁ね。
「あんたやってよ。雪大好きでしょ?」
「いやよ~」
「なんでよ?」
「布団からでたくないもの~」
「あら?冬の妖怪も寒いのはダメなの?」
「冬のお布団に勝てるものなんていないわ」
「そうなの?」
「そうよ。神も人も妖怪も、お布団の前では無力なの・・・」
なるほどね。
布団は一人用だから、レティと密着した状態になる。
「じゃあお布団が異変を起こしたら誰も解決できないわね」
こいつ、意外とあったかいのね。
おぉぬくいぬくい。
「そうね、幻想郷はお布団の前にひれ伏すでしょう~」
だけど本当に起きたら困るわね。
楽しそうに言いやがって。
そんな感じでうだうだしてると、やっぱり雪かきをしなきゃいけない気分になってきた。
おなかも鳴りっぱなしだ、ご飯も食べたい。
「レティ?」
「なぁに霊夢?」
「雪かきしてきて?」
「何人もお布団には・・・」
「あんたがその1人目になりなさい。歴史に残るわよ」
「や~押さないで~」
「じゃあご飯作って~」
「私、抱き枕だから~」
「じゃあ食べないのね?抱き枕だものね」
「や~ん、ひどいわ~」
むく~っとほっぺたを膨らせてる。
子供みたい、こいつの困った顔はホントに可愛いな。
「も~・・・ご飯作ってあげるから~もうちょっとだけ、一緒に・・・ね?」
「む・・・」
耳元で囁かれる甘い声。
くすぐったくて気持ちいい。
「霊夢と一緒にいられるの、冬だけだから・・・今だけ・・・もうちょっと・・・ね?」
冬だけだから。
ずるい。
その言葉はずるい。
すごく寂しくなる。
・・・ずるい。
「む~」
「きゃ!霊夢~!?どうしたの?」
力いっぱい、だけど出来るだけ優しく抱きしめる。
「あんたのせいよ・・・」
そう、こんなに切ないのはこいつのせい・・・
だけどそれだけは言わない、言ってやらない。
「あんたのせいで・・・鼻が冷たいのよ」
レティの胸に顔を押し付ける。
あったかい、冬の妖怪のクセに変な奴。
「ちょっと~れいむ~」
すこし照れくさそうなレティの声。
「お~やわらけ~ぬくいぬくい」
私とは違って大きな胸・・・こいつは胸までずるいのか。
「ちょっと~セクハラよ~」
困ったようなレティの声。
もっと困るといいわ。
「抱き枕なんでしょ?大人しく抱かれてなさい」
「・・・うん」
「もうちょっとだけ・・・」
もうちょっと・・・冬の間だけ・・・
冬のお布団には誰も勝てない。
加えて、どうやら私は抱き枕にも敵わないらしい。
GJ!!!
幻想郷?
やばい!この冬妖怪凄い可愛い!!!
因みに冷気よりは寒気のはず。
ずるいよおおおぉぉぉぉぉ
レティさん本人はふわふわであったかだと思う。同意する!!
書き途中の星ナズとルナ大とかも期待!!