「ナズーリン」
「何だい一輪」
「私、今日は珍しく暇なのよね」
「奇遇だね、私もさ」
ナズーリンと一輪はとても退屈していた。
ルナティックレベルで退屈していた。
何故それほどまでに退屈しているのかと言えば、やる事が無い。
ただただそれだけの話である。
命蓮寺が人里の近くに腰を据えてから早数ヶ月、これと言って大きなイザコザも無く彼らは受け入れられた。
『だって日本人って御利益ありそうなら何でもいいやって感じじゃん? 除夜の鐘とか初詣とかクリスマスとかさー』
先日ナズーリンがチーズを買いに人里にある乳製品専門店を訪れた際、外来人だった女性店員はこう言っていた。
なるほど、言われてみれば確かにそうだと、ナズーリンもネズミ達も納得した。
その事を先程一輪に話したら同じ様に納得した。
ともあれ、暇なのである。
もちろん寺を運営していくにあたってやる事は多々ある。
しかし客や檀家の相手は基本的に白蓮や星の仕事であり、そして雑務をこなすこの二人は実に優秀だった。
ナズーリンはネズミ達に指令を出して効率よく業務をこなしていった。
一輪は優先順位を決めて要領よく業務をこなしていった。
結果、今とても暇なのだ。
「一輪」
「何よナズーリン」
「平和な世界ではやる事が何も無いという事が如何に苦痛であるか、という事が良く理解できたよ」
「奇遇ね、私もよ」
畳の上に寝っ転がりながら何をするでもなくごろごろとしていると、勢いよく襖が開かれた。
二人がそちらへ目を向けると肌色が目に入った。
セーラー服から伸びるむっちりとして撫で心地の良さそうなふともも、水蜜だ。
今までカレーを作っていたセーラー服にエプロン姿の水蜜は、ダラダラとしている二人を見かねてやってきたのだ。
「やる事が無いなら遊びに行けばいいじゃない」
その発想は無かった。
“りん”
という事で取りあえず人里に出てきた二人だったが、はてさてこれからどうしたものかと悩んでいた。
「そういえば私たち、あまり共通点って無いわね」
茶屋の中、窓際の席で団子の味を堪能しながら、一輪がそうつぶやいた。
「共通点か……そうだな、名前の最後に“りん”が付くくらいかな?」
団子の甘味をすっきりと洗い流し、ほぅと余韻に浸りながらナズーリンは答えた。
「じゃあ名前の最後に“りん”が付く人を探しましょうか」
「なるほど、それは面白そうだ。よし、それにしよう」
手を上げて茶屋のお姉さん(28歳処女)を呼び、お勘定を頼む。
一々二人で別々に払うのも面倒なので一輪がまとめて支払い、その間にナズーリンはすーぱーだうじんぐたーいむ、とつぶやきながらダウジングロッドを構える。
しかし、両手の棒はうんともすんとも言わず、構えたまままっすぐと出入り口の方を指し示していた。
どういう事かとナズーリンが顔を上げると、どこかで見覚えのある顔がのれんをかき分けて入って来た。
長く美しい紅い髪とスリットの深い緑色のチャイナ服に包まれたメリハリのある躰。
そしてスリットから覗くスラリと伸びた思わず頬ずりしたくなるような美脚。
それらを持つのが誰であるかなど、最早疑いようも無い。
紅魔館の門番の紅美鈴がそこには居た。
「ごきげんようナズーリン。珍しいですね、こんなところであなたに会うとは」
「やあ美鈴、ごきげんよう。しかし君は実にタイミングが良いね」
「そうね、本当に。こんにちわ美鈴、丁度良い所に来てくれたわ」
「やや、一輪もですか、こんにちわ。ところで、どうでもよさそうな感じがしますが、何が丁度良いんですか?」
「いやー思った通りどうでもいい話でしたね」
立ち話もなんだと再び席に着いた二人が美鈴に事のあらましを説明して、返って来たのがこの言葉。
「しかしだね、我々はそのどうでもいい事にも縋らなければならない程に暇を持て余しているのさ」
テーブルに置かれた美鈴の帽子で遊んでいる子ネズミを優しげな瞳で眺めながら、実に残念そうな口調のナズーリン。
「ほーら、お食べー」
一方ナズーリンの隣に座る一輪は、その子ネズミの前に小さくちぎった羊羹を差し出している。
二度三度匂いを確かめてから、子ネズミはナスーリンを見上げた。
「ちゅー」
「ああ、構わないよ」
「ちゅー」
今度は一輪の方を向いて深々と頭を下げてから、子ネズミは勢いよく羊羹に齧りついた。
「全く……ネズミでさえこれ程礼儀正しいのに、あの白黒ときたら……」
美鈴が溜息と共に愚痴をこぼした。三人の脳裏に一人の魔法使いの姿が思い浮かんだ。
「魔理沙か」
「魔理沙ね」
「魔理沙よ」
門を破って大事な物を勝手に持っていくあの傍若無人な態度。本人は借りるだけだと言うものの、実際やってる事はただの強盗だ。
「お寺も何度か被害にあったわよ。大事な経典とか、毘沙門天様所縁の品とか、姐さんの書いた魔道書とかね」
「その都度探しに行く私の事も考えて欲しい物だよ全く」
「まぁ、どこも似たようなものですよ。正直、お嬢様のワガママに比べたら可愛いもんですし」
美味しいお菓子とお茶をいただきながらする本当にどうでもいい様な話。
「なるほど、そういう意味でも確かにどこも同じだね。御主人様の無茶振りに答える事は従者として当然、という事か」
「ふーん、やっぱり大変なのね。私にはよく解らないけど」
「解らない方がいいですよ、色んな意味で。そういえば今日は雲山さんのお姿が見えませんが」
「そうだ、私も気になっていたんだ。彼はどうしたんだい?」
「雲山なら今頃、あの鬼と一緒にぷらぷらしてるんじゃないかしら」
「鬼? というと萃香さんとですか?」
「そうそう、その子よ。ほら、あの子の能力って雲山みたいでしょ?」
「ああ、言われてみれば」
どうにも会話が尽きない。
なぜならば、彼女たちは女性だからだ。
女三人寄れば姦しいとはよく言ったもので、小さな火種も寄せ集めれば大火となる。
そんなどうでもいい事を話していると、店も段々と混みだしてきた。
いつしか店内は満席となり、店員のお姉さんも忙しなく動き回る。
そんな中、またもや誰かがやってきたらしい。
「いらっしゃいませ」
「二人なんだけど、席は空いているかしら?」
「すみません、今はどの席も埋まってまして……」
「そっか、じゃあ仕方無いねセンセー、別の所を探そうか」
どこかで聞いた覚えのある声がしてナズーリンと一輪は目を向け、美鈴は振り返る。
そこには宴会で何度か顔を合わせた事のある女性と少女の姿があった。
しかしまぁ、なんとも珍しい組み合わせだ。
どのような経緯で二人で行動しているのかとても気になる。
だがそんな事よりもあの二人は――
三人は会話も無く頷き合い、代表して美鈴が声をかけた。
「永琳さん、お燐さん、良かったらご一緒にどうですか?」
――名前の最後に“りん”が付く。
「何だい一輪」
「私、今日は珍しく暇なのよね」
「奇遇だね、私もさ」
ナズーリンと一輪はとても退屈していた。
ルナティックレベルで退屈していた。
何故それほどまでに退屈しているのかと言えば、やる事が無い。
ただただそれだけの話である。
命蓮寺が人里の近くに腰を据えてから早数ヶ月、これと言って大きなイザコザも無く彼らは受け入れられた。
『だって日本人って御利益ありそうなら何でもいいやって感じじゃん? 除夜の鐘とか初詣とかクリスマスとかさー』
先日ナズーリンがチーズを買いに人里にある乳製品専門店を訪れた際、外来人だった女性店員はこう言っていた。
なるほど、言われてみれば確かにそうだと、ナズーリンもネズミ達も納得した。
その事を先程一輪に話したら同じ様に納得した。
ともあれ、暇なのである。
もちろん寺を運営していくにあたってやる事は多々ある。
しかし客や檀家の相手は基本的に白蓮や星の仕事であり、そして雑務をこなすこの二人は実に優秀だった。
ナズーリンはネズミ達に指令を出して効率よく業務をこなしていった。
一輪は優先順位を決めて要領よく業務をこなしていった。
結果、今とても暇なのだ。
「一輪」
「何よナズーリン」
「平和な世界ではやる事が何も無いという事が如何に苦痛であるか、という事が良く理解できたよ」
「奇遇ね、私もよ」
畳の上に寝っ転がりながら何をするでもなくごろごろとしていると、勢いよく襖が開かれた。
二人がそちらへ目を向けると肌色が目に入った。
セーラー服から伸びるむっちりとして撫で心地の良さそうなふともも、水蜜だ。
今までカレーを作っていたセーラー服にエプロン姿の水蜜は、ダラダラとしている二人を見かねてやってきたのだ。
「やる事が無いなら遊びに行けばいいじゃない」
その発想は無かった。
“りん”
という事で取りあえず人里に出てきた二人だったが、はてさてこれからどうしたものかと悩んでいた。
「そういえば私たち、あまり共通点って無いわね」
茶屋の中、窓際の席で団子の味を堪能しながら、一輪がそうつぶやいた。
「共通点か……そうだな、名前の最後に“りん”が付くくらいかな?」
団子の甘味をすっきりと洗い流し、ほぅと余韻に浸りながらナズーリンは答えた。
「じゃあ名前の最後に“りん”が付く人を探しましょうか」
「なるほど、それは面白そうだ。よし、それにしよう」
手を上げて茶屋のお姉さん(28歳処女)を呼び、お勘定を頼む。
一々二人で別々に払うのも面倒なので一輪がまとめて支払い、その間にナズーリンはすーぱーだうじんぐたーいむ、とつぶやきながらダウジングロッドを構える。
しかし、両手の棒はうんともすんとも言わず、構えたまままっすぐと出入り口の方を指し示していた。
どういう事かとナズーリンが顔を上げると、どこかで見覚えのある顔がのれんをかき分けて入って来た。
長く美しい紅い髪とスリットの深い緑色のチャイナ服に包まれたメリハリのある躰。
そしてスリットから覗くスラリと伸びた思わず頬ずりしたくなるような美脚。
それらを持つのが誰であるかなど、最早疑いようも無い。
紅魔館の門番の紅美鈴がそこには居た。
「ごきげんようナズーリン。珍しいですね、こんなところであなたに会うとは」
「やあ美鈴、ごきげんよう。しかし君は実にタイミングが良いね」
「そうね、本当に。こんにちわ美鈴、丁度良い所に来てくれたわ」
「やや、一輪もですか、こんにちわ。ところで、どうでもよさそうな感じがしますが、何が丁度良いんですか?」
「いやー思った通りどうでもいい話でしたね」
立ち話もなんだと再び席に着いた二人が美鈴に事のあらましを説明して、返って来たのがこの言葉。
「しかしだね、我々はそのどうでもいい事にも縋らなければならない程に暇を持て余しているのさ」
テーブルに置かれた美鈴の帽子で遊んでいる子ネズミを優しげな瞳で眺めながら、実に残念そうな口調のナズーリン。
「ほーら、お食べー」
一方ナズーリンの隣に座る一輪は、その子ネズミの前に小さくちぎった羊羹を差し出している。
二度三度匂いを確かめてから、子ネズミはナスーリンを見上げた。
「ちゅー」
「ああ、構わないよ」
「ちゅー」
今度は一輪の方を向いて深々と頭を下げてから、子ネズミは勢いよく羊羹に齧りついた。
「全く……ネズミでさえこれ程礼儀正しいのに、あの白黒ときたら……」
美鈴が溜息と共に愚痴をこぼした。三人の脳裏に一人の魔法使いの姿が思い浮かんだ。
「魔理沙か」
「魔理沙ね」
「魔理沙よ」
門を破って大事な物を勝手に持っていくあの傍若無人な態度。本人は借りるだけだと言うものの、実際やってる事はただの強盗だ。
「お寺も何度か被害にあったわよ。大事な経典とか、毘沙門天様所縁の品とか、姐さんの書いた魔道書とかね」
「その都度探しに行く私の事も考えて欲しい物だよ全く」
「まぁ、どこも似たようなものですよ。正直、お嬢様のワガママに比べたら可愛いもんですし」
美味しいお菓子とお茶をいただきながらする本当にどうでもいい様な話。
「なるほど、そういう意味でも確かにどこも同じだね。御主人様の無茶振りに答える事は従者として当然、という事か」
「ふーん、やっぱり大変なのね。私にはよく解らないけど」
「解らない方がいいですよ、色んな意味で。そういえば今日は雲山さんのお姿が見えませんが」
「そうだ、私も気になっていたんだ。彼はどうしたんだい?」
「雲山なら今頃、あの鬼と一緒にぷらぷらしてるんじゃないかしら」
「鬼? というと萃香さんとですか?」
「そうそう、その子よ。ほら、あの子の能力って雲山みたいでしょ?」
「ああ、言われてみれば」
どうにも会話が尽きない。
なぜならば、彼女たちは女性だからだ。
女三人寄れば姦しいとはよく言ったもので、小さな火種も寄せ集めれば大火となる。
そんなどうでもいい事を話していると、店も段々と混みだしてきた。
いつしか店内は満席となり、店員のお姉さんも忙しなく動き回る。
そんな中、またもや誰かがやってきたらしい。
「いらっしゃいませ」
「二人なんだけど、席は空いているかしら?」
「すみません、今はどの席も埋まってまして……」
「そっか、じゃあ仕方無いねセンセー、別の所を探そうか」
どこかで聞いた覚えのある声がしてナズーリンと一輪は目を向け、美鈴は振り返る。
そこには宴会で何度か顔を合わせた事のある女性と少女の姿があった。
しかしまぁ、なんとも珍しい組み合わせだ。
どのような経緯で二人で行動しているのかとても気になる。
だがそんな事よりもあの二人は――
三人は会話も無く頷き合い、代表して美鈴が声をかけた。
「永琳さん、お燐さん、良かったらご一緒にどうですか?」
――名前の最後に“りん”が付く。
いい雰囲気でした。
えーりんとおりんりんが一緒に行動はヤバ過ぎるwww
えーりんの診察する後ろでご馳走を前にした様な期待に満ちた目で覗き込むおりんりん。シュールな光景だwww
ナズーリンのネズミに萌えたが、名も無き茶屋のお姉さんにこれ以上なく萌えた。
毎日通い詰めて「お団子お好きなんですね」って声掛けられて、それでもって(以下長くなるので略)
この情報って必要wwwwww?
できれば続編を希望します!!
炉利(※イメージ)から同級生的な見た目に、ボイン(※イメージ)までいるし。