なんだこれ……!?
深い眠りから覚めたら、私の家の周辺に数え切れないほどの十字架が突き刺さっていた。
異様な光景だ、私はいったいどんな宗教に属していると思われるんだ。
急いで着替えて外を確認すると、十字架と言っても一種類だけじゃないらしい。
木製や、鉄製、半透明のガラスのような素材でできたものもある。
「なんだってんだ?」
十字架ねぇ…
覚えがあるような無いような……あー、思い出せない。
ともかくこんなことをする悪戯野郎は誰だ?
この人形遣いマーガトロイドを怒らせたことを後悔させてやる。
とりあえず落ち着いて一息、そこで気がついた。
私の家は見ようによっては墓地に立つ廃屋だ。ゾンビやスケルトンが出てくる前にとっとと隊長のボウシを手に入れてしまいたい。
木製の十字架をチェックしていると、綺麗な木彫りかに見えたが一部で不自然にかけている部分があった。
触ると刺さりそうなまるで虫がかじった様な削れかたをしてる。
ん…?
見逃さなかった、木彫りの十字架の足元に虫がはっていた。
そもそも今は冬、虫は土の中にでもいるのが道理。つまりこの虫は、十字架が立てられたときに偶然地中から現れたか、虫を呼び出す力に操られてここにいるってこと。
前者ならお手上げだが、後者なら覚えがある。
「リグル、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「え?な、なに?」
私が声をかけただけで、何を驚いているんだか。
後ろめたいことがあると言っている様なものだな。
「貴女、私の家の周りに十字架立てた?」
「イヤだなぁ、そんなことしないよ」
「…そう」
「そもそも、そんなことしたって、何もいいことないでしょ?」
「そうね」
喋りすぎだよ、リグル。
自分にそんなことをする理由はない、だから私を犯人とは断定できない。
自分でそういったようなものだ。
「虫がさ」
「………む、虫が?」
「何故かいたのよね」
「そりゃ……虫くらいいるんじゃない?」
「そうよね、でも、その虫…どこかで見覚えがあるのよ」
リグルの顔色がどんどん悪くなっていく、追い詰められている。
こんだけ嘘をつくのが苦手な奴そうそういないな。
「それにさ、今冬じゃない?」
「…うん」
「………ねぇリグル」
「……」
「別に私は怒ってるわけじゃない、むしろあまりの奇行っぷりに感心さえしてるわ」
「う、うん…」
「貴女でしょ?」
「……うん」
なんとも早い自供だった。
これだけの証拠で自供まで追い詰めることができたんだから、何かボーナスポイントが欲しいところだ。
「正確には、犯人は私だけじゃないよ、私とチルノと大妖精」
「ふーん……で、いったいどうしてあんなことしたの?」
「……それなんだけど、実は私も知らないんだ」
「ええ?」
なんだそりゃ。実行犯が知らないだって?
「大妖精にこうしてくれって頼まれたんだ、あんたの家の周り、正確にはあんたの家の近くにある大木の周りに十字架をいっぱい立てて欲しいって」
「……なんとも不気味な申し出だわ」
「大妖精が頼みごとをするなんてただ事じゃないから、私も断れなかったんだ……大妖精のところに行くなら私もいく、流石にずっと気になってたんだ」
じゃあ次は、大妖精のところだな…
「こんにちわ、大妖精」
「あ……こんにちわ、リグルちゃんも、こんにちわ」
「うん…」
大妖精は落ち着いていたが、私が来るのをなんとなく予想していたんだろう。
だったら話は早い、さっさと本題に入ろうじゃないか。
「始めに言っておくけど、私は別に怒ってはないから」
「……はい」
「知りたいのはどうしてあんな奇怪なことをしたのか」
「………そのことは」
大妖精はぐるりと振り返り、木と木の間を指差した。
間抜けなことに、誰かが木に隠れているんだが、羽がはみ出していて誰が隠れているかの特定までできる。
「チルノちゃん、貴女から話さないと」
「……うん」
素直に私達の前に現れて、まずチルノはしばらく俯いて沈黙していた。
それだけでなかなか珍しい光景で、私は少々驚いていた。
いつまでもこうしてはいられないと、大妖精がチルノの背中を軽く押す。
「……リグル、ごめんなさい」
「へ?」
突然謝られたリグルは唖然とした。当たり前だ、謝るなら私にだろ普通。
でも大妖精も驚く様子はない。
「リグル、少し前に、私に大きなカブトムシをくれたでしょ?」
「あ、ああ……あげたね、冬だけど全然元気な変なやつ」
「あの子…うっかりしてて、寝ぼけて凍らせちゃって……」
「……」
「解凍させても動かなくて……死んじゃったの」
………なんて恐ろしいことをするんだこの妖精。
大きいカブトムシにあこがれる気持ちがわからないとは言わないが、まさかそれを凍らせて死なせてしまうなんてことがあるのか。
「……そうか」
「それでね、死んだら土の中に埋めてあげるのがいいって思って、土の中に入れてあげたんだけど……あたい、本当に悪いことしちゃったって思って、大妖精に話したら、その子のために墓を作ってあげたらって言われたんだ」
「…そうだね、お墓くらい作ってあげないと」
「でも………あたい、忘れちゃって、埋めたところ」
なんだそれ………いや、いい、こいつがそういうところで未熟なのは知っている。
リグルもそれを察してか特に驚いた様子はない。
「それでね、思いつくところ一面にお墓を立てれば、きっとその子のところにも当たるかなって思って……いっぱい鉄とか集めて、いくつも作ったんだけど自信がなくて、リグルなら虫を使って木からじゅうじかいっぱい作れるかなって思って……頼んでもらって」
「なるほどね…」
「怪しいと思わなかったの?リグル」
「頼んできたのは大妖精だったから」
「……あたいが頼んだら怪しまれるだろうなって思ったから」
そういところの頭は回るんだな。
悪戯しなれてるからか…
「チルノ、あんたに悪気が無かったのは知ってるよ、でもさぁ、生き物を飼うんだから、それなりの覚悟が必要だって説明したよね?」
「うん…」
「虫ってのはかなり脆いんだ、体格差を考えればそれは一目瞭然だ」
「…うん」
「それにあんたは普通の妖精より遥かに力が強い、いい加減、力の使い方ってのを学ぶべきじゃないかな」
「……」
キツい言い方だが、そのとおりだ。誰かがこうして強く言わないと、子供は反省できない。
それよりもさっきから気になっていたことがある、どうして大妖精は一回もこいつを擁護しないんだ?
大妖精はこうなった理由を知っているわけだし、チルノのことを手伝ったのだから好意的にしているものだと思っていた。
私の集中力はそっちに持っていかれた。
結局、リグルもチルノをそれ以上怒ることはなかった。
本人に本当のことを告げることを避けたが、カブトムシを可愛がってその死を深く悲しんだことは紛れも無い事実だったからだろう。
十字架はゆっくり処分させていくいことにした、一気に片付けさせるのは大変だろう。
「大妖精」
「あ、はい」
「ちょっと気になったことがあったんだけど、いい?」
「ええ、なんですか?」
「……貴女って、意外と冷たい?」
「え?」
そういわれても、大妖精には思い当たる節はないだろう。
わけがわからないという顔をされた。
「いやね、あの子が咎められているのを、貴女は冷静に見ていたからさ」
「ああ……」
「私はてっきり庇ってあげると思ってたから尚更驚いたよ」
「…冷たいと言われれば、そうですとしか言えませんね」
「私は、チルノちゃんがそうして欲しいって言うから頼まれたとおりにしました、でもそれが絶対にいい結果を招かないことは知ってました」
大妖精の表情は複雑で、性格に会わないことを無理して言っているように見えた。
「そうすることで、チルノちゃんのしたことでどれだけの問題が起きて、自分が咎められなければいけないか知って欲しかったんです」
「……大人ね、貴女」
「違いますよ、私は大人なんかじゃありません、チルノちゃんのこと本当はとっても庇ってあげたかったけど、絶対に、あそこでは庇っちゃいけないって我慢してました」
「………そーいうのを、大人っていうのよ」
大妖精に近づいて、頭を撫でてやった。
照れて俯く姿は可愛らしくて、大人だなって言ったことを撤回したくなった。
「貴女ってなんでそんなにいい子なの?ウチで飼いたいわ」
「い、いや……ですよ」
「冗談よ」
甘えたい盛りの子に甘えさせてあげない妖精の子達は、罪作りだと思う。
本人がそれでいいと言っているんだから、今のうちはそれでいいだろう。
でも本当にこの子が気の毒になったら、私はこの子を家で本気で飼うつもりだ。
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深い眠りから覚めたら、私の家の周辺に数え切れないほどの十字架が突き刺さっていた。
異様な光景だ、私はいったいどんな宗教に属していると思われるんだ。
急いで着替えて外を確認すると、十字架と言っても一種類だけじゃないらしい。
木製や、鉄製、半透明のガラスのような素材でできたものもある。
「なんだってんだ?」
十字架ねぇ…
覚えがあるような無いような……あー、思い出せない。
ともかくこんなことをする悪戯野郎は誰だ?
この人形遣いマーガトロイドを怒らせたことを後悔させてやる。
とりあえず落ち着いて一息、そこで気がついた。
私の家は見ようによっては墓地に立つ廃屋だ。ゾンビやスケルトンが出てくる前にとっとと隊長のボウシを手に入れてしまいたい。
木製の十字架をチェックしていると、綺麗な木彫りかに見えたが一部で不自然にかけている部分があった。
触ると刺さりそうなまるで虫がかじった様な削れかたをしてる。
ん…?
見逃さなかった、木彫りの十字架の足元に虫がはっていた。
そもそも今は冬、虫は土の中にでもいるのが道理。つまりこの虫は、十字架が立てられたときに偶然地中から現れたか、虫を呼び出す力に操られてここにいるってこと。
前者ならお手上げだが、後者なら覚えがある。
「リグル、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「え?な、なに?」
私が声をかけただけで、何を驚いているんだか。
後ろめたいことがあると言っている様なものだな。
「貴女、私の家の周りに十字架立てた?」
「イヤだなぁ、そんなことしないよ」
「…そう」
「そもそも、そんなことしたって、何もいいことないでしょ?」
「そうね」
喋りすぎだよ、リグル。
自分にそんなことをする理由はない、だから私を犯人とは断定できない。
自分でそういったようなものだ。
「虫がさ」
「………む、虫が?」
「何故かいたのよね」
「そりゃ……虫くらいいるんじゃない?」
「そうよね、でも、その虫…どこかで見覚えがあるのよ」
リグルの顔色がどんどん悪くなっていく、追い詰められている。
こんだけ嘘をつくのが苦手な奴そうそういないな。
「それにさ、今冬じゃない?」
「…うん」
「………ねぇリグル」
「……」
「別に私は怒ってるわけじゃない、むしろあまりの奇行っぷりに感心さえしてるわ」
「う、うん…」
「貴女でしょ?」
「……うん」
なんとも早い自供だった。
これだけの証拠で自供まで追い詰めることができたんだから、何かボーナスポイントが欲しいところだ。
「正確には、犯人は私だけじゃないよ、私とチルノと大妖精」
「ふーん……で、いったいどうしてあんなことしたの?」
「……それなんだけど、実は私も知らないんだ」
「ええ?」
なんだそりゃ。実行犯が知らないだって?
「大妖精にこうしてくれって頼まれたんだ、あんたの家の周り、正確にはあんたの家の近くにある大木の周りに十字架をいっぱい立てて欲しいって」
「……なんとも不気味な申し出だわ」
「大妖精が頼みごとをするなんてただ事じゃないから、私も断れなかったんだ……大妖精のところに行くなら私もいく、流石にずっと気になってたんだ」
じゃあ次は、大妖精のところだな…
「こんにちわ、大妖精」
「あ……こんにちわ、リグルちゃんも、こんにちわ」
「うん…」
大妖精は落ち着いていたが、私が来るのをなんとなく予想していたんだろう。
だったら話は早い、さっさと本題に入ろうじゃないか。
「始めに言っておくけど、私は別に怒ってはないから」
「……はい」
「知りたいのはどうしてあんな奇怪なことをしたのか」
「………そのことは」
大妖精はぐるりと振り返り、木と木の間を指差した。
間抜けなことに、誰かが木に隠れているんだが、羽がはみ出していて誰が隠れているかの特定までできる。
「チルノちゃん、貴女から話さないと」
「……うん」
素直に私達の前に現れて、まずチルノはしばらく俯いて沈黙していた。
それだけでなかなか珍しい光景で、私は少々驚いていた。
いつまでもこうしてはいられないと、大妖精がチルノの背中を軽く押す。
「……リグル、ごめんなさい」
「へ?」
突然謝られたリグルは唖然とした。当たり前だ、謝るなら私にだろ普通。
でも大妖精も驚く様子はない。
「リグル、少し前に、私に大きなカブトムシをくれたでしょ?」
「あ、ああ……あげたね、冬だけど全然元気な変なやつ」
「あの子…うっかりしてて、寝ぼけて凍らせちゃって……」
「……」
「解凍させても動かなくて……死んじゃったの」
………なんて恐ろしいことをするんだこの妖精。
大きいカブトムシにあこがれる気持ちがわからないとは言わないが、まさかそれを凍らせて死なせてしまうなんてことがあるのか。
「……そうか」
「それでね、死んだら土の中に埋めてあげるのがいいって思って、土の中に入れてあげたんだけど……あたい、本当に悪いことしちゃったって思って、大妖精に話したら、その子のために墓を作ってあげたらって言われたんだ」
「…そうだね、お墓くらい作ってあげないと」
「でも………あたい、忘れちゃって、埋めたところ」
なんだそれ………いや、いい、こいつがそういうところで未熟なのは知っている。
リグルもそれを察してか特に驚いた様子はない。
「それでね、思いつくところ一面にお墓を立てれば、きっとその子のところにも当たるかなって思って……いっぱい鉄とか集めて、いくつも作ったんだけど自信がなくて、リグルなら虫を使って木からじゅうじかいっぱい作れるかなって思って……頼んでもらって」
「なるほどね…」
「怪しいと思わなかったの?リグル」
「頼んできたのは大妖精だったから」
「……あたいが頼んだら怪しまれるだろうなって思ったから」
そういところの頭は回るんだな。
悪戯しなれてるからか…
「チルノ、あんたに悪気が無かったのは知ってるよ、でもさぁ、生き物を飼うんだから、それなりの覚悟が必要だって説明したよね?」
「うん…」
「虫ってのはかなり脆いんだ、体格差を考えればそれは一目瞭然だ」
「…うん」
「それにあんたは普通の妖精より遥かに力が強い、いい加減、力の使い方ってのを学ぶべきじゃないかな」
「……」
キツい言い方だが、そのとおりだ。誰かがこうして強く言わないと、子供は反省できない。
それよりもさっきから気になっていたことがある、どうして大妖精は一回もこいつを擁護しないんだ?
大妖精はこうなった理由を知っているわけだし、チルノのことを手伝ったのだから好意的にしているものだと思っていた。
私の集中力はそっちに持っていかれた。
結局、リグルもチルノをそれ以上怒ることはなかった。
本人に本当のことを告げることを避けたが、カブトムシを可愛がってその死を深く悲しんだことは紛れも無い事実だったからだろう。
十字架はゆっくり処分させていくいことにした、一気に片付けさせるのは大変だろう。
「大妖精」
「あ、はい」
「ちょっと気になったことがあったんだけど、いい?」
「ええ、なんですか?」
「……貴女って、意外と冷たい?」
「え?」
そういわれても、大妖精には思い当たる節はないだろう。
わけがわからないという顔をされた。
「いやね、あの子が咎められているのを、貴女は冷静に見ていたからさ」
「ああ……」
「私はてっきり庇ってあげると思ってたから尚更驚いたよ」
「…冷たいと言われれば、そうですとしか言えませんね」
「私は、チルノちゃんがそうして欲しいって言うから頼まれたとおりにしました、でもそれが絶対にいい結果を招かないことは知ってました」
大妖精の表情は複雑で、性格に会わないことを無理して言っているように見えた。
「そうすることで、チルノちゃんのしたことでどれだけの問題が起きて、自分が咎められなければいけないか知って欲しかったんです」
「……大人ね、貴女」
「違いますよ、私は大人なんかじゃありません、チルノちゃんのこと本当はとっても庇ってあげたかったけど、絶対に、あそこでは庇っちゃいけないって我慢してました」
「………そーいうのを、大人っていうのよ」
大妖精に近づいて、頭を撫でてやった。
照れて俯く姿は可愛らしくて、大人だなって言ったことを撤回したくなった。
「貴女ってなんでそんなにいい子なの?ウチで飼いたいわ」
「い、いや……ですよ」
「冗談よ」
甘えたい盛りの子に甘えさせてあげない妖精の子達は、罪作りだと思う。
本人がそれでいいと言っているんだから、今のうちはそれでいいだろう。
でも本当にこの子が気の毒になったら、私はこの子を家で本気で飼うつもりだ。
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最後の一文に邪なときめきを覚えてしまいました
おかげでこの作品の大ちゃんもアリスより長身なイメージに。
心も体も大人妖精!
妖精が以外と大きいのに驚いたのは私も一緒です。
もう紅で妖精メイドを落とせないじゃないか!
ちょっと(も)絶えるプレイしちくる
そしてきちんと叱ってあげてるリグルも凄いな感じた。