今日、チルノちゃんとリグルちゃんが喧嘩をしてしまいました。
原因は、どちらの恋人が最強に素敵かという、あらあらでうふふな口論から始まったのですが、お互いこれだけはどうしても譲れず、いつもは折れてくれるリグルちゃんもこの話題だけは負けられないとばかりに、チルノちゃんと激しく口論を繰り広げました。
「なによっ! 幽香なんて文よりおばちゃんじゃないのよ! 文よりおっぱい大きいだけじゃない!」
「ちょっ?! あ、あのねぇチルノ! 自分より年上に見えるだけですぐにおばちゃんなんて呼ぶのは、本当に失礼なんだよ! チルノはただでさえ遠慮がなさすぎるし、この前だって慧音さんや白蓮さんにそう言って、妹紅さんや命蓮寺の人たちに怒られたでしょう! …………あと、幽香の胸が大きいのは認める!」
それは激しい言い争いでした。
あまりの内容に背筋が冷えて、耳を塞いでしゃがんじゃうぐらいのものでした。
「なによなによ! 文はかっこいいし優しいもん! 幽香なんて鬼みたいな性格でさでぃすとで自称の幻想郷さいきょーじゃない!」
「そこがいいんじゃないか! 幽香はそんな困った性格じゃないと、幽香を好きな人が一杯出来ちゃうからそれでいいんだよ! 文さんなんて天狗なんて言ったって、ただのへたれでロリコンじゃないか!」
「文だってそれでいいの! だって大ちゃんがロリコンじゃなかったらあたいの恋人にはならなかったんじゃないかな? って言ってたもの! へたれだって、あたいがリードするからいいのよ! だってあたいは文のお婿さんなんだから!」
「私だって、幽香の王様だよ! いまだに雑魚とか虫けらとかショタとか、愛のない暴言がたくさんあるけど、それでいちいち傷つくけど、私は幽香を愛しているんだからね!」
「あたいだって文のこと愛してるもん!」
まるで子犬の吼えあいです。
赤面しつつもそっと、後でこの会話の内容は、チルノちゃんの親友として文さんに教えてあげようと思います。
きっと、文さんは真っ赤になって、その日の夜ぐらいはへたれを解消してくれると信じています。
もし次の日の朝。チルノちゃんの様子が普段と変わらなかったら、文さんをへたれさんと呼んでやるんです。
「文はちゅーが上手いもん! いつもぽーっとなっちゃうぐらいだもん!」
「幽香だって上手いよ! テクニシャンだよ!」
「文は、肩車してくれたり、抱っこしてくれたり、ぐるぐるでぽーんでごーでびゅーって、たくさんあたいと遊んでくれるもん!」
「幽香だって、触手で私を縛って投げたり転がしたりして楽しんだり、寝ている間にお腹に落書きしようとしたり花で埋葬しようとしたり傘で突いたり、私で遊んでくれるよ!」
……わぁ、日本語って難しい。一文字違いで哀愁が漂います。
チルノちゃんも、ちょっと勢いを削がれて「リグル、かわいそぉ」って心から同情の声を出しました。リグルちゃんは泣きそうな顔で「ほっといて……」といじけます。
「と、とにかく、幽香は素敵だよ、文よりもずっとね!」
「むっ?! 違うもん! 素敵なのは文よ! 幽香なんておばちゃんよりもずっとね!」
「幽香はお姉ちゃんだよ! 間違うなッ! 大体、おばちゃんおばちゃんって、文だって年齢的にはそう呼ばれても不思議じゃないんだよ!」
「文はいいの! わかわかしいもん! 幽香がよぼよぼだ!」
「よしっ、その喧嘩は大きく買うよ! 私の幽香のみずみずしいお肌に向かってなんて暴言だ!」
そこからは、ガチの弾幕勝負が始まりました。
でも、決着はつきそうにありません。
私は髪の毛の先を凍らしたり、蝶々を背中にへばりつかれたりしながら、急いで駆けます。
だって、この二人を止められるのは、あの人たちしかいないから!
「という訳で、チルノちゃんたちを止めてください!」
「出来るかー!!」
丁度二人ともいたので、きちんと微細なまでに説明をしたら、文さんに怒鳴られました。
文さんは、幽香さんが出した触手で首を絞められてガクガクと揺らされています。幽香さんは口の中で「……おばさん?」と怒っているようです。
幽香さんは笑顔のままこめかみに青筋を浮かべて、文さんを傘でぐさぐさ刺しています。
「あんたんとこの氷精、少し躾がなっていないんじゃないかしら? 失礼極まりないわね」
「そうですかー?! きっと貴方よりは礼儀正しいという自信が私にはありますがねー!」
こんな扱いだから当然ですが、文さんが乱暴に答えるとびったんびったん! と、文さんはすぐに五回も地面に叩きつけられます。
どうやら軽口が気に入らなかったみたいで、幽香さんはじたばたする文さんの頭を踏みにじり始めます。
あぁ……幽香さんはやっぱり苛めっ子です。
そして、こんなに近くで見つかったという事は、きっと二人はチルノちゃんたちに会いに来てくれたと解釈します。
二人ともロリコン同士、仲良くして欲しいと思いました。
「……まったく、貴方にリグルの泣き顔を撮らせてやろうだなんて、気まぐれを起こすのではなかったわねぇ」
「ええ、私もショタな蟲の泣き顔なんぞ興味ないです」
「ふんっ! ……まったく、リグルは女の子よ? ショタだなんて私以外が言ってもいいと思っているわけ?」
「うぐぐぐぐぐ……!?」
とどめとばかりに、文さんの頭を地面にめり込ませました。
幽香さんはやっぱり真性の苛めっ子です。
容赦がなさすぎて、私は怯えて距離をとりました。
「……ぐ、ぬぬ。と言いますかですねぇ、私としては、チルノさんとリグルさんが争っているのなら、心情的にも立場的にも、私は誰よりもチルノさんの味方でなくてはいけないのですよ」
「……へぇ?」
「つまり……」
シュパ。
そんな軽やかな音が届いて、気付いたら、文さんは一瞬で幽香さんから距離を取り、幽香さんの触手を幾重にも切り裂いて、宙を飛んでいました。
その背からは、普段は出さない天狗の黒い羽が大きく広がっています。
「貴方といえど、簡単に屈服してあげられない、という事よ、風見幽香!」
「……いいわ。素敵よ。薄汚れた天狗の分際で、ぞくぞくさせてくれるじゃない? 射命丸文!」
二人は睨みあい相対します。
文さんは見違えるほど凛々しく、幽香さんも好戦的に目を細めます。
そして、二人は一気に距離をつめます。
「さあ―――」
「ふふ―――」
みぎゃ?!
二人が力を解放させた途端、起こる突発的な暴風と鼓膜を打ち鳴らす弾幕音。
悲しいぐらい非力な私は当然飛ばされて、ごろごろと草むらを転がっていきました。
そして目を回してよろりと立ち上がると、さっきのチルノちゃんたちとは比べ物にならない、とっても圧縮されて目まぐるしい弾幕が広範囲に広がっていました。
「ぅ、ぅわ……」
私は悟りました。
あぁ、この二人には頼めない。っていうか、悪化した。と。
私は急いで、文さんたちをも止められる実力者を連れてこなくちゃと飛びました。
このままだと、大変な事になると私には分かったからです。
「大変だよ! 文さんと幽香さんが喧嘩しているの!!」
「えー?!」
「な、何で?!」
実力者たち。
チルノちゃんとリグルちゃんは驚いて喧嘩をやめて、慌てて私に近寄ってきました。
ええ、あの二人を止める相当の実力者って、この二人以外にいるわけがありません!
私は急いで、また微細に二人に状況を説明しました。
すると、二人は真っ赤になってもじもじしだします。
「…そ、そっかぁ、えへへ、文ったらもう、さいきょーなんだから」
「わ、わぁ、幽香ったら、そんな、恥ずかしいよ。……これから、ショタって言われるたびに喜んじゃいそう」
と、てれてれします。
もう! 今はそんな状況じゃないのに、二人は幸せそうにうふふって笑い、恋人の名前を五秒おきに発声して、甘いオーラを漂わせます。
でも、今はそれより二人を止めないと。どちらか、それか両方が大怪我をしてしまうかもしれないのです。
私は二人をせかして、現場へと駆けつけました。
そこはすでに、地獄の様な弾幕ごっこが開始されていました。
ついでに、大声の怒鳴りあいも聞こえます。
「っていうか、チルノさん可愛いじゃないですか! 私をロリロリと馬鹿にするなら、貴方なんてショタでしょショタ! どー見ても男の子ですよねー!」
「ふっざけんじゃないわよ! 私のリグルは可愛い女の子よ! 大体、ショタショタと、私だけが許された彼女への悪口を、あんたがほざいてるんじゃないわよ! このペド天狗!」
「ペ?! い、言うに事かいてこの花妖怪……っ、はっ! 私は知っているんですよ! 貴方がどちらかというとマゾヒズムの方だと言う事を! せいぜい、将来的にリグルさんに苛められるといいですねー!」
「マ?! ……殺す。ふふふ、本気で殺す。……そして天狗、私だって知っているのよ! 貴方が本当は、どちらかというと成熟した女性、熟女が好きだという事を!」
「ちょっ?! そ、そそそ、そんな大嘘をよく付きますねぇ! このマゾ幽香さん! 私はチルノさんが大好きです! 愛しています! っていうか、貴方に老女の何が分かる!」
「どんだけ範囲が広いのよこの駄目天狗! やっぱり人間に一番近いってそういう目的があったわけねぇ、っていうか結果的に認めておいて何を………誰がマゾ幽香だあッ!」
わぁ醜い争い。
さっきまでとっても綺麗で、恐怖すら感じる弾幕だったのに、今はとってもよどんで見えるよ。
あぁ、チルノちゃんとリグルちゃんが固まっている。
きっと、ショックを受けたのだろう。
「……そ。そっか、文は熟女が好きで、幽香が好みなのね……あ、あたい頑張って熟女になる!」
「……知らなかった、そうか、幽香は苛められるのがいいのか……っ、わ、私は頑張ってサディストになる!」
……あーあ。
変な目標が出来ちゃった。
でも、将来的にチルノちゃんは妖怪化が確実みたいで、ちゃんと成長できるから、大丈夫だろうけど。リグルちゃんは難しいんじゃないかなぁ……。優しい子だし。
とりあえず、言い争いの内容が、とても二人に聞かせられないアダルティなものになってきたので、私は二人にお願いして二人を止めるようにお願いしました。
さん、はい。
「文ー大好きー!」
「私もですっ!」
「幽香、君が好きだー!」
「当たり前でしょう!」
ひしっ!!
極限に突き詰めた弾幕をあっさり解除し、文さんと幽香さんはお互いの恋人を抱きしめました。
ちょろいです。
イチャイチャでらぶらぶなのはいいですが、他人に迷惑をかけるのは頂けないと。
唯一、迷惑をかけられて走り回った私は、少し拗ねて、文さんが落とした写真機で、そんな四人の様子を撮ってあげました。
私が覗く狭い世界に、どこまでも幸せそうに、未来に溢れる笑顔があります。
四人がまるで示し合わせたみたいに、同時に口付けて、その瞬間にパシャリと。
これ以上ないぐらい、最高の瞬間を焼き付けました。
今日も、チルノちゃんとリグルちゃんは喧嘩をしました。
内容は昨日と同じです。
そして、私の首には、文さんから借りた真新しい写真機。
『大妖精さんは、写真の才能がありますね、昨日のはとてもよく撮れていました』
『意外とやるじゃない』
二人の写真をしっかりと胸に抱いて、こほんと咳払い。
『それで、ですね。改めて大妖精さんにお願いがあります』
『ま、まあ、言うまでもないでしょうけど』
―――恋人の写真を撮ってきて欲しい。
なんて、とても大妖怪らしくない可愛いお願いだった。
私は思い出してくすりと笑ってしまい、私の前で争う二人にファインダーを合わせて、パシャリと撮る。
こんな風に日常を焼き付ける作業が、不思議なぐらい楽しくて。
そして、結局は、まだこの四人に巻き込まれている現状に、ふわりと笑ってしまう。
何だか恋がしたくなる、甘い彼女たちに振り回されるのは、もうちょっとだけいいかな? って、そう思った。
いつか、私が撮った写真で、アルバムが一杯になるぐらい。
私は彼女たちの傍にいたいなって、もう一枚、掴みあって涙目で言い争う二人を写した。
今日も、世界は瞬間的にとても美しいようでした。
私もこんな恋がしたいです…orz
しかしオドオドしながらSになるリグルと誘い受けMなゆうかりんを想像したらこの上なく萌えてきたのだが。
と思って開いたら、なんか違うww
いや、面白いんだけど、何かが違うwww
それもちゅっちゅな幻想郷中のバカップルのお蔭で百冊単位で!!
久しぶりに貴方の幽リグと文チルを読めて嬉しいのぜ!
あたしとしてはチルノの背はこのままでw
ちっちゃいお婿さんに頑張ってもらいたく!
この糖分でしばらくはキャプテンの罪状が加算されていくのを見守っていられそうですw
・・・でも、文ってチルノ以外も山盛りに修羅場ってるのでこのままじゃ終わらなそうだし(椛の逆襲に期待)
それと、大ちゃんにも素敵なパートナーをお願いしますね~
ゴールは砂糖漬の幻想郷!
わかります
ニヤニヤが止まりません(笑)
ノロケは最強!