マエリベリー・ハーンは某国の名家、ハーン家の末裔である。
ハーン家は代々特異能力者を生み出す家系であった。
マエリベリー・ハーンもまたその例に漏れず、霊能力を有していた。
一切の素性がヴェールに包まれ謎の多い一族であったのだが、
ハーン家に伝わる厳格な規律は世の中の知るところとなっていた。
いや、その規律のためにハーン家が知られるようになった、と言った方が正しいだろう。
ハーン家はその特異能力で社会に貢献すべく、各地に一族の者を派遣しその役割に当てることを戒律としていた。
その任務は二十歳の成人を迎えてから務めるものとなっている。
留学生として気ままに大学生活を過ごしていたマエリベリーだったが、
二十歳の誕生日を迎えるとともに、その運命の波に否応なく呑まれていった。
そしてマエリベリーが派遣された先は――
『爆発物処理ハーン』
「ちょっと待てい!」
蓮子はすかさず突っ込みを入れた。
「ハーン家が霊能力を社会貢献に利用しようとしてるのはいいとして、どうして爆発物処理班なのよ!?」
「爆発物処理班じゃないわ爆発物処理ハーンよ」
「違わないでしょ! そもそもメリーの能力が爆発物の処理とどう関係してるのよ」
「私だって、自分が好きで学んでいる心理学を活かせるハーンへ配属されたかったわよ!」
マエリベリーは目の端に涙を浮かべて、蓮子に視線を向ける。
「CSI:科学捜査ハーンにね!」
「誰が上手いこと言えと」
「ちなみに、ご先祖様が配属されたのは薩摩ハーン」
「何それ!?」
「でも、これはしかたないことなの。配属先は自分で決められるものじゃないし」
「だからって、どうして爆発物処理ハーンなのよ。もっと安全なハーンでもよかったでしょうに……」
「だから、しかたないことなのよ。これは、王様ゲームで決まったことだから……」
「そう、それはしかたないわね……」
蓮子は納得した。なぜなら「お~さまのいうことは~ぜったい!」だからである。
王様ゲームってなんだよ。リア充爆発しろよ。
「そもそも、ハーン家の決まりやら爆発物処理ハーンやらを、どうして今ここで言うのよ」
その言葉には、なぜ今まで黙っていたのかという意味も含まれていた。
「蓮子、今私は秘封倶楽部のマエリベリー・ハーンとしてでなく、爆発物処理ハーンのマエリベリー・ハーンとしてここにいるのよ」
「それはどういう……」
「いい? 落ち着いて聞いてね……」
蓮子はごくりと唾を飲み込むと、心を落ち着かせるためヒッヒッフーと深呼吸をした。
マエリベリーは言った。
「蓮子、あなたの服に爆弾が仕掛けられてると通報が来たわ。早く脱いで」
「私はメリーを警察に通報したい」
「緊急事態だからしかたないわね……強硬手段を取らせてもらうわ」
「ちょ、何するの!?」
「あなたのためだから。あなたのためだから」
「ウザすぎる! 外為オンラインのCMみたいに言うな!」
メリーは瞬く間に蓮子の服を剥ぎ取った。
「芥川の羅生門を読み込んでイメトレした甲斐があったわ……」
「どうな方向にイマジネーション傾けてるのよ!?」
服を剥ぎ取られた蓮子は、全裸である。
「服に爆弾が仕掛けられてるのはいいとして、何かその、隠すものがないと困るわ……」
「それもそうね……」
マエリベリーは蓮子の衣服の中でも爆発物の混入がないと見られた、帽子、ネクタイ、靴下の着用を許可した。
「火薬の臭いはしない。蓮子の匂いしかしない」だそうである。
この判別能力は爆発物処理ハーンとして磨いた、くんかくんかの賜物である。
蓮子は帽子とネクタイと靴下のみ着用だったが、幾分か冷静さを取り戻した。
この装いは蓮子が思考を働かせるときによく見られる装いである。
その時だった。
「あっ!」
マエリベリーが素っ頓狂な声を上げた。
「どうしたの、メリー?」
「今、境界が見えたの……」
「な、何の境界なの?」
マエリベリーは震える声で、その答えを紡ぎだした。
「起承転結の、転と結の境界よ……」
「ということは、つまり――」
現在は『結』の段階に入っているということである。
「――もうすぐ終わりってことでしょ!? こんな状況で結末といったら爆発オチしかないじゃない」
「これも、抗えぬ運命なのね。私がハーン家の一員である限り、この運命の輪から抜け出せない。結局私は、メビウスの輪の中で堂々巡りをするだけなんだわ……」
「そんな台詞はシリアス長編で言え!」
「蓮子の言う通り、爆発オチが濃厚ね。通報によると蓮子の服に仕掛けられた爆弾はあと数分で爆発するらしいし。爆発の規模は本州全土を壊滅させるほどの威力だと言われている。どこにも逃げ場はないわ……」
「あれ? それじゃ、全裸になった意味なくね?」
「私たちは運命を受け入れるしかないないのよ」
「どうして、こんな理不尽な運命に従わなくちゃいけないのよ……」
「しかたないわ。これも王様ゲームで決まったことだもの」
「そう、それはしかたないわね……」
マエリベリーは蓮子の手を握った。
爆発物処理ハーンとしてではなく、秘封倶楽部の一員として。
「最期のときくらいは、秘封倶楽部のメンバーとして迎えたいわ」
「いいの? 爆発物処理ハーンの仕事を放棄して。ハーン家の掟なんでしょ?」
「いいの。私はもうマエリベリー・ハーンじゃない。あなたのパートナー、秘封倶楽部のメリーよ」
「メリー……」
「蓮子……」
それから先は言葉など要らなかった。
少女二人は、熱い口づけを交わした。
ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。
ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。
ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。
ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。
ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。
ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。
ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。
ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。
ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。
ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。ちゅっちゅ。
ちゅっちゅどーん!(爆)
秘封倶楽部よ、永遠なれ――
第一部~完~
……もう何が何やらwww
羅生門って
いやー面白かったです!
メリーは俺か
誰が王様だったのかは知らんがもっとメリーの才能を生かせるとこに配属させるべきw
おいwww普段半裸なのかwww
時期によっては本当に爆発する人が多数発生する。
なんだこれは
あ……ほんまに爆発しちまったよ……w
面白かったので思わずコメント。ちゅっちゅおー