Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

いい天気

2010/02/27 19:51:44
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昼なお暗いこんなところにわざわざ好んでやってくるのは、どこかしら性格や人格の破綻した、嗜好のまともでなさそうな人間ばかりだろう。
無縁塚。
縁起の悪いところである。
それ以上に、危険と言えば危険でもある。
実際、よくどっかの死神が、さぼって平気で一服をしていたりするし、最近地上に出てきた火車猫が、何の問題もない顔で死体あさりをしていたりする。
ここはそういう連中や、死肉めあての禽や妖怪がうろつく、つまりそういうところだ。
たとえ明るくても、絶対に足を踏み入れたくはない。まともな、日向側の世界に生きる神経のものなら、まずそう思うだろう。
そんなところを、小兎姫は、平気な顔でうろついていた。
きょろきょろと足もとに目を配りながら、歩を進めていく。
不気味そうな様子はなく、けっこう余裕ありげでけろっとしている。
たしかに、不気味と言えばこれ以上なく不気味なところである。
平気でそこらに野ざらしの死体や何かが転がっている。それを、群れた禽がついばんでいる。
この幻想郷という平和な土地でも、無縁仏などという気の毒な者が出てしまうものなのか、その多くは骨になって墓にも入れられず放置してある。
見た目的には、それほどぎつくないとしても、普通見る者は、なにかしら感じるところがあるようなものだ。
が、小兎は平気そうである。
(この匂いは何とかして欲しいわよねー。まったく鼻がどうにかなっちゃうわ)
一人でぶつぶつ言いつつ、すたすたと進んでいく。
常人が嗅いだら三秒で戻しそうな臭いがあたりを覆っているが、やはり小兎は平気な顔である。
臭いが平気なわけではなくて、たんに無視しているのだった。
そういうことができる性格なのである。
(でも来て正解だったわね。ここに変わった物がいっぱい転がってるって本当だわ。いったいなんに使うのかしら、ああいうの)
台車かなにかでも持ってくればよかったのだが、さすがにここは、人里からだと遠い。
それに、今日は噂を聞いて、様子見がてらに来てみただけである。
大きな物は、眺めて感心するくらいが、関の山だった。
(こんな宝の山だって言うんなら、台車くらい引いてきてもいいわねー。暇が出来たらまたこよーっと)
うきうきと上機嫌になりつつ、小兎は骨が転がる間を、軽い足どりで歩いた。
今度は荷台を引いて、あれやこれやと持ち帰ってやろう。家で眺める楽しみを思えば、苦労も苦労にはならないものだ。
とりあえず、今日はもう少し下見するつもりだった。今度はあっちの木から向こうらへんに、足を向けてみよう。そう思いつつ、足をむけかけた。
そのとき、どこかから音がした。からころから。
「うん?」
小兎は、音のしたほうを見た。大体の方向を、目で探る。生きている者のいないだだっ広いところなので、音がするとよく響くのだ。
なにやら、手押しの車を押している、黒いワンピース姿の人影がある。背の低めな、赤毛をお下げ髪に結った娘である。
人間か、と一瞬思ったが、頭になにかの動物の耳を生やしている。
猫か。
(妖怪か何かかしら? 猫娘?)
小兎が思いつつ、足を止めていると、目が合った。
猫娘はちょっと眼をぱちくりさせた。
小兎をながめて、意外と可愛い声で言う。
「……あらら? こんなとこに、生きてる人間なんて。珍しいわね」
尻の尾をゆらしつつ、言ってくる。
小兎は返して言った。
「そう言うあなたは、人間じゃないみたいね。化け猫かなにかかしら?」
「まあ、そんなところ。なに? お姉さん、こんなところでなにしてるの? ここはたいがい辛気くさいし、人間には危ないところじゃない? 私みたいなのもうろついてるしさ」
娘が言う。
小兎は言った。
「今の妖怪なんて、そんなに無闇に襲ってこないでしょ。一昔前は、まだ狂暴だったって聞いたことあるけどね。今じゃ里の人間なら、怪我させられるのも稀なくらいじゃない」
「まーそうだね。ここの妖怪は、ほんと大人しいのばっかりみたいね。ふぬけちゃってるとも言うんだろうけどさ、悪く言うと」
猫娘は言ってくる。
小兎は、聞きながら、娘が転がしている荷台のほうをちらりと見た。
「あなたはこんなところでなにしてるの? もしかして珍しいもの拾いに来たとか?」
「んん? あー。うんまあ、珍しいものじゃあないけどね。拾いに来たのはそうよ」
「へー。なに拾ってるの? ちょっと見せてよ」
すたすたと、小兎は歩み寄った。
猫娘はちょっと笑って頬をかいた。
「ありゃりゃ。ずいぶん強引なお姉さんね。あたいが怖くないのかしら?」
「襲われる前から怖がっていてもしょうがないじゃない。襲われたらたぶん泣いて逃げ出すけどね」
「ふーん。変わったお姉さんね」
小兎は、荷台をのぞきこんだ。
何が入っているのだろう、と思っていたが、急に荷台を見て、眉をひそめる。
「……。ん? なにこれ」
「あれ? 見たことないの? お姉さん。こういうの。うーん見てもなかなかわからないもんかしらね? 自分の身体にも同じのついてるじゃない? お姉さんのはなかなか綺麗なもんだね。死体じゃないのが惜しいわ、ほんと」
ふむ、と、聞きつつ小兎は考えた。
そして、やがて気づくと、眉をひそめて口を覆う。
腐臭だ。
鼻が麻痺していて気づかなかったらしい。かなり強い。
いかにも生のもの、という感じがする。
一瞬、さすがに吐き気がした。
「これ……死体? 人の」
「そうだよ。これはねー、ここらへんが二の腕かな。そんでここが歯。野ざらしになってる間に、かなり喰われたみたいだね。このご時世に生肉好むなんて、下品な奴もいるもんだけど」
「……。うーんとね。ちょっと待ってちょうだいね」
小兎は娘に制止をかけて、死体から目を逸らした。すーはー、と深呼吸して、とんとん、と首の後ろを叩く。
「……ふう。あー。……うぅ。あやうくお昼ご飯もどすところだったわ。ちょっと、なんてもの見せてくれるのよ」
「お姉さんが勝手に見たんじゃない。あたいは知らないわよ」
「嘘はダメ。あなた知ってて面白がってたでしょ。私はそういうのわかるのよ。まったく。いくら妖怪だからって、あんまり人間をからかっちゃダメよ」
小兎は眉をひそめて諭した。諭された猫娘は、目をぱちくりとさせた。
気まずげに言う。
「あー。ねえ……お姉さんさ。ひょっとして、人からかなりヘンって言われるでしょ」
「誰がヘンなのよ。あなたの恰好のほうがよっぽどヘンよ。失礼ね」
「あ、やばい、ヘンな人だわ……やだ、あたい怖い」
猫娘が言う。
小兎は、構わず、険しい顔になって詰め寄った。荷台をぴっと指さして言う。
「それより誤魔化そうとしても無駄よ! どういうつもりなの!? あなた。こんなもの集めたりして! まさか変質者? そういう性癖があるとか?」
猫娘はちょっとしどろもどろになった。ひるみつつ言う。
「えっ。いや、まあ性癖っちゃ性癖というか、趣味と実益をかねてというか……ていうよりか、いや、まあ結局仕事なんだけどね」
「仕事? 仕事ですって? 嘘おっしゃい! そんな仕事があるもんですか。腐りかけた死体なんて集めて一体、はっ、……まさか、腐肉人体愛好家の闇取引……裏で売買……密売!? なんてことなの……私が知らない間に、この里の裏でそんなことが……!!」
「ちょいとちょいとちょいとちょいと。お姉さん?」
猫娘は言った。だが、すでに小兎は聞いていなかった。すでに一人で盛りあがっている。険しい顔で、何事かぶつぶつと呟いている。
「……なんてことなの……ああ、もう、本当に……度しがたいわね……まったく……これだから犯罪は悪なのよ……一見平和な顔を見せておきながら、その実騙し討ちするかのように、影から突然襲いかかってくる……卑劣。卑劣だわ。そうかこれは私にたいする挑戦ね。今気づいたわ。今……」
険しい顔で何事か呟いている。
猫娘のその時の主観で言えば、なにか恐ろしくこの人間を説得するのは困難なように見えた。猫娘はそうそうにあきらめたようだ。
「あ。じゃあ、あたいは仕事があるんで、これで――」
そそくさと立ち去ろうとする。小兎は黙って足早に歩み寄った。そして、娘の腕を掴むと、持っていた手錠をがちゃりとかけた。がちゃり、ともう一方がはめ込まれて、錠が鳴る。「n、nyan? にゃん?」
猫娘は目をしばたいた。
小兎は厳しい顔つきで言った。
「あなたに詳しく話を聞きたいわ。ちょっと里まで来て貰います」
「え? え? え? え? なに? なに? 一体これ。ちょちょちょちょっと。お姉さん?」
聞こうとするが、小兎は厳しい口調でそれを制した。
「ダメよ! 抵抗しては! あなたの罪を重くするわ。大人しくついてきて洗いざらい喋って楽になりなさい。大丈夫。カツ丼くらいなら奢ってあげるから」
「しゃ、喋れって! いや、ちょっとお姉さん! 待って! 待ってちょうだい!」
「話はあとで聞くわ。さあきりきり歩きなさい」
「いや困るのよ本当に。あたい仕事の途中なんだから。さとり様に怒られちゃうわよ。いや、ほんと。ね、本当こういうのカンベンして。そうだ新鮮な死体あげるから。いいのあるんだよ」
「買収は受けつけません。ついに尻尾を見せたわね。いえ、尻尾なら最初から見えているとかそういうのはいいからね。ふむふむ、さとりと。それは誰? あなたの上にいる人? そうか、なるほど……さてはそれが黒幕ね。このヤマ、思ったよりも根が深そうね……燃えてきたわ……」
「うわあああんちょっとォ!! 話聞いてよォ! 何なの、この人ォ! 助けてェ!!」
猫娘は叫んだが、時すでに遅く、そのまま里まで連れていかれたという。
こうして平和が戻った。
いや、もともと平和だったのだが。
うーん。今日もいい天気だ……
無言坂
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
イイテンキダナー
2.名前が無い程度の能力削除
ふぅー、ほんと、いい天気だー
3.奇声を発する程度の能力削除
いや、ほんとに、いい天気…
4.名前が無い程度の能力削除
月が綺麗だなぁ…

明日もいい天気だよ、
きっと…。
5.名前が無い程度の能力削除
( ^ω^)きっと明日はいい天気だお
6.名前が無い程度の能力削除
イイテンキダナー
7.名前が無い程度の能力削除
いやぁ、今日もいい天気だったね
8.名前が無い程度の能力削除
あぁ、いい天気だな
9.名前が無い程度の能力削除
ああ、リアリィーにナイスなウェザーだな
ムーンがビューリホーウだぜ