この話は、作品集57にある『すやすやなキャプテンが悪い話』の続きになっています。
前のお話を読んでいると良いと思います。
命蓮寺の船長、村紗水蜜。
この日、私はある発見をしていた。
実は私には、行儀が悪いとよく一輪から注意をされてしまう、どうにも治せない癖があった。
それは、食べ物を口に咥えたまま行動してしまうという、子供みたいで大雑把な癖。
恥ずかしくも、昼食がサンドイッチやおにぎり等の手を使わない食事だと、よく口に入れたまま、錨の手入れや、柄杓で庭の水巻き、暇つぶしの読書など、ついもぐもぐと床にくずを落とす事無くきれいに食べきってしまう。
ポイントは舌使いと歯の強弱と唾液のコントロールだ。
これを抑えると結構上手くできる。
「……だからねムラサ。その食べ方で綺麗に食べきるのはある意味才能だけど、行儀が悪いのよ」
ぺちっと額を叩かれ、呆れ顔の一輪に私も恥ずかしくなり、いつも反省はするのだけど、これがどうにも身体から抜けてくれない。
お菓子を食べている時なんかも、つい時間をかけてもぐもぐしてしまうのだ。
そして、また呆れた一輪にぺちっとやられる。
これが地底に封印される前も後も現在も、どうにも治らない癖である。
そして、私が気付いた発見は、この癖が絡んでいる。
最初は親友の部下である、ナズーリンである。
私は廊下を歩きながら、いつもの様に口に食べ物を咥えていた。
最初はこの癖を、恥ずかしくて隠そうとも思っていたのだけど、聖に「変わってないのね」なんてつんと額を突かれて、うふふと花開く様に微笑まれて、ついつい、くらりと自分を甘やかし、今日もまた気付いたらちょびちょびと食べ物を味わっていた。
そうやってもごもごしていると、前から歩いて来たナズーリンが、急にビビッと尻尾を逆立てたのだ。その瞳はカッと見開いて、少しだけ空気が張り詰めた気がする。
「船長…っ! まったく、君って奴は!」
ずだずだずだっ! いつも落ち着いた彼女には珍しい足音の荒さに、私は「え? えぇ?」と混乱し、その場に硬直してしまう。
口に物がある為に「どうしたの?」なんて聞く事も出来ない。
「そのチーズ、私のだよ!」
「ふぇ?」
もごもご。
ナズの言葉に、あれ? と改めて舌を刺激する味を意識すると、確かにこれはチーズだった。
そういえば、台所にあったので、つい一つ拝借していたのを思い出し、焦る。
「君は本当にしょうがないな。手を使わないで済むものを、何でもかんでも咥えるのはどうかと思うよ!」
「……ぅゆ」
「まったくっ、返して貰うからね」
「……む?」
申し訳なく小さくなっていた私は、急に頬をがしっと抑えられ、咥えていたチーズが引っ張られて驚く。
「?」
目の前には、何故かナズの顔がぼやける程に間近にあり、彼女は私を潤んだ瞳で睨みながら、もぐもぐしていた。
チーズがちょいちょいと引っ張られているので、どうやらナズが端から咥えて食べているのだと気付き、
私は不思議になる。
なんでそんな事をしているのだろう?
「……んっ…んん」
ナズの鼻から抜ける熱い息を感じながら、チーズを離そうか離さざるべきか、分からなくなって困る。
別にこんな事をしなくても、チーズなら新しいのを買って返すぐらいの余裕はあるし、何より普段のナズならそうさせる筈だろうにと、ついつい少しずつ近づいてくるナズーリンの様子を見てしまう。
「…っ! ……ぅ…ん」
ナズの顔ごしに、尻尾がビクビクと、猫が尻尾を膨らませて威嚇するぐらい過敏に反応しているのを見つけ、私はこの場合、船長として紳士的にどんな反応をすればいいのだろう? と途方にくれる。
「…ぅ、……ぅううぅう」
と、
気付いたらチーズは噛み切られ、目の前にはさっきよりも距離がある、真っ赤な顔で屈辱に震えるナズがいた。
「……せ、船長の」
「え?」
あ、もうチーズはかなり減っていたので、咥えるのはやめて飲み込んだ。
そうしたら、ナズが「チュッ?!」と叫び、ロッドで渾身の突きを喉に向けて繰り出してきた。
冷静に自分を解説しつつ、あまりの痛さに転がって悶絶した。
「くっ、……ぐぉおおおぉ、ぉ…っ?!」
「船長のあほー! ち、ちょっとぐらい、動揺したり赤くなったり、し、したって……っ、ご、ご主人に言ってやるんだからな~!」
何があったのか、ナズはマジ泣きして、私を踏みにじってから駆けて行ってしまった。
いや、本当にどうしたのだろう? いつもの冷静沈着で仕事の出来る彼女にしては、最初から最後まで変にテンションがおかしかった気がする。
げほごほっ! と咳き込んで吐き気と戦いながら、私は垂れる唾液をハンカチでぬぐって、とりあえずうがいをしようと思った。
それから、私はまた口に食べ物を咥えたまま歩いていた。
今は小さな庭に楚々として咲く淡い桃色の花に、柄杓で水を撒いている途中である。
「むむ、ムラサ……!」
「もご?」
はい? と振り返ると、そこには先程のナズの上司であり、親友でもある寅丸星が、何故か最初から緊張に強張った顔でこちらに向かってきていた。
どうしたのだろうと訪ねようとして、口に咥えた物で上手く話せなかった。
「……あぁ、あの!」
「?」
もごもごと、星は私の癖を知っているのであまり遠慮はせずに、首を傾げて何かあったのかとジェスチャーで聞いてみる。
その問いに、星は言い辛そうに、もにょもにょと唇をもにょらせて「……そ、その」と消え入りそうな声を出す。
「……だ、駄目です。平静を保つのです寅丸星! わ…私も、ナズーリンみたいに、演技派なんです、から。…が、頑張らなくては……っ!」
ぼそぼそと、緊張をしていると思った事をつい口に出してしまう星。
意味はよく分からなかったけど、彼女はいつも以上に切羽詰っているのは分かった。
私と同じで、そんな困った癖を持つ彼女はしかし、私と違い、気安い相手の前でしかそれをしないので、私よりまだ改善の余地があるだろうな、と、彼女の様子を見て、治らない癖に少し憂う。
「……ムラサ!」
「んむ?」
「そ、そのっ、その沢庵は私のなんです」
「……むぅ?」
にゃがぁ! と叫ぶや否や、私の口に広がる味は、あれ? マジで沢庵だった。
「……」
むしろ、何で私はこんなのをぶら下げているのだろう?
……えぇと。確か、縁側にそっと置いてあったから、それも五・六本ぐらいあったから、いいのかなって、つい咥えたんだっけ?
いや、…………何故咥えてるのよ私。おかしいと思えよ私。というか今まで気付かないとか明らかに変よ私。
自身の癖の無意識具合に戦慄しつつ、星がガシッと肩をつかんでくる。
「だっ、だから、返して下さい」
「も?」
「はぐっ!」
ぱっと、二十cmぐらいあった沢庵の片端を咥える星。
このシチュエーションは、ついさっきあったばかりなのだけど、間に距離がありすぎるので特に何も思わなかった。
「……はぐはぐ」
密かな好物を齧っていく星は、それはもう可愛いのだけど、何で齧っていくのかそこが分からずついつい、沢庵を引っ張られるまま、離さないように歯に力を入れてしまう。
カジカジカジ。
カジカジカジカジ。
暫くそんな音が響いて、遠くで鳥が鳴く音や木々がざわめく自然の音とかを聞いていたのだけど、目の前の星の顔が、だんだんと苦しそうになっているのに気付く。
そりゃあ、ご飯もないのに食休みもなく、沢庵ばかりを食べるはきついだろう。喉も渇きそうだし。
状況は不明だけど、私は星が心配になり、しょうがないので、助けるつもりで端っこから沢庵を齧っていく。
カジカジカジ。
「ニャガッ?!」
なぜか、星が盛大に驚いて真っ赤になった。
普段隠れている耳と尻尾が飛び出て、瞳がまあるくなっている。
「?」
カジカジしながら様子を伺うと、星がうなじまで赤くして、食べるのすら忘れて私を見ている。
とりあえず、話を聞くのは食べてからだと、水が欲しいなぁ、と思いながら沢庵を齧る。星と私の努力も実り、あと三cmという所で、星がぽろり、と沢庵を離した。
っう、と伸びる銀の糸に「ぁ」と星が気づいた時には、星は力が抜けた様に、ぺたりと地面に尻餅をついていた。
星の尻尾は、ぴくぴくと痙攣しているのが見える。
「?」
少し考えて、とりあえず話を聞くにも沢庵が邪魔だと、一気に食べる。
もぐもぐしていると、星がそんな私を依然赤い顔で見上げていて、普段は背が高い星に見上げられる違和感が、少しくすぐったかったいと、そうしていると子猫の様で愛らしいと思った。
「…ぅ、ぅうぅ」
なんて、少し和んだ途端、星がじわりと瞳を潤ませた。
え? なんて聞くどころでもなく、星は私に尻尾ビンタを往復で十回以上もズビビビビッ!! と決めて、私を宙に舞い上げた。
いい尻尾ビンダだね。世界を狙えるよ。なんて冗談を言う間もなく、星は私に背中を向けて駆けて行く。
「……ぐすっ、う、うえっ…うわぁぁあああぁあん! ナズーリンー!」
再び地面に頭からズシャァァアッ! と戻った私は、沢庵の塊が喉につまり、頬が鮮烈に痛いわ、あまりに訳が分からないわで。暫くその場でごろごろと苦しみながら転がっていた。
あまりの状況の不明さと苦しみに、暫く、沢庵は見たくも食べたくもないと心から思った。
そうして、沢庵で疲れた私は、甘い物を摂取しようと、おまんじゅうを咥えたまま縁側で休んでいた。
今日も何かと不可解で理不尽だけど、最近はそういうものだと、私が影で泣いていればいいんだよね? なんて間違った諦めが生まれてきたりしている。
でもいつか、この現状を脱出する糸口は必ず見つけようと探している。
「あら、ムラサ」
「むぅ?」
疲れているのに、寝たふりもせずに顔をあげたのは、その相手が命蓮寺の第二の癒しである、雲居一輪の声だったからだ。第一は聖。
私はすぐにぱっ! と顔を輝かせる。
膝枕をして欲しいと思ったのだ。
そう、彼女の膝枕は絶品で、暖かいしやわらかいしいい匂いだし、長時間寝ていても脚が痺れたなんて言わず、実際には修行してい妖怪だしという理由で、いつまでも頭を載せられる至高の膝枕なのだ。
私は今日もおねだりするように、おまんじゅうを咥えたまま、彼女の服を軽く摘む。
一輪は「はいはい」と笑おうとして、何かを思い出したように「…ぁ」と咳払いをした。
「?」
その仕草が少し不自然で、私がどうしたのと眼で訪ねると、彼女は何でもないわよ、と慌てて眼で語る。
私と一輪は、下手をすると言葉もなく意思表示が出来てしまうので、地底の頃、それでまったく会話ゼロで暮らしていた事があった。
しかし、それは味気ないという理由で、これからはちゃんと言葉に出しましょう。と決めた。なんて過去がある。
まあ、それはいいとして。
一輪は、どうにも迷った顔をして、でも、私に少し厳しい顔を覗かせた。
「ムラサ、また咥えたまま食べているのね」
「うっ…?!」
「行儀が悪いって、いつも言っているでしょう? 姐さんが寛大だからって、いつまでもそれじゃあ駄目よ」
「……ぁう」
痛いところを突かれて、急いでまんじゅうを食べきろうとする前に、一輪が身を乗り出した。
「……よって没収」
はぐ。
え?
考える暇もない、一輪の唐突な食いつきだった。
流石に、三度目は驚かない。むしろまたなの? という変な動揺があっただけだ。
でも、まんじゅうはすぐに皮が破れてしまうので、一輪は私に動かないよう眼で伝えて、急いで齧っていく。
別に、そんな風にしなくても、言えば取るのに。と困惑しながらも、分かった。と微塵も動かないと眼で返す。
「…ん…ぁ、こぼれた」
餡が、服に零れて、一輪は頬を染めながらも、すぐに齧るのを再開する。
それだけでも、いつもの一輪ならまず落ちたものを気にするのに、と。今日は何だか様子がおかしくて、不思議に感じながらも、まんじゅうを破らない様、歯に細心の注意をこめる。
「あ!」
と、唐突に一輪の驚いた声。
もともと強くなかった皮が、私と一輪の間からぽろりと崩れてしまったのだ。
私は一輪の、少し残念そうな響きを、声と眼で感じた瞬間。大きく口を開けて、ぱくりとまんじゅうを食べていた。
一輪ごと。
「……ん」
気をつけて、繋がる口の中で、舌で均等に半分こにしてから、私は唇を離す。
もぐもぐと饅頭の残りを食べきると、一輪がものすごく変な顔をして、私を見ていた。
「……え、えぇと。ムラサ?」
「うんー?」
「……ま、前から気になってたんだけど」
「んくっ。うん、どうかしたの?」
「…………」
一輪は、なにやらもじもじして、唇を両手で押さえながらか細く呟く。
「……私と、口付けるのに、いつも抵抗はないのかなぁ、って」
こちらにも伝染しそうな恥ずかしそうな声だった。
え? と、何やら今更すぎるそれに、私は少し照れつつと質問の意図が分からない。
口内に残る饅頭の甘さを、舌で転がしながら、少し笑って答えた。
「とは言っても、一輪のファーストキスって私ですしね」
「……うっ」
「あの頃は、まだこんなに小さかった一輪から『してっ!』ておねだりされてたから、最初の頃は恥ずかしかったけど、今はけっこう平気」
「………っ」
カアアッと。
一輪の顔が、星の時よりも赤くなる。
その様が可愛いなーと、子猫がじゃれついてくるみたいな暖かさを覚えて、私は笑顔で付け加える。
「それに、人工呼吸だと思えば、誰としてもぜんぜん平気だしね」
船長ですから!
だから、そういうのは全然気にしないで! と続けようとすると。
「ば…ばっ、……馬鹿あぁっ!」
もうんっ! と突然湧いて出た雲山の極太な拳と、一輪の小さいけど威力は無視できない拳の、ダブルアタックで吹っ飛ばされた。
「ごほおッ?!」と地面を三回ぐらい跳ねて、土煙の中で血なんて吐きながら目を回していると、かなりぶっきらぼうな一輪の声が届く。
「どうせ、どうせ私は意識もされてないわよっ!」
足音荒い去り方に、「あれぇ?」と、私は何か失敗しただろうかと困る。
おかしいというか、寂しいというか。
「……一輪、昔は分かり易かったのに。今はすっかり思春期なのか、分からないなぁ」
可愛かった妹が、日々成長していく事へのそんな複雑な心境を胸に、私は小さく溜息を付いた。
あと、足腰がガクブルして暫く立ち上がれそうにはなかった。
その後、
擦り傷だらけで疲れてしまい、沁みるけれど熱いお風呂に入って極楽気分だった私は、いきなり口にポッキーを突っ込まれた。
「……」
驚くなというのが無理すぎる、その甘さに、思わずパキッと先端を食べてしまった。
目を見開いて見ると、いつの間にか封獣ぬえが、こちらを殺さんとばかりの目つきで睨んでいる。
熱いお湯の中なのに、なんともひえびえとする心境に、一瞬で追い込まれてしまった。
「っ?!」
「……ムラサ」
ぽつんと、浴槽内に響く声。
それが、静かだからこそ怖い。
あれ? ぬえってこんなに迫力あったっけ? というか、空気からマジギレしているのが伝わり、しかも私は全裸で、ぬえが服を着ているという精神的にも物理的にもきついハンデがある。
「一輪と、キスしてるんだって?」
「…は?」
ポッキーは細いので、普通に話せるのだけど、意図しない質問に間抜けな声が出てしまう。
それすら気に入らないのか、ぬえの目元の鋭さを増した。
「それも、たくさんしてるんだって?」
「…あの、ぬえ?」
ポッキーが喉の奥に刺さる。地味に苦しいそれに顔を歪めると、ぬえが赤い瞳を冷ややかにして、私の首筋を撫でてくる。
「私とはしてないのに?」
「……っ?!」
ごつっ、ごつっ、喉の奥を付くお菓子に、吐き気がして、とにかく止めさせようと手を伸ばした。
肌を掴むと、爪で怪我をさせてしまうと咄嗟に服を掴み、引きずる。
彼女はどうした事か抵抗せずに、その細い四肢をあっさりと私に差し出した。
ばしゃんっ、と盛大な水音が響く。
「―――ずるい」
ポタポタと。
ぱしゃぱしゃと。
ぶくぶくと、私にぎゅうっと抱きつぶされて、ぬえが声を荒げる。
「ずるい! ………ずるいずるいずるいずるいッ! 何よそれ! 最悪! 鼠と寅が、ムラサを明け渡せとか言って、変な勝負になって、でも、ムラサの事だから絶対、誰とも何もないって、覗いてたのに……ッ!」
混乱する私の肩に、ぬえの拳が何度もぶつかる。
「ムラサは誰とでもそーいう事ができるって事?! じゃあ、何で私にはしないのよ!?」
「ちょっ、…えぇ? 待って、待って待って! 混乱しているから!?」
「うるさい死ね! 死んで死んで動かなくなって私のになっちゃえ! この馬鹿幽霊!」
ガリッと鎖骨を思い切り噛まれて、痛みに思わず涙が滲んでくる。
さっきから、人の腕の中でじたばた暴れてくるわ、叫ぶわ、殴るわで、最後はこれである。
もぅ、理解とか思考とか追いつかないし、本気で泣いちゃいそうだった。
「……ぅう、ぬえ?」
「……」
まるで赤ちゃんみたいに、鎖骨に牙を刺したまま動かなくなるぬえ。お湯に血が落ちていって、私が最後で良かったと、変な安心をする。
駄々っ子みたいになられると、まるで、私が悪い様な気にさせられて、焦りと困惑でどんどん私は悪くないなんて自身が萎んでしまう。
だから、私は小さくなって、ぬえをお湯の中で抱きしめた。
お湯の中だと、ぬえの服は少しごわごわしている。
「……ぇと。ぬえ」
「………」
「なんていうか、ごめん」
「……よく分からないのに、謝らないでよっ」
もっともな言葉に、更に小さくなって。ぅぐっ、と息が詰まる。
しかし、どうしても、私が何をして、何が悪くて、何でそこまで怒っているのか、幾ら考えても届かないのだ。
答えは、今の私には遠すぎる。
「あの、さ。……どうしたら許してくれる?」
だから、恥ずかしながら、ぬえに選択を委ねる。
私自身はどう動いても、それはもう悪化の道を辿る様にしか思えなかったのだ。
ぬえは、私の言葉にぴくりと反応して、鎖骨からやっと唇を離した。
鎖骨は赤く変色し、血が流れている。
ぬえは、私の頬を両手でおさえて、しっとりと、硬い声で不思議に言った。
「―――じゃあ、私にもキスをして」
甘く、でも初々しい酸っぱさを感じる声だった。
「―――え?」
私は思わずぬえの唇を見て、
この空気が、頬ではなく唇にしろ、と言っているのだと感じて、理解して、柔らかな赤い膨らみを、数秒凝視してしまう。
思わず、喉を鳴らしながら私は言った。
「無理ッ!!」
と。
その後、数秒停止したぬえに、本気で泣かれてしまった。
怒られるよりも堪えて、部屋に帰るに帰れず、ずっと屋根の上で過ごした。
なんて、とても長くなったけれど。
私が気付いたこと。
口に物を咥えると、端から食べるのは当たり前だという、そういう驚くべき常識の事。
だから、別にあれはおかしい事では無く、常識無くうろたえた私が未熟だっただけなのだと、そういう結論。
昔は考えられなかったけど。
山の巫女さんが「小傘さんと私以外に通じる常識ですね」と笑顔で言っていたので、そうだったのかと目から鱗の心境である。
今度、私以外にそういう癖をもっている誰かがいたら、やってみようと思う。
でも、私はやられると困るので、暫くは本当に気をつけようと心から決めた。
最後に、ぬえとぎくしゃくしている。
……当然だけど。
で、でも、ぬえの唇にキスなんて本当に無理だ。
いやいや、無いから! そんなの絶対にありえない!
っていうか出来るわけがないじゃないか……っ!
……は、恥ずかしいから。
まったくこの船長はっ!
それにして沢庵でポッキーゲームてw
めっちゃ悪過ぎるwww!
ナズーリンの決死の覚悟を踏みにじるとは……! 許さん!!
船長がぬえを意識し始めましたね、これからどうなるか楽しみです。
だから、こんなジゴロじゃなくて俺と(ry
一輪不備な……。
ここ数話で一輪が一歩先へ進んでんのかと思いきや…
船長はそろそろガチで聖辺りに叱られるべき
そこで閃いた
聖が船長にプロポーズすればいいんじゃね?
聖が船長を嫁にすることによって一夫多妻制も抑えられ、この視聴者を殺しにくる甘酸っぱい不毛な争いに終止符が打たれるのだ!
うん、混乱してるのは分かってる
退治してくださーい
船長が大悪霊過ぎて、魅魔様が霞んできた
そしてちび一輪の無邪気な積極性にニヤニヤ
それにしてもこのキャプテンは悪すぎる。
全力でお願いします
なにそれ最高すぎる
そして、その後の会話が味気無い・・・・・・どー考えてもラブラブな熟年夫婦です、ありがとうございましたwww
あと人工呼吸は酷すぎるww
仲間外れで寂しそうな聖さんは俺が慰めておきますね
あと船長は錨を抱えて溺死しろ
あるあrねーよwww
とりあえず、ぬえは泣いていい。あと船長は殴られて然るべき