先日未明、魔法の森にて古道具屋を営む森近霖之助氏が何者かに襲われ、怪我を負うという痛ましい事件が起こった。幸い森近氏の命には別状はなく、近々仕事にも復帰できるとの事。現在森近氏を襲った犯人は未だ見つかっておらず、真相の解明が急がれる。
この事件について本紙の記者が独自に聞き込みを行った所、森近氏の友人である霧雨魔理沙さんが、森近氏と事件前最後に会話を行った人物と判明した。これが真犯人解明への手掛かりとなる事を祈り、以下に彼女へと行った取材の一部始終を記述する。
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……。
え? 香霖が襲われた事について何か知らないかって?
……。
聞き込みに回っても何も手掛かりがない、と。残念だったな、生憎だが私も知らないんだ。寧ろ私が教えて欲しいぐらいだぜ。
……。
私がこの事件に入れ込むのが珍しいか? まぁ今回は事情があってな……。
……。
あいつが誰かに襲われた直前、私はあいつの店に居たんだ。つまり犯人は私が店を出るのを見計らって事に及んだ訳だ。くそっ! 私ともあろう者が香霖が襲われるのをみすみす見逃すなんて!
……。
ああ、確かにお前の言う通りこんな事が起こるなんて例え神様だって予想出来ないだろうよ。自分を責めるのはお門違いだって事も理屈では判ってる、それでも理屈じゃ納得できないことだって有るんだぜ。
……。
事件直前に店で何をしてたかって? 別に特別な事は何もないぜ。ただ茶を飲みながらたわいもない会話をしてただけだからな。ええと……そう、あいつの湯飲みに書いてあった文字の話をしたんだ。確か私は香霖にこう言ったんだ。「香霖、その湯飲み『秋』の文字が抜けてるぜ。『春夏冬』になってる」ってな。
そうすると香霖は例のしたり顔でこう答えたんだ。
「ああ、この湯飲みはこれが正しい姿なんだよ。『春夏冬』と書いて『あきない』と読ませるんだ。商売人たる僕には全く以て相応しい湯飲みだろう?」
その香霖の言葉に私は珍しく感心したんだった。何しろあいつの蘊蓄が為になる事なんて殆ど無い訳だからな。それで私は「なるほど、香霖の蘊蓄も偶には聞いてみるもんだ。『秋』が無いから『あきない』ね」と言ったんだ。
その後、蘊蓄を褒められたのが効いたのか香霖は心底嬉しそうに言ってたっけな。
「そう、『秋』は全くの不要なのさ」
ってさ。……あいつと会話したのはこんなもんだったかな。その後私が店を出てから事が起こったって訳だ。もう良いだろ? 何か判ったら私にも知らせてくれ。私の方でも色々と探ってみるからさ。
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繰り返し書くが、この事件の犯人へと繋がる手掛かりは未だ何一つ判明していない。一刻も早い真相解明を願うばかりである。
犯行当時の状況をもっと教えて頂きましょうか
例えば、「芋の香水の匂いがしなかったか」とか
はたしてこの謎を解明できる人物が現れるのか…
面白かったです(^-^)/
でもこれって魔理沙が珍しく褒めたのが惨劇(笑)の引き金だったんじゃ……?
いやなんでもない
何度読んでも”あきない”よ。