私がのんびりとお茶を楽しんでいると、突然玄関のドアがバンッ、と大きな音を立てて開いた。
何事かと思って椅子から立ち上がり玄関まで行くと、咲夜が泣きながら私に抱き着いてきた。
泣いている咲夜は可愛かったが、その姿は瀟洒の欠片もなかった。
「どうしたのよ?」
そう聞いた時には既に目の前に咲夜の姿はなく、私は「あれ?」と辺りを見渡した。
そしてテーブルの方を見た時、勝手に私の紅茶を飲んでいる咲夜を見つけた。
「このお茶美味しいわね」
そしていつものようにほんわりと笑った。
なんなんだ一体。
「さっき泣いてたのはなんだったのよ……」
そうぼやきながら私は椅子に座った。
「瀟洒ではないところはちょっとしか見せちゃいけないのです」
「ちょっとならいいんだ……」
「それ故に完全で瀟洒なのですわ」
「あっそ」
「あっ……」
私はえっへんと胸を張っている咲夜の手から、紅茶の入ったカップを奪い取った。
というより奪い返した。
「酷いわアリス」
「人の紅茶を勝手に飲んどいてよく言う」
私は若干ぬるくなった紅茶が入っているカップに口を付けた。
もうほとんど残っていなかったので、私はカップの紅茶を全部口に流し込んだ。
飲み方が荒っぽいのはティータイムを邪魔されて不機嫌だからだ。
「間接キスね」
「ブッ!」
思わず吹き出した。
そりゃもう漫画みたいに。
咲夜は「ああもう、机が汚れちゃったわ」と文句を言いながら布で手際良く汚れを拭いていった。
誰のせいだと思ってんだ。
「げほっげほっ!あんたねぇ!」
「あ、そうだアリス。今日のおゆはん何がいい?」
私がちょっと怒ってやろうと立ち上がったら、咲夜の口から聞き捨てならない言葉が出てきた。
「晩御飯?なんであんたが作るのよ?」
「ああ、まだ言ってなかったわね。今日貴女の家に泊まるから」
「…………はぁ!?」
いきなりの展開について行けない。
なんで咲夜が私の家に泊まるんだ。聞いてないぞ。
こういうのは事前にアポを取るのが普通だろう。
いや、こいつは普通じゃないが、一応それくらいの常識はあるやつだ。
いきなり泊まるだなんて言い出すにはきっと何か訳があるはずだ。
もしかして、さっき泣いてたのに関係があるんだろうか。
「何かあったの?」
「何もないわよ?」
「嘘ね」
「どうして?」
「貴女はそういう性格じゃないもの」
そう言うと咲夜は驚いたような顔をした。
そして今度は諦めたような表情で溜息を吐いた。
「貴女には全部バレバレね」
「何があったのか、話してくれる?」
咲夜は「仕方ないわね」と言って、私の前の席に腰掛けた。
私はそれを見て、咲夜に紅茶を淹れてやった。
「ありがと」と咲夜が言ったのに「どういたしまして」と返して、私は自分の分も淹れた。
咲夜は紅茶を飲んでほぅ、と一息つくと、言うのが恥ずかしいのか、頬を紅潮させて俯いた。
しばらく沈黙が続いたが、やがて顔を上げて私を見たかと思うと、視線を逸らして俯き加減に言った。
「おじょうさまとけんかしちゃったの」
「~~~っ!」
危うく紅茶を吹き出すところだった、鼻から。
とりあえず後ろを向いて誤魔化したが。
私は今にも鼻から溢れてきそうな愛情を必死に抑えつつ、予想外の攻撃の破壊力に恐怖した。
なんだあの幼い感じの言い方は。
なんだあの幼子のような仕草は。
なんだこの可愛い生物は……!
私の精神状態を知ってか知らずか、咲夜は「今笑いそうになったでしょ」と上目遣いに睨んできた。
しかも若干涙目になっている。
だから可愛すぎるっての!
私は必死に自分を抑えながら、あくまで冷静を装って、咲夜の方へ向き直った。
「で、なんで喧嘩しちゃったの?」
「今日のお茶の時間にね、いつも通りお嬢様とお話をしてたんだけど」
「ふむふむ」
「お嬢様がいきなり、『お前は何派だ?』って聞いてくるから、私はこう答えたのよ」
「ふむ」
「『咲アリ派です』って」
「は?」
明らかなメタ発言だが、内容的に今のは告白されたと思っていいのだろうか。
「そしたらお嬢様、それが気に入らなかったみたいで、『謝れ!レミフラ派の私に謝れ!』
ってグングニル片手に言ってきたの」
わーお、恐怖政治。
っていうか、レミフラ派なら別にいいんじゃないのか?
レミ咲派なら怒るのもわかるが。
「私はさすがにこれ以上この場にいられないと思って、『お嬢様の人で無し!鬼!悪魔!
そんなお嬢様なんかフランドール様と両想いになってしまえ!』って、捨て台詞を吐いて
紅魔館から飛び出したわ」
確かにレミリアは人間じゃなくて吸血鬼で悪魔だけども。
っていうか最後のは罵る気あるのか?
「そういう事情があってしばらくは紅魔館に戻れないの。だからお願い、泊めて」
「なるほどね。だいたい話はわかったわ」
そんなつまらない(というか意味のわからない)理由で喧嘩して、わざわざうちに来た訳か。
私の一日の楽しみのティータイムを邪魔してまで。
「咲夜……」
「なに?泊めてくれるの?」
期待の眼差しを向ける咲夜に、私は満面の笑顔で言ってやった。
「帰れ」
.
何事かと思って椅子から立ち上がり玄関まで行くと、咲夜が泣きながら私に抱き着いてきた。
泣いている咲夜は可愛かったが、その姿は瀟洒の欠片もなかった。
「どうしたのよ?」
そう聞いた時には既に目の前に咲夜の姿はなく、私は「あれ?」と辺りを見渡した。
そしてテーブルの方を見た時、勝手に私の紅茶を飲んでいる咲夜を見つけた。
「このお茶美味しいわね」
そしていつものようにほんわりと笑った。
なんなんだ一体。
「さっき泣いてたのはなんだったのよ……」
そうぼやきながら私は椅子に座った。
「瀟洒ではないところはちょっとしか見せちゃいけないのです」
「ちょっとならいいんだ……」
「それ故に完全で瀟洒なのですわ」
「あっそ」
「あっ……」
私はえっへんと胸を張っている咲夜の手から、紅茶の入ったカップを奪い取った。
というより奪い返した。
「酷いわアリス」
「人の紅茶を勝手に飲んどいてよく言う」
私は若干ぬるくなった紅茶が入っているカップに口を付けた。
もうほとんど残っていなかったので、私はカップの紅茶を全部口に流し込んだ。
飲み方が荒っぽいのはティータイムを邪魔されて不機嫌だからだ。
「間接キスね」
「ブッ!」
思わず吹き出した。
そりゃもう漫画みたいに。
咲夜は「ああもう、机が汚れちゃったわ」と文句を言いながら布で手際良く汚れを拭いていった。
誰のせいだと思ってんだ。
「げほっげほっ!あんたねぇ!」
「あ、そうだアリス。今日のおゆはん何がいい?」
私がちょっと怒ってやろうと立ち上がったら、咲夜の口から聞き捨てならない言葉が出てきた。
「晩御飯?なんであんたが作るのよ?」
「ああ、まだ言ってなかったわね。今日貴女の家に泊まるから」
「…………はぁ!?」
いきなりの展開について行けない。
なんで咲夜が私の家に泊まるんだ。聞いてないぞ。
こういうのは事前にアポを取るのが普通だろう。
いや、こいつは普通じゃないが、一応それくらいの常識はあるやつだ。
いきなり泊まるだなんて言い出すにはきっと何か訳があるはずだ。
もしかして、さっき泣いてたのに関係があるんだろうか。
「何かあったの?」
「何もないわよ?」
「嘘ね」
「どうして?」
「貴女はそういう性格じゃないもの」
そう言うと咲夜は驚いたような顔をした。
そして今度は諦めたような表情で溜息を吐いた。
「貴女には全部バレバレね」
「何があったのか、話してくれる?」
咲夜は「仕方ないわね」と言って、私の前の席に腰掛けた。
私はそれを見て、咲夜に紅茶を淹れてやった。
「ありがと」と咲夜が言ったのに「どういたしまして」と返して、私は自分の分も淹れた。
咲夜は紅茶を飲んでほぅ、と一息つくと、言うのが恥ずかしいのか、頬を紅潮させて俯いた。
しばらく沈黙が続いたが、やがて顔を上げて私を見たかと思うと、視線を逸らして俯き加減に言った。
「おじょうさまとけんかしちゃったの」
「~~~っ!」
危うく紅茶を吹き出すところだった、鼻から。
とりあえず後ろを向いて誤魔化したが。
私は今にも鼻から溢れてきそうな愛情を必死に抑えつつ、予想外の攻撃の破壊力に恐怖した。
なんだあの幼い感じの言い方は。
なんだあの幼子のような仕草は。
なんだこの可愛い生物は……!
私の精神状態を知ってか知らずか、咲夜は「今笑いそうになったでしょ」と上目遣いに睨んできた。
しかも若干涙目になっている。
だから可愛すぎるっての!
私は必死に自分を抑えながら、あくまで冷静を装って、咲夜の方へ向き直った。
「で、なんで喧嘩しちゃったの?」
「今日のお茶の時間にね、いつも通りお嬢様とお話をしてたんだけど」
「ふむふむ」
「お嬢様がいきなり、『お前は何派だ?』って聞いてくるから、私はこう答えたのよ」
「ふむ」
「『咲アリ派です』って」
「は?」
明らかなメタ発言だが、内容的に今のは告白されたと思っていいのだろうか。
「そしたらお嬢様、それが気に入らなかったみたいで、『謝れ!レミフラ派の私に謝れ!』
ってグングニル片手に言ってきたの」
わーお、恐怖政治。
っていうか、レミフラ派なら別にいいんじゃないのか?
レミ咲派なら怒るのもわかるが。
「私はさすがにこれ以上この場にいられないと思って、『お嬢様の人で無し!鬼!悪魔!
そんなお嬢様なんかフランドール様と両想いになってしまえ!』って、捨て台詞を吐いて
紅魔館から飛び出したわ」
確かにレミリアは人間じゃなくて吸血鬼で悪魔だけども。
っていうか最後のは罵る気あるのか?
「そういう事情があってしばらくは紅魔館に戻れないの。だからお願い、泊めて」
「なるほどね。だいたい話はわかったわ」
そんなつまらない(というか意味のわからない)理由で喧嘩して、わざわざうちに来た訳か。
私の一日の楽しみのティータイムを邪魔してまで。
「咲夜……」
「なに?泊めてくれるの?」
期待の眼差しを向ける咲夜に、私は満面の笑顔で言ってやった。
「帰れ」
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しかしこれは咲夜さん視点とその後の展開も見てみたいw
だが、私は霊アリ派!!!(えっ
「紅魔館の住人」で慧音が浮かんでしまった、仕方ないね。
励みになります。
>霊アリ派、アリスは紅魔館の住人、嫁
つまりアリス総受けが世界平和ですね、わかります。
>フラメイ派
フラこあとかもいいと思うんですがどうでしょう。
紅魔館はどのカプもいけます。
紅魔館は皆仲良し、皆家族!
>咲夜さん視点、続編
続編を希望されるとものすごく嬉しいものなんですね、創想話に投稿して初めて知りました!
駄菓子菓子、この話は単純にパッと思いついただけなんで、咲夜さん視点や続編を書くのは難しいですね^^;
まあネタが思いついたら書きます。
思いつかなかったら―――ごめんなさい。
アリスが嫁にするのではなく、みんなでアリスを嫁にするのだイエス
>アリ咲じゃなく咲アリ
きっとアリスは咲夜さんといちゃこらできるのならどっちでもいいんだと思います。
ところでアリスも咲夜さんも受けしか想像できないのは私だけでしょうか。
>アリスはみんなの嫁
アリスって魔理沙みたいに取り合いになるというより、みんなから愛されるってイメージが強いですよね。
あれ、もしかして私だけ?
アリスは紅魔館に嫁げばいいと思います。
というわけで続きに期待!!
>紅魔館は第二の家、嫁げばいい
そして咲夜さんの部屋でにゃんにゃんしてればいいと思います。
>続き
今書いてみてますが、まったく別物になりそうです。
それでもいいのなら続編として投稿します。